みなさんこんにちは。
先週の月曜日に禁止制限告知が出され、5枚のカードが環境を去りました。
これはモダンが公式フォーマットに制定された直後の禁止改定を除き、歴代でもっとも多い枚数です。加えて「続唱」のルールが変更され、「続唱」から《星界の騙し屋、ティボルト》 をプレイできなくなりました。
暗い話題はここまでにして、今回の連載では、禁止改定直後に開催されたモダンのイベントの結果を追っていきたいと思います。
Modern Challenge #12263387
Azorius Control復権
2021年2月20日
- 1位 Azorius Control
- 2位 Heliod Company
- 3位 Burn
- 4位 Mono-Red Aggro
- 5位 Burn
- 6位 Izzet Prowess
- 7位 Living End
- 8位 Dimir Mill
トップ8のデッキリストはこちら
大々的な禁止改定が行われたことで旧環境で猛威を振るっていた4C Uro Omnathが消滅し、多くのデッキにチャンスが巡ってきました。高速コンボデッキも弱体化したため今まで抑えられていたアグロデッキが復権し、環境は多様性をみせています。
デッキ紹介
Azorius Control
禁止改定後初のModern Challengeを制したのは除去とカウンター、プレインズウォーカーがバランスよく揃った古典的なAzorius Controlでした。《神秘の聖域》が禁止カードになったことで終盤に《謎めいた命令》と組み合わせて相手をロックすることはできなくなりましたが、ほかのデッキの損失と比べれば微々たる変化です。
《瞬唱の魔道士》や《天界の列柱》といった懐かしのカードが再び採用されており、数年前のAzorius Control に近い構成となっています。
☆注目ポイント
墓地のスペルを追放してしまう《瞬唱の魔道士》は《神秘の聖域》と相性が悪かったため、以前の青系コントロールでは不採用になっていました。《瞬唱の魔道士》は《神秘の聖域》亡き後のスペル再利用手段として再評価されています。
《天界の列柱》はゲームを決めるフィニッシャーであり、終盤のマナの使い先となっています。マナ基盤を島に寄せる必要性が薄れたため《氷河の城砦》などの2色地形を採用できるようになり、《沸騰》や《窒息》といったアンチカード1枚でマナベースを壊滅させられることは少なくなりそうです。
基本的な構成は『エルドレインの王権』がリリースされる前のものをベースに、《サメ台風》が採用されたかたちです。序盤は必要なカードを探しだすキャントリップになり、マナが余る後半はフィニッシャーとして機能するフレキシブルなカードになります。
ProwessやBurnといった赤ベースのデッキを意識していたようで、《機を見た援軍》がメインに採用されています。コンボデッキが弱体化したことでTronなどの土地コンボも復権してくると考えたのか、《廃墟の地》がメインからフル搭載されています。同カードはHammer Timeの《墨蛾の生息地》対策にもなるので、現環境では4枚採用することを推奨します。
サイドボードの《呪文捕らえ》は《時を解す者、テフェリー》と相性が非常に良いカードです。《時を解す者、テフェリー》が場にある状態なら、《呪文捕らえ》が除去されたとしても捕らえたスペルが相手に戻ることはありません。
Burn
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と《創造の座、オムナス》によるライフゲインに悩まされることがなくなったため、軽いクリーチャーと火力スペルで相手のライフを速攻で削るBurnが復権を果たしました。
今まで苦手としていた高速コンボデッキが弱体化したこともこのタイプのデッキにとっては追い風です。
☆注目ポイント
メインの基本的な構成は『エルドレインの王権』前のリストと違いはありません。《大歓楽の幻霊》は軽いスペルを多用するモダンでは強力なダメージソースであり、Stormなど環境に残ったコンボデッキにも強いクリーチャーです。
ミラーマッチやProwessなど赤いアグロデッキと当たることを想定していたようで、《コーの火歩き》がサイドに忍ばせてあります。このリストでは2枚となっていますが、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が禁止になったことで赤いアグロが増加するはずなので4枚採用を推奨します。
《乱動する渦》はこのデッキでは数少ない最近のカードであり、ライフゲインを封じることができるのでHeliod Company対策になります。
Modern Challenge #12263393
Heliodコンボがワンツーフィニッシュ
2021年2月21日
- 1位 Heliod Company
- 2位 Heliod Company
- 3位 Jund Death’s Shadow
- 4位 Izzet Prowess
- 5位 Titan Shift
- 6位 Dredge
- 7位 Hammer Time
- 8位 Azorius Spirits
トップ8のデッキリストはこちら
《太陽冠のヘリオッド》と《歩行バリスタ》の無限ダメージコンボを搭載したミッドレンジコンボが今大会でワンツーフィニッシュを果たしました。
メタが定まっていない時期はプロアクティブな戦略が好まれる傾向にあり、特にRed ProwessとBurnは禁止改定の影響を受けなかったアーキタイプであります。Heliodコンボは赤いアグロに強く、こちらも禁止改定の影響を受けていないため新環境の有力なデッキとして注目を集めていました。
《死者の原野》が禁止になったことで《原始のタイタン》デッキは、《風景の変容》+《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》のコンボ型に戻っています。ほかにはクリーチャーベースのコンボデッキ、Hammer Timeもトップ8に残るなど新旧入り混じったプレイオフとなりました。
デッキ紹介
Heliod Company
2大会連続で結果を残しているHeliod Companyはデッキ内の大半がクリーチャーであり、コンボのなかでも独特なものに仕上がっています。最終的に《太陽冠のヘリオッド》+《歩行バリスタ》の無限ダメージコンボを狙っていきますが、クリーチャーを強化する《議事会の導師》やアドバンテージが取れる《集合した中隊》を利用することでミッドレンジアグロとして振舞うこともできます。
赤いアグロデッキが人気のある環境では《オーリオックのチャンピオン》や《スパイクの飼育係》などのライフゲイン能力を持つカードが活躍します。禁止改定によって失ったカードはなく、これまでもトップメタに近い立ち位置だったので、新環境の有力デッキの一つとして注目に値するデッキです。
☆注目ポイント
《楽園の拡散》と《東屋のエルフ》の代わりに《貴族の教主》と《極楽鳥》がそれぞれ4枚ずつ採用されているのが特徴です。スイーパーには弱くなりますが、クリーチャーを多く採用することで《集合した中隊》のヒット率が上がっています。また、このデッキに必ず採用されていた《エラダムリーの呼び声》が不採用となっており、メインの非クリーチャースペルは《集合した中隊》だけに留められています。
《スカイクレイブの亡霊》はデッキ内のクリーチャー数を減らさずに使える除去であり、《集合した中隊》を使うデッキでは特に重宝します。
《テューンの大天使》は《スパイクの飼育係》との組み合わせで無限ライフ+無限サイズアップをすることができます(MOでは能力がスタックに乗るたびにクリックする必要があるので、現実的には無限コンボは不可能ですが)。コンボパーツが揃わない場合でも、《テューンの大天使》は自身が絆魂を持っているのでクリーチャーを強化することができ、単体で十分に活躍できるスペックです。
《至高の評決》などスイーパー対策として、《無私の霊魂》がサイドに採用されています。《太陽と月の輪》は墓地対策になりますが、自分を対象にとることでライブラリーアウトを狙ってくるDimir Mill対策にもなるフレキシブルさが魅力です。
Jund Death’s Shadow
Death’s Shadow系は妨害手段を持つ攻撃的なデッキであり、新環境でも活躍が期待できます。《思考囲い》や《致命的な一押し》といった軽いスペルで相手のプランを妨害し、相手が立て直している隙に《死の影》と《スカイクレイブの災い魔》などでビートダウンしていくスタイルとなっています。
☆注目ポイント
Jund Death’s Shadowは《タルモゴイフ》のような軽くサイズ感のあるクリーチャーと軽い除去を多数採用しているため、ProwessやBurnが流行している環境では有力なアーキタイプとなりそうです。《タルモゴイフ》は《オーリオックのチャンピオン》で止まらず、Azorius Controlがサイドに忍ばせている《天界の粛清》にも引っかからない脅威として重宝します。
