USA Modern Express vol.51 -メタゲームは混沌として-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさん、こんにちは。

来月にリリースされる新セット『カルドハイム』のプレビューが公開され始めていますが、好きなカードは見つかりましたか?

さて、今回の連載ではModern Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。

Modern Challenge #12242677
安定のUroコントロール

2021年1月2日

  • 1位 Sultai Field
  • 2位 Mono Red Prowess
  • 3位 Azorious Spirits
  • 4位 Rakdos Death’s Shadow
  • 5位 Bant Stoneblade
  • 6位 Selesnya Field
  • 7位 Izzet Prowess
  • 8位 Rakdos Midrange

トップ8のデッキリストはこちら

年明け早々に開催されたModern Challengeを制したのは、現環境のトップメタである《自然の怒りのタイタン、ウーロ》コントロールでした。

MMM Finals 2020 東京でも優勝していたMono Red Prowessや定番のRakdos Death’s Shadow、Izzet Prowess、Selesnya Fieldなどが順当に結果を残しているなか、Bant StonebladeやSpiritsなども入賞しており、多様性のあるモダンらしい結果となりました。

デッキ紹介

Sultai Field

Sultaiカラーの《自然の怒りのタイタン、ウーロ》コントロールデッキです。ミッドレンジ寄りの4C Uro Omnathと異なり、インスタントスペルが多めに採用されているなど、よりコントロール寄りの構成となっています。

☆注目ポイント

思考囲い突然の衰微暗殺者の戦利品

《思考囲い》《突然の衰微》《暗殺者の戦利品》といった軽いフレキシブルなスペルにアクセスできるところが、Sultaiバージョンを選択する最大の理由となります。《致命的な一押し》《血の長の渇き》《滅び》などの優秀な除去もあり、各種クリーチャーデッキとのマッチアップにも対応できます。

大魔導師の魔除け

トリプルシンボルと色拘束が強いものの、柔軟性がある《大魔導師の魔除け》を採用しているため、ほかのミッドレンジやコントロールデッキとのマッチアップに有利がつきます。《神秘の聖域》《大魔導師の魔除け》を再利用してアドバンテージを稼ぐ動きが強力です。

原始のタイタン

《原始のタイタン》《約束の刻》よりも1マナ重くなりますが、クリーチャーなので《否定の力》でカウンターされない脅威として同型戦で特に強さを発揮します。

Rakdos Midrange

現環境で活躍しているミッドレンジは《自然の怒りのタイタン、ウーロ》デッキだけではありません。モダン定番のミッドレンジであるJundから緑を切って、赤黒の2色に絞ったミッドレンジが最近Modern Challengeで結果を残し続けています。

《血編み髪のエルフ》《タルモゴイフ》といった緑の優秀なクリーチャーを諦める代わりに、マナ基盤が安定するようになり、土地コンボを始めとした多くのデッキに刺さる《血染めの月》を無理なく運用できるようになりました。これによって、Jundが苦戦を強いられていたAmulet TitanやTronといった土地コンボデッキとの相性も改善されています。

Jundと同様にハンデスや除去で相手のプランを妨害しつつ、《死の飢えのタイタン、クロクサ》《歴戦の紅蓮術士》などで勝利を目指していきます。先日のカニスター選手の記事にも詳しく解説があるので、そちらもご覧ください。

☆注目ポイント

砕骨の巨人歴戦の紅蓮術士死の飢えのタイタン、クロクサマグマの媒介者

このデッキの特徴は、《砕骨の巨人》《歴戦の紅蓮術士》《死の飢えのタイタン、クロクサ》といったアドバンテージを取れるクリーチャーでまとめられていることです。なかでも《マグマの媒介者》は、赤を使うミッドレンジの新戦力として定着しています。後半トップデッキすると不要牌になりやすいハンデススペルも、能力で有効牌に変えることができます。

血染めの月

2色になったことでマナ基盤が安定したため、メインから《血染めの月》を採用する余裕ができました。《原始のタイタン》デッキや各種多色コントロールなど、現環境で幅を利かせているデッキの多くが特殊地形に依存しているので、《血染めの月》を通すことでそのままゲームに勝つことができるマッチも多くなります。

死の飢えのタイタン、クロクサ

このデッキには《マグマの媒介者》《歴戦の紅蓮術士》《ヴェールのリリアナ》といった手札を捨てる手段が多く、《死の飢えのタイタン、クロクサ》を容易に「脱出」させることができます。

Modern Challenge #12242683
Hammer Timeがワンツーフィニッシュ

2021年1月3日

  • 1位 Hammer Time
  • 2位 Hammer Time
  • 3位 Hammer Time
  • 4位 4C Uro Omnath
  • 5位 Hammer Time
  • 6位 Azorious Spirits
  • 7位 Rakdos Death’s Shadow
  • 8位 Burn

トップ8のデッキリストはこちら

ここ最近上位でよく見られるようになったHammer Time。《シガルダの助け》よって《巨像の鎚》をクリーチャーに装備させ、瞬殺を狙うコンボデッキです。今大会ではプレイオフに半数の入賞者を出し、決勝戦はHammer Timeのミラーと凄まじいパフォーマンスを見せました。

デッキ紹介

Hammer Time

巨像の鎚シガルダの助け

《巨像の鎚》をクリーチャーに装備させて瞬殺を狙うアグロコンボデッキで、《シガルダの助け》の効果によって2ターン目から10点以上のダメージをたたき出すことができます。

鋼打ちの贈り物石鍛冶の神秘家純鋼の聖騎士

一見するとファンデッキのような印象を与えますが、《鋼打ちの贈り物》《石鍛冶の神秘家》といった《巨像の鎚》を効率的にサーチする手段に加えて、《シガルダの助け》《純鋼の聖騎士》というマナを支払わずに装備させる手段を持ち合わせているため動きが安定しています。

このデッキにとって必須のパーツが2マナ以下のパーマネントに集中しているため、《夢の巣のルールス》を無理なく「相棒」にすることができます。コンボを妨害されても《夢の巣のルールス》《ミシュラのガラクタ》でカードアドバンテージを稼ぎ、体勢を立て直して再びコンボを狙うこともできます。

☆注目ポイント

シガルダの助け

《シガルダの助け》を利用することで、《巨像の鎚》など装備品がコンバットトリックとして機能するようになり奇襲性が高くなります。インスタントでの除去を強いるので、相手側もタップアウトしにくくなるのです。

純鋼の聖騎士夢の巣のルールス

装備品が場に出るたびにカードをドローできる《純鋼の聖騎士》や、除去されたクリーチャーや装備品などを墓地から再利用できる《夢の巣のルールス》の存在もあり、息切れしにくい構成になっています。《ミシュラのガラクタ》《バネ葉の太鼓》、各種装備品など軽いアーティファクトを多用しているので「金属術」の条件を満たすのも容易です。

思考囲いオーリオックのチャンピオンブレンタンの炉の世話人

4C Uro OmnathやRakdos Midtrangeといった除去や妨害スペルを多用するデッキや、The Spyなどこのデッキよりも速度で勝るコンボデッキに対抗するために、サイドには《思考囲い》が忍ばせてあります。

プロテクションを持つ《オーリオックのチャンピオン》《ブレンタンの炉の世話人》は、Rakdos MidrangeやMono Red Prowessに対して《巨像の鎚》を装備させることができれば、速やかにゲームを終わらせることが可能です。

Modern Challenge #12247559
環境最強の土地

2021年1月9日

  • 1位 Amulet Titan
  • 2位 4C Uro Omnath
  • 3位 Heliod Combo
  • 4位 Dredge
  • 5位 Amulet Titan
  • 6位 4C Uro Omnath
  • 7位 Bant Stoneblade
  • 8位 Izzet Prowess

トップ8のデッキリストはこちら

今大会の決勝戦はAmulet Titanと4C Uro Omnathの対決で、スタイルこそ異なるデッキでしたが、どちらのデッキも《死者の原野》を搭載した長期戦に強い戦略です。

《死者の原野》は現環境で最高の土地であることは間違いなく、上位入賞したほかのデッキはHeliod Comboなど無限コンボによって《死者の原野》を無視できる要素を含んだデッキや、Prowess系のような高速アグロなどが中心でした。

先週末のModern Challengeの上位を支配したHammer Time対策として、決勝戦まで勝ち残ったAmulet TitanとUro Omnathを含めた多くのデッキが、低マナ域のパーマネントをまとめて流せる《仕組まれた爆薬》をサイドに採用していました。

デッキ紹介

Bant Stoneblade

モダンのコントロールのエキスパートで、配信者でもあるTSPJendrekが今大会で使用したのは、BantカラーのStonebladeでした。

青白バージョンと異なり、装備品やプレインズウォーカーのほかにも《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《氷牙のコアトル》が使えるので、脅威の密度が増して全体的にデッキパワーが向上しています。

☆注目ポイント

氷牙のコアトル尊敬される語り手、ニアンビ

装備品を使うこのデッキでは、回避能力と瞬速を持つ《氷牙のコアトル》は攻守に優れたクリーチャーとして機能します。《尊敬される語り手、ニアンビ》は見慣れないカードですが、瞬速持ちで《氷牙のコアトル》など場に出たときの能力を持つクリーチャーをバウンスすることでアドバンテージを稼ぐことができます。元々は《瞬唱の魔道士》が採用されていた枠でしたが、《選択》など軽いインスタントスペルが少なめのこのリストでは有効活用が難しいので妥当な変更だと言えます。

大魔導師の魔除け謎めいた命令ドミナリアの英雄、テフェリー

従来までのBant Stonebladeは、《貴族の教主》などマナクリーチャーを採用して《呪文捕らえ》《聖トラフトの霊》といった3マナ域を2ターン目から展開していく動きもできるテンポ寄りのミッドレンジでしたが、TSPJendrekのリストは《大魔導師の魔除け》《謎めいた命令》《ドミナリアの英雄、テフェリー》などを採用したコントロール寄りの構成になっています。コントロールデッキ定番の《神秘の聖域》《謎めいた命令》(《大魔導師の魔除け》)が搭載されていることからも、長期戦を見据えた戦略であることは明白です。

夏の帳夜群れの伏兵

Bantバージョンにするメリットのひとつとして、サイドに採用されている《夏の帳》を使えることが挙げられます。Rakdos MidrangeやDeath’s Shadowなど現環境にはハンデスを使うデッキが多く、それ以外でもカウンターを多用する各種《自然の怒りのタイタン、ウーロ》デッキといった多くのマッチアップで使えるスペルです。

サイドに追加の勝ち手段として採用されている《夜群れの伏兵》は、インスタントタイミングで動くことが多いこのデッキの戦略にフィットしたクリーチャーです。トークンを生成する能力も、装備品を搭載したこのデッキではより強力なものとなります。

総括

死者の原野自然の怒りのタイタン、ウーロスカイクレイブの災い魔巨像の鎚

《原始のタイタン》デッキや4C Uro Omnathなど《死者の原野》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を採用したデッキが散見されているものの、Death’s Shadow系やRed Prowess系、Rakdos Midrange、Heliod Combo、また最近の大会で結果を残し続けているHammer Timeなどさまざまなアーキタイプが活躍しています。モダンは、歴代の強力なカードを組み合わせて楽しむことができるフォーマットであることに変わりはないようです。

来月には『カルドハイム』もリリースされるので、2021年のモダンはさらに盛り上がることが期待できます。

以上、USA Modern Express vol.51でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!

この記事内で掲載されたカード

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら