マジックの新年:2021年に期待する10の変化

John Rolf

Translated by Kouhei Kido

原文はこちら
(掲載日 2020/01/05)

はじめに

こんにちは!みなさん健康に過ごせていますか?ヒストリックとスタンダードはあまり変化がなく、新年にもなったので、2021年に期待したいことをまとめてみたら面白いのではないかと思ってこの記事を書きました。もちろん競技マジックに期待することは人それぞれなので、この記事が人々の総意であるように深刻には受け止めないでください!

将来マジックがどういう道を行くにしても、世界で一番のゲームであり続けると信じています。これ以上横道に逸れていく前に、私が2021年以降に期待することについて語りましょう!

1. 重要性のあるリミテッドの大会の増加

灰色熊骨砕きの巨人

自分も含めて多くの人がリミテッドからマジックを始めたことでしょう。マジックを始めたときに、兄弟と基本セットのシールドを繰り返してこのゲームが大好きになったのを今でも覚えています。マジックのもっとも純粋な形とも言えるかもしれません。

攻撃やブロックについて考えるのは私にとって楽しいことですが、構築フォーマットでは以前ほど重要ではなくなっています。ドラフトをするためにカードをたくさん持っている必要はありません。それにブースターパックを開けて何が入っているのかを確認したり、自分のカードプールを築いたりすることは、この上なく楽しいことです。

さらにドラフトやシールドは実力が如実に表れるフォーマットです。自分のデッキを上手く扱う必要があるだけでなく、デッキ構築自体も上手くなければいけません。最近では、大会のほとんどが構築フォーマットになっています。構築フォーマットのほうが、見ていて派手で解説もしやすいので観戦などのためには良いのかもしれません。それでも昔ほど頻繁ではなくても良いので、リミテッドの大会が開催されると嬉しいですね。

2. 構築フォーマットでのロンドン・マリガンの廃止

ロンドン・マリガンと構築フォーマットの組み合わせはあまりよくないと感じています。両方のプレイヤーにとって、土地と呪文がそろった手札をキープできる頻度があがるという意味では試合になりやすくなりますが、ゲーム展開の面白みを減らしています。ロンドン・マリガン導入以前のほうが劣勢になったプレイヤーが逆転することは多く、ゲームにより多くの興奮、深み、そして戦略をもたらしていました。

虚空の力線コーの精霊の踊り手ゴブリンの放火砲

ロンドン・マリガンでは、ゲームが予定されていたように展開することが多くなっています。プレイヤーは必要としているカードを簡単に見つけることができ、同じカードやゲーム展開が似通ってしまいワンパターンになっているのです。また、このルールは大会に強いデッキを持ち込む必要性を間接的に増幅させています。

かつては相性が悪い試合でも、キーカードに対処して上手くプレイすればそれなりに勝てることもありましたが、今はそれが難しくなっています。先手をとって積極的にマリガンすることが今までにないくらい重要なのです。サイコロに勝って先手をとったときに、相手が勝てないような手札をキープすることが簡単になりました。後手のゲーム開始時の手札も良くなってはいるのですが、安定性が増したことで有利になったのは、相手のゲームプランを妨害しなければいけない側よりも自分のゲームプランを押し付けていく側です。

後手になると不利になる度合いは増したと言っていいでしょう。以前は、相手が6枚あるいは5枚の手札で綺麗に動く可能性が低かったため、こちらの後手のドローに意味があることが多かったのです。相手はどこかでつまずいて、試合は妨害合戦やほかのさまざまな展開を見せていました。でも、今はそういった予定していなかったゲーム展開になることは少なくなり、手札が1枚多いことは以前ほど意味を持ちません。良くも悪くもデッキが予定どおりに回ることが多いのです。

しかし、リミテッドのロンドン・マリガンはすばらしいと思っています。同じゲーム展開がくりかえされる心配や、相手があまりにも頻繁にゲームプランを押し付けたり、コンボで勝利したりする可能性はそこまでありません。マリガンのルールがどうなっても多様なゲーム展開があるのです。なので、リミテッドではロンドン・マリガンのままのほう良いと思っています。

3. 1枚でゲームに勝てるカードの減少

世界を揺るがす者、ニッサ荒野の再生王冠泥棒、オーコ
創案の火エンバレスの宝剣グレートヘンジ

《世界を揺るがす者、ニッサ》《荒野の再生》《王冠泥棒、オーコ》《創案の火》《エンバレスの宝剣》《グレートヘンジ》はどれもイカしたカードですが、スタンダードでは支配的になりすぎました。こういったカードはフォーマットの中心となって環境をゆがめてしまい、多くのカードをプレイアブルではなくしてしまいます。競技マジックでほかより優れたカードが存在していること自体はどの時代にもあることですが、最近はこういうカードが今までで一番多くなっていると思います。多くの戦闘や単体除去、判断の連続によって決まるゲームが好きだったので、そういう試合が増えることを期待しています。

ゲームを決定づける派手なカードはマジックに必要です。でも、精査を尽くしてから世に出されるべきです。プレイデザインチームのやっている仕事はとても難しいので責めるつもりはありません。忠誠度を1増やしたり、1つの単語をつけ足したりするだけでカードは強くなりすぎてしまうものですから。少ない人数で、多くのフォーマットやカード間の相互作用について考えることができているのが信じられないくらいです。

プレイデザインチームは才能ある人々で構成されたチームで、できるとすれば彼らしかいません。20年以上に渡って私たちに楽しいゲームを提供してくれました。これからもそうしてマジックをさらなる高みへ導いてくれると信じています。

4. 必然的に2:1交換となるカードの減少

自然の怒りのタイタン、ウーロ創造の座、オムナス砕骨の巨人恋煩いの野獣

1枚でゲームに勝てるカードと同様、普通に使うだけで2:1交換になるカードは強力です。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《創造の座、オムナス》《砕骨の巨人》《恋煩いの野獣》のようなカードのことです。強いのですが、それだけにフォーマットでプレイアブルなカードの数を制限してしまいます。

2:1交換を相手に強いるためには、何かしないといけないほうがゲームとして面白いと感じています。自動的に2:1交換ができてパワー・タフネスも高いカードは、その色のデッキのほとんどで使われてしまいます。結果として環境はすぐに見飽きたものになるのです。シナジーがもっと意味を持ったり、相手を妨害することが重要になったりしたほうがカード1枚を相手に叩きつけるよりも私の好みです。

5. モードを持つ両面カードの増加

カザンドゥのマンモス髑髏砕きの一撃アガディームの覚醒

この手のカードについては良い感想しかありません。ウィザーズ・オブ・ザ・コーストは上手くデザインしたと思っていて、今後も刷り続けてくれることを期待しています。純粋にすばらしいと感じていて、ロンドン・マリガンが狙っていた改善の多くも担えています。デザインした人々には称賛を送りたいです。

これらのカードはマナフラッドやマナスクリューを防ぐのに最適で、プレイヤーはデメリットを背負うことなく、より多くの土地を入れることができるようになりました。《砕骨の巨人》のような「出来事」持ちのカードよりも、モードを持つカードのほうが面白いと感じています。《ショック》と4/3のクリーチャーの両方をプレイできるのでなく、戦略的に片方を選ばなければならないですからね。

ただ、カードパワーについては慎重に考えたほうが良いでしょう。モードを持つだけでカードは強くなっているからです。でも、その点以外は何も問題がないと感じています。

6. MTGアリーナの進化

MTGアリーナのようなソフトウェアの良いところは、いつでも改善できるところです。これに関してひとつ望んでいるのは、サーバーとの接続が切れたプレイヤーのための「時間銀行」とでも呼ぶべきものです。何らかの理由でサーバーとの通信が上手くいかなくなることは不可避的に発生し得ますからね。通信に失敗して2~3ターン後にゲームに戻ったら、もうどうにもならなくなっているときほどがっかりすることはありません。

「時間銀行」はこれを解決してくれます。クライアントが通信の切断に気づくと、ゲームが一時停止し、自動的に時間が減り始めて、これ以上ゲームが進行する前に猶予をくれるのです。プレイヤーが早くプレイすることで銀行に時間を「貯金」できる方法や、ゲーム開始時から「貯金」を所持しているなどいろいろ方法があると思っています。

観客席

観戦モードも人々が必要としている印象があります。フィーチャーマッチを配信することや大会で見たい試合を個人的に見るのに役立つのですばらしいと思います。「GPリード・デューク/Reid Duke」はすごい体験でした。観戦者は世界のトッププロのすべてのラウンドを見られましたからね。観戦者モードはあらゆるプロのすべてのファンがこれをできるようになるのです。

ほかにはMTGアリーナのランク戦で、結果に対してポイントを稼いでゲーム内ストアで使えたりしたら嬉しいですね。ジェムやワイルドカード、Tシャツなんかと交換できたりするようなポイントです。ユニークだしランク戦で順位を上げるモチベーションが上がります。

7. MTGアリーナで開催される大きな大会の増加

試合場

MTGアリーナの話を続けると、アリーナ・オープンや類似の大会をもっと開催したほうが良いような気がしますね。とても人気がある大会で、競技プレイヤーの戦いたい気持ちを満たすためにもう少し頻繁にあるとうれしいです。開催頻度を上げれば上げるほど1回ごとの効力は薄まるので、私に判断する権利があるとしたら少し増やすだけでしょうね。

大会の数を増やし過ぎてしまうと特別な感じがしなくなるかもしれません。だから適度なバランスを保つ必要があります。プレイヤーが燃え尽きてしまうことや逆にゲームをやることにプレッシャーを感じてしまうことを防ぐのも重要です。時間もジェムもそれなりに必要になりますからね。

それでも、アリーナ・オープンのような大会はとても評判が良いので増えるとうれしいです。シングルトン・スタンダードやシングルトン・ヒストリック、あるいはシールドのようなフォーマットであっても歓迎されるかもしれません。

8. カードを引けるマナ加速カードの減少

成長のらせん自然の怒りのタイタン、ウーロ創造の座、オムナス

《成長のらせん》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《創造の座、オムナス》のようなカードを引けるマナ加速カードは問題を抱えています。ほとんどのフォーマットで問題を起こし続けることでしょう。ほかのカードもそうですが、1枚のカードに多くのキーワードを付けすぎているのかもしれません。「カードを1枚引く」というフレーズは今ほど頻繁にカードに書かれないようになると良いですね。

荒野の再生創案の火世界を揺るがす者、ニッサ

それと、使えるマナが倍になるカードも少なくなったほうが望ましいです。《荒野の再生》《創案の火》《世界を揺るがす者、ニッサ》といったカードは強すぎるので当然問題になります。マナでズルをしてしまうカードは競技マジックで常に議論の対象となってきました。たとえば「ファイレクシアマナ」とか「親和」ですね。マナを倍にする効果とマナ加速カードがもっと慎重に精査されれば、将来必要な禁止告知は減るはずです。

9. スタンダードの低マナ域クリーチャーの質改善

むら気な猛導獣

これは少し私の好みが入っているのは認めましょう。攻撃するのが好きな私が言っていることなので、確実にそうだという考えでは読まないで欲しいのですが、最近のアグロ向きクリーチャーは必要な水準よりも弱いことが多く、特に1マナ域はそうです。《むら気な猛導獣》がレアの1マナクリーチャーとしてスタンダードのセットで刷られたとき、何かがおかしいとみなさん感じたでしょう。

アクームのヘルハウンドブリキ通りの身かわし焦がし吐き

《アクームのヘルハウンド》《ブリキ通りの身かわし》《焦がし吐き》はどれも強いとは言えません。赤の使えるカードがこれしかないのでみんな使わざるを得ないのです。《遁走する蒸気族》がいたせいで、1マナ域に強いカードを追加しづらかったかもしれませんが過去の話です。赤に限らず、すべての色でもっと強いものを刷って欲しいです。

序盤のクリーチャーが強くなれば、強力なプレインズウォーカーやエンチャントを牽制できます。ほかのパーマネントと肩を並べてクリーチャーも強化することで、相手のゲーム展開を妨害しやすくなり、一部の妨害の難しいパーマネントを中心としたゲームの展開を減らすことができるでしょう。

とは言ったものの、1マナ域のクリーチャーがしっかり精査されなければならないのも事実です。特にロンドン・マリガンだと強力になり得ますからね。強すぎるカードは必要ではなくて、今よりも少しだけ強くなるだけで良いのです。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《創造の座、オムナス》のようなカードが刷られている現在なら必要なことに思えます。「ライフを得る」は「カードを引く」同様に多くのカードに書かれるフレーズになっていて、ビートダウンを弱くしています。

10. 紙の大会

一番大事なものを最後までとっておきました。友人に会って、対戦相手と拳を交わすことや、手痛い敗北について面と向かって聞くことすらも恋しく、早く安全になって再開できるのを待ちきれません。マジック・ザ・ギャザリングにギャザー(集まる)は必要不可欠です。

ジョン・ロルフ (Twitter)

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John Rolf アメリカ出身のプロプレイヤー。2017-2018シーズン、《熱烈の神ハゾレト》を相棒にプロツアー『イクサラン』トップ8入賞。それだけには留まらず、グランプリ・プロツアーともに安定した成績を残し続け、ブロンズ・レベルからプラチナレベルまで登り詰めるとともに、自身初の世界選手権出場を成し遂げた。同郷の親友であり、チームメイトでもあるブランドン・エアーズと共に、2018年10月Hareruya Prosに加入。 John Rolfの記事はこちら