Translated by Kohei Kido
(掲載日 2020/11/30)
はじめに
みなさん、こんにちは!
今日は80枚でデッキを組むことについての私の考えを共有しようと思います。多くの人はマジックを始めたときにフォーマットで定められている最小枚数でデッキを組むべきだと教わったことでしょう。構築フォーマットなら60枚、リミテッドなら40枚です。これはなぜでしょうか?
とても単純な話です。デッキの枚数が少なければ少ないほど入っているカードを引く確率が上がります。デッキを組むときは、特定の強いカードやメカニズムを中心としてデッキを組みますよね。そして意図しているゲームプランをできるだけ確実に実行したいのです。
しかし、デッキの中のカードの間でカードパワーに優劣がなく、どのカードを引いてもいいのだとしたらどうでしょう?特定のメカニズムを中心に組まれたデッキではなかったら?メインデッキから何を削ればいいかわからなくて、3枚ずつカードを入れる頻度はどれくらいあるでしょうか?
80枚でデッキを組むメリット
今のスタンダードで80枚のデッキを組むことは、簡単であるだけではなくメリットもあることなのです。まず一番重要なこととして、メタゲーム内で成果を上げているデッキの1つにディミーアローグが存在しています。このデッキの優れているところは、2つのゲームプランを使いこなせるところです。
アグロデッキとしてビートダウンすることも、ならず者クリーチャーの誘発能力と《遺跡ガニ》を組み合わせて相手をライブラリーアウトさせることもできます。デッキの枚数を80枚にして20枚増やすと、相手はライブラリーアウトさせることが難しくなります。
デッキの枚数を増やすとサーチカードも強くなります。今のスタンダードにその手のカードはあまり多くありませんが、《寓話の小道》《耕作》《真面目な身代わり》のようなカードでも、サーチする基本土地の枚数が足りなくなることがなくなるのです。
「脱出」についても同じことが言えます。多くのデッキはロングゲームを戦う力を持っており、試合は長引くことが多々あります。そうなると、墓地はリソースとなるのです。デッキと墓地の枚数が多く、「脱出」を利用して多くの呪文を唱えられるようになると試合の勝敗を左右することがあります。
私のヨーリオンへのアプローチ
ではなぜヨーリオンデッキはそこまで多くないのでしょうか?
《空を放浪するもの、ヨーリオン》でデッキを組もうとすると、まずは強く使えるデッキについて考えてしまいます。《ヨーリオン》のブリンクする能力を活かせるデッキを組んで、1枚は「相棒」の枠で3枚はメインデッキに入ります。
このデッキ構築方法はローテンション前のスタンダードから、さまざまなバージョンのヨーリオンデッキで成功を収めていた方法です。ほかのデッキもヨーリオンデッキに対応していった結果、それでもヨーリオンデッキが強いこともあれば、そこまで強くはなかったということもあります。
でも私は、ヨーリオンデッキの構築に対して別のアプローチをとりたいと思っています。《ヨーリオン》を中心としてデッキを組むのではありません。20枚のカードを増やしたことで弱くならないデッキ。そのうえで《ヨーリオン》を唱える余地のあるデッキ。そういうデッキで追加のリソースとして足したいだけなのです。
たとえばディミーアコントロールについて考えてみましょう。打ち消し呪文と除去呪文がメタゲームにおいて強いとき、このデッキはよい選択肢となることでしょう。普通であれば、60枚のデッキを組みながら《取り除き》《無情な行動》《血の長の渇き》の枚数について考えなくてはならず、12枚も要らないからバランスを取りながらそれぞれ適切な枚数を入れることが多いはずです。ついでに《絶滅の契機》も2~3枚足したいかもしれません。打ち消し呪文についても同じような考え方をするでしょう。最終的にできあがったデッキリストには1枚、2枚、あるいは3枚入っているカードが複数種類あるはずです。
もし、デッキの枚数を80枚に増やしてもそれぞれのカードを引く確率はあまり変わりません。2~3枚入れる代わりに4枚入れるからです。そうすることで、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」として足しつつ、ローグに対する「切削」耐性をつけることもできるのです!
