ウーロ亡きあとのスタンダード

Petr Sochurek

Translated by Kohei Kido

原文はこちら
(掲載日 2020/10/05)

はじめに

みなさん、こんにちは!新セットで収録された強力すぎるカードたち、特に名前を挙げるなら《水蓮のコブラ》《創造の座、オムナス》のせいで世界中のマジックプレイヤーにとって悲しむべき事態が訪れてしまいました。

創造の座、オムナス水蓮のコブラ

《水蓮のコブラ》は過去にもスタンダードに存在していたカードで、確かにそのときも強力ではありましたが、今の環境での強さには遠く及ばないものでした。《水蓮のコブラ》はともに使うカードが強くなければ問題ないカードです。除去するのは簡単で、マナを伸ばしたとしても強力な重い呪文が欠けていることもあり得ます。ただ今はそうではないのです。

すでに多色のランプデッキに支配されていた環境《オムナス》《水蓮のコブラ》を追加するという判断をウィザード・オブ・ザ・コーストが下したという事実は簡単には理解できません。マジックを楽しいゲームにする以外の動機がウィザード・オブ・ザ・コーストの側にはあるのかもしれないと想像してしまいます。数年前なら納得できたものの、現在ではこういった事態を防ぐために元プロプレイヤーが多く所属するテストチームも存在しているはずで、それなのに近年は防ぐことができていません。(こんにちは!《オーコ》くん!)

《ウーロ》の禁止について

まあ…こうなってしまっては何か禁止されなくてはいけなくなりました。直近の大会の結果は極端なもので人々は多くの不満を抱えていて、その期間にMTGアリーナを遊んでいるプレイヤーの数も早いペースで減っていたと推測しています。こういうケースでよくある問題として、ウィザード・オブ・ザ・コーストは発売して日の浅いカードを禁止することをためらいます。出たばかりのカードを禁止するのはとても恥ずかしいし、悪い注目を浴びてしまいます。だからできる範囲でそれを回避するように行動します。

自然の怒りのタイタン、ウーロ

《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が禁止されるべきであることに異論はありません。もっと早く禁止されてもよかったくらいです。どのようなデッキで《ウーロ》の弱点を突こうとしても、その芽を摘んでしまうので抑圧的になり過ぎました。序盤から仕掛けて突破するのも困難です。1ゲーム目ではアグロ特化の戦略もうまくいくかもしれませんが、2ゲーム目以降にこちらに干渉するカードをサイドボードから増やした《ウーロ》系ミッドレンジデッキを突破するのはかなり厳しくなります。

1:1交換を繰り返すコントロールデッキでリソース勝ちするのも困難です。相手の《ウーロ》は墓地から「脱出」し続けて、そのうちロングゲームとなった試合に《ウーロ》を使っていない側が不可避的に敗北するのです。《塵へのしがみつき》のようなピンポイントの対策カードもあることにはありましたが、要点は伝わったことでしょう。

ウーロが禁止されてうれしいかと聞かれればもちろんうれしいです。でもそれによって何かが変わるかというと変わらないでしょう。《ウーロ》がいる限り健全な環境にならなかったことは確かですが、《オムナス》のようなカードがある限りあまり事態は好転しません。

「神様!どうか…どうか…どうかこのカードがプレイアブルでありますように!お願いします!!!」

上のツイートは僕が《オムナス》を『ゼンディカーの夜明け』が出る前に初めて見たときのものです。僕に願いを叶える力があるわけではありませんが、僕の願いが叶ってしまった結果としてマジックでつらい思いをした方全員にお詫び申し上げたいです。一般論としては僕はパワーカードを詰め込んだ欲張った多色デッキが好きなのですが、一線級の場で戦おうとするプレイヤー全員が《オムナス》を使わなければいけないような状態が好きなわけではありません。

どうして《オムナス》はここまで強かったのか

創造の座、オムナス

《オムナス》の強さについて知らない人はすでにあまりいないとは思いますが、それでもこのカードがどうして強すぎるのかについて一度話したいと思います。このカードは初見ではそこまで強そうに思えないのが問題でした。少なくとも僕はそう思っていませんでした。4色のカードで力を発揮するには条件を満たさなければならないように見えます。僕は「うーん…クールなカードには見えるし、僕みたいな欲張りなプレイヤーや他の一部の人が好きなカードかもしれないね」というようなことを考えていました。

寓話の小道

でも僕は間違っていました。緑のカードに支配された現代マジックでは4色であることはあまり問題にならない上に、現在のスタンダードには《寓話の小道》という相性がいいカードも存在しています。《進化する未開地》のことは脇に置いたとしてもそうです。《寓話の小道》《オムナス》を唱えるのに足りない色を出せるようにするだけではありません。唱えるために使った4マナ全てを即座に取り戻すために使うこともできます。《オムナス》自体にもドローがついていることも合わさって問題のあるカードの完成です。

