はじめに
みなさんこんにちは。
いよいよ待ちに待った新セット『カルドハイム』が再来週にリリースされます。全カードリストも公開されましたが、好きなカードは見つかりましたか?
さて、今回の連載ではPioneer Showcase Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Pioneer Challenge #12250126
パイオニアを定義するコンボデッキ
2021年01月17日
- 1位 The Spy
- 2位 Gruul Midrange
- 3位 Omnath Ramp
- 4位 Mono Green Planeswalker
- 5位 Omnath Ramp
- 6位 Esper Blink
- 7位 Burn
- 8位 Azorius Spirits
トップ8のデッキリストはこちら
毎月MOで開催されるShowcase Challengeは、普段のChallengeよりも競技性が高いため、ほかの大会よりも信憑性の高いデータとなります。
今大会で優勝を果たしたのは、『ゼンディカーの夜明け』から登場した両面カードによって実現したThe Spyでした。登場して以来、コンスタントに結果を残している直線的なコンボデッキで、Dimir InverterやHeliod Comboに代わる環境を定義するコンボデッキとして定着しています。
ほかには、過去のスタンダード環境を支配したOmnath Rampや、パイオニアの定番のデッキのひとつであるMono Green Planeswalker、Burnなどが中心でした。
デッキ紹介
The Spy
4 《森の女人像》
4 《絡みつく花面晶体》
1 《ナルコメーバ》
4 《カザンドゥのマンモス》
4 《秘蔵の縫合体》
4 《銀打ちのグール》
4 《地底街の密告人》
4 《欄干のスパイ》
1 《憑依された死体》
2 《世界棘のワーム》
-クリーチャー (36)-
2 《強迫》
1 《巨森の補強》
4 《新生化》
4 《バーラ・ゲドの復活》
4 《異界の進化》
4 《ペラッカの捕食》
4 《アガディームの覚醒》
4 《這い寄る恐怖》
4 《ハグラの噛み殺し》
1 《悪戦/苦闘》
4 《海門修復》
4 《変わり樹の共生》
-呪文 (44)-
『ゼンディカーの夜明け』から登場した両面カードは、パイオニアに新たなコンボデッキを生み出しました。
《欄干のスパイ》か《地底街の密告人》を通すことに成功すれば、ライブラリーのすべてのカードを「切削」して《這い寄る恐怖》で相手のライフをドレインしつつ、《ナルコメーバ》《秘蔵の縫合体》《銀打ちのグール》といったクリーチャーを墓地からマナを支払わずに場に出すことができます。
《異界の進化》や《新生化》で、キーカードである《欄干のスパイ》または《地底街の密告人》をサーチできるので、デッキの動きも安定しています。
パイオニアには《ゴブリンの放火砲》がなく、《タッサの神託者》を効率的にリアニメイトする手段もないため、勝ち手段は基本的にビートダウンになります。《世界棘のワーム》がライブラリーのトップに残るので《這い寄る恐怖》で相手のライフをドレインしたあとに、《悪戦/苦闘》でクリーチャーに回避能力を付けて残りのライフを削っていきます。
☆注目ポイント
《欄干のスパイ》や《地底街の密告人》でライブラリーを「切削」したあと、2枚の《世界棘のワーム》がライブラリーに残るので、相手のライフを削り切る前にライブラリーアウトによって敗北することはありません。もし「切削」する前に《世界棘のワーム》が手札に来てしまっても、《憑依された死体》の能力を起動することによって墓地に落とすことでライブラリーに戻すことができます。
構築フォーマットにおいて、キーカードを引き当てる確率を可能な限り上げるため、ほとんどの場合はデッキの枚数を最低限の60枚で組むことが一般的です。しかしこのデッキでは、両面カード、マナクリーチャー、ハンデス、勝ち手段などすべてをデッキに含めるには60枚ではスペースが足りなくなることがあり、手札に来てほしくないカードを引く確率を下げる目的も兼ねて80枚になっています。
80枚デッキにすることで《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」にできます。デッキリストが非公開の大会では、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」にしたコントロールデッキや、Jeskai Luukaなどと相手に予想させることができるので、1ゲーム目にアドバンテージになることがあります。
Mono Green Planeswalker
2 《ハシェプのオアシス》
4 《ニクスの祭殿、ニクソス》
