はじめに
みなさんこんにちは。
8月3日の禁止制限告知によってスタンダードやパイオニアには変更が加えられましたが、レガシーはノーチェンジでした。
さて、今回の連載ではLegacy Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Legacy Challenge #12186212
Vialデッキの進化
2020年7月26日
- 1位 Esper Vial
- 2位 Temur Delver
- 3位 Esper Vial
- 4位 4C Sharkblade
- 5位 TES
- 6位 Miracles
- 7位 Urza
- 8位 Sultai Ninja
トップ8のデッキリストはこちら
今大会のプレイオフはクラシックなMiraclesも含めてフェア、コンボとさまざまなアーキタイプが結果を残していました。
現環境トップメタのTemur Delverは今大会でも最大勢力となりましたが、優勝を果たしたEsper VialはTemur Delverに強いこともあり、もっとも成功を収めたアーキタイプでした。
デッキ紹介
Esper Vial
1 《冠雪の島》
1 《冠雪の沼》
3 《Tundra》
1 《Scrubland》
1 《Underground Sea》
4 《溢れかえる岸辺》
3 《湿地の干潟》
3 《汚染された三角州》
1 《カラカス》
2 《不毛の大地》
-土地 (21)- 4 《悪意の大梟》
4 《翻弄する魔道士》
3 《魅力的な王子》
4 《護衛募集員》
2 《魂寄せ》
1 《トレイリアの大魔導師、バリン》
1 《ちらつき鬼火》
1 《平和の番人》
1 《疫病を仕組むもの》
1 《造物の学者、ヴェンセール》
1 《宮殿の看守》
-クリーチャー (23)-
3 《否定の力》
2 《疫病を仕組むもの》
1 《不毛の大地》
1 《エーテル宣誓会の法学者》
1 《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》
1 《レオニンの遺物囲い》
1 《悔恨する僧侶》
1 《剣を鍬に》
1 《安らかなる眠り》
-サイドボード (15)-
Esper Vialはその名の通り《霊気の薬瓶》を使ったデッキのバリエーションで、レガシーの中では比較的新しいデッキです。《護衛募集員》のサーチ能力を利用したシルバーバレット戦略を採用しており、さらに《意志の力》、《時を解す者、テフェリー》、《剣を鍬に》といったコントロール要素も強いため、Death and Taxesやほかの《霊気の薬瓶》デッキと比べてミッドレンジ寄りの構成となっています。
《霊気の薬瓶》のおかげでカウンターに耐性があり、《悪意の大梟》や《剣を鍬に》といった軽いクリーチャー対策を多数採用しているため、Delver系に強いデッキです。
優勝したjtl005はEsper Vialの製作者でもあり、過去の大会でも同デッキで結果を残し続けていました。
☆注目ポイント
Death and Taxesと異なり《渦まく知識》や《意志の力》といった非クリーチャースペルを多数採用しているため、このタイプのデッキの定番クリーチャーである《スレイベンの守護者、サリア》は非採用となっています。代わりにコンボデッキに対して有効な《翻弄する魔道士》が採用されており、《魂寄せ》などで「明滅」させることで指定したカード名の変更ができるので、コンボ以外のマッチアップでも活躍します。
Delver系をはじめとしたクリーチャーデッキに対しては、《悪意の大梟》が除去兼アドバンテージ源として機能します。カウンターが2個乗った状態の《霊気の薬瓶》があるだけで、相手は攻めにくくなりますね。
《護衛募集員》によるシルバーバレット戦略もこのデッキの魅力の1つであり、特定のデッキに対して効果的な《宮殿の看守》、《平和の番人》、《疫病を仕組むもの》が選択されています。シャッフル手段にもなるため《渦まく知識》とも相性が良いクリーチャーです。
《魅力的な王子》、《ちらつき鬼火》、《魂寄せ》で場に出たときの(以下ETB)能力持ちのクリーチャーを使いまわすことでアドバンテージを稼ぎます。《トレイリアの大魔導師、バリン》や《造物の学者、ヴェンセール》は伝説のクリーチャーなので、《カラカス》で再利用することもできます。
サイドには追加のコンボ対策として《否定の力》が3枚と多めに取られています。
ETB能力によって相手のクリーチャーと交換する《金粉のドレイク》は、《魅力的な王子》などで「明滅」させることによってさらにほかのクリーチャーを奪うこともできるので、ReanimatorやSneak and Show以外でも環境の多くのクリーチャーデッキとのマッチアップで活躍します。
Miracles
現在のMiraclesは《王冠泥棒、オーコ》や《夏の帳》のために緑をタッチしたBant Miraclesが主流ですが、今大会でプレイオフに入賞したバージョンはクラシックな純正タイプのものでした。
☆注目ポイント
