はじめに
みなさんこんにちは。
今週月曜日に、スタンダードを除いた主要な構築フォーマットで大規模な禁止改訂がありました。レガシーも例外ではなく、なんと《アーカムの天測儀》《戦慄衆の秘儀術師》《王冠泥棒、オーコ》の3種類のカードが禁止になりました。
また「続唱」のルール変更もされたため、「続唱」から《星界の騙し屋、ティボルト》をプレイすることができなくなり、『カルドハイム』リリース直後から猛威を振るったTurbo Tibaltも消滅するなど大きな変化がありました。
前置きが長くなってしまいましたが、今回の禁止カードとルールの変更によって久々に環境が大きく変化するので、新環境で活躍が予想されるデッキを見ていきたいと思います。
禁止改定後のメタゲームは?
今回、《アーカムの天測儀》《戦慄衆の秘儀術師》《王冠泥棒、オーコ》の3種類のカードが禁止になったことで一番影響があったのは、現環境のツートップであるTemur DelverとSnowkoになります。
《戦慄衆の秘儀術師》と《王冠泥棒、オーコ》という手軽にアドバンテージを稼ぐ手段兼フィニッシャーを失ったTemur Delverは、デッキの主要なパーツは残ったので昔ながらのCanadian Thresholdタイプに戻ることになるでしょう。
SnowkoやSnow Miraclesは、マナ基盤を支えていた《アーカムの天測儀》と有力なフィニッシャーである《王冠泥棒、オーコ》を失ったため、マナ基盤を中心にデッキの構成を大きく見直す必要があります。特にフェアデッキは《王冠泥棒、オーコ》でゲームを決めることも多かったので、今後はデッキ構築とプレイパターンの多様化が期待できそうです。
「続唱」のルール変更によってTurbo Tibaltは実質消滅しました。最速で1ターン目から複数のカウンターでバックアップすることで、無理やり《星界の騙し屋、ティボルト》を通す動きが強く、登場直後から問題視されていたため妥当な変更だと言えます。
今回の変更による勝ち組デッキは、Delver系に抑えられていた各種コンボデッキです。Show and Tell系、Doomsday、The Spyなどさまざまなコンボデッキが今後見られそうです。そのほか、《戦慄衆の秘儀術師》と除去に苦しめられていたElvesやDeath and Taxes、そして《王冠泥棒、オーコ》が退場したことによって、Karn Echoやエルドラージなど各種《虚空の杯》デッキも台頭してきそうです。
《アーカムの天測儀》が退場したことによって、今後は多色のデッキはマナ基盤に特殊地形を増加することを余儀なくされるので《血染めの月》を使ったプリズン系のデッキの復権もあるでしょう。そして、コンボデッキに強いデッキとして有力なのが、禁止改定直前に開催されたLegacy Challengeを制したDeath’s Shadowになります。旧環境でもそこそこ結果を残していたデッキなだけに要注目のデッキです。
新環境の注目デッキ紹介
Temur Delver
3 《Volcanic Island》
3 《溢れかえる岸辺》
3 《沸騰する小湖》
2 《汚染された三角州》
4 《不毛の大地》
-土地 (18)- 4 《秘密を掘り下げる者》
4 《敏捷なマングース》
2 《タルモゴイフ》
2 《わめき騒ぐマンドリル》
-クリーチャー (12)-
《アーカムの天測儀》が退場したことによって《不毛の大地》は本来の強さを取り戻しました。マナ否定が機能するということは《目くらまし》なども強く使えるようになるので、Delver系は新環境でも有力な選択肢となりそうです。
《戦慄衆の秘儀術師》と《王冠泥棒、オーコ》を失ったことにより、Temur Delverは『灯争大戦』と『モダンホライゾン』がリリースされる前のテンポ寄りの構成に戻ると予想されます。
☆注目ポイント
Canadian Thresholdの顔である《敏捷なマングース》が帰ってきました。《敏捷なマングース》は除去耐性が高く、単体除去が中心のフェアデッキとのマッチアップで安定したクロックとして活躍します。
《もみ消し》によってフェッチランドの起動を妨害しつつ《不毛の大地》で相手のマナを縛ることで、《目くらまし》や《呪文貫き》といったソフトカウンターの有効期限を延ばします。相手の体制が整う前に軽い緑のクリーチャーでライフを攻めていくのがこのバージョンの戦略です。
除去耐性のない《タルモゴイフ》を主力にした型は、同様に新環境で台頭してくることが予想されるDeath’s ShadowやDeath and Taxesなど、軽い確定除去を持つマッチアップが多くなると厳しくなりますが、どのバージョンが活躍するかは今後のメタ次第になります。
Death’s Shadow
3 《湿った墓》
3 《汚染された三角州》
2 《溢れかえる岸辺》
2 《新緑の地下墓地》
1 《血染めのぬかるみ》
1 《霧深い雨林》
4 《不毛の大地》
-土地 (18)- 4 《死の影》
4 《秘密を掘り下げる者》
4 《通りの悪霊》
2 《グルマグのアンコウ》
-クリーチャー (14)-
