はじめに
みなさま、「名カード集」へようこそ。
マジックが誕生して早27年、『4版』にて日本語版が発売となって以降、これまでたくさんのカードセットが発売されてきました。その中には拡張セット(以下、エキスパンション)と呼ばれ、基本セットを強化することを名目に作成されたものが存在しています。最近でいえば、『カルドハイム』がこれに該当しています。
この「名カード集」では、時代を過去へと遡り、昔のエキスパンションの名だたるカードを紹介していきます。
今回は「秘宝の宝庫」と呼ばれる『アンティキティー』の世界をご紹介しましょう。
『アンティキティー』ってどんなセット?
はじめに、『アンティキティー』の簡易説明をいたします。
『アンティキティー』とは、1994年3月に発売されたアーティファクト中心のエキスパンションであります。セットデザイン・デベロップメントを手掛けたのは、マジック開発部の古参メンバーであったSkaff Elias氏ら4名であり、収録カードは全85種類となっています。同セットは、マジック界一有名なプレインズウォーカーであるウルザとミシュラの兄弟喧嘩(戦争)をテーマにしており、そのためにアーティファクトが大半を占めています。強力なアーティファクトが多いことから「秘宝の宝庫」と呼ばれているのです。
また、『アラビアンナイト』に引き続き、「対エキスパンションカード」が存在しています。
「(1),(T):『アンティキティー』にて印刷された名前を持つトークンでない各パーマネントは、それのコントローラーによって生け贄に捧げられる。」
『アンティキティー』のパーマネントに限れば、《ネビニラルの円盤》も真っ青な破壊力。《ミシュラの工廠》や《ウルザの塔》といった土地までも対象範囲となるのですから。
ストーリーによれば、《Golgothian Sylex》は兄弟戦争の最終決戦時にウルザが使用したアーティファクトをカード化したものとのこと。かなり大胆なデザインとなっていますね。
『アンティキティー』の名カードたち
《ミシュラの工廠》
「(T):(◇)を加える。」
「(1):ターン終了時まで、ミシュラの工廠は2/2の組立作業員アーティファクト・クリーチャーになる。それは土地でもある。」
「(T):組立作業員クリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは+1/+1の修整を受ける。」
まずご紹介するのは《ミシュラの工廠》。クリーチャー化する土地の祖先にして、ミシュラランド(海外ではマンランド)の語源となったカードであります。起動コストが軽く、ソーサリータイミングの除去に強いことから、当時はアグロ~コントロールまでさまざまなアーキタイプで使用されました。そして、今もなお使われ続けているカードであります。
少し前のレガシーではランドスティルや白スタックスのフィニッシャーとして、ヴィンテージではラベジャーショップで現役の活躍をみせています。単にダメージソースとなるだけではなく、《電結の荒廃者》と強烈なシナジーを形成し、対処の難しい巨大クロックとなるのです。
最新の《不詳の安息地》まで何枚ものミシュラランドがデザインされてきましたが、「《変わり谷》と同等サイズを持ちながら《ちらつき蛾の生息地》のようにパンプアップ機能を有している」、と聞けばこのカードがいかに優れた土地であるかおわかりいただけるかと思います。
《トリスケリオン》
「《トリスケリオン》はその上に+1/+1カウンターが3個置かれた状態で戦場に出る。」
「《トリスケリオン》から+1/+1カウンターを1個取り除く:クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。《トリスケリオン》は、それに1点のダメージを与える。」
お次はアーティファクト世界を代表する強力クリーチャー《トリスケリオン》。任意の対象に3点までダメージを飛ばせる制圧力の高さからミッドレンジやコントロールで活躍したクリーチャーであり、特にエルフなどのシステムクリーチャー主体のデッキに対して無類の強さを誇りました。愛らしい見た目からトリ助の相性で親しまれました。
単体でも十分な制圧力を持っていますが、《メフィドロスの吸血鬼》と組み合わせれば戦場を一掃することが可能となります。マナコストの高さがネックですが、当時のスタンダードには《ウルザの塔》と《歯と爪》が揃っており、9マナから一気に2体を呼び出すことが可能だったのです。
