Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/08/05)
予期せぬ出来事
やぁみんな!
今週はビックリ仰天なことが起きた。ウィザーズが禁止カードリストに大幅な変更を加えたんだ。
自分自身もこれは予測していなかったし、みんなもきっと同じだろうと思う。だって、ローテーションがもう目前に迫っている時期だったからね。
禁止告知の内容について個人的な意見を深く語るつもりはない。おおむねいい変更だと言えるものだからね。今日話したいのは、変更が加えられた各フォーマットの未来だ。
スタンダード
《荒野の再生》 禁止
《成長のらせん》 禁止
《大釜の使い魔》 禁止
ワォ!一気に禁止カードが出たね。
特に注目すべきは《荒野の再生》と《成長のらせん》のタッグだ。ここ数週間のスタンダードを圧倒的に支配し、プレイヤーズツアーファイナルでは全体の55%にも及んだ。
残りの2枚、特に《大釜の使い魔》はこのタッグの禁止に関連している。再生デッキは「食物」デッキの天敵として睨みを利かせ、支配的にならないように抑え込んでいた。
また、《大釜の使い魔》は使うにしろ使われるにしろ、オンライン上で煩わしい存在だった。だから個人的には猫かまどコンボがなくなって嬉しく思う。
猫ちゃんバイバイ!
今回のような状況においては、禁止カードが出なかったデッキが今後のベストデッキになると考えるのが一般的だ。この法則は当たっていることが多いし、前回の禁止告知以降ではまさにティムール再生がその立場になった。だけど、今回はこの法則が通じない可能性がある。これまでのメタゲームはティムール再生によって極端に歪められていたからだ。
ここでプレイヤーズツアーファイナルで準優勝した熊谷 陸のデッキリストを見てみよう。
4 《ロークスワイン城》
2 《総動員地区》
-土地 (25)- 4 《どぶ骨》
4 《漆黒軍の騎士》
4 《帆凧の掠め盗り》
2 《黒槍の模範》
2 《死より選ばれしティマレット》
4 《狩り立てられた悪夢》
1 《残忍な騎士》
4 《騒乱の落とし子》
3 《悪ふざけの名人、ランクル》
-クリーチャー (28)-
メインデッキには《強迫》が入っていて、クリーチャー枠には再生側の除去が当たらないようなものが選択されている。たとえば《狩り立てられた悪夢》はプレイヤーズツアーファイナルのメタゲームに適していた。だけど、まったく異なる敵を想定して構築されたデッキを今後も使うのは必ずしもいいアイディアだとは思えない。たとえ禁止告知の影響がなかったデッキだとしてもね。
確かに禁止の影響がないデッキを見つけることは大切だ。だけど、これまで再生デッキや猫かまどコンボに非常に弱かったデッキにも目を向けるべきだろう。
その条件に合うものとしてまず思い浮かぶのは、ティムールアドベンチャーだ。強力なアーキタイプだったが、ティムール再生が環境の王者となったことで立場を悪くしてしまった。ティムールアドベンチャーは消耗戦に強いものの、再生との相性はよくないと考えられていたんだ。
4 《島》
2 《山》
3 《ケトリアのトライオーム》
4 《繁殖池》
4 《踏み鳴らされる地》
3 《蒸気孔》
1 《神秘の神殿》
-土地 (27)- 4 《エッジウォールの亭主》
4 《願いのフェイ》
4 《砕骨の巨人》
4 《厚かましい借り手》
4 《恋煩いの野獣》
4 《豆の木の巨人》
-クリーチャー (24)-
再生デッキがいなくなったことで、活躍が大いに期待できるアーキタイプはほかにもある。《軍団のまとめ役、ウィノータ》や《エンバレスの宝剣》といった強力な呪文がカードプールにあるが、アグロを食い物にできて再生と相性が悪かったデッキを再評価してみるのもいい発想ではないかと思う。
そこで思い浮かぶのが、6月末のプレイヤーズツアーオンライン3でベン・スターク/Ben Starkが使用したオルゾフヨーリオンだ。アグロにはめっぽう強い構成であり、《屈辱》という弱いカードをもはや使う必要もなくなった。自分ならまずはこんなリストから始めるだろう。
6 《平地》
4 《寓話の小道》
2 《サヴァイのトライオーム》
1 《インダサのトライオーム》
4 《神無き祭殿》
4 《静寂の神殿》
3 《ロークスワイン城》
2 《アーデンベイル城》
-土地 (35)- 4 《泥棒ネズミ》
4 《魅力的な王子》
4 《ヤロクの沼潜み》
3 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-クリーチャー (15)-
3 《ケイヤの怒り》
4 《ケイヤの誓い》
4 《裏切る恵み》
4 《予言された壊滅》
3 《エルズペス、死に打ち勝つ》
3 《ガラスの棺》
3 《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》
2 《太陽の宿敵、エルズペス》
-呪文 (30)-
パイオニア
《真実を覆すもの》 禁止
《隠された手、ケシス》 禁止
《歩行バリスタ》 禁止
《死の国からの脱出》 禁止
とても意思が汲み取りやすい禁止だ。ウィザーズはパイオニアがコンボに支配されるのを好ましく思っていない。
スタンダードと同じく、パイオニアの風景はまったく異なるものになっていくだろう。黒単アグロのようにコンボに強かったデッキは弱体化するはずだ。環境の最初期において手堅いデッキを選びたいならスゥルタイ昂揚がいいだろう。柔軟性に富んだデッキであり、あらゆるものに対応できるツールを持っている。
手始めに使うならJaberwockiの構成をおすすめしたい。彼のデッキを使って間違うなんてことはないからね!
2 《森》
1 《沼》
3 《寓話の小道》
2 《ゼイゴスのトライオーム》
2 《繁殖池》
2 《草むした墓》
2 《湿った墓》
4 《花盛りの湿地》
1 《水没した地下墓地》
1 《内陸の湾港》
1 《森林の墓地》
1 《イプヌの細流》
-土地 (24)- 4 《サテュロスの道探し》
3 《ヴリンの神童、ジェイス》
1 《漁る軟泥》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
2 《残忍な騎士》
1 《不屈の追跡者》
1 《半真実の神託者、アトリス》
-クリーチャー (16)-
3 《減衰球》
2 《見栄え損ない》
1 《約束された終末、エムラクール》
1 《強迫》
1 《突然の衰微》
1 《否認》
1 《霊気のほころび》
1 《最後の望み、リリアナ》
-サイドボード (15)-
スゥルタイ昂揚のほかに注目しているのは、《ニヴ=ミゼット再誕》デッキだ。前環境から強かったし、環境の生き残りとしてロングゲームを目指すデッキに対して最大の捕食者になっていくだろう。先日解禁された《ニッサの誓い》によって強化されたデッキでもある。
このアーキタイプの大きな問題点は、新環境に適した構成を見つけるまでにある程度の時間を要することだ。ただ、瞬く間に環境最強のデッキになっても何ら驚きではないね。
1 《島》
1 《沼》
1 《山》
1 《森》
4 《寓話の小道》
2 《ゼイゴスのトライオーム》
1 《インダサのトライオーム》
1 《ケトリアのトライオーム》
1 《サヴァイのトライオーム》
2 《蒸気孔》
2 《寺院の庭》
1 《繁殖池》
1 《草むした墓》
1 《踏み鳴らされる地》
1 《湿った墓》
2 《氷河の城砦》
1 《根縛りの岩山》
1 《森林の墓地》
1 《マナの合流点》
-土地 (27)- 4 《森の女人像》
3 《復活の声》
3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
4 《ニヴ=ミゼット再誕》
-クリーチャー (14)-
2 《突然の衰微》
1 《漂流自我》
1 《完全なる終わり》
4 《白日の下に》
1 《永遠神の投入》
1 《破滅の刻》
4 《時を解す者、テフェリー》
2 《先駆ける者、ナヒリ》
-呪文 (19)-
3 《思考囲い》
2 《減衰球》
1 《復活の声》
1 《イゼットの静電術師》
1 《探索する獣》
1 《スカラベの神》
1 《ラクドスの復活》
1 《戦争の犠牲》
1 《伝承の収集者、タミヨウ》
-サイドボード (15)-
ヒストリック
《荒野の再生》 一時停止
《時を解す者、テフェリー》 一時停止
ヒストリックは個人的に最近よく遊んでいるフォーマットだ。《荒野の再生》が一時停止になるのは明らかだったけど、《時を解す者、テフェリー》も一時停止になったのは本当に驚いた。メタゲームでそこまで重要な存在ではなかったからね。
ヒストリックの環境も変化するだろうが、ほかのフォーマットほどではないはずだ。ティムール再生は環境のベストデッキだったが、デッキパワーで群を抜いていたスタンダードほどではなかった。私見だが、ティムール再生はヒストリックでデッキパワーがもっとも高かったとは思わない。ゴブリンのほうがデッキパワーとしては上だと思っていたんだ。
『Jumpstart』の発売から間もなくして、《上流階級のゴブリン、マクサス》はゴブリンをヒストリックのTier1へと押し上げ、ベストデッキの座を争うアーキタイプに昇華させた。カードアドバンテージを稼ぐだけでなく、3ターン目のプレイも夢じゃない1枚コンボのカードなんだ!
ここで問題をややこしくしているのは、ティムール再生が《溶岩震》を数枚採用する以上に過度な変更をしなくてもゴブリンに相性がいいことだった。2つのアーキタイプが環境の王者を争う場合、一方がもう一方に有利であることによって白黒が付くことが多い。これがまさに前環境のヒストリックで起きていた。
逆に言えば、再生なき今はゴブリンが環境の王者になれる見込みがあるってことだ。少なくとも対策されるまではね!
4 《エンバレス城》
1 《ファイレクシアの塔》
-土地 (24)- 4 《スカークの探鉱者》
4 《人目を引く詮索者》
4 《ゴブリンの扇動者》
4 《ずる賢いゴブリン》
4 《ゴブリンの酋長》
4 《ゴブリンの女看守》
4 《ゴブリンの戦長》
4 《群衆の親分、クレンコ》
4 《上流階級のゴブリン、マクサス》
-クリーチャー (36)-
おわりに
新環境の探求はマジックにおいて最高に楽しい瞬間のひとつだ。今回の禁止告知はその機会を与えてくれた。
デッキ構築を楽しもう!みんなの力作と対戦できることを楽しみにしているよ!