モダンの定番デッキであるDeath’s Shadowは、レガシーでもDelver系のバリエーションのひとつとして活躍しています。
《死の影》を短時間で最大限に強化するために、このデッキではライフを支払う方法が多数用意されています。レガシーでは珍しいショックランドが採用されているのが特徴です。
レガシーでももっともアグレッシブなスタイルのデッキで、相手に対応する猶予を与えない構成なのでデッキ相性に関係なく押し切るコンボデッキのように振舞うことができます。今回の禁止改定によるダメージは皆無で、《死の影》や《グルマグのアンコウ》といったクリーチャーを問答無用に鹿・トークンに変えてしまう《王冠泥棒、オーコ》が禁止になったこともあり、新環境の有力なデッキのひとつとなりそうです。
☆注目ポイント
《グルマグのアンコウ》はレガシーでよく使われている《稲妻》や《突然の衰微》に耐性があり、《王冠泥棒、オーコ》退場後の強力なフィニッシャーとして注目されています。《アーカムの天測儀》が禁止になったことで、《氷牙のコアトル》の接死条件を満たすことが厳しくなったのも、このタイプのデッキにとっては追い風です。
2ターン目から《グルマグのアンコウ》や《死の影》を展開しプレッシャーをかけていくので、相手はこちらのソフトカウンターをケアしつつ除去を使う余裕がないことが多いため《目くらまし》は有力なカウンターとして機能します。また、代替コストとして《湿った墓》を手札に戻すことで、さらに《死の影》を強化することができます。
4点のライフを支払うという痛い代替コストを持つ《殺し》も、このデッキにとってはメリットになります。0マナで相手のクリーチャーを除去する手段を持っていることは、このデッキが多くのデッキに対して速度で勝る理由のひとつになっています。サイドに採用されている《厚かましい借り手》は、環境の多くの厄介なパーマネントに対応できるフレキシブルなカードです。
Grixis Delver
3 《Volcanic Island》
4 《沸騰する小湖》
3 《汚染された三角州》
2 《溢れかえる岸辺》
4 《不毛の大地》
-土地 (19)- 4 《秘密を掘り下げる者》
2 《若き紅蓮術士》
2 《真の名の宿敵》
1 《厚かましい借り手》
3 《グルマグのアンコウ》
-クリーチャー (12)-
「続唱」のルールの変更はまだされていませんが、すでに禁止改定後の環境にアップデートされているMOでは早速リーグに参戦して結果を残しているプレイヤーが見られます。
レガシーのエキスパートでDelver系を得意とするRich Cali氏は、新環境向けに調整されたGrixis Delverでリーグを5-0していました。ハンデスやサイズで勝る《グルマグのアンコウ》、Elvesなどに有効な《疫病を仕組むもの》などにアクセスできるGrixis Delverは、有力なDelver系として新環境で活躍が期待できそうです。《王冠泥棒、オーコ》によって鹿にされることはなくなったので、《グルマグのアンコウ》も本来の強さを取り戻しました。
☆注目ポイント
メインから採用されている《厚かましい借り手》は、このデッキにとって厳しい《マリット・レイジトークン》や《虚空の杯》など厄介なパーマネントを対処できます。《真の名の宿敵》も環境の有力な3マナ域として再評価されており、除去耐性の高いフィニッシャーとしてこのデッキを含めた多くの青いフェアデッキで今後見られそうです。
サイドの《疫病を仕組むもの》は、ElvesやDeath and Taxesといった小型のクリーチャーを並べてくるデッキを止める最適な手段となります。さらに、多くの青いデッキが採用し始めている《真の名の宿敵》対策にもなるのです。
《神秘の聖域》と《苦い真理》によって、サイド後はミッドレンジとしてコントロールデッキとのロングゲームでも渡り合えるようになっています。
Eldrazi
3 《Savannah》
3 《カラカス》
4 《魂の洞窟》
4 《古えの墳墓》
4 《エルドラージの寺院》
4 《不毛の大地》
1 《裏切り者の都》
-土地 (25)- 4 《歩行バリスタ》
4 《スレイベンの守護者、サリア》
4 《変位エルドラージ》
2 《異端聖戦士、サリア》
4 《難題の予見者》
1 《宮殿の看守》
4 《現実を砕くもの》
-クリーチャー (23)-
《王冠泥棒、オーコ》の禁止は、各種《虚空の杯》デッキをポジション的に有利にしました。
2マナランドや《モックス・ダイアモンド》といったマナ加速から《現実を砕くもの》など優秀なエルドラージクリーチャーを高速展開していく動きは単純ながら強力で、相手の除去は《虚空の杯》でシャットアウトすることができます。
白単バージョンは無色バージョンと比べると爆発力の面では劣りますが、《変位エルドラージ》や《スレイベンの守護者、サリア》など相手に干渉できる要素が多めです。
☆注目ポイント
《アーカムの天測儀》が禁止されたことによって《不毛の大地》が多色デッキに刺さるようになりました。エルドラージクリーチャーや《スレイベンの守護者、サリア》などを展開しつつ、相手の反撃の芽を摘む動きは脅威となります。
特殊地形の採用率が上がるため《異端聖戦士、サリア》は前よりもさらに強くなりそうです。Death and TaxesやElvesなど小型クリーチャーを並べてくるデッキは、今後台頭してくることが予想されます。Delver系のデッキで2マナ域の主力として《若き紅蓮術士》が増加することを考えると、《歩行バリスタ》は新環境ではさらに活躍しそうです。
白を使うメリットとして《耳の痛い静寂》などサイドボードの選択肢が広がることです。特に新環境ではコンボデッキが増えそうなので、対策はしっかりとしていきたいところです。同様に禁止改定からノーダメージだったHogaakなど、墓地コンボも忘れてはなりません。《虚空の力線》など墓地対策は忘れないようにしましょう。
Karn Echo
4 《教議会の座席》
1 《水辺の学舎、水面院》
2 《魂の洞窟》
4 《古えの墳墓》
3 《裏切り者の都》
-土地 (17)- 4 《湖に潜む者、エムリー》
4 《船殻破り》
4 《最高工匠卿、ウルザ》
-クリーチャー (12)-
4 《水蓮の花びら》
4 《ミシュラのガラクタ》
4 《オパールのモックス》
4 《虚空の杯》
3 《ライオンの瞳のダイアモンド》
2 《ウルザのガラクタ》
2 《覆いを割く者、ナーセット》
4 《大いなる創造者、カーン》
-呪文 (31)-
2 《歩行バリスタ》
2 《残響する真実》
1 《ライオンの瞳のダイアモンド》
1 《トーモッドの墓所》
1 《液鋼の塗膜》
1 《魔術遠眼鏡》
1 《罠の橋》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《マイコシンスの格子》
-サイドボード (15)-
前環境でも活躍していた《虚空の杯》デッキであるKarn Echoにも注目が集まっています。
《最高工匠卿、ウルザ》をフィニッシャーにしたプリズンコントロールで、モダンでも活躍していたUrzaコントロールのレガシー版になります。《覆いを割く者、ナーセット》+《永劫のこだま》のコンボで自分だけ手札を満タンにしたり、《大いなる創造者、カーン》+《マイコシンスの格子》のコンボによって相手をロックしたりと多角的な攻めができることが特徴です。
このデッキは、『統率者レジェンズ統率者デッキ』から《船殻破り》が加入したことでさらに強化されました。《王冠泥棒、オーコ》が禁止されたことで置物や《最高工匠卿、ウルザ》などキーとなるクリーチャーが対策されにくくなり、マナ加速による爆発力もあるので新環境でも有力なデッキとなりそうです。
☆注目ポイント
《永劫のこだま》とのコンボパーツである《覆いを割く者、ナーセット》は、相手の追加のドローを妨害したりキーカードをサーチする手段にもなるなど、単体でも活躍できるカードです。似たような効果を持つ《船殻破り》はシングルシンボルなので《覆いを割く者、ナーセット》よりもプレイしやすく、インスタントスピードでもプレイできるので相手のドロースペルに合わせて出せるなど奇襲性があります。
《ライオンの瞳のダイアモンド》を利用することによって《永劫のこだま》を最速で1ターン目から「フラッシュバック」することが可能で、《覆いを割く者、ナーセット》や《船殻破り》抜きでも相手の初手を強制的に入れ替えることができるので、相手や状況によってはそれだけでも多大な被害を与えることができます。その後有利になるかはある程度運に左右されますが、《水蓮の花びら》などマナアーティファクトを多数搭載しているこのデッキでは、多くの場合有利な状況に持ち込めます。
Delver系には《虚空の杯》が刺さり、《永劫のこだま》コンボ以外でも《覆いを割く者、ナーセット》や《大いなる創造者、カーン》《最高工匠卿、ウルザ》などマストカウンターとなる脅威が多いため コントロールとのマッチアップでも互角以上に渡り合えます。《王冠泥棒、オーコ》が禁止になったことで、《虚空の杯》をメイン戦から対処されることが少なくなり、青いフェアデッキに対してさらに強くなりました。
総括
多くの禁止カードが出た今回の改訂ですが、2019年ごろから問題視されていたカードパワーのインフレによって、デッキ構築やプレイパターンの多様性が著しく損なわれていた環境を改善させる意向からだと思います。
プレイヤーの人数が増えてMOなど大会が開催される頻度が上がり、エキスパンション以外に『統率者セット』や『モダンホライゾン』など特殊セットもリリースされているためどうしても強いカードやメカニズム、デッキが出てきてしまうことは仕方がないことだと思います。しかし、ここ最近は禁止カードが出る頻度も高く、プレイヤーにとっては金銭面でも資産面でも大きな負担になってしまうため、今後はなるべく禁止カードを出してほしくないと思っています。
環境がリセットされて新しいデッキを考えるのが楽しい時期です。次回の連載からは新環境の大会の情報をお届けしたいと思います。
以上、USA Legacy Express vol. 178でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!