ウルザとサイコロ工場のパラドックス装置

Jacob Nagro

Translated by Kohei Kido

原文はこちら
(掲載日 2020/12/17)

はじめに

うねりの結節霊体のヤギ角永遠溢れの杯

最近、自分の中でマジック熱が高いです。フォーマットの中ではモダンをやることが多く、面白いデッキを探したり、環境最強のデッキを探したりして時間を過ごしています。面白いデッキを探す旅に出ているタイミングで、自分がかつていじっていたダイスファクトリーに様々な勝利手段を組み合わせて調整しました。

パラドックス装置最高工匠卿、ウルザ

最後に調整したときにはまだ世に出ていなかった《最高工匠卿、ウルザ》が使えるようになっています。アーティファクトまみれのデッキと相性がいいカードで、期待の新人です。《ウルザ》アーティファクトデッキにとってシンプルに使いやすいカードです。さらに蓄積カウンターがたくさん乗った《永遠溢れの杯》《霊体のヤギ角》との組み合わせが強いことからダイスファクトリーで従来から採用されていた《パラドックス装置》とも相性がいいカードです。Magic OnlineのModern Leagueを何周かしたあとに、このお気に入りのデッキリストに行きつきました。

デッキリスト

このデッキがものすごく強かったり、モダンでtier1デッキだったりすると主張したいわけではないのですが、Modern Leagueで使うには十分な強さのデッキで、しかも使っていて楽しいのです。

ダイスファクトリー操業マニュアル

大いなる創造者、カーン

このデッキは要するにコンボデッキです。他のコンボデッキと比べると速度は落ちるのですが、《大いなる創造者、カーン》《ウルザ》による「フェア」な勝利手段を持っているというメリットがあります。けちストームのように替えの利くパーツをたくさん採用することによって相手からの妨害に対する抵抗力を得るコンボデッキも存在しています。このデッキは勝ち手段が多様であることによって抵抗力を得ていて、戦闘ダメージや《カーン》+《液鋼の塗膜》のような勝利手段を駆使することになります。

コンボデッキだということを念頭に、勝利ルートについて解説していきましょう。

崇高な工匠、サヒーリ地核搾りうねりの結節

このコンボは最速で3ターン目に成立します。《崇高な工匠、サヒーリ》を使って《うねりの結節》《永遠溢れの杯》《霊体のヤギ角》にするパターンか、《地核搾り》《うねりの結節》を合計2枚持っていれば3ターン目に《永遠溢れの杯》《霊体のヤギ角》で4マナ出る状態にするパターンがあります。そこからは《パラドックス装置》を唱えて、軽いマナ・コストの呪文でマナを出すアーティファクトをアンタップしたら《カーン》を唱えるだけです。手札にいろいろなカードがそろっている必要はありますが、3ターン目に勝てるパターンがあるのはいいことですね。速いデッキと当たったときに必要となりますが、モダンの速いデッキはあまり妨害に長けていないのでコンボパーツがそろってさえいれば成功しやすいです。

《パラドックス装置》を使って勝利する試合では、《カーン》で無限マナを出してから《歩行バリスタ》を持ってくることで勝利する場合が多いです。でもそこまでの道筋は多様です。《ウルザ》はこのデッキの《パラドックス装置》関連の要素を強くしました。《パラドックス装置》でアンタップできるマナを増やすだけでなく、一番下の起動型能力もうまく噛み合っています。呪文がめくれるたびに土地でないパーマネントをすべてアンタップしてもう1回起動型能力を使えるからです。確実に勝利できる手段ではありませんが、《ウルザ》から5マナ以上出る状態からこれを開始すれば勝利することも珍しくありません。

海門修復

起動型能力で呪文をめくるたびにもう1回能力を使えて、呪文を多くめくると余剰のマナが貯まっていくため、そこで土地をめくってしまってもまだ能力を使える状態になります。一番下の起動型能力を駆使する状況になると《海門修復》が活躍します。ハズレの土地が22枚から18枚に減らせる上に、《海門修復》をめくって唱えると欲しい呪文が手札に来る可能性もあります。

《カーン》が当たれば先ほどの表で3段階目に位置するのでもう勝利できるはずです。つまり《ウルザ》《パラドックス装置》の組み合わせがあれば、土地をめくり過ぎてしまう前に《カーン》が当たれば勝てるゲームにできるのです。(《古きものの活性》《海門修復》で探すこともできます!)

