USA Modern Express vol.44 -モダンへ現れた荒野の再生-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさんこんにちは。

先週末には各フォーマットでMOの大規模イベントであるShow Case Challengeが開催されましたので、今回はModern Show Case Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。

果たして禁止改定後のモダン環境はいかに!?

Modern Show Case Challenge #12192340
スタンダード環境を支配していたあのデッキはモダンでもベスト

2020年8月8日

  • 1位 Temur Reclamation
  • 2位 Rakdos Prowess
  • 3位 Boros Burn
  • 4位 Ad Grace
  • 5位 Dredge
  • 6位 Bogles
  • 7位 Bant Ramp
  • 8位 Rakdos Prowess

トップ8のデッキリストはこちら

Show Case Challengeは参加するために40QPが必要なので、普段のModern Challengeよりもハイレベルな大会となっています。デッキの熟練度が重要なモダンらしく、プレイオフには各デッキのエキスパートであるLavaridge(Temur Reclamation)やSodeq(Dredge)が入賞していました。

優勝こそ逃したものの、BurnやProwessといった高速アグロも多数の入賞者を出していました。

デッキ紹介

Temur Reclamation

8月3日の禁止制限告知にて、スタンダード環境を支配し続けた《荒野の再生》《成長のらせん》が禁止カードに指定されたTemur Reclamationですが、なんとModern Show Case Challengeを優勝してしまうほどの強さでした。基本的な構成はカードアドバンテージを稼ぎつつカウンターで相手を妨害し、土地を伸ばしてデッキ内のわずかなフィニッシャーでゲームに勝つという、古典的な青ベースのコントロールスタイルです。

カードプールが広大なモダンではフェッチランドによってマナ基盤も安定しており、《謎めいた命令》《嘘か真か》などの強力なスペルに加えてスタンダードでは禁止カードに指定されている《死者の原野》も使えるため、さらに強力なデッキに仕上がっています。

今大会で優勝したLavaridgeは、先月開催されたModern Show Case Challengeも同デッキを使用してトップ8に入賞するなど、強豪揃いのトーナメントでコンスタントに結果を残し続けています。これは決して偶然ではなく、Temur ReclamationこそがSnow Controlに代わる現環境最高の青ベースのコントロールデッキであることの証明にほかなりません。

☆注目ポイント

荒野の再生成長のらせん嘘か真か

《成長のらせん》はカウンターを構えながら土地を伸ばせるので、4マナスペルが多いこのデッキの序盤を支えています

《荒野の再生》さえ置ければ、メインフェイズに《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《嘘か真か》を使いアドバンテージを稼いでも自分の終了ステップに土地がアンタップされるので、隙を作らずに動くことが可能となります。使えるマナが2倍になることを利用して《サメ台風》を「サイクリング」し、速やかにゲームを決めることもできますね。

稲妻神々の憤怒

カウンターがこのデッキの主な妨害手段ですので、それらをすり抜けてくる低マナの「果敢」クリーチャーを多用するProwessは厳しいマッチアップとなります。サイド後はメインの《稲妻》に加え、《神々の憤怒》《炎の斬りつけ》などの除去を投入し対応していきます。

強力なプレインズウォーカー《レンと六番》もこのバージョンの魅力で、「サイクリング」付きランドなどを再利用しアドバンテージを稼いでいきます。

霊気の疾風古えの遺恨

《霊気の疾風》はProwessやBurn、Jund、Ponza、Amulet Titan、最近ではGoblinsと、さまざまなマッチアップで活躍するモダン最高の妨害スペルの1枚であり、サイドにフル搭載されています。カウンターではないので《魂の洞窟》の影響を受けないのもこのスペルの強みです。

クリーチャーを並べてくる戦略に苦戦することが多いため、スイーパーの《神々の憤怒》は必須となります。装備品や《霊気の薬瓶》《精神迷わせの秘本》などのアーティファクトも対策する必要があるため、《削剥》《古えの遺恨》も採用されています。「フラッシュバック」付きスペルの《古えの遺恨》《嘘か真か》との相性も良いのでお勧めです。

Rakdos Prowess

ProwessはBurnと並んでモダンを代表する高速アグロデッキの1つに定着しています。Burnと共通点が多いデッキですが、Prowessは「果敢」クリーチャーと火力スペルの組み合わせによる爆発力を重視しています。

このデッキは『モダンホライゾン』から《溶岩の投げ矢》が再録されたことで、一気にトーナメントレベルのデッキとして認識されるようになりました。「相棒」ルールの変更によって《夢の巣のルールス》は弱体化しましたが、Prowessの爆発力は健在であり、今なおトップメタの一角として存在し続けています。

最近は単色よりも、IzzetやBorosのように色を足したバージョンをよくみかけます。今大会で入賞していたのはRakdosバージョンで、ハンデスや墓地対策を採用できるのが特徴です。《夢の巣のルールス》+《ミシュラのガラクタ》パッケージ以外にも、《塵へのしがみつき》《コラガンの命令》はアドバンテージを稼げるスペルであり、ロングゲームに強い構成です。

☆注目ポイント

塵へのしがみつき

1マナのキャントリップスペルである《塵へのしがみつき》は、ミラーマッチの《夢の巣のルールス》対コントロールの《自然の怒りのタイタン、ウーロ》対策になります。ライフゲインだけではなく、「脱出」させることで息切れを防止したりと活躍する場面が多い優秀なスペルです。

発掘ケラル砦の修道院長

デッキのクリーチャーすべてが3マナ以下なので、《発掘》は強力なリアニメイトスペルとなります。《ケラル砦の修道院長》をリアニメイトすることで、アドバンテージを稼ぐこともできますね。

アングラスの暴力コラガンの命令

サイドに採用されている《アングラスの暴力》は火力1枚では対応できない高タフネスのクリーチャー対策であり、Jund Death’s ShadowやBogles相手にサイドインします。《コラガンの命令》はコントロールやミッドレンジとのマッチアップで強く、墓地に落ちた《夢の巣のルールス》を拾い、《虚空の杯》や装備品対策にもなります。

Ponza

Ponzaは赤緑の土地破壊デッキの名称で、現在のモダンでも活躍しています。元々は《石の雨》《なだれ乗り》で相手の土地を破壊しつつ軽いクリーチャーでプレッシャーをかけるデッキでしたが、現代のポンザは《血染めの月》《月の大魔術師》で相手のマナベースを機能不全にし、カードでアドバンテージを稼ぎつつダメージソースとなる《歴戦の紅蓮術士》《血編み髪のエルフ》が主力のミッドレンジ寄りの構成になっています。

マナ否定戦略とアドバンテージを稼げるクリーチャーを多用するため、多色コントロールやJund、土地コンボのTronや《原始のタイタン》に強いデッキとなります。

☆注目ポイント

東屋のエルフ血染めの月楽園の拡散

理想の動きは《東屋のエルフ》《楽園の拡散》から2ターン目に《血染めの月》をキャストして相手の動きを制限することです。特に《楽園の拡散》はマナクリーチャーと異なり除去されにくいので、相手によっては《楽園の拡散》からのスタートが理想となります。

歴戦の紅蓮術士血編み髪のエルフ反逆の先導者、チャンドラ長老ガーガロス

このデッキの主力を務める《歴戦の紅蓮術士》《血編み髪のエルフ》は両方とも手軽にアドバンテージが取れるクリーチャーとなっています。特に《歴戦の紅蓮術士》2枚目以降の《血染めの月》や余分なマナ加速などを有効牌に変換しつつクロックを並べることができ、さらに手札が空のときにキャストすればただで追加のドローができるので、いつ引いてきても嬉しいクリーチャーです。

《反逆の先導者、チャンドラ》《長老ガーガロス》はこのデッキのフィニッシャーです。赤にとってタフネス4のクリーチャーは処理が難しく、《反逆の先導者、チャンドラ》は貴重な対処手段となります。《長老ガーガロス》は『基本セット2021』から登場した新カードで、状況に応じて最適なアドバンテージを得ることができ、警戒を持つため攻守にわたって活躍します。

漁る軟泥運命の神、クローティス沸騰

このデッキのもう1つの強みはメインから墓地対策カードである《漁る軟泥》《運命の神、クローティス》を無理なく採用できるところにあり、これも《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を主力とするコントロールに強い理由です。

青ベースのフェアデッキに対してはサイドの《沸騰》も効果的な1枚であり、インスタントなので相手のタップアウトした隙を突きやすく、サイド後は特に有利になります。《原始のタイタン》とのマッチアップでは、相手の《イリーシア木立のドライアド》の常在型能力を利用することで、相手の土地すべてを破壊できることを覚えておきましょう。

Jund Death’s Shadow

GrixisやJundなどいくつかのカラーバリエーションが存在するDeath’s Shadowですが、どのデッキもフェッチランドとショックランド、《思考囲い》《通りの悪霊》といったカードでライフを減らしていき、《死の影》を展開するところは変わりません。

ハンデスで相手の除去を落として《死の影》で一気に相手のライフを攻めていくアグロ要素と、《ティムールの激闘》を使って瞬殺するコンボ要素もあるため、対戦難易度の高いデッキです。

Jund Death’s Shadowは《タルモゴイフ》やサーチスペルの《ウルヴェンワルド横断》があるためほかのバージョンと比べて密度が濃く、《暗殺者の戦利品》が使えるので厄介なパーマネントを処理する能力にも長けています。

☆注目ポイント

ウルヴェンワルド横断ミシュラのガラクタタルモゴイフ

このデッキの《ミシュラのガラクタ》《夢の巣のルールス》とのパッケージ以外でも、「昂揚」の達成を助け《タルモゴイフ》の強化に貢献します。「昂揚」の条件さえ満たせばクリーチャーサーチとなる《ウルヴェンワルド横断》は、Jundバージョンを選択する1番の理由になります。サイド後は部族デッキに有効な《疫病を仕組むもの》をサーチする手段にもなります。

塵へのしがみつきレンと六番

低マナのキャントリップスペルの《塵へのしがみつき》はメインから無理なく採用できる墓地対策であり、このデッキはハンデスや《ミシュラのガラクタ》、フェッチランドなどで比較的墓地が肥えやすいため、「脱出」も使いやすくなっています

サイドの《レンと六番》《育成泥炭地》などを使いまわしてアドバンテージを稼いだり、小型クリーチャーを無力化したりと汎用性が高いプレインズウォーカーであり、多くのマッチアップでサイドインします。

総括

《アーカムの天測儀》禁止後の環境では、ProwessやReclamation、Burn、Ponza、Goblinsなど上位にさまざまなデッキがみられました。

毎ターン大量のマナを生み出す《荒野の再生》は、モダンでも最高の戦略の1つとなる可能性があります。大量のマナをカードアドバンテージへと変換する手段も豊富で、大規模な大会でも結果を残し続えているデッキなので、環境の代表的なコントロールデッキとして人気が出そうです。

USA Modern Express vol.44は以上となります。

それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら