はじめに
新年あけましておめでとうございます。今年もみなさんに構築フォーマットの情報をお届けしていきますので、よろしくお願いいたします。2021年もレガシーを楽しんでいきましょう!
さて、今回の連載では新年早々に開催されたLegacy Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Legacy Challenge #12242675
Jeskai Mentorが復権
2021年1月2日
- 1位 Jeskai Mentor
- 2位 Temur Delver
- 3位 Hogaak
- 4位 Day’s Undoing Snowko
- 5位 The Spy
- 6位 Selesnya Depths
- 7位 Temur Delver
- 8位 Doomsday
トップ8のデッキリストはこちら
現環境における青ベースのフェアデッキといえば大多数が《王冠泥棒、オーコ》を採用したものでしたが、今大会は《戦慄衆の秘儀術師》と《僧院の導師》を軸にしたアグロ寄りのJeskai Mentorが制しました。
『統率者レジェンズ』から登場したカードが活躍しており、《船殻破り》+《一日のやり直し》のコンボを組み込んだ新しいタイプのSnowkoが結果を残していました。ほかにはコンボデッキとして定着しているDoomsdayやSelesnya Depthsなどがトップ8に進出しています。
デッキ紹介
Jeskai Mentor
1 《冠雪の平地》
1 《冠雪の山》
4 《虹色の眺望》
1 《Tundra》
1 《Volcanic Island》
3 《溢れかえる岸辺》
2 《沸騰する小湖》
-土地 (16)- 4 《戦慄衆の秘儀術師》
4 《僧院の導師》
-クリーチャー (8)-
4 《思案》
4 《剣を鍬に》
2 《稲妻》
2 《定業》
3 《目くらまし》
2 《否定の力》
1 《セヴィンの再利用》
4 《意志の力》
3 《相殺》
4 《アーカムの天測儀》
1 《真髄の針》
2 《時を解す者、テフェリー》
-呪文 (36)-
優秀な低コスト除去である《稲妻》と《剣を鍬に》の両方を採用できるのがJeskaiの特徴です。過去に《僧院の導師》を軸にしたデッキはMiraclesなどのコントロールが主流でしたが、今大会を優勝したのは《戦慄衆の秘儀術師》まで採用したアグレッシブな構築となっていました。
Temur Delverと同様に、1マナの除去とキャントリップスペルを《戦慄衆の秘儀術師》で再利用してアドバンテージを稼ぎつつ、相手のライフを攻めていきます。ソフトカウンターの《目くらまし》も採用されており、コントロールよりもDelver系に近い構成です。
今大会だけにとどまらず、翌日に開催されたLegacy Challengeでも同じアーキタイプがプレイオフに入賞していました。このデッキの強さは本物であり、《王冠泥棒、オーコ》に頼らない青ベースのフェアデッキを使いたい方にはお勧めです。
☆注目ポイント
《アーカムの天測儀》を含めて1マナキャントリップが14枚採用されていることもあり、土地総数は16枚とギリギリまで切り詰められています。しかし全体的に軽い構成であり、土地総数は少ないものの基本地形が多めに採用されているので、《不毛の大地》だけで機能不全に陥ることはほとんどありません。
サイド後は自ら《血染めの月》を使用することで、《雲上の座》や《暗黒の深部》など特殊地形に依存したデッキを対策しています。
Temur Delverと同様に、1マナの除去とキャントリップスペルを《戦慄衆の秘儀術師》で再利用してアドバンテージを稼ぎつつ、相手のライフを攻めていきます。《戦慄衆の秘儀術師》は単体でも十分に強力ですが、このデッキでは《僧院の導師》と組み合わせることでモンク・トークンが倍速で並んでいきます。果敢も相まってゲームを速やかに終わらせてくれますね。
《師範の占い独楽》が禁止にされて以降、《相殺》は完全に相手をロックすることはできなくなりましたが、マナコストの軽いカードを多用するレガシーでは依然として強力な妨害手段です。このデッキでは《戦慄衆の秘儀術師》を活用するために1マナスペルを複数採用しているので、ヒット率も高めです。すべての呪文を打ち消して相手をロックするというよりは、《僧院の導師》が相手のライフを削りきるだけの時間を稼ぐためのカードとなっています。
《王冠泥棒、オーコ》対策として、メインボードから《真髄の針》が採用されています。
サイドボードの《恩寵の宮廷》は4マナとややコストが重いのが気になりますが、《突然の衰微》に耐性があり、統治者を維持すれば毎ターン4/4の天使・トークンを生み出せるので、Snowkoなどのコントロールマッチで追加のフィニッシャーとして有効です。デッキに除去が多く、《僧院の導師》によってトークンが並ぶので、統治者を維持しやすくなっています。仮に統治権を奪取されたとしても飛行持ちの1/1トークンを生成するので、統治者の座を取り返しやすくなっているのもポイントです。
