はじめに
みなさま、「名カード集」へようこそ。
この「名カード集」では、時代を過去へと遡り、昔のエキスパンションの名だたるカードを紹介していきます。
今回は兄弟戦争後の暗黒時代をテーマにした『ザ・ダーク』をご紹介しましょう。
『ザ・ダーク』ってどんなセット?
『ザ・ダーク』とは、1994年8月に発売されたエキスパンションであり、現在のところ唯一のイラスト主導でカードデザインが決められたセットです。収録カードは全119種類であり、「暗黒時代」をテーマに自由にイラストを描いてもらい、それに合わせてカードをデザインしているのです。
エキスパンションの特徴として一部の種族に収録枚数が偏っており、1割近くがゴブリンになっています。
(T):あなたは、あなたの手札にあるゴブリン・パーマネント・カードを1枚戦場に出してもよい。
(赤):ゴブリン1つを対象とする。それはターン終了時までプロテクション(白)を得る。
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なぜ、プロテクション(白)と思われる方がいるかもしれませんが、当時の主力除去《剣を鍬に》を考えてのことでしょう。
また、墓地にあるカードを使って何かしらの効果を得るカードや、墓地を対策するカードが初登場しています。
(0):墓地にあるクリーチャー・カード1枚を対象とする。《Eater of the Dead》がタップ状態である場合、墓地にあるそのカードを追放し、《Eater of the Dead》をアンタップする。
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それでは、暗黒面のカードをみていきましょう。
『ザ・ダーク』の名カードたち
《Amnesia》
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは自分の手札を公開し、すべての土地でないカードを捨てる。
《Amnesia》は黎明期らしい色の概念を通り越したカードですが、その効果はかなり派手なものとなっています。マナコストが固定であり、土地が捨てられない分《精神錯乱》には劣りますが、手札を確認できるので十分でしょう。
問題は使い方ですが、トリプルシンボルを含む重いマナコストと相性のいいカードがありました。青ベースのコントロールデッキでは《マナ吸収》で生成したマナの活用先として、高速キャストを可能にしていました。黎明期にはクロックパーミッションスタイルのTropical Skyがあり、こちらはマナクリーチャーがいたため、相性がいいカードとなっていました。
《インフェルノ》
インスタント
《インフェルノ》は、各クリーチャーと各プレイヤーにそれぞれ6点のダメージを与える。
かつて、基本セットの常連カードであった《インフェルノ》。自身を含めたプレイヤーとクリーチャーへ大ダメージを与える赤らしく派手な呪文は、『ザ・ダーク』より登場しました。
こちらもマナコストにXを含む《地震》と比較すると使い勝手は悪いものの、飛行クリーチャーを除去できるリセット呪文になっています。当時の環境を正確に知る情報ソースはないため想像になってしまいますが、《セラの天使》や《空飛ぶ男》が採用されていたことを考えると、それらに対抗するカードとしてデザインされたのかもしれません。
《深き闇のエルフ》
(T):(黒)を加える。《深き闇のエルフ》はあなたに1点のダメージを与える。
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《深き闇のエルフ》はマナクリーチャーですが、対抗色を生み出せる異色の存在です。これこそ『ザ・ダーク』の特徴である、イラスト先行のカードデザインがもたらした結果でしょう。対抗色をただで生み出すことはできずダメージを受けてしまいますが、それを含めて素晴らしいカードといえます。
暗闇の中、上目づかいで見つめる瞳は美しく、イラストも人気のカードとなっています。『ラヴニカ:ギルドの都』再録時に、イラストが変更されてしまったことが残念でなりませんね。
もちろん、スタンダードでは活躍を見せました。黒マナを生成できることでゴルガリカラーの組み合わせで良く使われ、序盤から《惑乱の死霊》のような黒のダブルシンボルをキャストするためのマナ基盤を整えてくれました。世界選手権05では、《深き闇のエルフ》入りのスゥルタイカラーの8ヒッピーがトップ8に入賞しています。
《Tivadar’s Crusade》
ソーサリー
すべてのゴブリンを破壊する。
冒頭で述べた通り、『ザ・ダーク』にはゴブリンが多く収録されています。それはつまり、押し寄せるゴブリンへの解決策が必要であることを意味しています。
《Tivadar’s Crusade》はわかりやすい対策カードであり、ゴブリンにとっては3マナの《神の怒り》に等しい効果。しかも自身の戦場にゴブリンがいなければ、一方的な展開へと持ち込めるようになっています。デザインチームがどれほどの愛情と憎しみをゴブリンへと抱いていたかは不明ですが、過去にデザインされた対策カードはいささか、派手過ぎる効果となっているようです。
現在のレガシーではゴブリンはマイナーアーキタイプとなっていますが、一時期は主力アーキタイプのひとつとなっていました。ダブルシンボルはネックでしたが、《Tivadar’s Crusade》は対策カードとしてその存在感を示していたのです。
《従者》
「歳の頃は二十歳そこそこと見えた。」
「背丈はといえば人並み。」
「驚くほど明け透けで、力は素晴らしかった。」
「――― ジェフリー・チョーサー、『カンタベリー物語』.」
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最後にご紹介するのは歴代屈指のバニラ(能力なし)クリーチャー、《従者》。現在のクリーチャー水準と比べるまでもなく、『ザ・ダーク』当時ですら最弱の名を欲しいままにしたデザインとなっています。長々と書かれたフレイバーテキストは読み飛ばしがちですが、このカードのデザインと深く結びついています。年齢からはマナコストが、「背丈はといえば人並み。」からはタフネスが決定されています。2マナ域の平均的なタフネスといえば2と相場が決まっていますからね。
ですが、最大の謎はそのパワーにあります。フレイバーテキストには「力は素晴らしかった」とありますが、脅威の1。確かに騎士へ付き従う存在であり、当時は《白騎士》がいたことを考えると合点はいきますが、このパワーに関しては説明して欲しいところです。
ウィザーズではお気に入りのようで度々コラムで引き合いに出されています。曰く「《サバンナ・ライオン》や《モグの狂信者》と相打て、《密林の猿人》(《森》なし)を一方的に打ち取れる」と。
『時のらせん』では、貴重なタイムシフト枠に登場しております。公式コラムによれば「マジックの変遷を示すために収録された」とありますが、パック開封をするたびに小憎らしい顔が出てくるのは残念でなりません。せめて、「《深き闇のエルフ》ばりの愛らしいイラストだったら」と思わざるを得ませんでした。
まだある名カード
さて、『ザ・ダーク』名カード集、お楽しみいただけたでしょうか。しかし、「あの有名カードなくない?」「もっといいカードあるよ!」と思われた方もいらっしゃるはず。
もっと『ザ・ダーク』のカードについて知りたい方は、ぜひ、動画もご覧ください!
次回の「名カード集」では、『フォールン・エンパイア』をお届けいたします。
この記事内で掲載されたカード
《従者》》