Translated by Kouhei Kido
(掲載日 2021/01/22)
はじめに
みなさん、こんにちは!
今日はヒストリックで私のお気に入りであるジャンドサクリファイスについて話したいと思います。《魔女のかまど》《初子さらい》《忘れられた神々の僧侶》と組み合わせたときの《波乱の悪魔》の強さはみなさんご存じでしょう。でもそれが自明なら、本当に大事なのは「デッキの残りの枠には何を採用するべきなのか?」という問いなのです。
ジャンドカンパニー
現在主流の型から始めましょう。ラクドスタッチ《集合した中隊》とでも言うべき型です。主にクリーチャーで構成された素早く能動的なゲームプランを持っています。戦場に出たときの誘発型能力や死亡時の誘発で対戦相手を妨害することも可能です。《初子さらい》ですらクリーチャーをまったく採用していないデッキに対して腐ることはなく、対戦相手にとどめをさすときに自分のクリーチャーに速攻をつけることができます。
この型について指摘したい点は2点あります。まず1点目は《戦慄衆の解体者》についてです。カードとしては優れているのですが、《集合した中隊》との相性があまり良くないカードです。《霊気の疾風》を含めた打ち消し呪文や全体除去の存在を考慮すると、《集合した中隊》はインスタントタイミングでターン終了時などに唱えたいのではないでしょうか?しかし《戦慄衆の解体者》が《集合した中隊》から出てくるならば、速攻のクリーチャーとして即座に攻撃できたほうがいいのです。この2つは両立しません。
私は《戦慄衆の解体者》の代わりに納得のいくカードを見つけ、MPLやライバルズ・リーグの選手たちも採用を始めたときには、この選択に自信が持てました。《金のガチョウ》を代わりに入れるのです。2枚入れているデッキリストを多く見かけましたが、そのうち4枚フル投入する人が増えるという確信があります。
この鳥クリーチャーはデッキが必要としていた追加の1マナクリーチャーで、《戦慄衆の解体者》を首尾よくブロックできるだけではなく、3~4マナのカードを唱えるのを早めてくれます。追加で作ることができる食物・トークンも試合に影響がないということはありません。《悲哀の徘徊者》と《大釜の使い魔》を引いてくれば、食物を生成するたびに占術と相手からのライフドレインが得られます。
私が使っていたジャンドカンパニーのデッキリストです。
4 《草むした墓》
4 《踏み鳴らされる地》
1 《泥濘の峡谷》
4 《花盛りの湿地》
2 《竜髑髏の山頂》
1 《森林の墓地》
2 《岩山被りの小道》
1 《ファイレクシアの塔》
-土地 (23)- 4 《大釜の使い魔》
4 《金のガチョウ》
4 《忘れられた神々の僧侶》
2 《漁る軟泥》
1 《屑鉄場のたかり屋》
4 《波乱の悪魔》
4 《悲哀の徘徊者》
2 《真夜中の死神》
-クリーチャー (25)-
2 《脳蛆》
2 《砕骨の巨人》
2 《運命の神、クローティス》
2 《害悪な掌握》
1 《フェイに呪われた王、コルヴォルド》
1 《思考囲い》
1 《削剥》
1 《湧き出る源、ジェガンサ》
-サイドボード (15)-
興味深いカードだと考えているのが《漁る軟泥》です。ラクドスカラーの2マナのクリーチャーを緑の1マナのクリーチャーに変更すると、土地の構成自体が変わるので緑のカードを他にも足すことができるようになっています。《漁る軟泥》は《自然の怒りのタイタン、ウーロ》デッキとサクリファイスデッキがうようよしている現時点ですばらしい選択肢だと言えるでしょう。
もうひとつの改良点はサイドボードにあります。この改良を加えた経緯こそ、この型のジャンドについて指摘したい2つ目の点です。メインデッキに入っている25枚のクリーチャーは《集合した中隊》を運用する上で十分な数です。ただ問題は、サイドボードから《害悪な掌握》《削剥》《思考囲い》《フェイに呪われた王、コルヴォルド》をたくさんサイドインすると、25枚から大きく減ってしまうのです。
不安定な状態で《集合した中隊》を使いたくはありません。これには2つの解決策があります。1つ目は、サイドボード後も《集合した中隊》が使いやすいようにサイドボードを構築するという解決策です。
