Translated by Kohei Kido
(掲載日 2020/12/22)
はじめに
マジックに魅了されているみなさんこんにちは!僕の記事へようこそ!
この記事では、『カルドハイム』予選ウィークエンドで使ったデッキとヒストリックについて語ったあとに、スゥルタイミッドレンジのサイドボードガイドを解説して締めるつもりです。
今大会のためにパラドックスコンボ、ラクドスサクリファイス、アゾリウスコントロールなどさまざまなデッキを試しました。最終的には、環境に合わせて一番柔軟に調整できるデッキを使うことにしました。多くのデッキに対して微有利か微不利の相性を持つスゥルタイミッドレンジです。本題に入る前に、ほかのデッキについてどう考えているかとメタゲームでの感想をお話しします。
主要なデッキの印象とメタゲーム
パラドックスコンボ
パラドックスコンボは楽しいデッキですが弱点もあるデッキです。ゲーム開始時の手札が強くてとんでもない上振れを見せることもあれば、逆に上手く回らないこともあるのです。伝説のパーマネントがたくさんデッキに入っているので重ね引きしたくないうえに、「土地」「マナを生むパーマネント」「増やしたマナを使うためのカード」の3種類をいいバランスで引かないといけません。
また、クリーチャーに対する除去や打ち消し呪文も苦手です。いいデッキだとは思いますが、アゾリウスコントロール、スゥルタイミッドレンジ、ラクドスアルカニストのように積極的に妨害してくるデッキには苦戦することでしょう。パラドックスコンボがメタ上で数を増やしているので、スゥルタイミッドレンジにとってより戦いやすい環境になっています。
2 《森》
1 《山》
4 《繁殖池》
1 《踏み鳴らされる地》
4 《植物の聖域》
2 《尖塔断の運河》
2 《岩山被りの小道》
2 《河川滑りの小道》
-土地 (20)- 4 《ラノワールのエルフ》
4 《眷者の神童、キナン》
4 《湖に潜む者、エムリー》
3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー (15)-
3 《モックス・アンバー》
4 《彩色の宝球》
4 《精神石》
3 《改革派の地図》
2 《パラドックス装置》
4 《大いなる創造者、カーン》
1 《伝承の収集者、タミヨウ》
-呪文 (25)-
1 《祖先の像》
1 《隕石ゴーレム》
1 《萎れ》
1 《モックス・アンバー》
1 《上天の呪文爆弾》
1 《魔術遠眼鏡》
1 《聖域の門》
1 《霊気貯蔵器》
1 《金粉の水蓮》
1 《パラドックス装置》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《王神の贈り物》
1 《湧き出る源、ジェガンサ》
-サイドボード (15)-
サクリファイスデッキ
ラクドスもしくはジャンドのサクリファイスデッキは、ゴブリンが環境に多いと想定するならいい選択肢になります。メタがわからない場合にも無難な選択肢でしょう。強力で能動的なゲームプランを持っていてサイドボードも充実しています。
しかし、弱点の1つがスゥルタイミッドレンジなのです。これもスゥルタイにとって追い風ですね!「ジャンドサクリファイスはスゥルタイミッドレンジに対して有利なのではないか?」と考えている人もいるかもしれません。でも、どういう試合展開になるのか理解している人同士で、最適なデッキリストを使って、正しくサイドボードすればスゥルタイ側が有利だと考えています。サイドボードガイドまで待ちきれなかったら、前置きは飛ばして見てしまってもいいですよ!
3 《山》
2 《寓話の小道》
4 《血の墓所》
1 《泥濘の峡谷》
4 《竜髑髏の山頂》
2 《ロークスワイン城》
2 《ファイレクシアの塔》
-土地 (24)- 4 《大釜の使い魔》
2 《縫い師への供給者》
4 《戦慄衆の解体者》
4 《忘れられた神々の僧侶》
3 《屑鉄場のたかり屋》
4 《波乱の悪魔》
4 《真夜中の死神》
3 《悲哀の徘徊者》
-クリーチャー (28)-
2 《削剥》
2 《無情な行動》
2 《害悪な掌握》
2 《魔女の復讐》
1 《反逆の行動》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《炎鎖のアングラス》
1 《湧き出る源、ジェガンサ》
-サイドボード (15)-
4 《血の墓所》
4 《草むした墓》
4 《踏み鳴らされる地》
4 《岩山被りの小道》
4 《竜髑髏の山頂》
2 《花盛りの湿地》
1 《ファイレクシアの塔》
-土地 (24)- 4 《大釜の使い魔》
4 《忘れられた神々の僧侶》
2 《戦慄衆の解体者》
2 《屑鉄場のたかり屋》
4 《波乱の悪魔》
4 《悲哀の徘徊者》
3 《真夜中の死神》
1 《砕骨の巨人》
-クリーチャー (24)-
アゾリウスコントロール
アゾリウスコントロールを操るブラッド・バークレイ/Brad Barclayが『ゼンディカーの夜明け』チャンピオンシップを優勝しました。このデッキを使っていると、世界がなんでも自分の思いどおりになると感じるような引きをすることがあります。《アズカンタの探索》《吸収》《神の怒り》《ドミナリアの英雄、テフェリー》と順に唱えていって、忠誠度[+1]能力で2マナのカードを構えているような状況なら相手はどうしようもありません。
しかし問題は、ここまで完璧に事が進むことはほとんどないということです。さらにヒストリックのほとんどのデッキは「脱出」クリーチャー、「城」サイクル、《パンくずの道標》、「相棒」クリーチャーなどの手段によってロングゲームを戦い続ける継戦能力を有しています。一息つけるタイミングはほとんどなく、《ドミナリアの英雄、テフェリー》を場に定着させることが難しい状況も発生します。《ドミナリアの英雄、テフェリー》で土地をアンタップできるだけの余裕がある状況なら試合を有利に進めていることでしょう。
スゥルタイミッドレンジとの相性の話をすると、これもスゥルタイ側が有利だと思います。サイドボード前は《ドミナリアの英雄、テフェリー》が定着すると試合はアゾリウスコントロールの独走状態になります。ですが、サイドボード後は場に出すことが難しくなるのです。またまたスゥルタイに追い風ですね!
でもあなたが強硬なコントロールデッキ使いで、テフェリーを使うことをやめられないということもあるかもしれません(テフェリーを使いたくなる衝動には抗いがたいので責めたりはしませんよ)。そういう人のためにバークレイのデッキリストを調整したものを用意しました。
1 《霊気の疾風》
1 《物語の終わり》
4 《吸収》
4 《神の怒り》
3 《不可解な終焉》
2 《アズカンタの探索》
4 《排斥》
3 《サメ台風》
2 《墓掘りの檻》
3 《覆いを割く者、ナーセット》
4 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (35)-
2 《本質の散乱》
2 《機を見た援軍》
1 《厚かましい借り手》
1 《物語の終わり》
1 《空の粉砕》
1 《不可解な終焉》
1 《封じ込め》
1 《サメ台風》
1 《覆いを割く者、ナーセット》
-サイドボード (15)-
ゴブリン
ゴブリンは自分で使ってみたわけではありません。配信を見つつ、ゴブリンを『ゼンディカーの夜明け』チャンピオンシップで使用したライバルズ・リーグ所属の良き友人であるトラルフ・セヴラン/Thoralf Severinとデッキについて話しただけです。おそらくはスゥルタイミッドレンジに有利で、サクリファイスデッキとパラドックスコンボに不利なデッキです。スゥルタイがメタ上で数を増やしているので、ゴブリンを選ぶのが正しい選択となる時期がまた来ているのかもしれません。
《通報の角笛》はすばらしいカードで、環境に遅いデッキが多くなればなるほど強力になります。ゴブリンの対策としてよく用いられるのはクリーチャー除去と《霊気の疾風》ですが、《通報の角笛》はこれらのカードの対象となりません。《通報の角笛》とパラドックスコンボの対策になるので、あらゆる赤いデッキはメインデッキとサイドボードで合わせて3枚以上の《削剥》を入れるべきです。ただ、《削剥》がマジックの歴史上でも屈指の除去呪文であることを考えると、言うまでもないことかもしれませんね!
