USA Legacy Express vol.171 -環境へと迫るアンフェアの影-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさんこんにちは。

年末に開催されるビッグイベント、The Last Sun 2020の予選が各地で開催されており、本戦フォーマットであるレガシーは今もっとも熱いフォーマットの1つです。

さて、今回の連載ではLegacy Challengeの結果をみていきたいと思います。

Legacy Challenge #12203382
安定のTemur Delver

2020年9月6日

  • 1位 Temur Delver
  • 2位 Elves
  • 3位 Snowko
  • 4位 Temur Delver
  • 5位 Cloudpost
  • 6位 Karn Echo
  • 7位 Hogaak
  • 8位 Snowko

トップ8のデッキリストはこちら

現環境で安定した成績を残し続けているTemur DelverとSnowkoは、今大会でもトップ8にそれぞれ2名ずつ入賞者を出しました。『Jumpstart』からの新戦力である《アロサウルス飼い》を得たElvesが準優勝しましたが、最近の大会では部族系デッキもコンスタントに入賞しています。

しかし、最後まで勝ち残ったのは大本命であるTemur Delverでした。

デッキ紹介

Temur Delver

MOのレガシーイベントでコンスタントに結果を残し続けている配信者SILVIAWATARUは、今大会でTemur Delverを使用し、見事優勝となりました。

《タルモゴイフ》の代わりに《戦慄衆の秘儀術師》をフル採用したカードアドバンテージ重視のバージョンで、アメリカのレガシープレイヤーRich Caliも同様のリストでMana Traders-Seriesを優勝していました。

☆注目ポイント

タルモゴイフ戦慄衆の秘儀術師

これまではミラーマッチでサイズが活きる《タルモゴイフ》が2~3枚採用されたリストが定番となっていましたが、最近ではカードアドバンテージを稼ぎ出す《戦慄衆の秘儀術師》をフル採用したリストをよくみかけるようになってきました。《戦慄衆の秘儀術師》《タルモゴイフ》よりも優先されるようになった詳しい理由については、Rich Cali氏が自身の記事で詳しい説明をされています。

わめき騒ぐマンドリル

《わめき騒ぐマンドリル》はTemur Delverの緑のクリーチャーとしてすっかり定着しています。墓地にカードが溜まる中盤以降は1マナでキャストできるようになるので《不毛の大地》を使うデッキに強く、同一ターンに複数のアクションを取ることを可能にしてくれるクリーチャーです。

Mind Harness水没

サイドボードの《精神支配》《タルモゴイフ》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》など、火力に耐性がある高タフネスクリーチャー対策として面白いチョイスです。Temur Delverは現環境のトップメタであり、ミラーマッチも多いので《水没》が3枚採用されています。ミラーマッチ以外でもDark Depthsのマリット・レイジ・トークン対策にもなるため、必須カードとなります。

Legacy Champs #12206228/LEGACY CHAMP QUAL
Delverに対する厳しい包囲網、コンボデッキが予選を制する

2020年9月12日

  • 1位 TES
  • 2位 Esper Vial
  • 3位 Hogaak
  • 4位 Hogaak
  • 5位 Snowko
  • 6位 Hogaak
  • 7位 Abzan Depths
  • 8位 Temur Delver

トップ8のデッキリストはこちら

『ゼンディカーの夜明け』チャンピオンシップの予選イベントが先週末にMOで開催されました。Temur Delverはプレイオフに1名勝ち残ったものの、上位にはHogaak、SnowkoといったDelver系にとって厳しいマッチアップが多く、これ以上勝ち進むのは難しかったようです。

Delver系が対策されSnowkoが勝ち残ったことでコンボにとって有利なフィールドとなり、最後の最後に優勝を収めたのはTESでした。

デッキ紹介

Hogaak

今大会で3名のプレイオフ入賞者を出したHogaakは爆発力と粘り強さを兼ね揃え、《縫い師への供給者》のようにキーカードが軽いため、《不毛の大地》によるマナ否定とソフトカウンターの効果が薄くなっています。クリーチャーが横に並ぶので単体除去も機能しにくく、Delver系が苦手とするタイプのデッキです。

軸をずらして墓地をリソースとしているため、コントロールであるSnowkoに対しても有利となります。トップメタのTemur DelverやSnowkoが主力とする《王冠泥棒、オーコ》を無視できる構成となっていたことが今回の勝因です。

☆注目ポイント

むかしむかしHedron Crab霧深い雨林

《面晶体のカニ》が使えることはSultaiバージョンを使う上でのメリットとなります。フェッチランドも含めて土地を19枚採用しているので、このクリーチャーが着地すれば高速で墓地を肥やすことができます。そして《むかしむかし》を採用することで、1ターン目にキャストできる確率を上げています。

入念な研究甦る死滅都市、ホガークAltar of Dementia

《入念な研究》《信仰無き物あさり》のように「フラッシュバック」がなく性能面では劣りますが、青を使うことで《面晶体のカニ》もセットで採用できるため、問題になることはなさそうです。

Delver系は何度も復活してくる《甦る死滅都市、ホガーク》に対抗する手段が乏しく、ひとたび《狂気の祭壇》とのコンボが回り始めれば、多くのデッキは勝つことが困難になります。

虚空の力線活性の力暗殺者の戦利品突然の衰微

サイドボードにはミラーマッチ用に《虚空の力線》が4枚積まれています。相手の墓地対策エンチャント/アーティファクトを効率よく処理するために、《活性の力》もフルに採用されています。《暗殺者の戦利品》《突然の衰微》は手軽なパーマネント対策であり、Delver系のクロックを除去する手段としても重宝します。

Snowko

《王冠泥棒、オーコ》を使った青ベースのコントロールデッキであり、《アーカムの天測儀》による安定したマナ基盤と各色の優秀な除去がこのデッキの特徴です。《紅蓮破》のために赤をタッチしたバージョンもありますが、今大会で入賞したのはSultaiに《剣を鍬に》をタッチしたものでした。

《アーカムの天測儀》と氷雪基本地形の組み合わせは色マナに不自由しなくなるだけではなく、《不毛の大地》を使ったマナ否定戦略にも耐性があり、その結果《目くらまし》《呪文貫き》といったソフトカウンターの効果が薄くなります。以上の理由から軽量クリーチャーとマナ否定戦略、ソフトカウンターを有するDelver系に強く、キャントリップも多くデッキの動きが安定しているため、SnowkoはDelver系と並んで現環境のトップに位置しています。

☆注目ポイント

Arcum's Astrolabe冠雪の島

《アーカムの天測儀》と氷雪基本地形のおかげで《突然の衰微》《剣を鍬に》《真冬》など多くのカードを採用できるので、環境に存在するさまざまな脅威に的確に対応することができます。対応力の高さこそ、このデッキの強みなのです。

Uro, Titan of Nature's Wrath

スタンダード~モダンまであらゆる構築フォーマットで活躍している《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は、レガシーのコントロールでもフィニッシャーとなっています。フェッチランドと軽いドロースペル、除去を多用するため墓地にカードが溜まりやすく「脱出」も容易です。ライフゲインとマナ加速はDelver系にとっては悪夢そのもので、6/6というサイズは火力1枚では除去ができず、「脱出」できればほぼ勝負が決まってしまいます

Plague EngineerMindbreak Trap

クロックが遅くコンボとのマッチアップは不利なため、サイドには追加のコンボ対策が採用されています。《疫病を仕組むもの》はクリーチャーを使ったデッキに対して効果的カードですが、最近増加傾向にあるElvesとのマッチアップも意識していたようで3枚と多めに採られています。

《精神壊しの罠》対象を『打ち消す』のではなく『追放する』ため、コンボデッキに多い《夏の帳》で防ぐことができず、評価されているスペルです。

Legacy Challenge #12206255
マリット・レイジがDelverを抑えてトップに

2020年9月12日

  • 1位 Turbo Depths
  • 2位 Temur Delver
  • 3位 Cloudpost
  • 4位 UB Ninja
  • 5位 Temur Delver
  • 6位 Hogaak
  • 7位 Hogaak
  • 8位 Omni-tell

トップ8のデッキリストはこちら

Temur Delverが安定した成績を残すなか、今大会ではHogaakなどアンチDelverも結果を残していました。対策が激しいなかでも安定して上位に入るTemur Delverはその地力の高さが伺えます。

優勝したTurbo Depthsですが、Delver系がマリッット・レイジ・トークンを対処できる手段が限られているため、有力なチョイスとなり得ます。

デッキ紹介

Turbo Depths

演劇の舞台暗黒の深部吸血鬼の呪詛術士

《演劇の舞台》(《吸血鬼の呪詛術士》)+《暗黒の深部》のコンボによって、20/20のマリット・レイジ・トークンを可能な限り早いターンに生成して勝負を決めます。

各種ハンデス、《闇の腹心》《森の知恵》といったカードアドバンテージ源、万能除去の《突然の衰微》が採用されているため、コンボによるプレッシャーをかけながらミッドレンジとして振舞えることがこの手のデッキの強みです。

☆注目ポイント

Elvish Reclaimer

《エルフの開墾者》はコンボパーツをサーチするだけではなく、マリット・レイジ・トークンに対する有力な解答とされていた布告系除去用の避雷針にもなります。構造上、土地が墓地に溜まりやすいためタフネスが4になりやすく、《稲妻》に耐性があるのも強みです。

ボジューカの沼輪作セジーリのステップ

サーチスペルの《輪作》はインスタントタイミングでキャストできるので、《不毛の大地》に対する解答となります。《演劇の舞台》《暗黒の深部》をサーチする以外にも、墓地対策の《ボジューカの沼》マリット・レイジ・トークンを《剣を鍬に》から守ったり攻撃を通すための《セジーリのステップ》《カラカス》を処理できる《不毛の大地》など状況に応じた選択肢があります。

真髄の針

《不毛の大地》《演劇の舞台》+《暗黒の深部》のコンボに対する明確なアンサーになりますが、《真髄の針》で完全に無力化することができます。

総括

甦る死滅都市、ホガーク暗黒の深部

Delver系とSnowkoに代表される《王冠泥棒、オーコ》を使ったデッキが安定した成績を残すなか、HogaakやTurbo Depthsなどフェアデッキの対策を掻いくぐる高速デッキも上位に多くみられます。特にクリーチャーを素早く並べることで単体除去の効果が薄く、Delverも含めた青いデッキに強いため、現環境ではHogaakは良い立ち位置にいます

確かに対抗馬も存在していますが、それでも《王冠泥棒、オーコ》という存在は脅威となっています。単体でアドバンテージが稼ぐことができ、対処できる脅威は広範囲に渡り、ほかのフォーマットと同様に多様性の面からみても、現在のレガシー環境において懸念材料である可能性は否定できません。

しかし、新セット『ゼンディカーの夜明け』の発売が控えており、ほかのデッキパワーも高いレガシーでは、もうしばらくは様子見することになりそうです。

以上、USA Legacy Express vol.171でした。

それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!

この記事内で掲載されたカード

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら