はじめに
みなさんこんにちは。
来月の頭には東京と大阪の晴れる屋トーナメントセンターでエターナルパーティー2020が開催されますね。毎年恒例となっている大規模なレガシー大会であり、レガシーファン必見のイベントとなっています。
今回の連載ではLegacy Showcase Challengeを中心に、オンラインイベントの入賞デッキをみていきたいと思います。
Legacy Challenge #12225856
部族デッキが勝利
2020年11月9日
- 1位 Elves
- 2位 Temur Delver
- 3位 Sliver
- 4位 Lands
- 5位 Urza
- 6位 Temur Delver
- 7位 TES
- 8位 Hogaak
トップ8のデッキリストはこちら
今大会でもDelver系が最大勢力となり、プレイオフに2名を送り込むことに成功しています。一般的なTemur Delverに加えて、Eternal Weekend 2020で結果を残した《ウーロ》入りのTemur Delverも入賞していました。
印象的だったのはDelver系やElves、Hogaakといった定番のデッキだけではなく、Sliverのような珍しい部族デッキも結果を残していたことです。
最終的に優勝を果たしたのは、『Jumpstart』の登場以来コンスタントに結果を残し続けているElvesでした。
デッキ紹介
Sliver
スリヴァーはもっとも人気のある種族の1つで、『モダンホライゾン』から新戦力を獲得したことで大会の上位でも見かけるようになりました。
スリヴァーは同種族で能力を共有するため、全体強化に加えて回避能力や除去耐性も獲得できるようになっています。
ほかの種族デッキ同様に、《霊気の薬瓶》と《魂の洞窟》を採用しているのでカウンターに耐性があり、Delver系に強いアーキタイプです。
☆注目ポイント
《不確定な船乗り》は自軍のスリヴァーに除去耐性を付与するだけでなく、《不毛の大地》や《苦悶の触手》に対しても追加のマナを要求できるため、このデッキにとって大きな収穫でした。
ひとたび《水晶スリヴァー》が着地してしまえば相手の単体除去は意味を成しません。除去に合わせて《霊気の薬瓶》から出すことで疑似カウンターのように機能します。
ライフを支払う必要はありますが、《冬眠スリヴァー》がいれば《終末》や《真冬》といったスイーパーに耐性がつくことになります。《霊気の薬瓶》があればバウンスしたクリーチャーを素早く再展開できるので、体勢を立て直しやすくなりますね。覚えておきたいプレイングは、青いスリヴァーを手札に戻すことで《意志の力》の代替コストに使えるということです。コンボとのマッチアップでは重要なプレイングとなります。
ほかの種族デッキと違い、スリヴァーはマナ基盤の強さも特徴といえます。《手付かずの領土》と《魂の洞窟》に加えて《スリヴァーの巣》が使用できるため、多色ながら色事故しにくいデッキとなっています。また、《霊気の薬瓶》があることで、サイドボードには《エーテル宣誓会の法学者》のようなヘイトベアーを採用することも可能なのです。
スリヴァーはカジュアル寄りのアーキタイプにみえるかもしれませんが、『モダンホライゾン』で強化されたことで環境にあるデッキと互角以上に渡り合えるように仕上がっています。
Temur Delver
1 《冠雪の山》
3 《Volcanic Island》
2 《Tropical Island》
4 《沸騰する小湖》
3 《溢れかえる岸辺》
1 《樹木茂る山麓》
4 《不毛の大地》
-土地 (19)- 4 《秘密を掘り下げる者》
4 《戦慄衆の秘儀術師》
3 《若き紅蓮術士》
-クリーチャー (11)-
4 《稲妻》
4 《思案》
4 《定業》
1 《稲妻の連鎖》
1 《蒸気の絡みつき》
4 《目くらまし》
1 《否定の力》
4 《意志の力》
3 《王冠泥棒、オーコ》
-呪文 (30)-
2 《運命の神、クローティス》
2 《外科的摘出》
2 《削剥》
1 《猛火の斉射》
1 《蒸気の絡みつき》
1 《否定の力》
1 《水没》
1 《無のロッド》
1 《覆いを割く者、ナーセット》
-サイドボード (15)-
