Translated by Kouhei Kido
(掲載日 2020/08/28)
はじめに
正直に言えば、今のところヒストリックは私のお気に入りフォーマットではありません。別に悪いフォーマットだと言いたいわけではないです。ただ私が個人的に好きではない要素がいくつもあります。
短い試合が多くて、自分の勝利手段を相手よりも早く成立させようとしているだけのデッキがたくさん存在しています。また、《集合した中隊》や《上流階級のゴブリン、マクサス》で何を出せたかで結果が左右される試合が多発するのです。その結果として多くの試合で、自らのプレイングが試合結果に対してそれほど影響を及ぼせていないと感じる試合が多くなります。
でもアリーナで好まれるのはそういったゲーム体験なのかもしれませんね。ある試合で後手から何もできずに相手に粉砕されたとしましょう。今度は自分が相手を粉砕する側になるかもしれない次の試合を即座に遊べるのですから。
ヒストリックは自分から能動的に動くことが多い傾向がもっとも強かった頃のモダンを思い出させます。この比較をふまえて言えば《死者の原野》はヒストリック版のトロンのような印象をよく感じていました。
両デッキとも遅いゲーム展開では相手にとって突破が不可能なくらい強いのですが、対戦相手が早く試合を終わらせられる手札を引くと簡単に負けてしまいます。またジャンドのようなミッドレンジデッキやコントロールデッキのような遅いデッキを餌食にしていたのも一緒です。《死者の原野》によってコントロールデッキはヒストリックから追い出されていました。
私が《成長のらせん》と《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を活かすためにバントかスゥルタイのコントロールデッキを組もうとすると、どうせ条件を満たすなら《死者の原野》も足そうという考えになってしまいます。《原野》を入れるなら一緒に使うと強い《約束の刻》も使わないのはもったいないことです。そうこうしているうちにいつの間にか対戦相手がやろうとしていることに上手く干渉して勝とうとするよりも、ゾンビを一体でも多く出すことに重きをおいたデッキが生まれてしまいます。
エスパーや青白、白黒のコントロールデッキを組もうとすると、土地を置くだけで勝てるデッキに打ち勝つのは厳しい戦いでした。相手も同じ打ち消しとハンデスのカードが使えます。そもそもコントロールのミラーマッチでは相手よりも多くの土地を場に出していること自体かなり有利になる状況です。
《悪性の疫病》のようなカードをサイドボードに入れることもできますが、自分の勝ち筋にはつながらないのに3マナのエンチャントを設置すること自体がかなり大きな負担です。それに《思考囲い》から《ウーロ》を出すといったタイプの動きに負けやすくなってしまいます。
《死者の原野》が消えた今なら、ヒストリックでコントロールがいい立ち位置になる余地ができたように思います。それでもまだ逆風は吹いています。ヒストリックに追加されたカードのほとんどは自分から能動的に動くゲームを促進するものです。《孔蹄のビヒモス》や《スレイベンの守護者、サリア》、《集合した中隊》、《上流階級のゴブリン、マクサス》、《コーの精霊の踊り手》、《アロサウルス飼い》等々です。
受動的なカードで一番強いものとも言えそうな《思考囲い》ですらコントロールよりもミッドレンジの方が強く使えるカードです。ヒストリックのカードプールにはまだ欠けがあって、強い打ち消しが足りませんし、使いたくなるような白い単体除去が特に欠けています。でも全てが足りないというわけではありません。《無垢の血》はけっこう気の利いた除去呪文ですし、《覆いを割く者、ナーセット》や《サメ台風》、《ドミナリアの英雄、テフェリー》のようにスタンダード出身の遅いデッキにとって強力なカードも存在しています。
エスパーヨーリオン
まず思いつく通用しそうなデッキは、パイオニアのデッキでヒストリックに流用できるものです。エスパーヨーリオンはパイオニアで通用しているデッキだと思っていて、《時を解す者、テフェリー》を除いてほとんどのカードがヒストリックでも使えます。
2 《島》
2 《沼》
4 《寓話の小道》
4 《神無き祭殿》
4 《神聖なる泉》
4 《湿った墓》
4 《水没した地下墓地》
4 《氷河の城砦》
4 《孤立した礼拝堂》
1 《アーデンベイル城》
-土地 (35)- 3 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-クリーチャー (3)-
4 《無垢の血》
4 《思考囲い》
3 《思考消去》
3 《神の怒り》
1 《絶滅の契機》
4 《海の神のお告げ》
4 《野望の試練》
1 《アズカンタの探索》
4 《ケイヤの誓い》
3 《太陽の神のお告げ》
2 《エルズペス、死に打ち勝つ》