基本的な構成は《師範の占い独楽》禁止後に見られた青白 Miraclesと比べても大きな変化は見られませんが、《覆いを割く者、ナーセット》、《時を解す者、テフェリー》、《否定の力》といった強力な青いカードが登場したため以前よりも強化されています。
《神秘の聖域》は《相殺》や《予報》とシナジーがあり、《終末》や《天使への願い》といった「奇跡」スペルをライブラリートップに仕込むこともできます。
青白の2色で基本地形を多数採用しているため《不毛の大地》に耐性があり、メインから採用されている《基本に帰れ》はTemur Delverに対して着地させれば勝ちが確定します。サイドの《倦怠の宝珠》は《瞬唱の魔道士》との相性の悪さが気になりますが、Esper VialなどETB能力持ちのクリーチャーを多用するデッキや《原始のタイタン》デッキなどとのマッチアップで有効です。
Sultai Ninja
2 《冠雪の沼》
2 《Tropical Island》
2 《Underground Sea》
1 《Bayou》
4 《霧深い雨林》
4 《汚染された三角州》
1 《新緑の地下墓地》
-土地 (18)- 4 《羽ばたき飛行機械》
4 《変わり身ののけ者》
3 《虎の影、百合子》
2 《厚かましい借り手》
4 《巧妙な潜入者》
-クリーチャー (17)-
2 《塵へのしがみつき》
2 《思考囲い》
2 《墓掘りの檻》
1 《狼狽の嵐》
1 《外科的摘出》
1 《暗殺者の戦利品》
1 《否定の力》
1 《水没》
1 《トーモッドの墓所》
-サイドボード (15)-
Ninjaは回避能力持ちのクリーチャーを、カウンターやハンデスでバックアップするプロアクティブな戦略で、《虎の影、百合子》や《巧妙な潜入者》、《改良式鋳造所》といった強力なアドバンテージエンジンを搭載しています。
Sultaiにすることで《王冠泥棒、オーコ》や《突然の衰微》といったカードを採用できるようになり、フェアデッキとのマッチアップに強くなりました。
☆注目ポイント
《王冠泥棒、オーコ》や《突然の衰微》を採用することで、《虚空の杯》など厄介な置物にメインから対処しやすくなりました。《王冠泥棒、オーコ》は強力な勝ち手段としても機能するので、除去を多用するフェアデッキとの消耗戦にも強くなっています。
青黒の2色のときは相手の《王冠泥棒、オーコ》はカウンターかハンデスが主な対策でしたが、《突然の衰微》と《暗殺者の戦利品》を採用できるので処理しやすくなっています。
TES
1 《Badlands》
1 《Taiga》
1 《Tropical Island》
1 《Underground Sea》
1 《Volcanic Island》
4 《血染めのぬかるみ》
2 《汚染された三角州》
1 《新緑の地下墓地》
-土地 (13)- -クリーチャー (0)-
4 《暗黒の儀式》
4 《思案》
4 《炎の儀式》
4 《夏の帳》
4 《燃え立つ願い》
1 《永劫のこだま》
1 《苦悶の触手》
1 《むかつき》
4 《ライオンの瞳のダイアモンド》
4 《水蓮の花びら》
3 《金属モックス》
3 《オパールのモックス》
4 《願い爪のタリスマン》
2 《防御の光網》
-呪文 (47)-
Storm コンボマスターのBryant Cook氏も今大会でプレイオフに入賞していました。TES(The Epic Storm)は《オパールのモックス》や《金属モックス》を活用しているのでレガシーの中でもコンボスピードが速く、爆発力のあるデッキです。
☆注目ポイント
メインから採用された《燃え立つ願い》は相手の戦略に合わせてコンボプランの選択を可能にします。《夏の帳》を構えている相手には《巣穴からの総出》をサーチして大量のゴブリントークンを展開したり、《虚空の杯》も《粉みじん》をサーチすることで対応することができます。
《夏の帳》はカウンターだけでなく《思考囲い》などハンデス対策にもなるためミラーマッチでも活躍し、《防御の光網》を置くことで青いデッキとのマッチアップでも安全に《永劫のこだま》をプレイできます。これらのカードがメインから採用されているため、クロックが遅くカウンターが主な妨害手段であるSnow Controlには有利です。
Temur Delverを相当意識していたようで、なんとサイドには《花の絨毯》がフル搭載されています!《呪文貫き》、《目くらまし》、《狼狽の嵐》といったソフトカウンターを乗り越えやすくなり、マナが増えるのでマナ関連のスペルに頼らなくともコンボを仕掛けやすくなりました。
『基本セット2021』からの新カードである《深淵への覗き込み》は7マナと重いスペルですが、《燃え立つ願い》でサーチしてこれる《むかつき》で、スペルで失われるライフが一様なのでライフを攻めてくる戦略に対して強いカードです。ただし、マナコストの重さと追加のドローなので《覆いを割く者、ナーセット》や《トレストの使者、レオヴォルド》でシャットアウトされてしまうところが弱点となります。
ボーナストピック
Temur Delver
