Translated by Kohei Kido
(掲載日 2020/10/19)
はじめに
Twitterでザン・サイード/Zan Syedがツイートしていたサヒーリコンボのデッキリストを先週末見かけたので、デッキをコピーしてMagic Online(以下MO)のModern Challenge(以下Challenge)で優勝しました。配信の録画もしてありますし、最後の数試合はYoutubeにも上げました!いくつかのカードについて、その採用理由を話します。
1 《島》
1 《山》
1 《森》
1 《ケトリアのトライオーム》
1 《ラウグリンのトライオーム》
1 《繁殖池》
1 《神聖なる泉》
1 《踏み鳴らされる地》
1 《寺院の庭》
4 《霧深い雨林》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《樹木茂る山麓》
1 《虹色の眺望》
1 《地平線の梢》
-土地(24)- 2 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
4 《守護フェリダー》
3 《創造の座、オムナス》
-クリーチャー(9)-
コンボ自体にはなじみのあるプレイヤーも多いでしょう。《守護フェリダー》が《サヒーリ・ライ》をブリンクして、《サヒーリ・ライ》が《守護フェリダー》をコピーして、それをたくさん繰り返して攻撃して勝ちです。モダンでこのコンボが大活躍したことはなかったのですが、採用できる新カードの追加やデッキ自体の進化が起こっています。
採用カードとその理由
《創造の座、オムナス》
「コモン」センス(常識)を超えて強い性能の神話レア《創造の座、オムナス》(すでにスタンダードでは禁止されています!)はモダンにもうまく適応しています。マナを生みだす能力を誘発させることができるフェッチランドも存在するので、爆発的なターンを作るのは簡単です。
《オムナス》はプレインズウォーカーのような機能のカードでありながら《稲妻》とクリーチャーによる攻撃に対して抵抗力のある勝利手段として、コントロールデッキの中にはすでに定着しています。
《オムナス》は《謎めいた命令》と《神秘の聖域》を組み合わせるようなデッキで採用しても間違いなく強いカードです。でもインスタントタイミングで相手に対処するデッキよりも、強力なソーサリータイミングのカードでデッキを満たすようなデッキの方が《オムナス》の力を引き出せるという可能性があるのではないでしょうか?
デッキに無理な負担はかからず、突然相手に敗北を強制できる第二の勝利手段ともなります。現在モダンでティアー3の位置に甘んじているサヒーリコンボデッキの立ち位置を押し上げる要素が存在していると言えそうです。
《時を解す者、テフェリー》
新カード《オムナス》よりも大きいのは、コンボデッキの枠組みで《時を解す者、テフェリー》を4枚使えることだと思います。《時を解す者、テフェリー》の常在型能力は守るに値する無限コンボがデッキに存在しているときにその価値が高まります。
《守護フェリダー》《ニッサの誓い》《時を解す者、テフェリー》が入っているこのデッキは、ブロックも含めて相手に対して干渉する力が少しあって、カードを引きながらコンボを始動することができます。《時を解す者、テフェリー》はコントロールデッキと除去呪文に対する最高の対処手段でもあります。
《楽園の拡散》
最近こうツイートしました。
utopia sprawl is the new mox opal
— Piotr 'kanister' Głogowski (@kanister_mtg) October 13, 2020
「《楽園の拡散》こそが新時代の《オパールのモックス》だ。」
私は半分冗談で言っているだけでした。《オパールのモックス》が禁止されたので、おそらく《楽園の拡散》がモダンに残された最強のマナ加速です。《溶岩の投げ矢》と《レンと六番》が環境に存在していることで《貴族の教主》は広く使われるという状況になっていません。
