デッキテク:登内 啓太の「セレズニアヨーリオン」

晴れる屋メディアチーム

By Tsutomu Date

戦国時代到来!

『スタンダード東海王決定戦』は実に11期目。同大会は新セット発売から2~3週間後の、メタゲームが比較的安定した時期の開催となっている。

今期は『ゼンディカーの夜明け』発売から3週間後の10月18日といつも通りであるが、開催6日前に禁止改定というビッグイベントが発生した。

創造の座、オムナス幸運のクローバー僻境への脱出

3枚が禁止カードに指定されたことで、環境は《創造の座、オムナス》の支配から解放された形だ

禁止改定後のメタゲームに上がってきたのは、ディミーアローグやラクドスエスケープ、それらに対抗する緑単フード。さらには赤緑/黒緑のアドベンチャーも現れている。禁止改定は多様性をもたらし、スタンダードは群雄割拠と呼ぶにふさわしい環境と化した。

登内 啓太(左) vs. 岡村 眞怜(右)

登内 啓太(左) vs. 岡村 眞怜(右)

このような状況で決勝戦に駒を進めたのは「セレズニアヨーリオン」の登内 啓太と、「グルールアドベンチャー」の岡村 眞怜。Game3までもつれ込んだ最後の戦いを登内が制し、見事、『第11期スタンダード東海王』の座に就いた。

登内 啓太

第11期スタンダード東海王 登内 啓太

突然の出会い!セレズニアヨーリオン!

――『第11期スタンダード東海王決定戦』優勝おめでとうございます。まずは「セレズニアヨーリオン」を選択された理由を教えてください。

登内「出発の1時間前、朝9時ごろにTwitterを見ていたら『CFB Pro Showdown』の優勝デッキが流れてきたので決めました

セレズニアヨーリオン

――当日に決めたのですか?初回しで優勝は凄いですね!

登内「昨日までは緑単フードを使っていたので、共通する部分があります。なので全くの0からスタートというわけではないですね」

――多くのプレイヤーは最強のデッキがあったとしても、デッキの習熟度や自分のプレイスタイルを考えて、必ずしも選ばない印象があります。登内さんはあまりそういったことにこだわりがなく、常に環境でのベストデッキを見極めて使用しているように思えますね。

登内 啓太

登内自分はどんなデッキでも使います。アグロやミッドレンジはもちろん、コントロールからコンボまで幅広く。プレイしているフォーマットは主にスタンダードとパイオニアですが、プレミアイベントがあればそれに合わせています」

――以前、『モダン東海王』になられたときもありましたね。

登内「あの時は近いグランプリのフォーマットがモダンでしたからね」

――それではデッキの話に戻しますと、セレズニアヨーリオンに出会わなければ緑単フードを使い続けていたかもしれないということですよね?両デッキを比べてみてどうでしょうか?

登内「緑単フードはアドベンチャー系に負けましたが、これ(セレズニアヨーリオン)には追放除去があるので勝てますね。また、このデッキを見たときに、『緑単フードは勝てないな』と思いました」

――では、デッキの基本的な動きを教えてください。

スカイクレイブの亡霊意地悪な狼

登内「序盤はできるだけETB能力(Enter The Battlefield:戦場へ出た時に誘発する能力)を持ったパーマネント、《スカイクレイブの亡霊》《意地悪な狼》を出してゲームスピードを落としていきます。出したクリーチャーはブロッカーに回さず、できるだけ戦場に残しながら耐えるのがポイントです」

――カラーリング的にアグロな印象がありますが、コントロール気味なデッキなんですね。

空を放浪するもの、ヨーリオン

登内「いわゆるボードコントロール的な動きですね。序盤は攻めるよりは守るデッキです。戦場にある程度パーマネントが並んだら、《空を放浪するもの、ヨーリオン》で「明滅」して再度能力を使いまわして差を広げていきます」

――なるほど。パーマネントに主軸が置かれた現在のメタゲームだからこそ有効なデッキですね。デッキの中で一押しのカードがあれば教えてください。

スカイクレイブの亡霊

登内《スカイクレイブの亡霊》です。このカードは4マナ以下のあらゆるパーマネントを除去できるので、《スカイクレイブの亡霊》なしにはデッキ自体が存在しません

――デッキのキーパーツですね。ほかに目を引くカードがあれば教えてください。

巨大猿、コグラ

登内「難しいですが、《巨大猿、コグラ》ですかね。格闘能力でクリーチャーを除去できるのはもちろん、起動型能力は「人間」を手札に戻すので《魅力的な王子》を使い回すことができます。これで《巨大猿、コグラ》《空を放浪するもの、ヨーリオン》を再度「明滅」することができますね」

――1枚挿しで目立っていましたが、多くのシナジーを形成しているのですね。本日のマッチアップを教えてください。

登内「スイスラウンドはディミーアローグ、セレズニア上陸、ラクドスエスケープ、セレズニアアグロ、グルールアドベンチャーと当たり、最後はIDして4-0-1でトップ8へ入りました」

登内「決勝ラウンドでは緑単フード、赤単アグロ、グルールアドベンチャーと対戦しました」

――ID以外はすべて勝利して、負けなしで優勝でしたね。メタゲームは予想通りでしたか?