構築物霊気装置

最終的には《ウルザ》《カーン》を探すにしても、《ウルザ》《パラドックス装置》と相性がいいコンボパーツなのは上記の理由からです。《大いなる創者、カーン》《ウルザ》《パラドックス装置》が間接的に生み出すマナと組み合わさるとアンフェアですが、それぞれ《パラドックス装置》抜きでも試合に勝利できるカードでもあります。《ウルザ》《サヒーリ》と相性がいいカードです。《サヒーリ》で霊気装置を生みだして《ウルザ》の構築物を大きくしつつマナをたくさん生みだせるだけでなく、適当なアーティファクトを構築物にして対戦相手のライフをおびやかして戦闘ダメージで勝利することもできます。

《カーン》《サヒーリ》が生む構築物で自身を守りながら起動回数を稼ぐことができます。《罠の橋》《液鋼の塗膜》で対戦相手の土地を破壊するなどして時間を稼ぐだけで、最終的に《パラドックス装置》で勝利できる試合もあります。

古きものの活性

ここまで解説してきた2種類のカード、《カーン》もしくは《ウルザ》を試合中に引いてくることは勝利するためにとても重要です。勝つために《サヒーリ》《パラドックス装置》は毎回必要なわけではありませんが、《ウルザ》《カーン》も出せなかった試合で勝てる可能性はとても低いのです。《ウルザ》《カーン》《古きものの活性》がどれもない手札は必ずマリガンすべきだと言いたいわけではありませんが、そういう手札になるだけでやりづらくなるのがデッキの弱点ではあります。

仕組まれた爆薬

デッキの呪文を入れられる枠を4枠割いて《仕組まれた爆薬》を採用していますが、これが正しいのかは自信が持てません。蓄積カウンターのシナジーがありますし、アグロと対戦したときに時間を稼いでくれます。それに加えて0マナのアーティファクトであるだけで《ウルザ》《パラドックス装置》と組み合わさったときに価値を持てます。でも《大祖始の遺産》や、もしかすると《血清の幻視》のようなアーティファクトシナジーのないカードでもデッキを掘り進められるカードを採用すべきなのかもしれません。《仕組まれた爆薬》を0枚にすることは考えられませんが、現時点では3枚目以降は変更可能な枠だと考えています。

ちょっとしたテクニック

四肢切断夏の帳

サイドボードの話を少しだけしようとは思いますが、カーン用ウイッシュボードではないカードは4枚しかありません。《カーン》でサイドから持ってくるほどではないけどマッチアップとしては使いたいカードだという理由で《虚空の杯》のようなカードをサイドインすることはあります。マッチアップ次第ではありますが、最大でも《パラドックス装置》《サヒーリ》《仕組まれた爆薬》2枚ずつ程度しかサイドアウトすることはありません。

石のような静寂溜め込み屋のアウフイシュ・サーの背骨

土地枠で《爆発域》が2枚採用されていることにもお気づきかもしれません。《カーン》《石のような静寂》《溜め込み屋のアウフ》のようなカードを乗り越えるための手段です。対策のためにサイドボードには《イシュ・サーの背骨》も入っています。これらのカードを場に出されてしまっても、《ウルザ》《パラドックス装置》を使うことはできます。《カーン》を引き当てたら《祖先の像》で無限マナを生みだしてから《イシュ・サーの背骨》で相手のアーティファクト対策用パーマネントを破壊できます。無限マナから《ウルザ》でもう1枚《カーン》を探して《歩行バリスタ》を出せば勝ちです。

自然の要求

0

現在、《石のような静寂》がそこまで用いられていないのは追い風です。《自然の要求》のような置物対策カードをサイドにとらずにカーン用ウィッシュボードを増やすことができています。《虚空の杯》《イシュ・サーの背骨》は必須カードではないですが、カーン用ウィッシュボードの残りのカードは残すべきだと考えています。

このデッキでは変わった動きをすることがあります。今まで実践したことや考えてみたことがあるものの一部を紹介します。

モダンで強いデッキ

創造の座、オムナス自然の怒りのタイタン、ウーロ

私の直近の記事では《創造の座、オムナス》が強いので《ウーロ》系ミッドレンジデッキが4色に色を増やすだろうと予想しましたが、正解だったようです。現在モダンで最強のアーキタイプもこのデッキだと考えていますが、抜きんでた最強デッキというほどでもないと思います。

沸騰血糊の雨

過去数か月間の研究の結果、強いデッキは5つに絞られました。オムナスミッドレンジ、ラクドスシャドウ、セレズニアランプ、ヘリオッドカンパニー、そして《獲物貫き、オボシュ》を使った赤単果敢です。これらのデッキは自分から攻めていく力があるだけでなく、他のデッキに対してできることもたくさんあります。モダンの常として、警戒されていないタイミングで使えば強いデッキは他にもあります。ドレッジや土地が入っていないコンボデッキ、《むかつき》系デッキはこれに頻繁に当てはまります。でも《沸騰》《血糊の雨》のようなカードも試されていますが、最初に挙げた5つのデッキを完璧に対策するのは困難だと考えています。

神秘の聖域イリーシア木立のドライアド

これらの強いデッキはピンポイントの対策カードの影響を和らげる効果的な手段を持ち合わせています。さまざまなアーキタイプが《沸騰》を使っています。《神秘の聖域》《イリーシア木立のドライアド》を用いるデッキに対して劇的に効く瞬間があるのも事実ですが、恥ずかしくなるくらい効かないこともあります。ランプデッキは《イリーシア木立のドライアド》を場に出さなくていいなら出さないことで回避するだけです。

《神秘の聖域》を使うデッキは《沸騰》のために打ち消し呪文を構えていられるだけではなく、《レンと六番》《ウーロ》《創造の座、オムナス》《精神を刻む者、ジェイス》《ドミナリアの英雄、テフェリー》のどれかをコントロールしている場合や、《約束の刻》で大量のゾンビを出したあとならもう《沸騰》させられてもあまり気にならないのです。

この2種類のデッキに対して相性が悪すぎるから勝つチャンスを生むために《沸騰》をデッキリストに含めたいという気持ちは理解できますが、本当に必要だとは思えません。

おわりに

ダイスファクトリーを試してみた人が、勝利に結びつけられるか少なくとも楽しんでくれるといいと思っています。こういうコンボデッキを研究するのは大好きです。毎試合コンボを起動するだけではありませんからね。《仕組まれた爆薬》《爆発域》でコントロールのように振る舞うのも楽しいですし、《ワームとぐろエンジン》のためにランプするのも楽しいのです。

神秘の炉古きものの活性

ダイスファクトリーにはウルザランドと《神秘の炉》を用いる無色のデッキも存在していますが、《古きものの活性》はデッキ内で相当強い部類のカードだと考えているので、あまりデッキを無色にはしたくありません。ウルザランド関連の部分はあまり魅力的に感じられないです。《神秘の炉》を入れて緑マナや《古きものの活性》と組み合わせたデッキはありえるかもしれません。《パラドックス装置》で勝つというルートのために《ウルザ》を用いると場のアーティファクトを多く必要としますが、《ウルザ》は単独でもさまざまなマッチアップで強いので必要だと考えています。特に構築物によって戦場で優位に立てるという要素が大きいです。

現在のモダンはパワーレベルの均衡という意味ではそれなりに健全だと思っていますが、それでも《神秘の聖域》《ウーロ》は禁止されるべきだと考えています。試合がとてもワンパターンになりますし、ミッドレンジやコントロールの他のデッキを圧迫しています。《死者の原野》《レンと六番》も強すぎるとは感じていますが、その理由の一端には《神秘の聖域》《ウーロ》との相性の良さがあります。

オパールのモックス信仰無き物あさり

禁止カードを増やすこと以外で可能なのは《オパールのモックス》《信仰無き物あさり》の解禁かもしれません。これらのカードはとても強力ですが、それを利用したデッキの調整に多くのお金と時間を使ったのに禁止されてがっかりしたプレイヤーはたくさんいます。ヴィンテージの《Bazaar of Baghdad》《Mishra’s Workshop》のようにフォーマットを象徴するカードだと感じていました。主犯を野放しにして副犯を解禁するのは奇妙には映りますが、プレイヤーの楽しさのためなら有りなのかもしれないですね。

いつも読んでくれてありがとう!疑問があればTwitterで気軽に質問してください。特にダイスファクトリーを良くする発見があったら是非知りたいです。

ジェイコブ・ナグロ(Twitter)

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Jacob Nagro アメリカ出身のプロプレイヤー。 彼の最初の活躍はグランプリ・デンバー2016でのことで、「青白フラッシュ」を用いてトップ8に入賞した。その後も惜しまぬ努力を続けた結果、彼の労力は2016-2017シーズンのシルバーレベルという形で報われることになる。 《大いなるガルガドン》と《恐血鬼》が印象的な「赤黒ブリッジヴァイン」を駆使してマジック25周年記念プロツアーで7位入賞を果たす。そしてこの素晴らしい成績は彼をゴールドレベルへと押し上げたのだ。 Jacob Nagroの記事はこちら