-土地 (21)- 4 《エルフの神秘家》
4 《ラノワールのエルフ》
4 《炎樹族の使者》
4 《大食のハイドラ》
2 《ラノワールの幻想家》
2 《長老ガーガロス》
-クリーチャー (20)-
1 《ダークスティールの城塞》
1 《石とぐろの海蛇》
1 《新緑の機械巨人》
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
1 《トーモッドの墓所》
1 《墓掘りの檻》
1 《減衰球》
1 《漸増爆弾》
1 《キランの真意号》
1 《連結面晶体構造》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《王神の立像》
-サイドボード (15)-
昨年の夏に《ニクスの祭殿、ニクソス》やプレインズウォーカーをサーチできる《ニッサの誓い》の禁止が解除されたことで、安定性が向上し復権してきたデッキです。マナクリーチャーと《炎樹族の使者》などを並べることで緑への「信心」が集まるので、《ニクスの祭殿、ニクソス》から大量のマナを捻出して各種プレインズウォーカーなどパワーカードで相手を圧倒します。
従来までの緑系のデッキと異なりプレインズウォーカーが多く、クリーチャー除去やスイーパーで場を壊滅させられることが少なく、コントロールデッキとのマッチアップでも互角以上に渡り合えます。緑単色なのでハンデスやカウンターなど妨害スペルが使えないため、The Spyなどコンボデッキは苦手なマッチアップになりますが、非常に爆発力があるので相性差に関係なくブン回ればどんなデッキにも勝てるチャンスのあるデッキです。
《アーク弓のレインジャー、ビビアン》と《大いなる創造者、カーン》によるシルバーバレット戦略を採っているため、《漁る軟泥》以外マッチアップによってサイドインできるカードがほとんどないのもこのデッキの特徴です。
☆注目ポイント
《アーク弓のレインジャー、ビビアン》は「信心」を集めることに貢献すると同時に、クリーチャー強化や除去としても機能する主力のプレインズウォーカーです。サイドボードからクリーチャーをサーチしてくる[-5]能力は、主にフィニッシャーの《絶え間ない飢餓、ウラモグ》をサーチするのに使うことになります。
《大いなる創造者、カーン》の[-2]能力によって《墓掘りの檻》や《減衰球》など、状況に応じてさまざまなアーティファクトにアクセスすることができるので、コンボ対策が限られているこのデッキにとって極めて重要なカードになります。The Spyとのマッチアップでは、3ターン目に出せる手札をキープできるかが勝敗を分けます。
ほかにも、コントロールやコンボの動きを著しく制限する《王神の立像》、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》などフィニッシャークラスの対策になる《連結面晶体構造》《領事の旗艦、スカイソブリン》といった異なる要素の脅威もサーチしてくることができます。
《長老ガーガロス》は除去耐性を持っていないことが弱点ですが、アグロデッキが強いパイオニアでは3つの能力すべてが強く、特にBurnが上位入賞している現環境ではメインから問題なく採用できます。
Esper Blink
2 《島》
1 《沼》
3 《寓話の小道》
4 《神無き祭殿》
4 《神聖なる泉》
4 《湿った墓》
3 《水没した地下墓地》
2 《氷河の城砦》
2 《孤立した礼拝堂》
2 《陽光昇りの小道》
2 《清水の小道》
1 《アーデンベイル城》
1 《ガイアー岬の療養所》
-土地 (33)- 3 《魅力的な王子》
3 《スカイクレイブの亡霊》
1 《罪の収集者》
1 《半真実の神託者、アトリス》
2 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-クリーチャー (10)-
4 《思考囲い》
2 《思考消去》
2 《ドビンの拒否権》
2 《至高の評決》
1 《エメリアの呼び声》
1 《海門修復》
4 《海の神のお告げ》
2 《野望の試練》
2 《ケイヤの誓い》
1 《太陽の神のお告げ》
2 《エルズペス、死に打ち勝つ》
4 《時を解す者、テフェリー》
3 《覆いを割く者、ナーセット》
1 《復讐に燃えた血王、ソリン》
1 《悪夢の詩神、アショク》
1 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (37)-
2 《霊気の疾風》
1 《概念泥棒》
1 《否認》
1 《漂流自我》
1 《思考のひずみ》
1 《不可解な終焉》
1 《エルズペスの悪夢》
1 《太陽の神のお告げ》
1 《墓掘りの檻》
1 《真髄の針》
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-サイドボード (15)-
《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」にしたデッキは、プレインズウォーカーが中心のヘビーコントロールだけではありません。
メインのカウンターは少なめで、基本的に毎ターン自分のターンにカードをプレイしてアドバンテージを蓄積していくタップアウト型のコントロールになっています。
《罪の収集者》や《スカイクレイブの亡霊》で相手の行動を妨害しつつ、《魅力的な王子》の能力で「明滅」させることでアドバンテージを稼いでいきます。《空を放浪するもの、ヨーリオン》が着地するまでに、《海の神のお告げ》などのエンチャントやプレインズウォーカーを可能な限り場に出しておきたいところです。
☆注目ポイント
中盤以降に《空を放浪するもの、ヨーリオン》によって忠誠度能力をリセットできるので、《時を解す者、テフェリー》の[-3]能力を自軍のクリーチャーに積極的に使ってドローを進めつつ、再利用してアドバンテージを稼いでいきます。これらのクリーチャーは、除去されたり戦闘で死亡しても《復讐に燃えた血王、ソリン》の[-X]能力によってリアニメイトすることで再利用することができます。
《魅力的な王子》+《空を放浪するもの、ヨーリオン》は、エンドステップにお互いを「明滅」させることができるので、毎ターン能力を使いまわすことができるようになり、多大なアドバンテージを稼ぐことが可能です。
Azorius Spirits
Spiritsはコンボデッキに強いデッキとして、Dimir InverterやLotus Comboが幅を利かせていた『テーロス還魂記』リリース直後の環境で、プレイヤーズツアーでも優勝するなど環境の有力なメタデッキとされていました。
《至高の幻影》や《天穹の鷲》といったロードで強化して相手のライフを攻める部族アグロ戦略である一方で、カウンターのように機能する《鎖鳴らし》や《呪文捕らえ》、相手のクリーチャーをタップする《鎖霊》などコントロール要素もあるデッキです。そのため、使いこなすにはある程度環境に対する理解力が求められます。
最近では、The Spyや4マナのプレインズウォーカーを主力とするMono Green Planeswalkerなどが大会の上位でも見られるようになってきたため、Spiritsにとっていい環境になってきている印象です。
Burnなど赤いアグロデッキに対しては、《呪文捕らえ》を対処されやすくクリーチャーによるクロックの速さでも不利が付くため苦手なマッチアップとなります。Esper Controlは、単体除去を《鎖鳴らし》、《至高の評決》は《呪文捕らえ》や《無私の霊魂》で対策できるので相性は悪くないものの、《ドミナリアの英雄、テフェリー》や《エルズペス、死に打ち勝つ》など《呪文捕らえ》では捕らえられない5マナの脅威や、《思考囲い》《サメ台風》による妨害が厳しくなります。
☆注目ポイント
基本的な構成は『テーロス還魂記』リリース直後に流行ったAzorius Spiritsと大きな変化は見られませんが、その後のセットから新戦力が追加されています。《鎖霊》は《ネベルガストの伝令》と異なり、相手のターンにクリーチャーを瞬速持ちのスピリットを用意する必要がないため使いやすく、最近のSpiritsでは優先的に採用されています。2マナで回避能力持ちのパワー2なのでクロックとしても有用です。
《高尚な否定》はSpiritsにとって念願の実用的な2マナカウンターです。採用されているほとんどのクリーチャーが飛行を持っているので、多くの場合確定カウンターのように機能します。
《天球の見張り》はスピリットではないものの、《呪文捕らえ》や《至高の幻影》といったクリーチャーのマナコストを減少させるので脅威を展開しやすくなります。
サイドの《希望の光》は、BurnやSram Auraなど多くのマッチアップでサイドインできるフレキシブルさとマナコストの軽さもあって使いやすいスペルです。墓地対策の《悔恨する僧侶》はパワー2飛行とクロックとしても優秀で、メタによってはメインからも採用できます。
総括
同じローテーションが存在しないモダンと異なり、パイオニアは創設されてまだそこまで時間が経っていません。新セットの『カルドハイム』が環境にどのような影響を与えるのか要注目です。
『カルドハイム』カードもすでにも公開されているので、既存のデッキに追加できそうな新戦力や新しいデッキを考えるのが楽しい時期ですね。
USA Pioneer Express vol. 16は以上となります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいパイオニアライフを!