グルールで挑んだミシックインビテーショナル

Raphael Levy

Raphael Levy

Translated by Kohei Kido

原文はこちら
(掲載日 2020/9/16)

ミシックインビテーショナルを前に

9月10日にMTGアリーナ上でミシックインビテーショナルが開催された。大会フォーマットはヒストリックであり、ここでトップ16までに入れば10月に開催されるグランドファイナルへと招待されることになる。

私自身についていえば、プレイヤーズツアーファイナルでトップ8に入賞したことで、すでにグランドファイナルへの参加権利は獲得済だ。ほかのプレイヤーに比べてミシックインビテーショナルで得るものは少なかったが、それでもプレイヤーズツアーファイナルに続けてこの大会でも良い成績を残したかったのだ。

最適なデッキを探して

縫い師への供給者悲哀の徘徊者王神の贈り物

ヒストリックで最初に手に取ったのは黒単王神だった。デッキの感触は良く、初めの数日はこのデッキをメタゲームに合わせて調整することに時間を割いた。しかし、調整を始めてすぐにジャンドとゴブリンに対して相性が悪く、コントロールデッキとも上手く渡り合えていないということに気がついてしまった。

次はメタゲーム上で1番成功しているデッキ、ジャンドサクリファイスやゴブリン、スゥルタイなどを試してみることにした。

ボーラスの城塞集合した中隊上流階級のゴブリン、マクサス自然の怒りのタイタン、ウーロ

手短にいえば、どのデッキを使っても2試合連続で勝つことすらできなかった。ジャンドサクリファイスは《ボーラスの城塞》型でも《集合した中隊》型でも、スムーズに動けない印象を受けた。ゴブリンは《上流階級のゴブリン、マクサス》の誘発型能力が60%以上空振りしてしまった。これが不運によるものなのはわかっていたが、使い始めから私を裏切り続ける伝説のゴブリンに運命をゆだねる気にはなれなかった。

スゥルタイやほかのコントロールデッキの多くもしっくりこなかった。28枚以上もの土地が入ったデッキを使いたくはなかったし、コントロールデッキをマスターできるほどヒストリックを熟知する時間が残されているとは思えなかったのだ。

魔術師の稲妻精神石

デッキ探しは続き、バーン(《機を見た援軍》を連続して使われて放棄した)やエリオット・ブウサー/Eliott Boussaudの助けをかりた白茶単や赤茶単もあった。茶単は本当に好きだったが、残念なことに十分勝てるデッキではなかった

グルール、君に決めた!

デッキ登録の数日前なのに振り出しに戻ってしまった。ちょうどそのころ、ドミニク・アレンス/Dominic ArensMTGAZONE Historic Openでグルールを使って優勝したというニュースが流れてきた。《炎樹族の使者》が禁止される前からグルールはあまり好きなデッキではなかったが、試してみることにした。

何日かぶりに2連勝できたどころか、気がつけば15連勝を記録して、ほんの数時間で私のアカウントはミシックランクへ到達していた。決まりだね

珍しいことに、デッキのカードを入れかえようとするたびに違和感を覚えた。デッキのカード枚数は適切なものだったんだ。

非クリーチャー呪文

原初の力集合した中隊

まずはクリーチャー以外の呪文について話そう。当初は《原初の力》の強さについて確信が持てなかったが、《長老ガーガロス》と対峙したときに赤と緑には対処できるカードがほかにないということに気がついた。

デッキは《集合した中隊》を中心に構築されているため、《探索する獣》などの4マナ以上のクリーチャーは入っていない。クリーチャー以外の呪文数も制約を受けており、《エンバレスの宝剣》が2枚しか採用されていな理由もこのためだ。間違いなく強力なカードだが、デッキの上から6枚をみてクリーチャーを探すデッキなら多く入れることはできないからね。

1マナ域

生皮収集家

マナ域ごとのクリーチャー数も緻密な計算に基づいているようだ。1マナでクリーチャーを出せる呪文が10枚というのは、妥当な枚数だと感じた。《ラノワールのエルフ》が4枚なのは自明だけど、《生皮収集家》の枚数については疑っている人もいるだろう。

