Translated by Kohei Kido
(掲載日 2020/08/31)
はじめに
最後に モダンの禁止制限リストに変更 があったのはしばらく前のことです。《アーカムの天測儀》が7月13日にモダンを去ったときですね。《オパールのモックス》と《信仰無き物あさり》の禁止がモダンの伝統とフォーマット的特徴を損なってしまった事実を気に入らないと声高に文句をいうことがある私ですが、実のところまだまだモダンを楽しんでいます。メタ上のデッキのうち、私が労力をかけているのは《ウーロ》を使ったコントロールデッキです。
《アーカムの天測儀》禁止の影響
《アーカムの天測儀》が禁止される前、様々な形の青いコントロールデッキがモダンで一番強いアーキタイプだと広く考えられていましたが、禁止による弱体化は著しいものでした。禁止による影響は当時の私にとって自明ではありませんでしたので、新しいモダンをみんなが体験した今、その影響を軽くまとめてみましょう。
・《氷牙のコアトル》はかなり弱くなりました。2ターン目に接死の条件を達成することは絶対にできず、色マナ要求が厳しい状況下では基本氷雪土地をたくさんフェッチすることは簡単ではありません。禁止改定後もコアトルを使ってみて、確かに強い場面もあったのですが、一番の打撃となったのはコアトルがもはや序盤を生き残る手段にならないことです。ひどく弱いというわけではありませんが、《死者の原野》とは勝負になりません。
・同様にかつては《大魔導師の魔除け》が青いコントロールデッキに必ず入っているようなカードでしたが、もはやほとんど誰も使っていません。3色のデッキにとってこのカードを3ターン目に唱えるというのは絵空事になりました。1マナ以下のパーマネントを奪える効果が《僧院の速槍》や《ゴブリンの先達》に対して素晴らしいものでありながら、2枚ドローするモードを相手のターンの終わりに使えるのはミラーマッチを制する影響力を持っていたのです。
《大魔導師の魔除け》も《氷牙のコアトル》も、以前は遅いデッキと速いデッキ両方に対して効果が抜群のカードで、代替のカードはそれほどの柔軟性を発揮できません。つまりアグロを仮想敵にしてデッキを調整していくと、ミラーマッチで勝てなくなるのです。
・土地を出している間に受けるダメージがより多くなりました。頻繁にショックランドをフェッチします。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は以前のように心地よいライフの上乗せを与えてくれるのではなく、土地から受けたダメージを補填してくれるだけです。その違いでバーンや果敢との相性は大きく変わりました。スゥルタイとティムールの色の組み合わせは1ターン目にトライオームをフェッチすることで土地から受けるダメージを多少ごまかせますが、バントは大きな痛手を負ったのです。
・デッキに4枚の《廃墟の地》を入れるのはもはや容易ではありません。緑トロンは以前よりもかなりストレスを感じるマッチアップになりました。
・《沸騰》と《窒息》の影響を受けないように立ち回るのは以前よりも難しくなりました。《血染めの月》は無視できていたのですが、今ではかなりの脅威です。つまり赤緑のミッドレンジデッキ相手のマッチアップでは立場が悪くなっていて、《霊気の疾風》を多く入れることが要求されます。
禁止改定によって《ウーロ》を使うコントロールデッキが受けた影響を過小評価してはいけません。デッキ作りはかなり難しくなりました。
上記の影響に加えて、『基本セット2021』で《嵐翼の精体》が刷られて新しいタイプのイゼット果敢デッキが生まれました。精体が現在評価されているほどいいカードだと初見で見抜くのには失敗しましたが、点数で見たマナ・コストが5で、ファイレクシア・マナのカードのおかげで《稲妻》に対する耐性を持っていることを考えると、白以外の色で除去するのは難題です。多くのデッキの除去呪文一式の選択に大きな制約をもたらすのです。
様々な果敢デッキが現在のモダンで一番強いアーキタイプだと言ってしまうことも可能だと思います。完全に自信が持てているわけではありませんし、もしそうだとしても圧倒的な最強デッキではありませんが、でも玉座に座っている可能性が一番高そうな候補は果敢でしょう。
ティムール《荒野の再生》の浮上
ティムール《荒野の再生》デッキはMagic OnlineのLavaridgeというユーザーによって有名になりました。デッキを一度組んで実績を出し始めると、ほとんどデッキの中身を変えずに勝ち続けているのです。
1 《山》
1 《森》
1 《冠雪の島》
1 《冠雪の森》
1 《ケトリアのトライオーム》
2 《繁殖池》
1 《蒸気孔》
1 《踏み鳴らされる地》
2 《神秘の聖域》
4 《霧深い雨林》
4 《沸騰する小湖》
1 《樹木茂る山麓》
1 《ヴァントレス城》
2 《死者の原野》
1 《爆発域》
1 《廃墟の地》
-土地(27)- 1 《瞬唱の魔道士》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー(5)-
Lavaridgeがこのデッキリストで延々と残し続けている実績に異議を唱えるのは難しい試みですが、それでも挑戦したいと思います。
果敢デッキがメタゲーム上でここまで大きな存在になっているのに、その存在すら認識していないかのような構成のデッキリストを使うことはあまりしたくないことです。《稲妻》が《変異原性の成長》のせいで信頼できないことと、《差し戻し》と《成長のらせん》が後手の2ターン目のアクションとして数えられないというのがその理由になります。
《成長のらせん》は世間の評価がカードの本当の実力を上回っているカードだと感じます。スタンダードとは違い、2ターン目に《成長のらせん》を使うのはアグロデッキに対して意味のある行動として位置づけることはできません。後手であればなおさらです。
大きな影響力のある4マナのアクションのためにランプしているなら問題ないでしょう。《成長のらせん》から《荒野の再生》を置いて《嘘か真か》を使えれば果敢デッキに対してすら強力な上振れの引きです。でも手札で一番いい4マナの動きが《謎めいた命令》なのであったら、赤いデッキに対して《成長のらせん》を良い序盤の動きとして評価することはできず、他のカードが必要になります。
これがLavaridgeのティムール《荒野の再生》に対する私の最大の不満点です。果敢が環境に存在していることをまるで意識していないように見えるのです。《差し戻し》と《成長のらせん》が4枚入っていて《稲妻》が《変異原性の成長》に対して弱いので、ゲームが始まる前にすでに勝ち目がないということが起こります。
最高の《ウーロ》デッキを求めて
完璧な《ウーロ》デッキを作りたいと思っている私がティムールではない色の組み合わせを使う方に向かっているのは上記の理由からです。理論立てて、私がどうしようとしているのかを要約すると以下のようなことをやりたいと感じています。
対アグロデッキ ~駆け引きができる序盤になる確率を最大化~
赤いデッキに対して2ターン目に《成長のらせん》を唱えて、ゲームに敗北して、どこで間違えたのだろうかと悩むというプロセスに多くの時間を費やしました。同様に1マナのクリーチャーを「流刑」にしてゲームに出遅れることにも時間を取られたのです。
現在は《前兆の壁》が好きです。壁と《流刑への道》の組み合わせなら壁で序盤のクリーチャーを受け流しながら《流刑への道》をより本格的な脅威のために取っておくことができるので、除去でカバーする範囲を良好なものにしてくれます。
《差し戻し》はデッキに入れたくありません。《マナ漏出》と《呪文嵌め》の方が序盤の攻勢を防ぐにはいいはずです。
サイドボード後のことを考えると《ウーロ》もデッキに入れたくなります。長い間、モダンでデッキに入るウーロの枚数は3枚が定番でしたが、相手に干渉できる軽い呪文を多くサイドインしてプレインズウォーカーをサイドアウトするなら、《ウーロ》は早めに引きたいです。相手の脅威を《霊気の疾風》で遅らせ続けて、結果として自分のゲームプランを前進させられなかったから負けてしまうことがあまりに多いと感じました。4枚目の《ウーロ》はこの問題を解決するためのデッキに害が比較的少ない方法だと思います。
《死者の原野》と《時を解す者、テフェリー》 ~両カードを使用~
私は3マナのテフェリーが大好きです。《差し戻し》と《嘘か真か》はミラーで強いカードですが、《時を解す者、テフェリー》はそれに対して互角に渡り合えるようにするものなのです。テフェリーは青いデッキ相手のマッチアップでインスタントタイミングでの応酬を回避する手段になっていて、デッキの残りのカードをアグロのデッキに対して寄せていくことを可能にします。モダンで使われるテフェリーは青いデッキにとって挽回できないものです。スタンダードの青いデッキ同士のマッチアップよりもはるかに強い存在になっています。
《死者の原野》はロングゲームに強くなるための追加の手段で、今の環境ではあった方がいいものです。コアトルがないせいでプレインズウォーカーを守るのは少しばかり難しくなっているので、ゲームに勝利する手段は攻撃されないものと結びついていた方が好ましく感じます。
7種類の土地を出すのも基本氷雪土地と普通の基本土地、《大草原の川》が全てフェッチできるので比較的簡単です。動画配信中に引くと配信動画のチャットでは視聴者から笑われますが、1枚だけ入っている《海辺の城塞》にすらとても満足しています。バントのトライオームが実際にあったらどれだけ強いかを物語っていると言えるでしょう。
マナ基盤に歪みは少なめなので、《死者の原野》を使うデメリットは原野自体の土地としての性質です。無色のタップインランドはかなりひどいものですが、呪文の枠で入れていると考えてもいいでしょう。
《死者の原野》は2枚がデッキの最大許容枚数なので上手く引けないこともあります。3枚目の原野を入れることも試してみましたが、このデッキは序盤に2枚引くことを許容できるほど強くランプしません。《原始のタイタン》も試しました。《タイタン》が強い場面もあるのですが、多くの場合はマナ・コストが重すぎました。
《時を解す者、テフェリー》の忠誠度[+1]能力の活用と《神秘の聖域》による唱え直しによって、《約束の刻》の方が《タイタン》よりもシナジーが強いカードになっています。原野自体を増やすのでなければ《約束の刻》を増やすことはないでしょう。《廃墟の地》が入ったデッキに対して追加の《約束の刻》が手札で不要なカードになってしまうからです。
柔軟な勝利手段 ~サイドボード後は最適な手段を用意~
デッキの中にプレインズウォーカーを多少入れておきたいところですが、アグロデッキを相手にしたときはない方がいいのです。果敢デッキが私の《ドミナリアの英雄、テフェリー》を火力も絡めて除去してから、リソースが不足して負けてしまうことが何度もありました。《約束の刻》と《長老ガーガロス》の方がそういう場面では好ましいカードということになります。でも《死者の原野》を止めることができるデッキや《ウーロ》に上手く対処できるデッキを相手にしたときは《ドミナリアの英雄、テフェリー》がデッキに入っていることに価値があるのです。
だから多様性のある勝利手段を用意することで、サイドボード後にその試合に適した勝利手段以外を削減できる構築には満足しています。
デッキリスト
以上のことをふまえた上で、私が今使っているバントコントロールデッキはこんな感じです。
1 《森》
2 《冠雪の島》
1 《冠雪の平地》
1 《冠雪の森》
2 《繁殖池》
1 《神聖なる泉》
1 《寺院の庭》
1 《大草原の川》
2 《神秘の聖域》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《霧深い雨林》
1 《海辺の城塞》
1 《雲の宮殿、朧宮》
2 《廃墟の地》
2 《死者の原野》
-土地(28)- 3 《前兆の壁》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー(7)-
1 《呪文嵌め》
2 《霊気の疾風》
2 《成長のらせん》
2 《マナ漏出》
3 《否定の力》
3 《謎めいた命令》
1 《至高の評決》
1 《約束の刻》
3 《時を解す者、テフェリー》
1 《精神を刻む者、ジェイス》
2 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文(25)-
2 《疎外》
2 《夏の帳》
2 《ドビンの拒否権》
2 《機を見た援軍》
1 《長老ガーガロス》
1 《霊気の疾風》
1 《天界の粛清》
1 《夢を引き裂く者、アショク》
1 《覆いを割く者、ナーセット》
-サイドボード(15)-
果敢デッキを相手にしたとき、多くの場合はマナ・コストが重いプレインズウォーカーを抜いて、《成長のらせん》や《否定の力》、《時を解す者、テフェリー》を減らすか全部抜くこともあります。後手では《否定の力》が強くなる一方で《時を解す者、テフェリー》が弱くなります。《時を解す者、テフェリー》は先手で《嵐翼の精体》と対峙したときに一番強さを発揮するカードです。
ときどき果敢デッキが《ウーロ》に対して《外科的摘出》を使ってくることがあって、そういう時にはプレインズウォーカーの価値が増します。ラクドス果敢相手には《夏の帳》
が価値の高いカードです。
他の青いデッキを相手にしたときは、相手のデッキに何が含まれているかにサイドボーディングが依存しているのは当然です。クリーチャーの入っていない素直な青白コントロールを相手にしているときでさえもドローしても使い道がないカードが入っていないデッキで戦うことができます。多くのデッキに対しては《霊気の疾風》か《流刑への道》を使う意味があって、《至高の評決》や《前兆の壁》の枚数を減らせるはずですけどね。
みなさん健康には気を付けて。またお会いしましょう!