《楽園の拡散》はクリーチャーに対する全ての除去が当然命中しないので簡単に干渉されない上に2ターン目からは唱えるのに使った1マナがそのターンのうちに取り戻せます。赤緑ポンザの成功は《楽園の拡散》の強さを証明していて、マナ加速として様々なデッキで実験的に使うプレイヤーが増えています。
将来のモダンで《楽園の拡散》を見る機会は増えると思っていて、《サヒーリ・ライ》を使うこのコンボは《楽園の拡散》を使うのに適しているように思えます。3ターン目にコンボによる勝利を達成することも可能になり、その速度になるとどんな相手に対しても速度勝負をしかけられます。
《サヒーリ・ライ》《守護フェリダー》
他のカードについて語る前に2枚のコンボパーツの話をすると、《サヒーリ・ライ》は弱いカードです。『ドミナリア』でルールが変わって以来、他のプレインズウォーカーにダメージを与えることすらできなくなり、コンボパーツとしての役割以外にはあまり機能を持てていません。
《ウーロ》や《オムナス》をコピーできることもときにはありますが、この2枚は伝説のクリーチャーなのでカードを引けるだけです。《サヒーリ・ライ》の忠誠度-2能力をより活用したいなら、戦場に出たときに能力が誘発するクリーチャーの数を増やすという方法は存在していて、その中で最良の候補はおそらく《花の壁》でしょう。《アーカムの天測儀》があれば完璧だったのですが、残念ながらもはや使用できません。
《サヒーリ・ライ》と違って《守護フェリダー》は《ニッサの誓い》か《時を解す者、テフェリー》をブリンクすればいいので、有効牌に変えるのが比較的簡単です。
《差し戻し》
何枚かデッキに入れている《差し戻し》には手ごたえがあります。相手に少しばかり干渉しつつ自分のコンボ成立に近づくカードですが、効果の強さはターンが経つにつれ減退していきます。デッキの中に他のインスタントタイミングでマナを使うカードが入っていないので、相手が《差し戻し》の影響を受けない立ち回りをすると、後手では本当に弱いカードとなってしまうことがあります。
デッキにたくさん入れたいとは思わないでしょうし、メインデッキに入れるのが適切な相手への干渉手段なのかもわかっていませんが、モダンで一番強いのがコントロールデッキの今、クリーチャーに対する除去を増やすよりは相手の行動にスタックして干渉する何らかの手段の方がメリットは大きいでしょう。
《レンと六番》
《レンと六番》は興味深いカードです。「デザインミス」のカードだと批判されることも多いカードですが、モダンからタフネス1のクリーチャーを全て押し出した今となっては、あまり活躍できない試合も発生するようになり、ターンが進行するに従って強さも減退していきます。複数枚引いた場合や少しでもマナフラッドした場合にかなり弱いので、デッキに4枚入れるのは難しいです。
特にこのデッキは典型的な4色コントロールデッキほど相手に干渉しないので《レンと六番》が奥義を使えるようになるまで守り切ることができません。「サイクリング」付きの土地や《地平線の梢》でカードアドバンテージを得ることや、《オムナス》のためにフェッチランドを供給することを通して、ゲームで圧倒的なリードを得ることも可能なのでまだまだデッキに入るのは確実なカードですが、神聖不可侵の存在というほどではなくなっています。
デッキに入れられるもっといいカードを思いつけたとしたら、《レンと六番》を減らすことや完全にデッキから抜いてしまうことも可能性としては排除していません。
マナ基盤
マナ基盤は十分機能していますが、4色のデッキで《楽園の拡散》も使っていて、《オムナス》と《レンと六番》がフェッチランドをたくさん必要としているため、少し無理をしているのは確かです。よりよい土地構成にできるはずだと信じています。
《オムナス》と《レンと六番》のためにはたくさんのフェッチランドが必要で、理想としては全てか少なくともほとんど全てのフェッチランドが基本土地の《森》を持ってこられるべきです。マリガンをしなければならなくなる確率を下げるためには、森ではない土地はデッキにあまり入っていないほうが好ましいです。