レッドキャップの乱闘

《オムナス》には《レッドキャップの乱闘》を使えばいいと思っていたのに、相手は手札もマナも実質的に消費していないと気付いてしまったとTwitterで誰かが言っていました。でもその損している手段が最良の選択肢になりうる状況になっています。《オムナス》がパイオニアやモダンでも存在感を示していることを考えると、スタンダードは半壊状態で、できる抵抗はごくわずかです。まだ納得していない人がいたらプロがTwitterに投稿していたこれらの4ターン目の盤面を見てください。

@OndrejStrasky のTwitterより引用

@fffreakmtg のTwitterより引用

《ウーロ》の禁止によってデッキが大きな被害を受けなかったとは言いません。被害は受けたのに何も変わらないのです。他のデッキよりずば抜けて強いのは確かで、新しい最適なデッキリストが見つかるまでは少しだけ隙があるかもしれません。僕が見た範囲では人々は《オムナス》をアドベンチャーデッキの中で使う方向に向かっているようですが、他にもまだ十分試されていないデッキタイプがあるはずです。

4色アドベンチャー

幸運のクローバーエッジウォールの亭主願いのフェイ

《オムナス》を使わずに《オムナス》に勝ちたい人へ

すでに述べたように《オムナス》を使うデッキが最適化されるまでは少し隙があります。過去にこういった状況になったときにもそうでした。メタが固まらないと《オムナス》を使うプレイヤーも何に対処すればいいのかわかりません。

でも適当な慰めは言いたくありません。環境に存在する《オムナス》を使わないデッキが3つほどに固まれば、《オムナス》デッキに対抗するのは難しくなります。《オムナス》側のデッキがサイドボード後に残りの3つほどのデッキに対処できるような構成にできるようになるからです。そうなるとより強力なカードを使用している側(《オムナス》側)が頂点に君臨します。まだそこまでメタが進行していないだけなのです。

もし《オムナス》に対して対抗するなら打ち消すアプローチが必要になると思います。《オムナス》の唯一の弱点とも言えないこともない要素は多少マナコストが重くて打ち消されたら何も生まないところです。この方法で対抗しようとしているディミーアカラーがベースのデッキがいくつかあります。

ディミーアローグ

盗賊ギルドの処罰者空飛ぶ思考盗みトリックスター、ザレス・サン

上の条件からまず連想するのはディミーアローグです。「ならず者」デッキはそこまで多くの打ち消し呪文を使っていないかもしれませんが、強力なデッキで《ウーロ》がいなくなった今ならば対抗できるのかもしれません。《オムナス》デッキと「ならず者」デッキの強さは以前より近くなっていて、「ならず者」デッキは《ウーロ》を弱点としていたので、《オムナス》に対抗できるデッキの候補にはなると思います。

グリクシスコントロール

死の飢えのタイタン、クロクササメ台風悪夢の詩神、アショク

《ウーロ》がいなくなった今、打ち消し呪文を満載して《オムナス》に対抗できるようにしたコントロールデッキで長いゲームを制そうとするのは可能になりそうです。Crokeyzが作ったこのデッキリストは好きです。

相手の脅威に対処しながら要所で2:1交換をしてそれによって勝つようなデッキが、最後にスタンダードで競技レベルのデッキになっていたのはしばらく前のことで、そのときが来たのではないかという期待感があります。(先に述べたように僕は中長期的に《オムナス》デッキに勝ち続けられると思っているわけではなくて、《オムナス》デッキがメタに合わせて調整するのにも時間はかからないでしょう。でも今を楽しもうとすることはできます。

まとめ

今日のところはこれで終わりです!いくつか失敗も起きていますが、僕はそれでもマジックが全身全霊で好きで、(みなさんもそうだといいですが)最大限このゲームを楽しもうと思っています! もし僕の記事を楽しんでくれたら、TwitterInstagramで僕をフォローすればもっと楽しめますよ!

最後まで読んでくれてありがとう!

ペトル・ソフーレク(Twitter / Instagram)

この記事内で掲載されたカード

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Petr Sochurek 緻密な環境分析と正確無比なプレイングに裏付けられた実力は、"ヨーロッパで3本の指に入る"と称される新鋭。 【グランプリ・パリ2016】では、「グリクシスコントロール」を操り見事に優勝を勝ち取る。 世界が注目する、トッププレイヤーの1人。 Petr Sochurekの記事はこちら