ヒストリックでコントロールデッキの可能性を探る

Gregory Orange

Translated by Kohei Kido

原文はこちら
(掲載日 2020/11/30)

はじめに

ヒストリックでは高速で敗北に至ってしまうことも珍しくなく、そういった勝利方法をとるデッキも多岐に及んでいます。相手の動きに対処していく戦略のデッキを使いたければ、汎用的な解答をデッキに備えながら自らのデッキにも強力な勝利手段を用意しなければいけません。

アゾリウスコントロール

ドミナリアの英雄、テフェリー

ヒストリックを再開するたびに「今なら青白コントロールが使えないかな?」と自問自答しています。使える状況であれば私が一番好きなアーキタイプなのですが、どのフォーマットでもデッキとして一番いい選択肢になることは稀です。前回ヒストリックで青白コントロールを試したときから使えそうなカードが何枚か追加されました。

奔流の機械巨人

《奔流の機械巨人》はスタンダードで使えた頃から好きなカードでした。残念ながら青白コントロールで墓地から再利用したいカードは多くありません。もし打ち消し呪文しか再利用できないなら《大食の巨大鮫》を採用した方がマシでしょう。墓地から再利用できるとうれしいカードも存在していますが、採用するほどかと言われると疑問です。たとえば《崇高な天啓》《奔流の機械巨人》と組み合わせるとすばらしい働きをしますが、両方デッキに入れたらデッキに重いマナ・コストのカードが多くなりすぎそうです。

スカイクレイブの亡霊

《スカイクレイブの亡霊》は世に出てからさまざまなフォーマットで使われています。《神の怒り》との相性はよくありませんが、《スカイクレイブの亡霊》が死亡したあとにトークンを相手が出してきた残りのクリーチャーもろとも一掃できることが多いです。《スカイクレイブの亡霊》によって《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《屑鉄場のたかり屋》のように、繰り返し戦場に出てくる脅威を追放できるのは魅力的に感じます。プレインズウォーカーに対する解答としても優れていて、《エルズペス、死に打ち勝つ》で戦場に戻したいようなその他のパーマネントに対する解答でもあります。

精神迷わせの秘本

《精神迷わせの秘本》はヒストリックで一番お気に入りのドロー呪文です。相手が《覆いを割く者、ナーセット》を出していても、相手のターンに起動すればドローする機能を果たせるのも好きです。ドローするマナの余裕がなくても占術を繰り返してライフを得られるので悪くはないカードです。

スゥルタイコントロール

自然の怒りのタイタン、ウーロ思考囲い

スゥルタイは現在ヒストリックで流行っているデッキでその理由も理解できます。《ウーロ》《思考囲い》の組み合わせがデッキを強力にしています。

いくつかのバリエーションがあるデッキです。《世界を揺るがす者、ニッサ》《ハイドロイド混成体》を用いて自分のターンに動くタイプのデッキもあります。でも私の好みは《サメ台風》や打ち消し呪文を使って相手のターンに動くデッキです。大きいサイズの《ハイドロイド混成体》を出しても相手が《上流階級のゴブリン、マクサス》を唱えて大量のゴブリンを出したら抵抗できません。

致命的な一押し

『カラデシュリマスター』で一番わくわくするカードの一つが《致命的な一押し》です。優れたカードなのはもはや自明ですが、「紛争」の条件を達成するのは必ずしも簡単ではなく、対象にとれる範囲も狭いです。《取り除き》と違って《覆いを割く者、ナーセット》を除去できませんし、繰り返し戦場に戻ってくるクリーチャーに対する優れた解答でもありません。だから単体除去呪文は複数の呪文で散らした方がいいかもしれないと考えています。

ヤヘンニの巧技

《ヤヘンニの巧技》《衰滅》《絶滅の契機》《肉儀場の叫び》と並んで黒い全体除去として用いるに値するカードです。どれもメリットとデメリットがあります。いずれも必ず全体除去できるカードではありません。《ヤヘンニの巧技》は全体除去としてベストのカードではありませんが、相手のクリーチャーを全部除去しながら《覆いを割く者、ナーセット》を出せる場合があるというのはとても魅力的に感じます。上振れの存在しているカードです。

オルゾフスタックス

悪魔の契約

《悪魔の契約》は自滅しない限りとても強力なカードです。《予言された壊滅》で生け贄に捧げると《悪魔の契約》をうまく処理しながらバリューを引き出せます。当然ながら、相手が生け贄に捧げられるパーマネントを場に出していないとこれはできません。幸い、《空を放浪するもの、ヨーリオン》が「相棒」なのでブリンクして《悪魔の契約》をリセットすることならいつでもできます。もし《悪魔の契約》で敗北することが多すぎると感じたなら《運命のちらつき》《群れの番人》《悪魔の契約》をリセットする手段にはなります。

墓掘りの檻

現状のヒストリックで《墓掘りの檻》はとても優れたカードです。つまりフォーマットが健全な状況ではないとも言えるかもしれません。モダンでメインデッキに《外科的摘出》が採用されていた頃を思い出します。《墓掘りの檻》が腐ることは稀です。どのデッキも《墓掘りの檻》にひっかかるカードを何かしら使っているからです。《墓掘りの檻》に対してとても脆弱なデッキも存在していて、そういうデッキに対して簡単に勝利を拾えることもあります。《エルズペス、死に打ち勝つ》との相性が悪いのは少し気にかかりますが、不要だと思えば《予言された壊滅》で生け贄に捧げられる軽いマナ・コストのパーマネントではあります。

オルゾフの簒奪者、ケイヤ

《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》は何かすごいことをしてくれるカードではありませんが、全てのモードがそれなりに強い効果です。《エルズペス、死に打ち勝つ》で戦場に戻せるパーマネントの数が増えるのもいいことです。オルゾフカラーのデッキで使用できて、マナ・コストの軽い優れたプレインズウォーカーは多くありません。《覆いを割く者、ナーセット》はデッキとの相性も良く、《ウーロ》に対して優れた面のあるカードでもあります。青を足してエスパーカラーにするのもひとつの選択肢でしょうね。

エスパースタックス

おわりに

残念ながら『カラデシュリマスター』は期待されたほどにはヒストリックの環境を変えられませんでした。カラデシュ次元に初訪問したときは当時の基準では強いカードの多すぎるブロックでした。スタンダードでは猛威を振るったブロックで複数のカードが最終的に禁止されました。今はスタンダードでカードが禁止されるのが常態化しています。

霊気池の驚異

《霊気池の驚異》も往年の強さではないようです。《ウーロ》を「脱出」させれば勝てるのに、わざわざエネルギーを貯めて《霊気池の驚異》から《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を出す必要はどこにもありません。

グレゴリー・オレンジ (Twitter)

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Gregory Orange アメリカ出身のプロプレイヤー。HotSauceGames.comの一員であり、ゴールド・レベル・プロとしてプロシーンの第一線で長年戦っているアメリカの強豪。グランプリ・サントニオ2017優勝のほか、プロツアーでも安定した成績を残し続けている。2018年8月に開催されたマジック25周年記念プロツアーでアレン・ウー、ベン・ハルと共に優勝。さらなる研鑽を積むべく、チームメイトたちと共にHareruya Prosに加入した。 Gregory Orangeの記事はこちら