はじめに
みなさんこんにちは。Hareruya Prosの木原 惇希です。
今回もレガシー大好きおじさんとして記事を書くことになりました。新セット発売、相棒ルールの変更、禁止カードの追加などによりレガシーのメタゲームは大きく変わり続けています。特にカードプールが広いレガシーでは新セット発売の影響が大きく、新しくリリースされた強いカードと相性のいいカードたちがすぐに発見されてデッキになります。
そんな激動のレガシー環境とともにキハラワークスも進化を続けているので、紹介したいと思います。
激動のレガシー環境
『イコリア:巨獣の棲処』がリリースされると、レガシー環境は「相棒」一色といっていいほどどのデッキも「相棒」カードを使うようになりました。
しかし「相棒」ルールの変更により、今では《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」に指定するコントロールデッキが少し存在する程度まで数を減らしています。レガシーにおいてソーサリータイミングで3マナを払うだけの行為は実質ターンをパスしているに近く、ゲームの勝敗に直結する場面も多いのでいい変更だったように思います。
なぜか《王冠泥棒、オーコ》が禁止カードに追加されなかったことにより、現在のメタゲームは《オーコ》を使うデッキか《オーコ》の影響をあまり受けないデッキに人気が集中しています。前者としてはティムールデルバーと氷雪オーコがTier1に位置付けられ、高い使用率を誇ります。
一方で《王冠泥棒、オーコ》を倒さんとするのはダークデプスや土地単、エルドラージストンピィ、忍者、そしてエルフやゴブリンなどの昔ながらのレガシーデッキたちです。これらも新カードの追加や構成を変えながら環境に存在しています。コンボデッキはティムールデルバーが早いクロックと大量のカウンターを有していることから劣勢に立たされ、一時期よりかなり数を減らしました。
青白奇跡と《意志の力》との決別、新環境の最適解
青白奇跡といえばまず俺!(※)といえるほど長年使い続けてきましたが、青の代名詞である《意志の力》が弱いと感じる場面が増え、ついに青白奇跡を使うことを辞めました。対戦相手の使うカードすべてがマストカウンターと感じるような環境で《意志の力》により2対1交換を繰り返していてはこちらの手札が尽きてしまいます。
(※:リミテッドマスターであるベン・スターク/Ben Stark選手への過去のインタビューのオマージュ。)
近年のカードパワーの上昇により《王冠泥棒、オーコ》を筆頭とした対応しないといけないパーマネントの増加、さらには《夏の帳》と《紅蓮破》のような致命的なカードの採用枚数が増えたことで、青白奇跡は環境の最適解ではないと判断せざるを得なくなりました。
ではどのようなデッキが環境の最適解足りえるのか?
上記のことを考えながらデッキ構築に取り掛かり、できたデッキがこちら。
1 《冠雪の島》
1 《冠雪の森》
2 《Savannah》
2 《Tropical Island》
2 《ドライアドの東屋》
4 《霧深い雨林》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《新緑の地下墓地》
1 《ガイアの揺籃の地》
1 《カラカス》
-土地 (23)- 4 《極楽鳥》
4 《貴族の教主》
2 《聖遺の騎士》
1 《不屈の追跡者》
1 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
1 《武勇の場の執政官》
1 《大祖始》
-クリーチャー (14)-
デッキ解説とプレイの指針
《極楽鳥》《貴族の教主》《緑の太陽の頂点》の3種類12枚のマナクリーチャーから3マナの強力パーマネントへ繋げてマウントを取る、飛び道具入りのミッドレンジデッキになりました(《緑の太陽の頂点》はX=0でキャストすると《ドライアドの東屋》を持ってくることができ、疑似《ラノワールのエルフ》になります)。緑のマナクリーチャーを多めに採用することで、《自然の秩序》からゲームを決めるフィニッシャー《大祖始》や《武勇の場の執政官》を無理なく採用することができています。
2ターン目にプレインズウォーカーをプレイすることは非常にインパクトがあり、対戦相手に《意志の力》を使わせることができるので、アドバンテージを得て後続が通しやすくなります。この「2ターン目からパワーカードを連打すること」が非常に大事で、マナクリーチャーによる1ターンの差がゲームの勝敗を大きく分けると考えています。
2ターン目からパワーカードを連打することで相手に対処を迫りつつ盤面を有利にしていくデッキなので、メインはこちらよりキルターンが早いコンボデッキなどに弱いですが、それ以外のデッキに対してはかなり有利に戦えます。
カウンターをメインサイド合わせて1枚も採用していないので、対戦相手のカードにどう対処するか悩むこともほとんどありません。キープ基準は2ターン目に3マナのカードがプレイできることだけなので非常にマリガンが簡単なデッキです(逆に12種類のマナクリーチャーがない手札は絶対にマリガンしてください)。