ただ80枚にする場合は、デッキのマナ基盤に注意が必要です。2色土地8枚と16枚の基本土地を使った60枚のデッキと、8枚の2色土地と24枚の基本土地を使った80枚のデッキは同じではありません。現在のスタンダードでは、一部の色の組み合わせのほうがほかの色の組み合わせよりもマナ基盤が安定していて、これは80枚のデッキになっても同様です。
サンプルデッキ:ディミーアコントロール
幸運にも私は、このデッキを使って先週末のNRG Series Standard Trialで優勝できたので、これよりいい根拠となるものはないでしょう。
8 《沼》
4 《寓話の小道》
2 《ゼイゴスのトライオーム》
4 《清水の小道》
4 《欺瞞の神殿》
2 《這い回るやせ地》
-土地 (32)- 2 《半真実の神託者、アトリス》
-クリーチャー (2)-
2 《塵へのしがみつき》
4 《無情な行動》
4 《ジュワー島の撹乱》
2 《取り除き》
2 《本質の散乱》
2 《否認》
4 《中和》
4 《絶滅の契機》
2 《巻き直し》
2 《崇高な天啓》
4 《海の神のお告げ》
2 《エルズペスの悪夢》
4 《サメ台風》
3 《精神迷わせの秘本》
3 《悪夢の詩神、アショク》
-呪文 (46)-
3 《神秘の論争》
2 《苦悶の悔恨》
2 《影の評決》
1 《塵へのしがみつき》
1 《エレボスの介入》
1 《取り除き》
1 《精神迷わせの秘本》
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-サイドボード (15)-
大会結果とデッキリストはこちらのページで確認できます。さらに大会の映像カバレージも残っており、最後のほうでグルールアドベンチャーと対戦した決勝の様子が見られます。個人的には見ていて面白い試合だと思います。
サンプルデッキ2:白単コントロール
もう1つアイデアがあって、マナ基盤を単純にして安定させるために白単コントロールを試しました。白のカードのボードコントロール力は優れていると思っています。《ガラスの棺》《スカイクレイブの亡霊》《エルズペス、死に打ち勝つ》は、いずれも《空を放浪するもの、ヨーリオン》と相性がいいですからね。
4 《未知の岸》
3 《アーデンベイル城》
4 《這い回るやせ地》
4 《スコフォスの迷宮》
4 《光輝の泉》
-土地 (29)- 2 《石とぐろの海蛇》
4 《スカイクレイブの亡霊》
4 《真面目な身代わり》
1 《軍団の天使》
-クリーチャー (11)-
4 《エメリアの呼び声》
2 《オンドゥの転置》
4 《メレティス誕生》
2 《エルズペス、死に打ち勝つ》
4 《ガラスの棺》
4 《黄金の卵》
4 《精神迷わせの秘本》
4 《スカイクレイブの秘宝》
4 《見捨てられた碑》
4 《精霊龍、ウギン》
-呪文 (40)-
3 《軍団の天使》
2 《素早い反応》
2 《ヘリオッドの介入》
2 《魂標ランタン》
1 《エルズペス、死に打ち勝つ》
1 《太陽の宿敵、エルズペス》
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-サイドボード (15)-
《見捨てられた碑》を利用したシナジーにもまだ開拓されていない領域があると思っていて、《空を放浪するもの、ヨーリオン》とも相性がいいと考えています。現在のスタンダードの環境は多様で、このデッキですべてのデッキと戦えるとは思っていませんが、このような一風変わったデッキを使うのは楽しかったです。
おわりに
「相棒」メカニズムはとても興味深く、それぞれ異なる制約の中でデッキを組むのは楽しいものです。ただ《ヨーリオン》に話を限ると、デッキを80枚にする条件は制約というよりもむしろメリットだと考えていて、《ヨーリオン》がお気に入りの「相棒」になるのは無理もないでしょう。
『ゼンディカーの夜明け』シーズンは終わりに近づいていて、そのうち新しいセットが世に出てまたスタンダードの世界での新しい冒険が始まります。だと考えていて、《ヨーリオン》はまだまだスタンダード落ちしないので、この「伝説のクリーチャー 鳥・海蛇」で作られるデッキはこれからもあるでしょう。
では最後に一言、「80枚」こそが現代の「60枚」なのです!最後まで読んでくれてありがとう!
ファブリツィオ・アンテリ (Twitter)