4 《覆いを割く者、ナーセット》
1 《時の支配者、テフェリー》
3 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (42)-
3 《ドビンの拒否権》
3 《墓掘りの檻》
2 《神秘の論争》
1 《取り除き》
1 《神の怒り》
1 《太陽の神のお告げ》
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-サイドボード (15)-
このデッキにはいい除去が入っていて、《空を放浪するもの、ヨーリオン》と《ドミナリアの英雄、テフェリー》によってゲーム後半に強い構成になっているはずです。ゲーム後半で相手が突破しにくくなるように、使った後に場に残ってあとでブリンクできるカードが多く入っています。《ケイヤの誓い》と《太陽の神のお告げ》をブリンクしてライフを火力で焼き切られるのを防ぐことが可能です。ゲームを戦い続けるために《海の神のお告げ》をブリンクして手札を補充することもできます。
《否定の契約》は土地をタップしてターンを渡すようなコントロールデッキでは使うに値するカードのように感じます。《ヨーリオン》を唱えてたくさんブリンクしてから、対戦相手の行動を否定するのはとても楽しそうです。ブリンクした《海の神のお告げ》で引いてきたならなおのことでしょう。でも《否定の契約》はちょっとマナの支払いが重すぎる上に、超強力ではないのであまり多くはデッキに入れられません。
《墓掘りの檻》は《集合した中隊》や《ボーラスの城塞》、《上流階級のゴブリン、マクサス》に対して良い解答になります。このデッキはスタックに乗った呪文に対してあまり干渉しないので上に挙げたようなカードは相対的に強く感じるはずです。そういったカードが流行ればメインデッキに《墓掘りの檻》を入れる余地もあるはずです。
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》に「脱出」されるのも防ぐことができますが、《覆いを割く者、ナーセット》も《ウーロ》への対策になっていると言えるので、対処するカードはもともと入っているとも言えるかもしれません。
スゥルタイコントロール
次に見せるデッキはスタンダードからヒストリックに持ってこられるデッキです。今のスタンダードで使うべきデッキはスゥルタイコントロールだと思っています。スタンダードのスゥルタイコントロールに入っているカードは全て使える上に《思考囲い》や《成長のらせん》のように良質なカードが追加で使えます。
2 《沼》
1 《森》
4 《ゼイゴスのトライオーム》
4 《湿った墓》
3 《繁殖池》
2 《草むした墓》
4 《水没した地下墓地》
3 《内陸の湾港》
2 《森林の墓地》
1 《廃墟の地》
-土地 (28)- 3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
1 《スカラベの神》
-クリーチャー (4)-
この色の組み合わせには多くの強力なカードが存在しているので、1枚だけ入れているカードが多く存在しています。《上流階級のゴブリン、マクサス》や《ボーラスの城塞》のように試合を終わらせる力を持っている相手のカードを打ち消せるように、インスタントがもっとたくさん入ったデッキが使いたかったのです。《思考囲い》と《ウーロ》も強力なのでスゥルタイはよさそうです。
《漁る軟泥》は多くの墓地を利用したシナジーに対抗する手段となり得て、バーンに対してはライフを得る手段にもなります。単体でも強いカードなので墓地に完全に依存しているわけではないけど墓地を利用するデッキに対してサイドから入れても悪い気はしないのもいいですね。《墓掘りの檻》の方が特定のカードに対して良い答えになるのも事実ですが、自らの《ウーロ》と相性が悪いのはかなり重大な欠陥です。
総じてこのデッキにはたくさんの強力なカードが入っていて、ヒストリックの動向に対応する余地もあります。遅い構築のスゥルタイデッキがヒストリックで将来的に強いデッキになるのはありえることでしょう。
未来のヒストリックに期待すること
フォーマットに入れることができるカードなら積極的に追加されていると感じているので、将来的にヒストリックにもっと受動的なカードが多く追加されることを楽しみにしています。青白コントロールがもうちょっと通用するように《流刑への道》みたいなカードが欲しいですが、ヒストリックのデッキは重いカードも入っているデッキが多く、余分に得た土地も有効活用できるはずなので、本当に《流刑への道》がすごく強いのかはわかりません。
Amonkhet Invocationsに《対抗呪文》が入っていたのだからヒストリックに入れてくれたらうれしかったです。このフォーマットにもっと強い打ち消しを入れようとしてくれることを期待しています!
グレゴリー・オレンジ(Twitter)