《脳蛆》は《思考囲い》ほど優れたカードではありません。それでもそれなりに満足できるカードです。《集合した中隊》からもう1体のクリーチャーと戦場に出せる性質としては決して弱くないでしょう。少なくとも1枚しかめくれないよりはマシです。相手のドローステップ終了前に《集合した中隊》を唱えて《脳蛆》を見つけてくれば、相手が引いたカードがインスタントタイミングで使えるカードではない限り、使われるのを阻止することができます。
《砕骨の巨人》も同様に、2マナの火力呪文としては《削剥》のほうが当然優れています。しかし、《集合した中隊》でめくったときに4/3のクリーチャーを出すことができる2マナ火力だと考えれば、火力としての性能を落とすという代償に相応のメリットがあると言えるでしょう。
《運命の神、クローティス》と《再利用の賢者》も優れたカードです。特に後者は、《削剥》が担うアーティファクト破壊の役割を代わりに引き受けつつ、《虚空の力線》や《墓掘りの檻》にも対処できる点が優れています。
2つ目の解決策は《集合した中隊》をサイドアウトする選択肢でしょう。ただサイドアウトするくらいなら、最初から《集合した中隊》を使わなければいいのではないでしょうか。
ジャンドサクリファイス
私が使ってきたもう1つの型について紹介しましょう。
4 《草むした墓》
4 《踏み鳴らされる地》
2 《泥濘の峡谷》
4 《花盛りの湿地》
2 《竜髑髏の山頂》
3 《岩山被りの小道》
1 《ファイレクシアの塔》
-土地 (24)- 4 《大釜の使い魔》
4 《金のガチョウ》
4 《忘れられた神々の僧侶》
2 《漁る軟泥》
4 《波乱の悪魔》
4 《悲哀の徘徊者》
2 《真夜中の死神》
1 《フェイに呪われた王、コルヴォルド》
-クリーチャー (25)-
2 《思考囲い》
2 《削剥》
2 《害悪な掌握》
2 《燃えがら蔦》
2 《炎鎖のアングラス》
1 《フェイに呪われた王、コルヴォルド》
1 《アングラスの暴力》
1 《軍団の最期》
-サイドボード (15)-
《集合した中隊》は強力なカードなので、サイドボード後も有効に使えるような解決策を編み出せたことについては満足しています。しかし、その強さゆえに人々の注目を集めすぎていて、環境が適応すると今ほど強力ではなくなるはずです。
トップメタのスゥルタイですら対策されて大会で活躍できないときもあるくらい、意識されて対策されるとつらいものです。アゾリウスコントロールもメインデッキに《墓掘りの檻》を採用するという手段でメタゲーム内に復活しそうだと私は考えていますし、ほかのデッキもなんらかの対策をするようになるでしょう。
サクリファイスデッキは多くのクリーチャーデッキに対してとても有利なので、メタゲームから消えることは考えにくいですが、tier1に立ち続けるためには新しいメタに適応しなければいけません。
《反逆の先導者、チャンドラ》と《フェイに呪われた王、コルヴォルド》は優れたフィニッシャーで、次の段階ではこういったカードを使う方向性に向かいたいと考えています。人々が《墓掘りの檻》と《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》で対策しようとしているタイミングでは、別角度からの攻撃を可能にする点でも両カードは優れています。《ゴルガリの女王、ヴラスカ》も目障りなアーティファクトに対処できることを加味すれば採用に値します。
サイドボードの《炎鎖のアングラス》は、全体除去で対処されるクリーチャーを多く展開せずとも相手にプレッシャーをかけるためにはいい手段です。《初子さらい》によって負けるのを嫌がったスゥルタイデッキの多くが、現在採用している《破滅を囁くもの》に対する優れた解答でもあります。
《燃えがら蔦》は《パラドックス装置》コンボやアゾリウスコントロールのパーマネントの多くを破壊できるだけでなく、誘発自体が相手にとってかなり痛手となります。
《軍団の最期》は、グルールが上振れたときに複数体出してくる《炎樹族の使者》に対処できるカードとして試しているひと捻りしたカードです。《大釜の使い魔》や《戦慄衆の解体者》を追放するのにも役立ちます。
サイドボードガイド
このデッキリストを試したい人のために、簡単なサイドボードガイドも書いておきました。
スゥルタイ
vs. スゥルタイ
サイドボード後は相手が《肉儀場の叫び》や追加の単体除去をサイドインしてきます。そのため、クリーチャーを一部サイドアウトして相手が対処しづらいパーマネントを増やしつつ、相手が脅威として繰り出してくるものにも対処できるようにしています。
グルール
グルール(先手)
グルール(後手)
このマッチアップでは、サクリファイスシナジーでゲームを支配し始める前に相手に倒されないように追加の除去を入れるだけです。今流行っている新しい形のグルールはヒストリックのメタゲームにとっては新顔で、最良の対処手段を知るためにはまずグルールがどういうデッキに発展するのかを見る必要があります。
ラクドス/ジャンドサクリファイス
ラクドス/ジャンドサクリファイス
《真夜中の死神》や《忘れられた神々の僧侶》をサイドアウトするのが、サクリファイスデッキを使うプレイヤーの間で主流ではないことは知っています。それでも《初子さらい》で奪われる、あるいは死亡するよりも前に、ある程度バリューを生めるクリーチャーのほうがいいと思っています。
このサイドボードガイドは簡単な一般論的なもので、相手が実際にどういうデッキなのかに合わせて調節する必要があります。デッキによってはアグロ寄りだったり、そうでなかったりしますからね。
オーラ
vs. オーラ
相手が《ケイヤ式幽体化》を4枚採用しているオルゾフ型なら、能力の誘発にスタックして追放できるように《漁る軟泥》をメインに残したほうがいいでしょう。このマッチアップのように、サイドボード後にマナカーブが低くなるようであれば、土地を1枚くらいサイドアウトしても構いません。
アゾリウスコントロール
アゾリウスコントロール
もっとも厳しい部類の相手です。ただほかのデッキリストよりは、このデッキリストのほうが比較的戦いやすいはずです。相手に《ドミナリアの英雄、テフェリー》を定着させてはいけません。《神の怒り》をもろに受けないように立ち回れば、いずれ相手の守りを突破できるはずです。
『カルドハイム』発売後
メタゲームの進化だけでなく『カルドハイム』の発売も控えています。まだ新しいアーキタイプが生まれるかはわかりませんし、どのアーキタイプのデッキが新カードの恩恵を一番受けるのかもわかりません。でもジャンドが得る新しい選択肢くらいは検討できます。
目を引くカードは2種類でした。まず《偉大なる存在の探索》は《金のガチョウ》や《パンくずの道標》を使うフードデッキで採用されるはずです。ただこれは主にスタンダードの話ではあります。
ヒストリックのジャンドサクリファイスデッキの内、食物・トークンシナジーに重点を置いて《フェイに呪われた王、コルヴォルド》や《ボーラスの城塞》を採用している型は、この新カードの採用を検討するはずです。環境が速くなっているせいで《パンくずの道標》があまり強く使えないので、この型は現状としては流行っていません。《偉大なる存在の探索》がそれを変えるかもしれません。
もう1種類のカードは《マーンの戦慄の隆盛》です。ミラーマッチやグルールとの試合では、戦闘で3~5体のクリーチャーが死ぬターンが何度も訪れます。《忘れられた神々の僧侶》を起動するだけでも、3体のクリーチャーが墓地に落ちることが多いはずです。
3マナのインスタントなので《マーンの戦慄の隆盛》にはかなり可能性を感じます。序盤に「予顕」で追放しておいて、あとから相手のターンに起動した《忘れられた神々の僧侶》から出たマナで唱えてもいいのです(ついに《忘れられた神々の僧侶》が生む黒2マナをインスタントタイミングで使える方法が増えますね)。
『カルドハイム』のカードの中でジャンドに採用できそうなカードはこれくらいですが、小道サイクルが全色そろうのもマナ基盤にとって重要です。ジャンド3色の3種類の内、まだ2種類も足りないので、《荒廃踏みの小道》と《闇孔の小道》が得られるというのは吉報です!チェックランドやファストランドの一部を置き換える形でデッキリストが刷新されるでしょう。
おわりに
ヒストリックは進化を続けていて、新デッキ・新カードを試すのが楽しくて仕方ありません。『カルドハイム』ももうすぐ出るので、さらに楽しく遊べることでしょう。ジャンドサクリファイスは新しい変化を加えるデッキとして、興味深い対象となるデッキとして存在しているはずです!
最後まで読んでくれてありがとう!
ファブリツィオ・アンテリ (Twitter)