Translated by Kohei Kido
(掲載日 2020/11/05)
はじめに
やあ!みんな元気にしているかい!
記事のタイトルにもあるように、今日は様々なフォーマットに対応するための準備の仕方、少なくとも僕がどのように準備しているかについて話そう。新型コロナウイルスの流行でテーブルトップの大会はほぼすべて中止になっているが、一部はオンラインで開催されている。
そのうちのひとつがエターナル・ウィークエンドで、週末にはレガシー、翌週末にはヴィンテージの大会が開催された。誰でも参加できるように、登録者全員にすべてのカードを8日間使えるアカウントが用意されていたんだ。
エターナル・ウィークエンドの直後には、プレイヤーズツアー予選がスタンダード・パイオニア・モダンでそれぞれ開催された。
ご覧のように、各大会のために準備する時間が少なく、ほぼすべてのフォーマットを同時にプレイすることは不可能に近い。
2段階の準備
ステップ1:メタゲームの調査
準備する時間があまりなく、カードを入手するのに障壁がないという条件なら、僕が大会準備をする手順はいつでも変わらない。
まずは様々なデッキリストに目を通して、メタゲームが最近どう動いてきたのかを調べる。このステップは1試合もマジックをせずにできるし、私見ではこの段階をおろそかにするべきではない。データを見るだけで週末に大会で使うべきデッキがわかるかもしれないからね。
ステップ2:メモを取りながら実戦
次のステップは実戦での練習だ。自分がプレイしたいと思うデッキを見つけた場合は、それを使ってみて実際にどうなのか試してみることだ。悲しいことに、多くの場合1回目で正しいデッキにたどりつけず、複数のデッキを試すことになる。
大会での正解デッキを探すこと以外で重要なのはメモをとることだ。勝率のメモだけではなく、あらゆることのメモをとろう。例えば僕は「先手/後手・相手のデッキ・サイドボーディング・デッキに不必要なカード・デッキに足りないカード」などのメモをとっている。
時間は限られているわけだから、これが時間の無駄に見えるかもしれないけど、簡単なエクセルファイルを作ってメモをとるのにそこまで時間はかからないよ。
この段階をやらなかったせいで最近失敗した経験について話そう。数週間前にモダンのプレイヤーズツアー予選に出ようと思って、Magic Online(以下、MO)のModern Leagueに1回参加しただけのデッキで参加登録したことがあった。
トップ8にはたどり着いたが、数ラウンドやったあとにどのデッキと当たってもサイドインしているカードが1枚あると気づいた。想像してみてくれ。もし僕がエクセルを使ってメモをとり、1回のModern Leagueだけで済ませなかったとしよう。このカードは確実にメインデッキに入っていただろう。
普段なら使いたいデッキを2~3個選んで、それぞれ2回はLeagueに参加する。そうすれば大会で使うために力を注ぐべきデッキがどれかわかるからね。そしてここでもまたメモが役に立つ。活躍したカードと活躍しなかったカードがわかるし、どのデッキの対策をしなければいけないのかわかるからね。デッキを改善するために2~3日は時間をとれるようにするんだ。
ここまでは特定の大会のために準備をする方法について書いたけど、ほかにも大事なことはある。
時間管理
重要なことのひとつに、自分自身の時間管理が挙げられる。再び僕自身を例にして考えてみよう。
普通は1週間先の大会がわかっているだろうから、スケジュールを組むのは簡単だ。まずは仕事や大学などの実生活の仕事をこなし、それが終わったら1日に2~3League程度の試合をするようにしている。そして睡眠時間は8~9時間、食事は毎食30分以上を目安に行動しているんだ。
もちろん例外はあって、柔軟に調整する必要がある。例としてエターナル・ウィークエンドについて軽く話そう。
最初の大会は午前9時から、2つめのトーナメントは午後11時から、どちらも同じ日に始まることを知っていたんだ。各大会は9~10回戦だと想定していた。午後11時から大会が始まるのでその時間に寝るのではなく、僕がしたことは午後11時の4時間前に寝て、大会が終わったあとにまた4時間寝ることにしたのだ。
フォーマットの速度
何が言いたいのかをわかりやすくするために、パイオニア・モダン・レガシー・ヴィンテージのデッキリストを見てみよう。すべてコントロールデッキだ。
1 《島》
1 《山》
1 《川守りの先駆け》
1 《冠雪の島》
1 《冠雪の森》
1 《ケトリアのトライオーム》
1 《ラウグリンのトライオーム》
1 《繁殖池》
1 《神聖なる泉》
1 《蒸気孔》
1 《踏み鳴らされる地》
1 《寺院の庭》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《霧深い雨林》
3 《沸騰する小湖》
1 《神秘の聖域》
2 《廃墟の地》
2 《死者の原野》
-土地(29)-
2 《創造の座、オムナス》
-クリーチャー(6)- 4 《流刑への道》
2 《稲妻》
3 《マナ漏出》
2 《成長のらせん》
3 《否定の力》
3 《謎めいた命令》
1 《約束の刻》
3 《レンと六番》
2 《時を解す者、テフェリー》
1 《精神を刻む者、ジェイス》
1 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文(25)-
2 《冠雪の森》
1 《冠雪の平地》
1 《冠雪の沼》
1 《Tropical Island》
1 《Tundra》
1 《Underground Sea》
1 《Volcanic Island》
4 《霧深い雨林》
2 《汚染された三角州》
2 《虹色の眺望》
1 《溢れかえる岸辺》
1 《カラカス》
-土地(20)-
3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー(7)- 4 《渦まく知識》
4 《思案》
4 《剣を鍬に》
2 《突然の衰微》
2 《真冬》
2 《否定の力》
4 《意志の力》
2 《森の知恵》
4 《アーカムの天測儀》
3 《王冠泥棒、オーコ》
1 《覆いを割く者、ナーセット》
1 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文(33)-
4 《Volcanic Island》
3 《Tundra》
3 《溢れかえる岸辺》
3 《沸騰する小湖》
2 《汚染された三角州》
1 《神秘の聖域》
-土地(17)- 1 《Ancestral Recall》
1 《Time Walk》
1 《Black Lotus》
1 《Mox Pearl》
1 《Mox Sapphire》
1 《Mox Ruby》
-パワー9(6)- 2 《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》
2 《瞬唱の魔道士》
1 《僧院の速槍》
1 《パルン、ニヴ=ミゼット》
-クリーチャー(6)-
2 《稲妻》
2 《紅蓮破》
1 《渦まく知識》
1 《狼狽の嵐》
1 《ギタクシア派の調査》
1 《精神的つまづき》
1 《神秘の教示者》
1 《思案》
1 《破壊放題》
1 《剣を鍬に》
1 《削剥》
1 《否定の力》
4 《意志の力》
1 《噴出》
1 《時を越えた探索》
1 《宝船の巡航》
2 《ダク・フェイデン》
1 《覆いを割く者、ナーセット》
1 《時を解す者、テフェリー》
1 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文(31)-
各デッキの土地枚数と、一部のカードの点数で見たマナ・コストについて比較してみよう。
パイオニアのコントロールデッキには26枚の土地が入っている。2枚入っている《奔流の機械巨人》を除いてすべてのカードが4マナ以下で、一部の土地は「サイクリング」や何か能力を持っている。
モダンのコントロールデッキには29枚の土地が入っている。それほどたくさんの土地が必要になるわけではないけど、《死者の原野》が7種類の土地を必要とするから多くの土地が入っている。《死者の原野》抜きならこのデッキもパイオニア同様25~26枚の土地をプレイしているだろう。
レガシーのコントロールデッキには20枚しか土地が入っていない。これまで見てきた2つのデッキとは大きな違いだけど、この違いを生んでいるのはなぜだろう。レガシーではマナカーブがパイオニア・モダンよりも低くて、《思案》《渦まく知識》《森の知恵》のようなカードでデッキの中をたくさん見れるからだ。
土地が一番少ないのはヴィンテージのデッキだ。デッキの中を見れるカードはレガシー同様多く入っているし、マナカーブはレガシーよりも低い。
でも、これはフォーマットの速度とどういう関係にあるだろうか?