序盤に引くと強いものの、それ以降では思ったほど成長しないため、私はこれまで《生皮収集家》の大ファンだったことはない。また、サイズの大きいクリーチャーの代わりにこのエルフを引きすぎてしまうとデメリットになるので、このデッキにとっては2枚が適切なのだ。

2マナ域

義賊地揺すりのケンラ漁る軟泥

2マナ域に6枚の速攻クリーチャーがいるのも良かった。《義賊》《地揺すりのケンラ》は遅いデッキに対して圧力をかけられるカードで、正しく使えば追加のリソースをもたらしてくれる

ほかの2マナ域では《漁る軟泥》があげられる。アグロデッキに《漁る軟泥》を採用することで、デッキの構造を歪めずにメインボードから墓地を利用したデッキに対して強くなるため、多くのアグロデッキに欠けている柔軟性を持ち合わせている。

3マナ域

不屈の神ロナス運命の神、クローティスグルールの呪文砕き砕骨の巨人

デッキの構築に関する本当の問題は3マナ域のカードだろう。《不屈の神ロナス》《運命の神、クローティス》、2種類の「神」が1枚ずつ入っているのはとても好ましい。強さは申し分ないものの、ゲーム中に2枚引きたくないカードだからだ。

ライフを攻めるデッキならば、《グルールの呪文砕き》は採用するべきカードだ。《砕骨の巨人》《人目を引く詮索者》に対して使える除去であり、強靭な肉体を持つクリーチャーでもある。

恋煩いの野獣

《恋煩いの野獣》はどうだろう?10枚の1マナ域のカードについては触れたが(7~10枚目は「出来事」の《切なる想い》 だ)、3マナ5/5のスタッツは《集合した中隊》から出すクリーチャーとしてどうだろうか?まあ一長一短だろう。デカいのは良いことだ。《不屈の神ロナス》《エンバレスの宝剣》でダメージをねじこむのにはいいサイズだ。悪いところはいつでも攻撃できるわけではないことだ。

このカードの真価は1枚で2体のクリーチャーを生み出し、マナコストが偶数(トークン)と奇数(《野獣》)になっているところだ。《絶滅の契機》を想定するならば、この点は重要になる。

暴れ回るフェロキドン

《野獣》の代わりに入れるカードがあるとすれば、サイドボードで群を抜いて重要なカードになっている《暴れ回るフェロキドン》だろう。《フェロキドン》のマナコストはデッキの大部分と同様に奇数であり、《不屈の神ロナス》が動けるようになるパワーは持っていないが、ゴブリンと《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を使ったデッキに対してかなり有効だ。

デッキに変更を加えるとすればそこだろうね。ただ不幸なことに、大会前の数日間の調整ではその結論に至れなかった。小規模のテストグループのなかでグルールが良いと思っているのは自分だけだったからね。だから恐竜にはサイドボードにいてもらうことになった。

サイドボード

ショック削剥

サイドボードでは、ゴブリンを含む小型クリーチャーデッキに対応できるようにしたかった。何枚か足した除去呪文は、致命的な《上流階級のゴブリン、マクサス》をキャストできるまでの1、2ターンを稼ぐのに十分な働きをした。コントロールデッキに対してはもともと強いため、あまりサイドボードから入れるカードを用意する必要はない。

基本的にコントロールデッキに対してかなり強いデッキであり、ほかのデッキも問題ないマッチアップとなっていた。ただし、ゴブリンと《大釜の使い魔》が入ったジャンドには苦しむかもしれないと思っていた(《大釜の使い魔》が入っていないジャンドとの相性は最高だ)。

ミシックインビテーショナル

1日目

正直に言って、大会にあまりにも多くのゴブリンデッキが登録されているのを見て驚いた。私が最初に使ったときには良いデッキとは思わなかったので、なにか重大な見落としをしたのではないかと心配になったほどだ。

私の考えをもっと知りたい人のために、配信で話していた箇所をこちら(リンク先は英語)に抜き出しておいたので、参考にしてほしい。

ラウンド 対戦デッキ 結果
1回戦 ゴブリン(Danilo Schoen-Reynders) 2-1
2回戦 スゥルタイミッドレンジ(John Rolf) 1-2
3回戦 ゴブリン(Frederico Bastos) 2-0
4回戦 ゴブリン(Eric Froehlich) 0-2
5回戦 ゴブリン(Marcelino Freeman) 2-0
6回戦 スゥルタイミッドレンジ(Toni Ramis Pascual) 2-1
7回戦 ジャンド城塞(Patrick McGucken) 2-0