緑をタッチするもう一つのメリットは、《夏の帳》が使えることです。黒い除去に対してキャントリップ付きのカウンターのように機能するので、ミラーマッチでは大きなアドバンテージになります。《コラガンの命令》は《霊気の薬瓶》や装備品も対処できるアドバンテージのとれる除去であり、Hammer TimeやDeath and Taxes、Stonebladeなど多くのマッチアップで活躍が期待できます。
デッキの構成を歪めることなく2マナ以下のパーマネントでまとめることができるので、すんなりと《夢の巣のルールス》の「相棒」条件を満たします。クリーチャーだけではなく、《ミシュラのガラクタ》や《炎の印章》を再利用してアドバンテージを稼ぐことができるので、コントロール相手にロングゲームで渡り合うこともできます。このようにJund Death’s Shadowはアグロとしてもミッドレンジとしても振舞うことができ、《ティムールの激闘》によるコンボキルも搭載されているため、使用難易度は高めなもののアーキタイプの多いモダンでは安定したチョイスになりそうです。
NRG Series MTGO Open – February 2021
Tronが復権
2021年2月22日
- 1位 Tron
- 2位 Azorius Control
- 3位 Burn
- 4位 Humans
- 5位 Dredge
- 6位 Naya
- 7位 Mardu Midrange
- 8位 Heliod Company
大会情報はこちら
禁止改定直後に開催されたオンライン大会は、プレイオフに進出したすべてのデッキが異なるアーキタイプであり、多様性のあるフォーマットに戻った印象でした。
今大会で優勝したのはTronでした。ほかにもAzorius ControlやBurn、Humansといった懐かしいデッキが入賞しています。
デッキ紹介
Tron
《死者の原野》系デッキが消滅したことで《血染めの月》をメインから積んでくるデッキも減少しており、土地をキーカードにしているTronはまさに禁止改定の恩恵を受けたデッキです。
このデッキが得意とするJundやAzorius Controlが復権の兆しを見せているのも、このデッキにとっては追い風です。
☆注目ポイント
アグロデッキが厳しいTronですが、最近は《歩行バリスタ》や《爆発域》のおかげで幾分か緩和されています。《爆発域》は《死の影》や《僧院の速槍》など1マナの脅威を展開してくるデッキに対して有効であり、土地なので《探検の地図》や《森の占術》でサーチできるスイーパー(大量除去)になります。Humansのように火力スペルを採用していないアグロデッキに対しては、《大いなる創造者、カーン》から《罠の橋》をサーチすることで攻撃を完封することが可能です。
Tronが苦手とするBurnやIzzet Prowessなどの赤いアグロデッキに対抗するために、《スラーグ牙》がメインから採用されています。除去されてもアドバンテージが取れるので、ほかのデッキとのマッチアップでも無駄になることはありません。
青いコントロールやJundに強いアーキタイプではあるものの、《否定の力》が追加されたことで以前よりは苦戦するマッチアップとなっています。そのためサイドボード後には《夏の帳》が採用されています。
《血染めの月》はキラーカードとなるので《解呪》系のスペルは必須となります。このデッキでは「サイクリング」付きの《萎れ》を採用しており、万が一置かれない場合も手札で腐る心配がなくなったことはこのデッキにとってはもっとも大きな収穫です。
総括
大きな変化があったモダンですが、その結果プレイできるデッキや戦略の幅が広がり、楽しいフォーマットへ戻った印象です。
禁止改定前の環境と比べれば多様性が戻り、離れてしまったプレイヤーも戻りつつあることは歓迎されることではありますが、やはりここ最近の禁止カードの出る頻度の高さはどうしても気になるところであります。禁止カードが頻繁に出ることはプレイヤーにとって大きな負担になってしまうので、一個人の希望として「なるべく禁止カードを出してほしくない」と思っています。
以上、USA Modern Express vol. 53でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!