マルドゥヨーリオンを選ぶべき8つの理由

Raphael Levy

Translated by Kohei Kido

原文はこちら
(掲載日 2020/11/11)

はじめに

創造の座、オムナス荒野の再生創案の火

今のスタンダードは心地いい。《創造の座、オムナス》《荒野の再生》《創案の火》のような1枚で強すぎるカードに支配される環境を脱した。メタゲームがある意味で「自然」に発展していくことが、久しぶりに可能になったのだ。

2週間前、我流のジェスカイヨーリオンでリーグ・ウィークエンドへ出場した。今シーズンのマジック・プロリーグ内での順位にも影響する大会だ。晴れる屋サイトでその大会の記事を読むことができる。

7-5という比較的いい成績を達成してデッキ自体も強いとは思ったが、旬を過ぎていると感じていたうえに最新のメタゲームには適応できないデッキだった。新たな「頂点捕食者、グルール」に対して相性が悪いというほどではない。しかし、アグロデッキはこちらを打ち負かそうと《怪物の代言者、ビビアン》《グレートヘンジ》のようなカードを増やす傾向にあった

怪物の代言者、ビビアングレートヘンジ

調整を始めてみると、次のリーグ・ウィークエンドで使うべきデッキがジェスカイではないことはすぐに判明した。そこで、Krowzの手を借りながら新たな可能性を探ることにした。

新しいヨーリオンの形

ジェスカイのデッキリストを改めて観察して何が変えられるかについて考えてみた。すると青マナが必要となるのは《海の神のお告げ》だけだと気づいた。打ち消し呪文を使いたいとは最初から思っていなかったし、《サメ台風》もグルールまみれの世界では魅力的なカードとはいえない。

絶滅の契機

だったら黒はどうかと考えてみると、青よりも明らかに恩恵が大きそうだと気づいた。《空の粉砕》がどれほど好きになれないかについて語ったことがあるけど、《絶滅の契機》については異なる意見を持っている。一方的な全体除去の効果を持っていて、対戦相手はカードを引けず、《意地悪な狼》《アゴナスの雄牛》《貪るトロールの王》を追放できるカードだから《空の粉砕》よりもはるかに使いたくなるカードだ。

予言された壊滅裏切る恵み

黒を入れると《予言された壊滅》《裏切る恵み》が使えるようになる。エスパーやマルドゥスタックスですでに実績がある2種類のカードだ。

打ち消し呪文は《絶滅の契機》《強迫》といった妨害手段と入れ替えてしまって問題ないが、《海の神のお告げ》の穴を埋めるカードがマルドゥには必要だった。《海の神のお告げ》と同等のカードは存在しないが、ほかにもキャントリップとして使える2マナのパーマネント自体は存在している。《黄金の卵》《予備物資》は代替品として悪くないカードだ。

調整初期のデッキは勝ち筋が乏しいものだった。《空を放浪するもの、ヨーリオン》《スカイクレイブの亡霊》《エメリアの呼び声》が生みだす天使・トークンでしか相手のライフを削れないデッキだったんだ。負けようがなさそうな試合でも勝つのに時間がかかりすぎたり、クロックが繰り返し除去されたりして負けることがあった

太陽の恵みの執政官

グルールがミラーマッチを意識し始めていたのでつけ入る隙が生まれていた。《太陽の恵みの執政官》は早期に試合に勝利する手段にもなって、超ロングゲームをせずにアグロデッキと戦える可能性をもたらすカードだった。

石成の荒廃

《太陽の恵みの執政官》の採用が決まったので、2マナのキャントリップ付きパーマネントも別の候補を探してみると、《石成の荒廃》という選択肢が存在していた。カードが引けて《空を放浪するもの、ヨーリオン》《予言された壊滅》と相性がいい。エンチャントだから《太陽の恵みの執政官》ともシナジーがある。色マナ基盤の安定か相手プレイヤーへダメージをもたらす。…要件にぴったりのカードだったね。

さらに言えば、対戦相手の「城」や《這い回るやせ地》を無効化してくれる。これもかなり重要なことだ。

対戦相手が見慣れていないカードを使うのはいつだって最高のことさ!