簡潔に言うと、マナカーブを見ればどれくらいの速度で試合が進行するのかがわかるんだ。例えばヴィンテージでは、1ターン目に勝負が決まることがあってそれに備える必要がある。反対にパイオニアでは、最低でも4ターン目まではプレイすることになるし、たいていの試合はもっと長い。
異なるフォーマットをやるということは、各フォーマットが何ターンかかるのかを知っている必要があるということだ。そしてマナカーブと土地の枚数を見れば、根拠のある推論が立てられる。各フォーマットをプレイする際には覚えておいて損しないことだ。
自分の強みを活かそう
マジックのプレイヤーがどのデッキを使うべきか議論すると「でもこれが最強のデッキだから、それを使えばいいよ」というような結論に達するのを見ることがよくある。
「最強のデッキがあって、それをプレイしなければならない」という話を何度聞いたことがあるか思い出せない(それに従ってもいない)。ときにはそれが正しいこともあるだろうけど、多くの場合は、そのフォーマットで最強とされるデッキを使うのは不正解だ。
ここでは過去2年の間で作られて数週間後に禁止されたデッキは除外してほしい。というのも、それはあまりにも頻繁に起こった事態であり、今後はそうならないと祈っているからだ。
話を戻すと、私の考えでは、そのフォーマットで最強と言われているデッキをプレイすることは必ずしも正しいことではない。1番強いデッキとその次に強いデッキの勝率の差は5%あるかないかというのが普通だからね。
もし1番強いデッキを70%のレベルで使いこなせても、次に強いデッキのほうが自分に合っていて95%のレベルで使いこなせるなら、そのデッキを使うべきということだろう。
ミシック・チャンピオンシップⅣ(バルセロナ)という具体例について考えてみよう。『モダンホライゾン』が出た直後で、大会のフォーマットはモダンだった。《甦る死滅都市、ホガーク》が強いという事実と、それを使った最強デッキの構築が知れ渡るのに時間はかからなかった。
デッキがあまりにも強くて、人々はメインデッキに《虚空の力線》を入れ始めた。この大会でもっとも使われたカードにもなっていて、あらゆる店で売り切れていたんだ。
僕は《甦る死滅都市、ホガーク》を使わなかった。友人とデッキ調整をした結果、僕らが使うのは《飛行機械の鋳造所》《弱者の剣》の無限コンボと《最高工匠卿、ウルザ》を組み合わせたデッキになった。最強のデッキではなかったけど最強のデッキに対して相性良好で、僕らの考えでは立ち位置のいいデッキだったのだ。
このデッキのほうがはるかに自分に合っていたし、結果としても友人はミシック・チャンピオンシップのトップ8に残った。自分も隣の会場で開催されていたグランプリであと1回勝てばトップ8という惜しいところまで進めた。
自分の強みを活かすのが極まるとひとつのタイプのデッキしか使わないことすらある。例えばギョーム・ワフォ=タパ/Guillaume Wafo-Tapaはコントロールデッキばかり使っているし、クレイグ・ウェスコー/Craig Wescoeはアグロしか使わない。2人ともすごいプレイヤーで、ひとつのタイプのデッキしか使わないけどそれでも勝ち続けているんだ。
最強のデッキを使わずに、プレイスタイルと合うデッキを使うという選択を恐れてはいけない。自分が使うデッキを選ぶときに一番いいものを選べるようにね。
おわりに
今日はこれで終わりだ。
次の大会でよりよい準備ができるよう手助けできていたらうれしいね。健康には気を付けて。また次回。
イマニュエル・ゲルシェンソン(Twitter)