毎回のように解説しているトップメタのDelverは、フリースロットにプレイヤーの個性が出るデッキです。今大会で惜しくも9位に終わったlearntolove6のリストは、Izzet Delverに《王冠泥棒、オーコ》と《運命の神、クローティス》をタッチしたデッキであり、Temur Delverの代表的なクリーチャーである《タルモゴイフ》や《わめき騒ぐマンドリル》は不採用となっています。
緑のクリーチャーを採用することでクリーチャーのサイズ分有利となり、ミラーマッチに強くなるメリットがありますが、マナ基盤に負担がかかるのが悩みでした。かといってIzzetの2色では《王冠泥棒、オーコ》が使えない分デッキパワーに不安が残り、特にSnowkoとの相性が絶望的となってしまいます。そのため《王冠泥棒、オーコ》と《運命の神、クローティス》のためだけに緑をタッチしたこのIzzet Delverはよく調整された形だと思います。
☆注目ポイント
緑のスペルを減らしたことで、マナ基盤に基本地形を採用する余裕が生まれました。ミラーマッチやDeath and Taxesといった《不毛の大地》を使った妨害や《血染めの月》に耐性がついています。
《若き紅蓮術士》は軽いスペルを多用するこのデッキにフィットしたクリーチャーであり、エレメンタル・トークンが並ぶので《王冠泥棒、オーコ》を含めた各プレインズウォーカーにプレッシャーをかけることができます。たとえ《虚空の杯》を置かれたとしてもスペルをエレメンタル・トークンに変換することができるので、設置されたとしても手札がまったくの無駄になるのを防いでくれます。
《戦慄衆の秘儀術師》と《若き紅蓮術士》を最大限に活用するため、《定業》が4枚採用されています。
《運命の神、クローティス》はSnowkoに対して除去されにくいダメージソースであると同時に、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を牽制する手段にもなります。《紅蓮破》や《赤霊破》に引っかからないため、最近では同型戦を見越して2枚に増量したリストが増えています。
Legacy Challenge #12228502
勝ち続けるElvesとDelver
2020年11月15日
- 1位 Elves
- 2位 Temur Delver
- 3位 Infect
- 4位 Dimir Control
- 5位 Temur Delver
- 6位 Snowko
- 7位 Elves
- 8位 Snow Control
トップ8のデッキリストはこちら
決勝戦まで残ったのはトップメタのDelver系とコンスタントに勝ち続けているElvesでした。優勝したElvesは、なんと《王冠泥棒、オーコ》と《トレストの使者、レオヴォルド》をタッチした革新的なリストとなっています。
一口にDelver系といっても違いがあります。決勝戦まで勝ち上がったJPA93が使用していたのは定番の《わめき騒ぐマンドリル》入りの構築でしたが、5位に入賞したのは《天上の餌あさり》が採用されていました。
デッキ紹介
Dimir Control
3 《沼》
4 《虹色の眺望》
2 《Underground Sea》
4 《汚染された三角州》
1 《霧深い雨林》
1 《新緑の地下墓地》
1 《古えの墳墓》
-土地 (19)- 4 《悪意の大梟》
2 《残忍な騎士》
1 《厚かましい借り手》
2 《天上の餌あさり》
-クリーチャー (9)-
4 《思案》
2 《暗黒の儀式》
2 《致命的な一押し》
1 《塵へのしがみつき》
2 《取り除き》
1 《湖での水難》
1 《衝動》
1 《リリアナの勝利》
2 《否定の力》
4 《意志の力》
1 《残忍な切断》
2 《ヴェールのリリアナ》
1 《最後の望み、リリアナ》
2 《大いなる創造者、カーン》
1 《精神を刻む者、ジェイス》
1 《悪夢の詩神、アショク》
-呪文 (32)-
1 《疫病を仕組むもの》
1 《毒の濁流》
1 《精神壊しの罠》
1 《基本に帰れ》
1 《Dystopia》
1 《大祖始の遺産》
1 《液鋼の塗膜》
1 《魔術遠眼鏡》
1 《罠の橋》
1 《三なる宝球》
1 《マイコシンスの格子》
