はじめに
みなさま、「名カード集」へようこそ。
マジックが誕生して早27年、これまでたくさんのカードセットが発売されてきました。その中には拡張セット(以下、エキスパンション)と呼ばれ、基本セットを強化することを名目に作成されたものが存在しています。最近でいえば、『カルドハイム』がこれに該当しています。
この「名カード集」では、時代を過去へと遡り、昔のエキスパンションの名だたるカードを紹介していきます。
第3回目は”あの悪の親玉”が初登場した『レジェンド』をご紹介しましょう。
『レジェンド』ってどんなセット?
『レジェンド』は1994年に発売されたエキスパンション。ここまでのエキスパンションが100種ほどの収録数であったのに対し、『レジェンド』はなんと310種!かなり力を入れて作られたセットであることがうかがい知れますね。
そしてさまざまな「初」が記録されたセットでもあります。エキスパンション名から察しがつくように、伝説のカードが初登場。多色カードもこのエキスパンションが始まりであり、多色カード枠はすべて伝説のクリーチャーとなるほど大々的に取り上げられました。
エキスパンションのブースターパックが15枚入りになったのも『レジェンド』からでした。また、土地カードの枠は豪華に金色となっており、特別な仕様となっています。
『レジェンド』の名カードたち
《稲妻の連鎖》
クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。稲妻の連鎖はそれに3点のダメージを与える。
その後、そのプレイヤーかそのパーマネントのコントローラーは(赤)(赤)を支払ってもよい。そのプレイヤーがそうした場合、そのプレイヤーはこの呪文をコピーし、そのコピーの新たな対象を選んでもよい。
まずご紹介するのは、最強の火力呪文である《稲妻》の調整版、《稲妻の連鎖》。下方修正されている点は、ソーサリーであること、そして相手にコピーされる可能性があることです。
コピーされると大損しそうな印象もありますが、意外とそのデメリットを感じることはありません。そもそも相手が(赤)(赤)を払えないデッキであったり、払えないタイミングを狙って放てばいいのです。仮にコピーされるとしても、そのコピーをこちらがコピーしてしまえばよく、そうなれば1枚の呪文から6点のダメージ。コピーするならどうぞどうぞ、という感じでしょうか。
今もレガシーのデルバーデッキやバーンデッキで使われるほどの優秀な呪文です。
《土地税》
あなたのアップキープの開始時に、対戦相手1人があなたより多くの土地をコントロールしている場合、あなたはあなたのライブラリーから基本土地カードを最大3枚まで探し、それらを公開し、あなたの手札に加えてもよい。そうした場合、あなたのライブラリーを切り直す。
なんと白であるにもかかわらず、手札が3枚も増える可能性を秘めたカード。それが《土地税》です。これもまた予想以上に条件が緩く、後攻をとれば2ターン目から土地を回収することができます。マナスクリューとは無縁の世界ですね。
《土地税》の効果をアクティブにするために、先行でありながらあえて土地を置かなかないというプレイングがありました。初期のマジックにおいては、それほどまでに強力なアドバンテージ源となっていたのです。
カードを1枚捨てる:プレイヤー1人を対象とする。捨てたカードが土地カードである場合、大地の刃はそのプレイヤーに2点のダメージを与える。この能力は、どのプレイヤーも起動してよい。
そしてこの《土地税》と強烈なシナジーを形成したのが《大地の刃》であり、タックスエッジというデッキを生み出しました。《土地税》で手に入れた潤沢な土地を《大地の刃》のコストに充てれば、プレイヤー限定ながら《ショック》を連打し放題。最速3ターン目に成立する凶悪なコンボデッキでした。
《ペンデルヘイヴン》
(T):(緑)を加える。
(T):1/1のクリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは+1/+2の修整を受ける。
続いては、土地枠から《ペンデルヘイヴン》をご紹介します。マナ能力以外の効果を持った土地は現在でも多く登場していますが、その大半はタップインなどの条件付きカードとなっています。ところがこの《ペンデルヘイヴン》は無条件のアンタップイン。
さらに起動型能力にも追加のマナはかからず、タップだけとなっているのです。いつ引いても展開の妨げにならないため、1/1のクリーチャーを含む緑のデッキなら進んで採用したいカードであり、その能力の有用性から緑を含まないデッキでも使われることがあります。
現在ではモダンやレガシーの感染デッキなどで使われ、《荒廃の工作員》や《ぎらつかせのエルフ》といった感染クリーチャーを支えています。ただでさえ感染デッキは速いのに、カード消費無しでパンプアップされたらたまったもんじゃないですね。
《魔力の乱れ》
呪文1つを対象とし、それを、それのコントローラーが(1)を支払わないかぎり、打ち消す。
条件付きのカウンター、《魔力の乱れ》。『ゼンディカーの夜明け』で収録された《ジュワー島の撹乱》の元祖となるカードです。
一見すると用途が狭いように見えますが、最小限のコストで大きなテンポを生み出す、思いのほかやっかいなカウンター呪文。後手であっても相手の2ターン目のアクションを妨害すれば流れを一気に引き寄せることができ、青1マナを立たせておけば相手が勝手に警戒して思い切った展開がしづらくなります。「引っかかって悔しいランキング」があれば間違いなく上位に入りそうです。
『次元の混乱』では、白でありながら同じ効果を持った《マナの税収》が収録。当時の白系アグロにとっては、相手の全体除去や重いクリーチャーへの牽制手段として、タップアウトを咎める貴重な存在となりました。白のデッキがカウンターしてくるとは想像しづらく、さらに引っかかりやすさが増していますね。
《ニコル・ボーラス》
飛行
あなたのアップキープの開始時に、あなたが(青)(黒)(赤)を支払わないかぎり、ニコル・ボーラスを生け贄に捧げる。
ニコル・ボーラスが対戦相手にダメージを与えるたび、そのプレイヤーは自分の手札を捨てる。
最後にご紹介するのは、《ニコル・ボーラス》。プレインズウォーカー・カードとしての印象が強いニコル・ボーラスですが、なんと初登場したときはクリーチャーでした。ロマンあふれる強力なクリーチャーであったものの、色拘束が厳しくマナコストは8マナと重い仕様。《マナ吸収》や《カラカス》のある世界で活躍するのは至難の業でした。
そこで正攻法は諦めて、近道を探すことになりました。それこそが、最序盤に《ニコル・ボーラス》を投げつけるニコル・シュートなのです。
1ターン目に《暗黒の儀式》 → 《葬送の魔除け》で《ニコル・ボーラス》を捨てる → 《浅すぎる墓穴》でリアニメイト → 《ニコル・ボーラス》で攻撃して7枚ハンデス → 対戦ありがとうございました、というデッキです。MTGアリーナにあったら相手が爆発するシーンが容易に想像できます。
そしてニコル・ボーラスはマジックのストーリー上で極めて重要なキャラクターでもあります。その活躍(?)ぶりは若月 繭子さんの記事で詳しく取り上げられております。
- 2019/04/15
- あなたの隣のプレインズウォーカー 第77回 かつて、我らは神であった
- 若月 繭子
まだある名カード
さて、『レジェンド』名カード集、お楽しみいただけたでしょうか。しかし、「あの有名カードなくない?」「もっといいカードあるよ!」と思われた方もいらっしゃるはず。
もっと『レジェンド』のカードについて知りたい方は、ぜひ、動画もご覧ください!
次回の「名カード集」では、『ザ・ダーク』をお届けいたします。