3 《Volcanic Island》
3 《溢れかえる岸辺》
3 《霧深い雨林》
3 《汚染された三角州》
4 《不毛の大地》
-土地 (19)- 4 《秘密を掘り下げる者》
3 《戦慄衆の秘儀術師》
3 《タルモゴイフ》
2 《わめき騒ぐマンドリル》
-クリーチャー (12)-
久しぶりに参加したLegacy Challengeで準優勝することができたので、大会レポートとサイドボードについて解説していきたいと思います。
Temur Delverを使う最大の理由は最高のプレインズウォーカーである《王冠泥棒、オーコ》にあります。Izzet Delverと異なり基本地形を採用する余裕がないため、《血染めの月》や《基本に帰れ》には弱くなりますが、《虚空の杯》などの置物を対処でき、デッキパワーでも勝ります。
《わめき騒ぐマンドリル》は《剣を鍬に》には無力ですが、《致命的な一押し》や《突然の衰微》といった黒除去に耐性があるクリーチャーであり、Temurカラーを選択するメリットの1つです。《タルモゴイフ》は除去耐性こそないもののサイズで勝るため、火力が中心のIzzet Delverや同型に強く、エルドラージとのマッチアップでも《現実を砕くもの》よりも大きなサイズに成長するため採用しています。同型が多くなってきているため、サイドボードには2枚目の《水没》を採用しました。
大会結果
対戦相手 | 結果 |
---|---|
Dooms day combo | 2-1 |
Esper Vial | 0-2 |
Bomberman | 2-0 |
Loam | 2-0 |
Mirror | 2-0 |
Mirror | 2-1 |
4C Sharkblade | 0-2 |
Top8 | |
TES | 2-1 |
Esper Vial | 2-1 |
Esper Vial | 0-2 |
サイドボード
Esper Vial
対 Esper Vial
《霊気の薬瓶》からインスタントスピードで《悪意の大梟》が出てくると厳しいため、《霊気の薬瓶》をカウンターできるか否かでゲーム展開が変わってきます。サイド後は《紅蓮破》や《赤霊破》、《削剥》が入るため、メインに比べいくらか改善されます。脅威となるカードの多くが青なので、《紅蓮破》と《赤霊破》は効果的な妨害手段となります。また、除去の選択肢が増え、《翻弄する魔道士》で除去をシャットアウトされにくくなります。
Mirror
対 Mirror
ミラーマッチはお互いのリソースを交換し合う傾向にあるため、2対1交換である《意志の力》をサイドアウトして、場に出た脅威に直接対応できる除去を中心にサイドインします。相手のフェッチランドの起動にスタックして《水没》をキャストすることで、完全な除去のように機能します。
Snow Control(Sultai)
対 Snow Control(Sultai)
多色デッキですが、《アーカムの天測儀》+氷雪基本地形による強固なマナ基盤によって《不毛の大地》に耐性があり、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》も厄介なカードです。コントロールデッキでありながらTemur Delverにとって厄介なのは《氷牙のコアトル》や《ウーロ》といったクリーチャーと《基本に帰れ》や《王冠泥棒、オーコ》などの青いカードであり、サイドボードでは《否定の力》が抜けて《赤霊破》や《紅蓮破》が入ります。
マナを縛る《冬の宝珠》やカードアドバンテージ源の《森の知恵》のほかにも、墓地にある《ウーロ》対策に《外科的摘出》もサイドインします。
Sneak and Show
対 Sneak and Show
Delver系はクロックとカウンターが揃っているので、コンボデッキとのマッチアップは有利となります。サイド後は火力や3マナと少し重い《王冠泥棒、オーコ》を減らして、1マナカウンターとして機能する《紅蓮破》と《赤霊破》をサイドインします。
Storm
対 Storm
サイドアウトするカードはSneak and Showとのマッチアップと同様に、火力や《王冠泥棒、オーコ》です。《ザンティッドの大群》がサイドインされることがあるので《稲妻》は数枚残し、こちらは《巣穴からの総出》対策のために《乱暴/転落》をサイドインします。《夏の帳》や《突然の衰微》が厄介なので、緑マナ源となる《Tropical Island》を《不毛の大地》で破壊しておくことも重要ですね。
総括
Temur DelverがトップメタですがStorm系のコンボや多色コントロールなどさまざまなデッキが結果を残しており、さらに最近ではEsper VialやNinjaといった新しいデッキもみられます。Esper VialとNinjaはプレイしていて面白いこともあり、今後も人気が出そうなアーキタイプです。
以上、USA Legacy Express vol.169でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!