上記のコンボに加えて、統率者戦では《不浄なる者、ミケウス》との2枚コンボでプレイヤーも対象にとれる無限ダメージを演出します。1~2点を好きな対象へと割り振ったのち、自分自身へ2点与えることで「不死」で戦場へと繰り返し舞い戻るのです。
「《Phyrexian Devourer》のパワーが7以上になったとき、それを生け贄に捧げる。」
「あなたのライブラリーの一番上のカードを追放する:《Phyrexian Devourer》の上に+1/+1カウンターをX個置く。Xはその追放されたカードの点数で見たマナ・コストである。」
さらにコンボ枚数を3枚に増やせば、《壊死のウーズ》+《Phyrexian Devourer》との無限ダメージコンボが存在しています。
《エイトグ》
「アーティファクトを1つ生け贄に捧げる:《エイトグ》は、ターン終了時まで+2/+2の修整を受ける。」
3枚目にして色のついた《エイトグ》の登場となりますが、やはりアーティファクトに関連したカードとなります。クリーチャー・タイプとして最初のエイトグであり、可愛らしい(? )イラストに反して、貪欲な生物となっています。特定のリソースを支払うことでパンプアップするデザインはストーリーの設定を忠実に再現したものであり、飽くなき食欲を持つエイトグ種族そのものなのです。
『アンティキティー』発売当初よりは、後続のアーティファクトブロックで活躍したクリーチャーであり、『ミラディン』環境の初期の親和では《大霊堂の信奉者》や《大焼炉》と相性のいいカードに恵まれました。『ダークスティール』にて《電結の荒廃者》が登場すると環境を去ることになりますが、今度は舞台をモダンへと移します。
モダン最初のプレミアイベントとなったプロツアーフィラデルフィア11では、《電結の荒廃者》と併せて赤単親和の主力クリーチャーの一角となったのです。軽量アーティファクトに恵まれただけではなく、《投げ飛ばし》との組み合わせはまさに一撃必殺となります。また、『アンティキティー』ではコモンでの収録だったため、パウパーの親和でも《投げ飛ばし》とセットで採用されることがあります。
《アシュノッドの供犠台》
「クリーチャー1体を生け贄に捧げる:あなたのマナ・プールに(◇)(◇)を加える。」
『アンティキティー』きっての無限コンボのお供といえば《アシュノッドの供犠台》でしょう。このカード単体では何の効果も生み出しませんが、クリーチャーをマナへと変換する能力は古今東西さまざまなデッキに組み込まれてきました。
2000年のスタンダードでは、《菌獣の群落》+《繁殖力》との3枚コンボで循環エンジンを形成。ライブラリーを掘り進めながら不特定マナ1点分増え続けるエンジンですが、《セラのアバター》を採用することで無限マナへと早変わり。同年の世界選手権では《研磨石》や《蛇かご》、X火力をフィニッシャーにトップ8へ入賞しています。
統率者では有色と無色いくつもの無限マナ生成法があり、なかでも《倍増の季節》との組み合わせは無限マナと無限トークンを達成してくれます。統率者を《スリヴァーの女王》にすればコンボパーツ1枚を確保できるので、より決めやすくなるでしょう。
《Power Artifact》
「エンチャント(アーティファクト)」
「エンチャントされているアーティファクトの起動型能力のコストは、それを起動するためのコストが(2)少なくなる。この効果は、能力を起動するためのコストのマナの総量を1マナより少なくすることはない。」
最後は美しき青き無限マナパーツ、《Power Artifact》。《玄武岩のモノリス》や《厳かなモノリス》にエンチャントするだけで、アンタップするための起動コストが減少し、無限マナとなります。単色で、かつ4~5マナと低コストで成り立つコンボです。
無限マナの使い道は複数ありますが、なかでもメジャーなものをご紹介します。
《威圧の杖》と《歩行バリスタ》の2枚はキャストから起動型能力まで無色マナのみで成り立つため、最適なカードといえます。統率者としては《妖精の女王、ウーナ》があげられます。コンボ前に召喚しておくか、有色マナをある程度確保しておく必要がありますが、フィニッシャーを用意する手間を省けるのが利点となりますね。
まだある名カード
さて、『アンティキティー』名カード集、お楽しみいただけたでしょうか。しかし、「あの有名カードなくない?」「もっといいカードあるよ!」と思われた方もいらっしゃるはず。
もっと『アンティキティー』のカードについて知りたい方は、ぜひ、動画もご覧ください!
次回の「名カード集」では、『レジェンド』をお届けいたします。