ショックランドのうち《聖なる鋳造所》と《蒸気孔》はデッキに入っていません。両方のトライオームが青と赤を含んでいるので、《蒸気孔》を入れると過剰です。《聖なる鋳造所》は「森」ではないと同時にデッキで最も必要性の低い色2色の組み合わせです。赤がデッキで一番必要性の低い色で、《ニッサの誓い》もプレインズウォーカーの赤いマナ・コストを支払えるようにしてくれます。
《楽園の拡散》を1ターン目に使えるなら、《森》をフェッチしてエンチャントしたいことが多いです。手札を確認して必要な色を宣言します。
2ターン目の行動が《レンと六番》とタップインランドの組み合わせになるなら赤です。3マナのプレインズウォーカーをデッキの上から引いてきたときのことを考えるなら青になります。《ウーロ》を活用する方向に向かいたいならそれも青です。全ては手札次第なのです。
4マナに届くターンには《オムナス》のマナ・コストを支払えるような状態にはなっているべきだということは覚えておきましょう。
MOのChallengeで使ったデッキリストには《森》が1枚しか入っていませんでしたが、2枚入れることをおすすめします。《楽園の拡散》は強いのですが、土地破壊に対して脆弱なところがあり、1枚の土地に複数枚エンチャントするとますます弱くなります。ショックランドにエンチャントすることもできますが、それは《森》に複数枚重ねるよりも危険です。
大会で私のデッキは《謎めいた命令》でプレインズウォーカーを打ち消されたついでに複数枚の《楽園の拡散》をエンチャントした土地をバウンスするというような行動の標的となっていて、これをやられてしまうとかなり不利になります。サイドボード後の《浄化の野火》も同様に危険です。《レンと六番》でフェッチしてこられる2枚目の《森》があった方がいいのです。
最新のデッキリスト
上記の考察にしたがって、今後はこういうデッキリストをおすすめします。
1 《平地》
1 《島》
1 《山》
1 《ケトリアのトライオーム》
1 《ラウグリンのトライオーム》
1 《繁殖池》
1 《神聖なる泉》
1 《踏み鳴らされる地》
1 《寺院の庭》
4 《霧深い雨林》
3 《吹きさらしの荒野》
2 《樹木茂る山麓》
1 《溢れかえる岸辺》
2 《虹色の眺望》
1 《冠水樹林帯》
1 《平穏な茂み》
-土地(25)- 1 《花の壁》
2 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
4 《守護フェリダー》
3 《創造の座、オムナス》
-クリーチャー(10)-
《湧き出る源、ジェガンサ》についてよく質問されました。《ジェガンサ》が「相棒」になる際にはよくあることですが、ただの入れ得な「相棒」カードとして入っています。場に出ることもあるし、勝負を決めてくれることもありますし、《血染めの月》に対する助けにもなります。
でもダブルシンボルで使いたいカードがあるなら、《ジェガンサ》をサイドボードから抜くことはためらわなくていいし、そういうカードをサイドインするのであれば、《ジェガンサ》を使わない立ち回りをしましょう。
Challengeの大会ではサイドボードに《否定の力》を入れていて、けっこう頻繁にサイドインさせました。《否定の力》は実際にはそこまで活躍しませんでしたが、他のダブルシンボルのカードを使いたいときも同様に気軽に《ジェガンサ》は無かったものとして扱っていいです。
《否定の力》の話をついでにすると、重コントロールデッキ以外のデッキでは必ず入れなければならないようなカードではありません。不公平すぎると感じるほど強い試合もありますが、ピッチした分の損失を取り返すためにはカードアドバンテージを得る手段もそれなりに必要ですし、ピッチできる青いカードも十分デッキに入っている必要があります。
サヒーリコンボデッキは手札で被った青いプレインズウォーカーをピッチすることはできますが、それを除くと青いカードが少なすぎますし、カードアドバンテージを得る手段も確実に不足しています。
サイドボード
すでに言いましたが、このサイドボードには相手に対する解答しか入れていません。伝統的にはこの種の脆弱なコンボデッキはサイドボードに第2の勝ち手段とカードアドバンテージ源をサイドボードに入れます。
でもメインのゲームプランのままでもコンボデッキで使ったときの《時を解す者、テフェリー》の絶対的な強さがあります。相手の干渉に対する強固な答えとなるのは、デッキのゲームプランを変えないまま、デッキを掘り進みつつ、相手に少し干渉することを通して優位な状態になることです。究極的には1ターンの間に《時を解す者、テフェリー》とコンボ起動を同時に相手に突きつけるというプレイングが理想です。
メインデッキから入っている《オムナス》がすでにそれを可能にしています。《不屈の追跡者》や《精神を刻む者、ジェイス》のようなカードをサイドボードにとっておいてコンボによるゲームプランを補助することも可能です。
ただコントロール相手にはこの手をあまり使いたくありません。長期戦になれば相手が有利だからです。カードアドバンテージを利用して相手と取っ組み合いをしてもいいですが、《死者の原野》が相手側に存在しているので長期戦はあまり魅力的ではありません。
主な勝ち筋は《時を解す者、テフェリー》です。だから1マナのカードで《時を解す者、テフェリー》を強引に通すのが好きです。《神秘の論争》は相手がゲーム前半に出そうとした《オムナス》を打ち消すことも可能にします。さもなくば3回目の「上陸」誘発でこちら側のプレインズウォーカーに痛手を負わせるので試合が苦しくなります。
《霊気の疾風》
青いデッキのサイドボードで《霊気の疾風》は長いあいだ定番のカードでした。自分も新しいデッキを組むたびに惰性で入れていました。でも《原始のタイタン》はこちらのコンボに対して元々弱く、赤緑ポンザは数を減らしていて、果敢デッキは《スカイクレイブの災い魔》を使うために黒を入れる方向に向かっているので、《霊気の疾風》はこの数カ月で一番弱い状態になっていて、このデッキからは抜いてしまってもいいくらいです。
《焦熱の裁き》
《焦熱の裁き》も多くの人から入っている理由を聞かれたカードです。意味を誤解しやすいテキストのカードですが、単体除去あるいは全体除去として使える追加の手段です。このデッキは無限コンボで勝利するので対戦相手に追加のライフを与えることは問題になりません。ラクドス相手には《スカイクレイブの災い魔》や《死の影》を除去しやすくしてくれるのでメリット効果ですらあります。《焦熱の裁き》は使いたくないと感じた方は《至高の評決》や他の全体除去を使うという選択をとってもいいとは言えそうです。
サイドボードガイド
ウーロコントロール
対ウーロコントロール(先手)
対ウーロコントロール(後手)
《楽園の拡散》は後手だとその魅力が大きく損なわれます。2ターン目に3マナのプレインズウォーカーを出そうとしても《マナ漏出》に打ち消されますからね。先手なら2ターン目に《時を解す者、テフェリー》を叩きつける賭けに出る価値はあります。相手の型によっては《ドビンの拒否権》よりも《霊気の疾風》の方が強い場合はあります。
ラクドスシャドウ
対ラクドスシャドウ(先手)
対ラクドスシャドウ(後手)
《レンと六番》が役に立たない試合です。《ニッサの誓い》もサイドボード後はプレインズウォーカーの代わりにインスタントを入れるので弱くなります。先手では《思考囲い》に対して《夏の帳》が強いですが、《思考囲い》に合わせられなければそこまで強くはありません。(ただのキャントリップとして利用するのもためらわないでください。)
人間
対人間
これで十分です。《夏の帳》と《天界の粛清》をそれなりに強い干渉手段として入れることも可能ですが、メインデッキに入っているカードより必ずしも強いわけではありません。
おわりに
話をまとめると、ザン・サイード/Zan Syedはサヒーリコンボデッキの新しい形をうまく作り上げました。現状のモダンのティアー1のデッキと対等だとは思っていませんが、環境のデッキとなるだけの力はあります。
デッキを改良するのによろこびを覚える人にはすばらしい機会です。よりよい形にできるのは確実ですからね。