空飛ぶ思考盗み死の飢えのタイタン、クロクサ貪るトロールの王

登内「大体予想通りでしたね。ディミーアローグやラクドスエスケープがいて、緑単などの対抗馬がいるかなと」

サイドボーディング

――では、各デッキとの戦い方やサイドボーディングはどのようになりますか?

登内「サイドボードについて基本的な考え方はありますが、同じアーキタイプと当たったとしても同じサイドをするとは限りません。先手後手や相手デッキ構成、サイドプランやゲーム展開でも変わってくるので、必ずこれとこれを入れ替えるというような決まったものはないですね。2ゲームやってみて違和感があったら変えることもありますし」

登内「ゲームプランとしては、序盤は相手のパーマネントに対応しながら耐えて、勝ちにいくのは場を落ち着かせてからです。これは相手のデッキが何であろうと一貫していえることです。そうすれば、現在のメタゲーム上のどのデッキに対しても勝てます

スカイクレイブの亡霊意地悪な狼空を放浪するもの、ヨーリオン

登内「ちなみに《スカイクレイブの亡霊》《意地悪な狼》《空を放浪するもの、ヨーリオン》をサイドアウトすることはありません

――ではもう少し包括的な形で構わないので、各デッキに有効なカードを教えてもらえますか?

対 ディミーアローグ

鎖巣網のアラクニル漁る軟泥ガラスの棺

登内「今日の対戦では、《鎖巣網のアラクニル》《漁る軟泥》《ガラスの棺》をサイドインしました」

対 ラクドスエスケープ

漁る軟泥ガラスの棺エルズペス、死に打ち勝つ

登内《漁る軟泥》《ガラスの棺》《エルズペス、死に打ち勝つ》がサイド候補になっています」

対 グルールアドベンチャー

空の粉砕ガラスの棺エルズペス、死に打ち勝つ怪物の代言者、ビビアン

登内《ガラスの棺》《空の粉砕》《怪物の代言者、ビビアン》《エルズペス、死に打ち勝つ》の4種類が入りますね」

サイドアウト候補

――サイドアウトするのはどのようなカードでしょうか?

ラノワールの幻想家エルズペス、死に打ち勝つグレートヘンジ

登内「相手によって要らないカードを適宜抜いていきますね。たとえば、《ラノワールの幻想家》はドローができるうえに5マナへジャンプアップできるカードですが、3ターン目に出しても仕方ない相手には抜いていきます。ディミーアローグに対しては《グレートヘンジ》《エルズペス、死に打ち勝つ》のような重いカードが抜けていきます」

回るメタゲーム

――では、今日1日このデッキを使ってみて変更したいところはありましたか?

登内「負けなしなので、そこまで弱点について理解できていないかもしれません。これから負けるようであれば、サイドボードでの対策を考えます。今日はコントロールがいなかったですし、そのおかげで勝てたかもしれませんね」

――メタゲーム上、本日のデッキでは一番強かったような印象があります。これからこのデッキを使いたいプレイヤーも多いと思いますので、アドバイスがあればお願いします。

登内「今日の大会で勝つ、という意味ではデッキは適していたと思います。このデッキに有利なのはコントロールですが、それを持ってきたからといって会場に多くいるディミーアローグやラクドスエスケープには勝てないですからね」

影槍巻き添え

登内「これからこのデッキを使うならコントロール対策が必要になると思います。特に《夢さらい》は出されるとつらいので、厚めに対策したほうがいいです。具体的には《影槍》《巻き添え》ですね」

登内「とはいっても、今後もこのデッキが勝てるとは限りません。新スタンダード開始直後にトップメタだったディミーアローグやラクドスエスケープの現在の立ち位置を見てもわかる通り、MTGアリーナ導入以来メタゲームの進行が早いですからね。」

――もし来週も『スタンダード東海王決定戦』が開催されるとしたら、どんなデッキを使いますか?

登内「それは当日の朝までわかりませんね(笑)。セレズニアヨーリオンに勝てるコントロールが出てくるかもしれないし、さらに次のメタゲームに進んでいるかもしれません。自分は状況に合わせてデッキを選ぶだけです」

――あくまでもデッキ選択はメタゲーム次第、ということですね。最後に優勝について一言お願いします。

登内『東海王決定戦』で通算3回優勝したのは自分だけですよね。優勝は自信に繋がりますし、やはり嬉しいです。特に今回はデッキが強かったうえに、メタゲームにも合っていました。マジックはギリギリの戦いも多いのですが、今回は余裕を残して勝ったマッチが多かったです。それぐらいこのデッキは強かったと思います」

――登内さんは『第2期スタンダード東海王』、『第3期モダン東海王』に続いて、初の『東海王』三冠となりますね。本当におめでとうございます。本日はインタビューにお答え頂きありがとうございました。


プレイヤーの多くは、そのほとんどが自らの得手不得手を自覚したうえでデッキを選択している。最強のデッキを見つけたからといって、準備なしで大会に持ち込み、勝利するのは至難の業だ。

しかし、それを実現させる力を登内は持っている。彼の類稀な才覚からどんなデッキでも使いこなし、それのみならず初めて使うデッキをいとも簡単に乗りこなす。登内のマジックに対する理解度は群を抜いていると言っていいだろう。

登内が3度目の『東海王』となることは偶然などではなく、当然の結果であり、必然だったのだ

登内 啓太

おめでとう!『第11期スタンダード東海王』登内 啓太!!

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