1日目が終わって5-2と納得のいく成績だった。総じて良いプレイングができたと思う(私はこれまでの大会では必ずしもそう感じていない)。睡眠リズムを変えたことが、私にとって有利に働いたのだろう。火曜日には午前6時に寝て午後3時に起き、水曜日もそれを繰り返した。これにより時差の関係でヨーロッパでは午後6時に始まる本戦には万全の体調で臨めた。

2回戦

大会では2回戦のジョン・ロルフ/John Rolfとの試合でのプレイングについて、納得できない人がいたと聞いている。

対戦後に試合内容について再度考えてはみたものの、それでもほかの選択肢はなかっただろう。変わらずプレイヤーを攻撃する。この場面に関しては「《世界を揺るがす者、ニッサ》を全力で落として、次のターンに《精霊龍、ウギン》が着地するのを防ぐべきだ」とコメントをくれた人もいた。

無情な行動精霊龍、ウギン集合した中隊

まず、相手が《精霊龍、ウギン》を1枚しか入れていないことを覚えておいてほしい。そのうえで、プレイヤーに全力でダメージを与えに行くプレイが正解ではない状況とは、相手がインスタント除去(《草むした墓》をショックインしていたので持っている気がしていた)と《精霊龍、ウギン》の両方を手札に持っていて、さらに私のデッキに残っている15枚の勝利手段(《砕骨の巨人》3枚、《義賊》4枚、《地揺すりのケンラ》2枚、《グルールの呪文砕き》2枚、そしておそらく勝てる《集合した中隊》4枚)を一切引かないという限定的な状況だけだ。

一方で、1ターンかけて《ニッサ》を倒そうとすると相手はより多くの除去を引くチャンスを得るし、もう一度《ニッサ》を出す可能性すらある。

精霊龍、ウギン

もしジョンの手札を知っていれば、トークンも攻撃させただろう。しかし、トークンがブロックされ、《漁る軟泥》《取り除き》で除去されて《絶滅の契機》を使われたら、私の盤面には何も残らない。

ただし、今考え直すとトークンで攻撃しなかったことは間違いだったのかもしれない。なにせジョンは《精霊龍、ウギン》1枚があればよかったのだから。

上記の件を除けば1日目はスムーズに勝ち進めた。4回戦には赤単ゴブリンを使うEfroに先手と後手からそれぞれ4ターンキルされて敗北した。6回戦でスゥルタイともう一度対戦できたのは嬉しかったし、1日で3試合もゴブリンデッキに勝てたのも良かった。

2日目

ラウンド 対戦デッキ 結果
8回戦 スゥルタイミッドレンジ(Guillaume Perbet) 2-0
9回戦 ゴブリン(Oliver Tiu) 2-1
10回戦 黒単王神(Matthew Nass) 1-2
11回戦 ゴブリン(Eric Hawkins) 2-1
12回戦 ゴブリン(Luca Magni) 1-2
13回戦 ティムールフラッシュ(Carlos Romao) 1-2
14回戦 ゴブリン(Brian Fulop) 0-2

11回戦まではリスクある初手をキープしても上手くいき、すべて思い通りに進行した。また、プレイするなかで興味深い状況も発生した。

9回戦

9回戦のこと。相手は赤単ゴブリンを使うオリバー・ティウ/Oliver Tiuが先行、1回マリガンした後の7枚は以下のものだった。キープかマリガンか?キープするなら何をデッキの底に送るか?

生皮収集家暴れ回るフェロキドン暴れ回るフェロキドン
削剥集合した中隊森森

私はキープして《集合した中隊》を底へ送った。すぐに《根縛りの岩山》を引き、最初の《スカークの探鉱者》を除去したあとに《暴れ回るフェロキドン》を2体展開して試合終了だ。

10回戦

10回戦のマット・ナス/Matt Nassとの2ゲーム目と3ゲーム目はカバレージでみることができる。

私にいわせれば、3ゲーム目はかなり暴力的な試合だね!

11回戦

11回戦、相手は赤単ゴブリンを使うエリック・ホーキンス/Eric Hawkins。3ゲーム目は私が先攻で最初の手札は次のとおりだった。

ラノワールのエルフ義賊グルールの呪文砕きグルールの呪文砕き
暴れ回るフェロキドンショック踏み鳴らされる地

キープして2連続で土地を引き、数ターン後に盤面はこうなっていた。

11回戦

さて、どうプレイしよう?

グルールの呪文砕き義賊

私は《グルールの呪文砕き》を出してすべてのクリーチャーで攻撃した。相手は《群衆の親分、クレンコ》《ラノワールのエルフ》をブロックしてライフが3まで減った。相手のターンに《ずる賢いゴブリン》をもう1枚出してライフは2に減り、《宝石の手の焼却者》をサイクリングして《暴れ回るフェロキドン》を除去。続く私のターンで、《義賊》を出して全クリーチャーで攻撃すれば、ライフをぴったり削りきって勝利だ。

しかし、そこからは今までのように順調にいかなかった。デッキはすでに十分すぎるほどいい引きをさせてくれていた。マナフラッドをして、《集合した中隊》は空振り、ゴブリンが完璧な引きをするのを見せつけられて、少しがっかりする結果に終わった。

8-6で36位。大会の結果は確かにがっかりするようなものだったけど、この大会で得るものは多かった。元々グルールは活躍すると期待されていたアーキタイプではなかった。だからこそ予想外のデッキを持ち込み、上位で争えていたことに満足感があった

互角か不利と思われたデッキに対して結果が6-3だったのも結構な収穫だ。主な収穫はサイドボードの見極めと、戦い方が理解できたことにある。

戦いは続く

今もう一度このデッキを使ならば、おそらくはこのような構成にするだろう。

《恋煩いの野獣》《暴れ回るフェロキドン》に入れかえると、ゴブリンと《自然の怒りのタイタン、ウーロ》に対する相性がかなり良くなる。この大会ほどゴブリンが多い状況が続くのかは自信がないが、対策はしておいたほうがいい。

レッドキャップの乱闘

サイドボードにも枠が空くので《群衆の親分、クレンコ》《夜群れの伏兵》に効く《レッドキャップの乱闘》を採用できる。13回戦で当たったカルロス・ロマオ/Carlos Romaoのティムールフラッシュに対して必要なカードだった。

サイドボードガイドについては《暴れ回るフェロキドン》がメインに入っているのでかなりわかりやすい。クリーチャーデッキと対戦するときは、必要な除去を入れて試合に影響しないクリーチャーを抜こう。例えば、ゴブリンと対戦するときは「神」と《地揺すりのケンラ》を抜き、ほかの2マナのカード(《漁る軟泥》《義賊》)も数枚抜こう。試合の鍵をにぎるゴブリン(《スカークの探鉱者》《人目を引く詮索者》とロードクリーチャー)を除去しながら3マナ域のクリーチャーで相手を攻め、《暴れ回るフェロキドン》で試合にフタをするのがゲームプランになる。

レッドキャップの乱闘ショック削剥丸焼き

注意すべきはデッキが薄まり過ぎると《集合した中隊》が失敗しやすくなってしまうから、除去を5~6枚以上デッキに追加してはいけないということだ。


まもなく『ゼンディカーの夜明け』が発売してメタゲームが変化するから、落ち着いたころに最新版のデッキリストを提供しよう。

みんな応援ありがとう!グランドファイナルでまた会おう!

ラファエル・レヴィ (Twitter / Twitch)

この記事内で掲載されたカード

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
Raphael Levy

Raphael Levy ラファエル・レヴィはフランスの古豪。初のプロツアー参戦は1997年で、そこから2017年のプロツアー『イクサラン』まで、91回連続でプロツアーに出場し続けたという驚異の経歴の持ち主だ。そして、2019年のミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019にて、歴史上で初めて100回のプロツアーに参戦したプレイヤーとなった。これまでに築き上げてきた実績は数知れず、2019年2月の時点でプロツアートップ8が3回、グランプリトップ8が23回(優勝6回)、その他にもワールド・マジック・カップ2013ではキャプテンとしてチームを優勝に導くなど、数々の輝かしい成績を残している。生涯獲得プロポイントは750点を超えており、2006年にはプロツアー殿堂にも選出されている。 Raphael Levyの記事はこちら