-サイドボード (15)-
現環境のコントロールデッキといえば《アーカムの天測儀》と氷雪基本地形による強固なマナ基盤を売りにしたSnowkoが定番ですが、umeckはプレインズウォーカーを多数採用した青黒2色のコントロールで入賞しました。
除去とカウンターで相手の脅威を捌き、プレインズウォーカーでアドバンテージを稼いでいくデッキですが、《暗黒の儀式》や《古えの墳墓》があるためプレインズウォーカーの高速展開も可能です。
《大いなる創造者、カーン》を活用したシルバーバレット戦略も組み込まれているので、多くのデッキにメインボードから対応できる構成になっています。
☆注目ポイント
基本的にコツコツとアドバンテージを稼いでいくコントロールデッキですが、《暗黒の儀式》があるため最序盤に《ヴェールのリリアナ》や《大いなる創造者、カーン》をプレイすることも可能です。《悪夢の詩神、アショク》はレガシーではあまりみかけないプレインズウォーカーですが、[-3]のバウンス能力は青黒では貴重な置物対策になります。
フェッチランドや軽いスペルを多用するため墓地が溜まりやすいので、「探査」クリーチャーである《天上の餌あさり》が採用されています。《紅蓮破》や《赤霊破》には弱くなりますが、攻撃できれば十分なアドバンテージが取れるクリーチャーです。
環境にはDredgeやHogaakをはじめとした墓地活用デッキ、《戦慄衆の秘儀術師》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》のように墓地をリソースとして使うデッキが多いので、《塵へのしがみつき》はメインから採用できる無駄にならない対策スペルになります。
サイドボードには比較的珍しい《Dystopia》が採用されています。白と緑への色対策カードであり、このタイプのデッキでは触りにくい《森の知恵》や《運命の神、クローティス》といったエンチャントを対処できる貴重なカードです。Temur DelverやDeath and Taxes、Snowkoなど多くのマッチアップで活躍が期待できます。
Elves
2 《Bayou》
2 《Tropical Island》
2 《ドライアドの東屋》
2 《霧深い雨林》
2 《吹きさらしの荒野》
2 《樹木茂る山麓》
1 《新緑の地下墓地》
4 《ガイアの揺籃の地》
-土地 (19)- 4 《アロサウルス飼い》
4 《遺産のドルイド》
4 《イラクサの歩哨》
4 《クウィリーオン・レインジャー》
4 《ワイアウッドの共生虫》
2 《樺の知識のレインジャー》
4 《エルフの幻想家》
1 《漁る軟泥》
1 《エルフのチャンピオン》
2 《孔蹄のビヒモス》
-クリーチャー (30)-
『Jumpstart』から《アロサウルス飼い》が登場して以来コンスタントに勝ち続けているElves。今大会で優勝したリストは《王冠泥棒、オーコ》《トレストの使者、レオヴォルド》《狼狽の嵐》のために青をタッチしたバージョンでした。青を足したことで、苦手なコンボデッキに対しても若干の耐性がついています。
☆注目ポイント
これまでは部族シナジーを活用したコンボやビートダウン以外の勝利手段はほとんどありませんでしたが、サイドボードに《王冠泥棒、オーコ》を採用することで対応力が増しています。スイーパー対策はもちろん、厄介な《虚空の杯》にも対処しやすくなっているのです。
青をタッチしてSultaiにすることにより強力な《トレストの使者、レオヴォルド》を使えるようになりました。エルフなので部族シナジーの恩恵を受けることができ、対戦相手のキャントリップや《森の知恵》の追加ドローを禁止するため、コントロールやコンボとのマッチアップで特に強さを発揮します。
相手のドローを止めるだけではなく、自軍のクリーチャーが除去されてもアドバンテージを取れるようになるので、相手にとっては厄介なクリーチャーとなります。サイドボード後は《緑の太陽の頂点》の有力なサーチ先として活躍します。