対《不毛の大地》用に各種1枚ずつの基本地形を採用していますが、土地23枚/マナクリーチャー12枚というバランスはレガシーとしては非常に多くマナフラッドしやすいので、マナクリーチャーが除去されない/《不毛の大地》を使わない対戦相手には、サイド後に土地を2枚程度抜くことをお勧めします。
知っていると意外と役立つ小テク
《ドライアドの東屋》
《緑の太陽の頂点》を使ってのマナ加速以外にも、各種フェッチランドや《自然の秩序》からサーチすることができます。緑のカードであるため《活性の力》の代替コストとして追放することもできます。
《時を解す者、テフェリー》
《時を解す者、テフェリー》が戦場に出ている限り、《戦慄衆の秘儀術師》は墓地から呪文を唱えられず、「待機」や「続唱」でも呪文を唱えられません。
また、[+1]能力を使った返しのターンに対戦相手が攻撃してきた場合、インスタントタイミングで《緑の太陽の頂点》や《自然の秩序》を唱えることで除去呪文を使わせずに(さらに対戦相手の《王冠泥棒、オーコ》に鹿にされることなく)出したクリーチャーでブロックすることができます。フェッチランドから《ドライアドの東屋》を戦場に出しても同様に動けますが、《不毛の大地》や《幽霊街》などの起動型能力では対応されてしまうため注意しましょう。
《王冠泥棒、オーコ》
基本的にどんなクリーチャーやアーティファクトでも能力のない3/3の鹿にできますが、《絵描きの召使い》や《イリーシア木立のドライアド》のように能力を失っているにもかかわらず、ルール上能力を失っていないような挙動をするカードも存在するので注意しましょう。
また、鹿になった食物や手掛かりトークンは緑のクリーチャーなので、《自然の秩序》のコストに充てられることも忘れずに覚えておきましょう。
(編集者注:《王冠泥棒、オーコ》の能力で鹿となった《絵描きの召使い》《イリーシア木立のドライアド》の能力は失われますが、「継続的効果の相互作用」により色や土地タイプの追加/変更は適用されたままになります。)
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
「3点ゲイン&1ドロー」と「生贄に捧げる」は別々の誘発型能力なので同時にスタックに積まれますが、解決の順番を選ぶことができます。基本はドロー後に生贄に捧げるようにスタックに積みましょう。
これにより引いてきた《カラカス》を戦場に出して《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を手札に戻したり、《ガイアの揺籃の地》で戦場にいるクリーチャーとしてカウントすることができたり、《時を解す者、テフェリー》の[+1]能力を使っていれば《自然の秩序》のコストに充てることもできます。
《聖遺の騎士》
能力でフェッチランドを持ってくると1回の起動でパワー/タフネスを+2/+2ずつ上げることができます。
《緑の太陽の頂点》
序盤は《ドライアドの東屋》をサーチしてマナ加速として使用しますが、X=3で使うことも多く、1枚でマナクリーチャーとフィニッシャーの役割を兼ねるため非常にデッキに合っているカードです。ここでは中盤で引いた際の使い方を解説します。
《聖遺の騎士》はサイズに優れるため、除去が《稲妻》などの火力系のみか、まったく入っていない相手に対して強靭なアタッカーやブロッカーとなります。起動型能力でデッキ内から任意の土地をサーチできるので、《カラカス》(マリットレイジ・トークンなど伝説のクリーチャーを対処するため)や《ガイアの揺籃の地》(手札に来てしまった《武勇の場の執政官》を出すマナを確保したい)が必要な場合にも持ってきます。
《不屈の追跡者》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の両方と相性が良く、それらが手札にあるときにも選択するので、X=3で一番先に持ってくることが多いカードです。
《不屈の追跡者》は戦場にマナクリーチャーや《ガイアの揺籃の地》などがあり、マナだけ多く出るが手札に土地しかなく次のフィニッシャーを引き込みたいときに持ってきます。
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は盤面が押されていて《剣を鍬に》やプレインズウォーカーを引き込みたいときや、《カラカス》をコントロールしていて使い回せる算段があるとき、ライフを回復しておきたいとき(ダークデプス相手はライフ21以上、オムニテル相手は16以上、デルバーに攻撃されていて《稲妻》圏外に逃れておきたい)などに持ってきます。
《武勇の場の執政官》
対コンボデッキの場合、《自然の秩序》のサーチ先は《大祖始》よりもこちらを優先します。指定は以下の通りになります。
ソーサリー:スニークショー、オムニテル、エルフ、リアニメイト、ドレッジ、ハイタイド
アーティファクト:TES、ANT、ナーセットエコーズ、ベルチャー(ただし、戦場に複数アーティファクトが出てしまっているときはソーサリーかインスタント、プレインズウォーカーになることもあります)
エンチャントレスや茶単(アーティファクト)など、特定のカードに寄った構成のデッキにも《武勇の場の執政官》を優先します。
上記のマッチアップ以外では基本的に《大祖始》を優先します。しかし、盤面が押されていて《大祖始》が2回殴るターンがもうないときなどは、《武勇の場の執政官》の5/6飛行警戒トランプルというスペックが欲しくて出すこともあります。(デルバー2体に殴られていて相手の戦場に《王冠泥棒、オーコ》がいないときや、エルドラージ相手に《現実を砕くもの》と《難題の予見者》など複数のクリーチャーと殴り合わないといけないとき)。
《アロサウルス飼い》
基本的には《夏の帳》の3枚目と競合する枠ですが、先置きできてスクリュー時にも使える、オムニテルなどの除去がない相手には本体がカウンターされない方が強い、《緑の太陽の頂点》で持ってこれるので擬似的に枚数増加になるなどの理由から散らしています。
各マッチアップのゲームプランとサイドボードガイド
ティムールデルバー
対 ティムールデルバー
常に《目くらまし》をケアしながら《時を解す者、テフェリー》の定着を目指し、カウンターを構えていないようなら《自然の秩序》から《大祖始》を出して一気に勝ちに行きましょう。《戦慄衆の秘儀術師》で《稲妻》を使いまわされてマナクリーチャーを焼かれ続けると辛いので、早いターンに《秘密を掘り下げる者》に《剣を鍬に》を使わずグッと堪えて2~3回は殴られることも大事です。
サイドボード後はカウンターされると損をする《自然の秩序》パッケージを抜いて、ゆっくり盤面を有利にするように戦います。デルバー側の弱点として「《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を根本的に対処できるカードが入っていない」「4/4以上の《聖遺の騎士》を除去しにくい」「《花の絨毯》と《森の知恵》に触れない」などがあり、対処しにくいカードを多く採用しているのでロングゲームを狙っていきましょう。
ダークデプス
対 ダークデプス
基本的に対戦相手の勝ち手段はマリット・レイジトークンで攻撃するのみなので、《極楽鳥》をブロッカーとして立たせて《剣を鍬に》を構えていればあまり負けることはありません。マリット・レイジトークン自体に触れるカードを多く採用しているので、負けないように戦っていれば対戦相手のライフが《剣を鍬に》で80点あったとしてもいつか《大祖始》で勝てます。
サイド後も特に急いで勝ちに行く必要もないので、マナクリーチャーと土地を減らしてハンデスに強いカードたちと対戦相手の《真髄の針》と《墓掘りの檻》に触るために《活性の力》を入れます。ハンデスが多く入っているデッキなので、例外として1ターン目にマナクリが出ない手札でも7枚でキープしたいです。
氷雪オーコ
対 氷雪オーコ
《大祖始》に触る手段が入っていないリストがほとんどなので、《自然の秩序》を通すために3マナのカードたちで揺さぶりをかけながら戦います。コントロールデッキのため一気に攻めてくることはあまりないので、焦らず《自然の秩序》を通しましょう。
サイド後も《自然の秩序》を通すことだけを考えてプレイします。
エルドラージストンピィ
対 エルドラージストンピィ
《虚空の杯》により1マナを制限しつつ高いクロックで攻めて来るので、《虚空の杯》を出されていないなら1マナのカードから積極的に使っていき、出されてしまった場合は2種類のプレインズウォーカーで対処するか、最速で《自然の秩序》を唱えることを目指します。
デッキ選択に関するポリシー
今回紹介したOko’s OrderはTier1のデッキではありませんが、このデッキを選択した背景には自分なりのポリシーがあったからです。公式の英雄譚でも少し触れていますが、世界の強豪プレイヤーと比べて自分が上手いプレイヤーだと思えないからこそデッキビルダーをやってる節があります。
彼らはTier1のデッキを好んで使い安定した勝率を叩き出せますが、自分にはそのスキルがないからこそデッキ選択の段階でTier1の先に一歩踏み出し、環境の最適解を目指すようになりました。
最近ではプレイヤーの増加とオンライン化によりどのフォーマットでも環境を読み解くスピードが上がり、ほとんどのプレイヤーがTier1のデッキを選択します。プレイヤーズツアーでもTier1のデッキのシェア率は増加傾向にありますね。そんなTier1のデッキに対して高い勝率を誇るデッキを作るのは非常に難しいことかも知れませんが、挑戦する価値はあると思っています。
おわりに
今回は自分なりの思考過程とともにレガシーのデッキを紹介しましたが、みなさんもフォーマットを問わず自分なりの構築思考でデッキを作ってみてください。
それではまたどこかで!Good Luck!!!
木原 惇希 (Twitter)