Day’s Undoing Snowko
1 《冠雪の平地》
1 《冠雪の森》
2 《虹色の眺望》
2 《Tropical Island》
1 《Tundra》
1 《Volcanic Island》
1 《神秘の聖域》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《霧深い雨林》
-土地 (20)- 2 《氷牙のコアトル》
2 《船殻破り》
2 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー (6)-
4 《思案》
4 《剣を鍬に》
1 《狼狽の嵐》
2 《一日のやり直し》
2 《否定の力》
4 《意志の力》
1 《終末》
1 《花の絨毯》
1 《森の知恵》
4 《アーカムの天測儀》
2 《覆いを割く者、ナーセット》
2 《王冠泥棒、オーコ》
2 《時を解す者、テフェリー》
-呪文 (34)-
コントロール系のエキスパートであり、動画配信者でもあるANZIDは今大会を含め2日連続で入賞していました。
基本的な構成は黒抜きの4C Snowkoの亜種ですが、このデッキの最大の特徴は《一日のやり直し》+《船殻破り》のコンボが搭載されていることです。《船殻破り》をコントロールしている状態で《一日のやり直し》を解決するとこちらの手札が7枚に対して相手は0枚となるので、カードとマナの両面で圧倒的なアドバンテージ差が生まれ、ほぼ勝利が確定します。
Karn Echoだけでなくコントロールで採用され始めていることからも、新カード《船殻破り》のポテンシャルの高さが伺えますね。
☆注目ポイント
《船殻破り》は瞬速持ちなので奇襲性があり、パワーが3とコンボデッキに対するクロックとしても優秀です。相手の通常のドロー以外を宝物・トークンに変換させる効果は《渦まく知識》や《思案》、《森の知恵》などの軽いドロー手段が豊富なレガシーでは非常に強力なものになります。《概念泥棒》のように相手の《渦まく知識》に対応してキャストする動きは強力であり、今後は青いデッキが3マナをアンタップしている状態ではケアする必要がありそうです。
《一日のやり直し》は《船殻破り》や《覆いを割く者、ナーセット》とのコンボ以外に、《時を解す者、テフェリー》との相性も抜群です。[+1]能力によって相手のターン中にプレイできるため、隙を作らずに手札を補充することができます。
メインとサイドにそれぞれ1枚ずつ採用されている《花の絨毯》は青ベースのデッキに対してマナ・アドバンテージを得ることができます。特にDelver系のソフトカウンターに耐性ができるのが大きく、プレインズウォーカーといった重く強力なスペルをプレイしやすくなります。
《イゼットの静電術師》はElvesやDeath and Taxesといったクリーチャーベースのデッキはもちろん、《若き紅蓮術士》や《僧院の導師》といった継続的にクリーチャー・トークンを生成するカードに対するメタカードとしても活躍します。
Temur Delver
3 《Volcanic Island》
2 《溢れかえる岸辺》
2 《霧深い雨林》
2 《汚染された三角州》
2 《沸騰する小湖》
1 《樹木茂る山麓》
4 《不毛の大地》
-土地 (19)- 4 《秘密を掘り下げる者》
4 《タルモゴイフ》
2 《戦慄衆の秘儀術師》
2 《わめき騒ぐマンドリル》
-クリーチャー (12)-
Snowkoと並んでトップメタに位置するTemur Delverは、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》採用型やIzzetタッチ《王冠泥棒、オーコ》型などバリエーションが豊富です。
今回ご紹介するのは《もみ消し》を採用したバージョンです。現環境のDelver系にとってほぼマストなクリーチャーである《戦慄衆の秘儀術師》を採用しつつ緑の軽量クリーチャーが多めに採用されており、ひと昔前のTemur Delverを彷彿とさせます。
☆注目ポイント
フェッチランドの起動をカウンターできる《もみ消し》を採用することで《不毛の大地》によるマナ否定戦略の効果が高まり、ソフトカウンターの信頼性が増しています。《もみ消し》を採用したDelver系が少数なこともあり、相手の意表を突けることがこのデッキを選択する理由になります。
フェッチランド専用のカウンターと思われがちな《もみ消し》は、Death and TaxesやThe Spyとのマッチアップでも有用な妨害手段として機能します。誘発型能力である《スカイクレイブの亡霊》の除去効果、The Spyのコンボ始動の要である《欄干のスパイ》(誘発型能力)や《地底街の密告人》(起動型能力)の能力をカウンターできるためです。
《もみ消し》を採用するためにキャントリップスペルが減っていることもあり、《戦慄衆の秘儀術師》よりもクロックで勝る《わめき騒ぐマンドリル》や《タルモゴイフ》といった緑のクリーチャーが優先されています。《もみ消し》と《不毛の大地》によって相手のマナ基盤を攻めてソフトロックする戦略であるため、攻撃力の高い緑のクリーチャーの強味を活かしやすい構成となっているのです。クリーチャーサイズとマナ否定戦略により、同型戦でも有利に立ち回ることができます。
Legacy Challenge #12242685
高速コンボが青いデッキの海を渡り切る
2021年1月3日
- 1位 The Spy
- 2位 Snowko
- 3位 Snowko
- 4位 Jeskai Mentor
- 5位 Azorius Omni-tell
- 6位 Jeskai Mentor
- 7位 Sneak and Show
- 8位 Day’s Undoing Snowko
トップ8のデッキリストはこちら
前日のLegacy Challengeを制したJeskai Mentorは、今大会でもプレイオフに2名のプレイヤーを送り込むなど安定した成績を残し続けています。
優勝したのは『ゼンディカーの夜明け』から登場した呪文/土地の両面カード(以下、スペルランド)によって大幅に強化されたコンボデッキのThe Spyでした。
ほかには5位入賞のAzorius Omni-tellや7位入賞のSneak and ShowなどShow and Tell系のコンボデッキが結果を残していました。
デッキ紹介
The Spy
The Spyは比較的マイナーなアーキタイプでしたが、《タッサの神託者》とスペルランドによって大幅に強化され、現在はレガシーの有力なコンボデッキのひとつになりました。スペルランド、特に《アガディームの覚醒》の登場によって安定して黒マナにアクセスできるようになったのです。スペルランドによってデッキ内のマナソースが増え、1ターン目にコンボが始動しやすくなっています。
海外ではOops All Spellsとも呼ばれているデッキだけあって、《金属モックス》《水蓮の花びら》《暗黒の儀式》など土地以外のマナ源を利用しているコンボデッキです。マナ加速スペルを多用することで最速1ターン目に《欄干のスパイ》や《地底街の密告人》をキャストしてライブラリーのカードをすべて墓地に落とし、誘発型能力によって《ナルコメーバ》を戦場に出し、それらをコストに《戦慄の復活》で《タッサの神託者》をリアニメイトして勝利します。
《タッサの神託者》とスペルランドの登場により安定性が向上したことで、昨年開催されたEternal Weekend 2020では決勝戦まで無敗という驚異的なパフォーマンスを見せつけました。
☆注目ポイント
基本的にオールイン型のコンボですが、わずかながら妨害スペルを採用しています。《否定の契約》やサイドボードの《別館の大長》は《意志の力》などで妨害してくる青いデッキに対して有効であり、序盤にコンボを押し通しやすくなります。
黒マナ源が増えたことで《陰謀団式療法》や《思考囲い》がプレイしやすくなりました。相手の《意志の力》や《外科的摘出》といった妨害スペルを落とすことで安全にコンボを決めることができます。
《召喚士の契約》は《Elvish Spirit Guide》を主たるサーチ先としており、追加のマナ加速になっています。コンボ始動時には黒マナが必要となるため、マナの総数に余裕があれば《野生の朗詠者》をサーチすることでマナフィルターをかけることができます。
墓地を活用したコンボデッキの宿命として、サイド後はカウンターに加えて《虚空の力線》や《墓掘りの檻》をはじめとした墓地対策を対処する必要があります。《自然の要求》と《活性の力》を合わせて7枚と、このデッキでは多めに採用されています。
総括
『エルドレインの王権』登場以前の環境で見られたJeskai Mentorが、2日連続でLegacy Challengeで結果を残していたのも印象的でした。《僧院の導師》が強力なカードであることには変わりなく、デッキの構成次第では《王冠泥棒、オーコ》と《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を採用したデッキとも互角以上に戦えることが証明されたのです。
《王冠泥棒、オーコ》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》、《戦慄衆の秘儀術師》を使った青ベースのフェアデッキが安定した成績を残し続けています。しかしメタゲームに著しい偏りはなく、Show and Tell系やElves、Death and Taxes、Doomsdayなど現環境にはトップメタに対抗する戦略が多数存在しています。非常にバランスのとれた環境といえますね。
USA Legacy Express vol.176は以上になります。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!