ラクドスアルカニスト
ラクドスアルカニストを試す時間も取れませんでしたが、メタゲーム上の立ち位置がいいデッキである可能性はあります。このデッキの立ち位置はスゥルタイミッドレンジに似ているのではないでしょうか?すでにスゥルタイミッドレンジの研究を進めていましたし、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を使わないという判断も下しにくいものなので、僕はスゥルタイを使い込むことを選びました。ラクドスアルカニストも将来的にはしっかり触りたいデッキですね。
スゥルタイミッドレンジ
さて、そろそろスゥルタイミッドレンジの話をしましょう。実は『カルドハイム』予選ウィークエンドでの僕の戦績は1-3でした。負けた相手はアゾリウスヨーリオン、オルゾフオーラ、スゥルタイミッドレンジです。どれも接戦ではあったのですが、対戦相手が一歩リードして試合を進め、僕の引きもあまり噛み合っていませんでした。競技マジックのプレイヤーであればこういう事態は常に覚悟していなければいけません。
このゲームの1つの要素であり、敗北してがっかりしたり、怒りを覚えたり、不運に思ったりしたときには必ずアレクサンダー・ヘイン/Alexander Hayneの逸話を思い出すことにしています。プロツアー予選で15回もトップ8止まりになったあとに、16回目の正直でプロツアーへの参加権を得られたのです。マーティン・ジュザ/Martin Juzaもグランプリに参加し始めてから7回も2日目参加が叶いませんでした。
現在トッププレイヤーとなっている人々も、高みに至るまでには敗北を繰り返す下積み時代があったのです。競技マジックには敗北がつきものです。リード・デューク/Reid Dukeに言わせれば「すべての敗北から学ぶことがある」ということになります。
スゥルタイか4色か
大会では負けてしまいましたが、正しいデッキを選んだと考えていて、デッキリストにも自信があります。スゥルタイに白を足して《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》を採用するのか否かという問題が脳裏に浮かぶかもしれません。現状のメタゲームなら白を足さずにシンプルなスゥルタイにしたほうがいいと思います。
サクリファイスデッキはそれほど多くなく、サイドボード後は《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》に対する解答がたくさん用意されています。サイドボードに《トカートリの儀仗兵》を入れるのも特に魅力的だとは思っていません。イクサラン生まれのこの人間クリーチャーはゴブリンに対して強いカードですが、2ターン目に白を含む2マナが出ることは稀で、自分の《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の戦場に出たときの誘発能力もなくしてしまいます。さらに、《通報の角笛》《群衆の親分、クレンコ》《ゴブリンの酋長》の勢いを削ぐこともありません。
要するに、白を足すという選択は多くのプレイヤーが《波乱の悪魔》を使っていると想定したときにとるといいでしょう。ただ、ミラーマッチで試合をリードする手段になるかもしれないので、《ドミナリアの英雄、テフェリー》を入れたタッチ白は試してみてもいいと思いました。そこまでの価値があるのかはわかりませんが、スゥルタイの3色だけでもほかのデッキに勝つためのカードは十分存在しています。
デッキリスト
『カルドハイム』予選ウィークエンドで使ったデッキリストはこちらです。
2 《森》
1 《沼》
4 《寓話の小道》
4 《ゼイゴスのトライオーム》
4 《繁殖池》
4 《草むした墓》
1 《湿った墓》
1 《異臭の池》
2 《水没した地下墓地》
1 《内陸の湾港》
1 《ロークスワイン城》
1 《ヴァントレス城》
-土地 (28)- 3 《ハイドロイド混成体》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
1 《破滅を囁くもの》
-クリーチャー (8)-
2 《致命的な一押し》
4 《成長のらせん》
2 《霊気の疾風》
2 《取り除き》
2 《物語の終わり》
2 《大渦の脈動》
1 《絶滅の契機》
1 《覆いを割く者、ナーセット》
4 《世界を揺るがす者、ニッサ》
-呪文 (24)-
大会ではスゥルタイと多く当たると想定していたので、《覆いを割く者、ナーセット》と《破滅を囁くもの》をメインデッキに入れてミラーマッチの1ゲーム目で少し有利になるようにデッキを組んでいました。逆にゴブリンとサクリファイスは少ないと想定していたため、《絶滅の契機》を1枚サイドボードに移しています。
スゥルタイミッドレンジは、メタゲームを予想してメインデッキとサイドボードを調整しなければいけないデッキです。たとえば《物語の終わり》は特定のメタゲームでは強力ですが、使い物にならないときもあります。柔軟にデッキリストについて再考して、毎週調整していく必要があるデッキなのです。
サイドボードガイド
続いてサイドボードガイドです!
Vs. ゴブリン
vs. ゴブリン
In
序盤の除去は《スカークの探鉱者》と《人目を引く詮索者》に使って、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》か《世界を揺るがす者、ニッサ》で速やかに相手に圧をかけてください。ロングゲームはしたくありません。相手に圧をかけられればかけられるほど、《霊気の疾風》を強く使えます。
Vs. パラドックスコンボ
vs. パラドックスコンボ
相手の伝説のクリーチャーを除去して、相手にとって重要な《大いなる創造者、カーン》と《僻境への脱出》は打ち消しましょう。《物語の終わり》が活躍するマッチアップです。マナが出る土地でないパーマネントなどのコンボを支えるパーツを処理してしまえば、《パラドックス装置》本体を放置してしまってもいい試合すら存在します。
Vs. ラクドス/ジャンドサクリファイス
vs. ラクドス/ジャンドサクリファイス
《初子さらい》のことを念頭に、クリーチャーを出すタイミングには気をつけてください。《漁る軟泥》は、出したそのターンに追放したいものが墓地にあるのでなければ出さないようにしましょう。《害悪な掌握》と《初子さらい》で対処できないので、《破滅を囁くもの》は強いことが多いです。《ボーラスの城塞》と《フェイに呪われた王、コルヴォルド》を使っているジャンドサクリファイスなら、《物語の終わり》はデッキに残して《ハイドロイド混成体》1枚と《破滅を囁くもの》をサイドアウトしてください。
Vs. スゥルタイミッドレンジ
vs. スゥルタイミッドレンジ
ミラーマッチで最重要なカードは《覆いを割く者、ナーセット》、次点で《世界を揺るがす者、ニッサ》です。《覆いを割く者、ナーセット》を定着させることができた側は、試合を優位に進めることができます。《サメ台風》は《覆いを割く者、ナーセット》を攻撃して除去するために存在していると言っても過言ではありません。とにかく上記の2つのプレインズウォーカーは《思考囲い》や打ち消し呪文、除去呪文を駆使して相手の戦場に定着させないようにしてください。
《大渦の脈動》はあまり好きではありません。相手と同じパーマネントを自分もコントロールしているときに使いにくいからです。1ゲーム目は出せるときに《世界を揺るがす者、ニッサ》を相手に叩きつけるようにしていますが、サイドボード後は相手も打ち消し呪文を増やしているのでもっと慎重にプレイするようにしています。
Vs. アゾリウスコントロール
vs. アゾリウスコントロール
相手の《覆いを割く者、ナーセット》と《ドミナリアの英雄、テフェリー》さえ解決させなければ問題ないです。僕は相手の《覆いを割く者、ナーセット》と《サメ台風》のために、《取り除き》を1枚デッキに残すサイドボーディングをしています。
《世界を揺るがす者、ニッサ》よりも《破滅を囁くもの》のほうが使いやすいと思っています。《霊気の疾風》《ドビンの拒否権》《物語の終わり》のいずれも刺さりませんからね。
Vs. ラクドスアルカニスト
vs. ラクドスアルカニスト (先手)
vs. ラクドスアルカニスト (後手)
このマッチアップの《思考囲い》は使いにくいと思っています。相手のカードは墓地から使いまわせるものが多く、キーカードをハンデスすれば勝つわけでもないうえに後半になってデッキトップから《思考囲い》を引きたくないです。《思考囲い》よりも、相手の赤いクリーチャーに使えるあらゆる除去、カード・アドバンテージをもたらすカード、そして試合に大きな影響を与えられるカードをすべてデッキに入れたいと思っています。
おわりに
スゥルタイミッドレンジは柔軟性のある強力なデッキで、相手から見ると妨害するのも難しいです。当面はヒストリックで有力なアーキタイプとして残り続け、さまざまなメタにも適応していくことでしょう。ミッドレンジデッキが好きなら、ヒストリックで使うべきデッキはスゥルタイミッドレンジです。読者のみなさんにとって、この記事から得たものがなにかあれば幸いです。何か質問があればお答えするのでぜひ聞いてください!
メリークリスマス!そしてよいお年を。
この記事内で掲載されたカード
Arne Huschenbeth ドイツの若きプロプレイヤー。スタンダードへの造詣が深く、グランプリ・リミニ2016優勝、プロツアー『破滅の刻』では構築ラウンド10勝0敗など数々の実績を誇る。 他にも3度のGPトップ8経験を持つ彼は、2017-2018シーズンでも安定した成績を残し、41点ものプロポイントを獲得。見事ゴールド・レベルに到達した。
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