メレティス誕生エルズペスの悪夢

初期には《メレティス誕生》を採用していて《エルズペスの悪夢》も枚数が多かった。《メレティス誕生》は必要そうに思えるカードだったが、相変わらずがっかりさせられた。《予言された壊滅》とも相性が良くない。

《エルズペスの悪夢》は入っていて良かったことも悪かったこともあったけど、自分が使うと必要ないことが多かった。遅れて誘発する《強迫》は悪くはない。しかし3マナは少し重すぎる。カード自体が嫌いだったわけではないけど、何枚も入れるほどのカードではない。

太陽の神のお告げ

試合中に本当に欲しくなるカードは《太陽の神のお告げ》だった。このデッキに必要なのは、ライフを回復することや遅い相手にクロックをかけることだったからだ。また、アップキープに瞬速で設置できるエンチャントが増え、《予言された壊滅》の生け贄要員が確保しやすくなる。相手視点では《予言された壊滅》が維持されるのかわからない。だから戦場にパーマネントを増やすべきなのか、何も出さずにターンを渡すべきなのかの判断が難しくなる。デッキに4枚入れるべきだったと感じたカードだね。

精神迷わせの秘本

《精神迷わせの秘本》はアゾリウスとジェスカイでは好きになれないカードだった。戦場に干渉する手段が少ない色の組み合わせだからね。しかし《絶滅の契機》《予言された壊滅》がある黒が入っているなら話は別だ。私が「このカードは良くない」と言ったときは文脈をふまえて理解して欲しい。多くの人から「そのカードは良くないっていっていたはずでは?」といわれた。今でもアゾリウスでは良くないカードだと思っている。もう絶滅しているデッキだけどね。

エメリアの呼び声

《エメリアの呼び声》も同様だ。アゾリウスで使いたいとは思えないカードだったけど、マルドゥでは素晴らしい。土地としてアンタップインするのにライフを失ってしまうのはアゾリウス/ジェスカイほど痛手ではない。相手のクリーチャーに対処しやすくなっているからね。《裏切る恵み》のおかげで7マナにも到達しやすくなっている。

デッキリスト

これが実際に使ったデッキリストだ。

サイドボードガイド

続いては、サイドボードガイドを紹介しよう。

グルールアドベンチャー

対 グルールアドベンチャー(先手)

Out

裏切る恵み 裏切る恵み
太陽の神のお告げ エルズペスの悪夢

In

無情な行動 無情な行動 無情な行動
魂の粉砕

対 グルールアドベンチャー(後手)

Out

裏切る恵み 裏切る恵み
精神迷わせの秘本 エルズペスの悪夢

In

無情な行動 無情な行動 無情な行動
魂の粉砕

このマッチアップは圧倒的に有利だが、相手にならないという意味ではない。自分のリソースを最大限活用して相手に後れを取らないようにする必要がある。また、相手の切り札(《怪物の代言者、ビビアン》《グレートヘンジ》)には注意を払わねばならない。

ディミーアローグ

対 ディミーアローグ

Out

絶滅の契機 絶滅の契機 絶滅の契機 絶滅の契機
エルズペス、死に打ち勝つ エルズペス、死に打ち勝つ エルズペス、死に打ち勝つ エルズペス、死に打ち勝つ
太陽の恵みの執政官

In

強迫 強迫 強迫 強迫
トーモッドの墓所 トーモッドの墓所 塵へのしがみつき 塵へのしがみつき
無情な行動

これは厳しい相手だ。ディミーアローグはグルールアドベンチャーに不利だから、うまく負かしてくれることを期待したい。

このサイドボードガイドは《夢の巣のルールス》を使ったローグに対してのものだ。《トリックスター、ザレス・サン》が入ったデッキに勝つためには《無情な行動》を足す必要がある

相手の理想的な動きに勝つのは難しい。でも相手はいつも最高の引きをするわけではない。相手が3ターン目に15枚切削しているような試合は諦めてほかで勝つ必要がある。《無情な行動》をサイドから多く入れても《アガディームの覚醒》《夢の巣のルールス》で戻ってくるのは防いでくれない。追放していないからね。

鍵となるのはゲームプランがぶれないようにすることだ。序盤は相手の脅威に1つずつ対処して《空を放浪するもの、ヨーリオン》でアドバンテージを稼げるターンを作ろう。サイド後は《強迫》でサポートすることも忘れずに。

エスパースタックス

対 エスパースタックス

Out

太陽の恵みの執政官 太陽の恵みの執政官 太陽の恵みの執政官 太陽の恵みの執政官
予言された壊滅 予言された壊滅 予言された壊滅 予言された壊滅
絶滅の契機 絶滅の契機 絶滅の契機

In

強迫 強迫 強迫 強迫
無情な行動 無情な行動 塵へのしがみつき 塵へのしがみつき
精神迷わせの秘本 精神迷わせの秘本

サイドインするカードが1枚少ないが、通常は《無情な行動》を3枚にし、《夢さらい》が入っている相手には代わりに《魂の粉砕》を入れる。

また、相手が《屋敷の踊り》を使っているのであれば《トーモッドの墓所》を2枚入れ、《鍛冶の神のお告げ》《ガラスの棺》を1枚ずつサイドアウトしよう。

屋敷の踊り

このマッチアップは《屋敷の踊り》が問題だ。《黄金の卵》などが入っていない普通のエスパースタックスならこちらが有利なはずだ。相手の《予言された壊滅》のことをそこまで気にする必要はないし、相手に圧力をかけながら脅威をすべて対処できるはずだ。

サイド後は《予言された壊滅》をデッキから抜くのがカギだ。《予言された壊滅》《メレティス誕生》《エルズペスの悪夢》に対して最悪のカードだし、デッキの空いた枠にドローソースと妨害カードを増やせる。


残りのデッキについてだが、クリーチャー主体のアグロやミッドレンジ(緑単フードやラクドス)、コントロール(八十岡 翔太のジェスカイやアンドリュー・クネオ/Andrew Cuneoのイゼット)のほとんどに対して有利なはずだ。

発生の根本原理精霊龍、ウギン

ティムールランプとの相性は最悪で大きく後れをとることになる。メインデッキに《強迫》がないから相手の《発生の根本原理》を防ぐのは難しい。相手のライフを素早く詰めながら《精霊龍、ウギン》をケアする必要もある。簡単ではないね。

環境のそのほかのデッキに対してのサイドボーディングは「相手が《太陽の恵みの執政官》にどれほど対処できるのか」、「相手に対して除去をどれだけ用意する必要があるのか」という2つの要素で判断すべきだ。サイドボード後は《太陽の恵みの執政官》に対する解答をがかなり増えるため、デッキから抜いてしまうことが正解になりやすい。

『ゼンディカーの夜明け』リーグ・ウィークエンド

2回目のリーグ・ウィークエンドでは6-5の成績だった。もっといい成績だったらよかったけど、プレイヤーのレベルが高いこの大会では十分な成績だ。

1日目

ラウンド 対戦相手 対戦結果(累計)
ラウンド1 クリス・カヴァルテク
(緑単フード)
1-2(0-1)
ラウンド2 アンドリュー・クネオ
(イゼットコントロール)
2-0(1-1)
ラウンド3 アンドレア・メングッチ
(エスパースタックス)
1-2(1-2)
ラウンド4 セス・マンフィールド
(グルールアドベンチャー)
0-2(1-3)
ラウンド5 行弘 賢
(緑単フード)
2-0(2-3)

2日目

ラウンド 対戦相手 対戦結果(累計)
ラウンド6 オータム・バーチェット
(エスパースタックス)
2-0(3-3)
ラウンド7 八十岡 翔太
(ジェスカイコントロール)
2-0(4-3)
ラウンド8 レイド・デューク
(グルールアドベンチャー)
2-1(5-3)
ラウンド9 シャハール・シェンハー
(グルールアドベンチャー)
2-0(6-3)
ラウンド10 カルロス・ロマオ
(ディミーアローグ)
0-2(6-4)
ラウンド11 ブライアン・ブラウン=デュイン
(ディミーアローグ)
0-2(6-5)

私のYoutubeチャンネルで大会の全試合をみることができる(チャンネル登録も忘れずに!)。

さらにヤン・モリッツ・メルケル/Jan Moritz MerkelChannel Fireballのイベントで私と95枚全て同じデッキリストを使って8-0している。

2回のリーグ・ウィークエンドが終わって累計で13-10の成績だった。5位タイになる好成績で首位からも2ポイントしか離されていない。調整チームにも頼らずに自作のデッキ2種類でこの成績を成し遂げたことで自信がついた。この自信はシーズンを戦い続ける助けになるだろう。


みんな応援ありがとう!12月4日の『ゼンディカーの夜明け』チャンピオンシップでまた会おう!

ラファエル・レヴィ(Twitter / Twitch / Youtube)

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Raphael Levy ラファエル・レヴィはフランスの古豪。初のプロツアー参戦は1997年で、そこから2017年のプロツアー『イクサラン』まで、91回連続でプロツアーに出場し続けたという驚異の経歴の持ち主だ。そして、2019年のミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019にて、歴史上で初めて100回のプロツアーに参戦したプレイヤーとなった。これまでに築き上げてきた実績は数知れず、2019年2月の時点でプロツアートップ8が3回、グランプリトップ8が23回(優勝6回)、その他にもワールド・マジック・カップ2013ではキャプテンとしてチームを優勝に導くなど、数々の輝かしい成績を残している。生涯獲得プロポイントは750点を超えており、2006年にはプロツアー殿堂にも選出されている。 Raphael Levyの記事はこちら