メインとサイドにそれぞれ1枚ずつ採用されている《エルフのチャンピオン》は環境のトップメタが《森》を採用していることに着目したクリーチャー選択といえるでしょう。対SnowkoやTemur Delver、ミラーマッチなどで光る1枚です。全体強化は打点が上がるだけではなく、Snowkoが採用している《疫病を仕組むもの》やTemur Delverの《猛火の斉射》対策にもなります。
Legacy Challenge #12228512
優勝はEureka Show and Tell
2020年11月16日
- 1位 Eureka Show and Tell
- 2位 Urza
- 3位 TES
- 4位 Izzet Delver
- 5位 Izzet Delver
- 6位 Shark Still
- 7位 Hogaak
- 8位 Omni-tell
トップ8のデッキリストはこちら
今大会のプレイオフはOmni-tellやTESといったコンボが多く、Snowkoの姿はみられませんでした。
Delver系については定番のTemur Delverではなく、《スプライトのドラゴン》をフル搭載して火力スペルを増量したクロックスピード重視のIzzet Delverが残っていたのも印象的でした。
デッキ紹介
Eureka Show and Tell
2 《冠雪の森》
2 《虹色の眺望》
2 《Tropical Island》
1 《神秘の聖域》
4 《霧深い雨林》
1 《溢れかえる岸辺》
1 《汚染された三角州》
1 《すべてを護るもの、母聖樹》
1 《裏切り者の都》
-土地 (20)- 2 《氷牙のコアトル》
1 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
3 《引き裂かれし永劫、エムラクール》
-クリーチャー (6)-
すっかり定番となった《氷牙のコアトル》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》をタッチしたミッドレンジ寄りのOmni-tellですが、優勝デッキは《Eureka》までも加えていました。
《夏の帳》をメインから採用しているので青いデッキにも強く、《意志の力》1枚ぐらいなら軽く乗り越えることができます。《氷牙のコアトル》や《ウーロ》などコンボを決めるまで時間を稼ぐ手段があるので、Delver系との相性も緩和されています。
☆注目ポイント
《ウーロ》はアグロ相手にはライフゲインによってコンボを決めるまでの時間を稼いでくれるだけではなく、コンボ以外の勝ち手段にもなります。特にDelver系やSnowkoのようなカウンターでコンボを妨害してくるデッキとのマッチアップで重宝します。
《Eureka》は追加の《実物提示教育》のように機能するスペルです。緑のダブルシンボルのため《実物提示教育》よりもプレイすることは難しくなりますが、天敵である《紅蓮破》と《赤霊破》で対処されないという強みがります。
ほかの緑を足すメリットとしては、《森の知恵》や《花の絨毯》などが使えることです。手札とマナでアドバンテージを得ることで、コンボデッキとしてのプレッシャーをかけながらミッドレンジプランを駆使して戦うことが可能となります。
《崇高な天啓》は『基本セット2021』から登場した強力な効果を持つ重いスペルになりますが、《全知》設置後の《狡猾な願い》のサーチ先として採用されています。
総括
Eternal Weekend後も、レガシー環境は多様性と健全性が保たれているようですね。『統率者レジェンズ』のリリースまで、この環境が続きそうです。
気になる『統率者レジェンズ』の新カードですが、個人的に注目しているのは宮廷シリーズの《狡猾の宮廷》になります。統治者になることでアドバンテージが取りやすく、SnowkoやDelver系といった青ベースのデッキで使われそうです。「切削」は《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の「脱出」コストを稼いでくれるので、可能性を感じています。レガシーで使えそうなカードがいくつもあるので、いろいろと試してみることをおすすめします。
USA Legacy Express vol.174は以上になります。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!