マジック名カード集 ~『ホームランド』編~

晴れる屋メディアチーム

はじめに

みなさま、「名カード集」へようこそ。

この「名カード集」では、時代を過去へと遡り、昔のエキスパンションの名だたるカードを紹介していきます。

今回は『ホームランド』をご紹介しましょう。

『ホームランド』ってどんなセット?

『ホームランド』とは、1995年10月に発売されたエキスパンションであり、収録カードは全115種類。『アラビアンナイト』から続いていた8枚入りブースターの最後となるセットです。舞台が新次元・ウルグローサへと移ったため、同次元を表す惑星がエキスパンションシンボルとなっているのです。

これまでセットとの最大の違いは、明確なストーリーが生まれたことです。これまで謎だった言葉や人物に意味が付されたことで、マジックの世界観が広がりをみせ、物語に登場するキャラクターが実在のカードとして表現されるようになりました。定番となっているストーリーとカードが一体になったマジックが、ここに始まったのです。

マジックの世界観を我々に届けてくれた『ホームランド』ですが、反面、カードパワーはかなり低いエキスパンションとなってしまいました。後のウィザーズ・オブ・ザ・コースト社開発部の主席デザイナーとなるMark Rosewater氏は、「このエキスパンションを生み出したことをマジック史上最大の過ちのひとつ」と評しているほどです。新しいメカニズムがなく、ほかのエキスパンションに比べて強力なカードが少なかったためでしょう。

鋸刃の矢記憶の欠落商人の巻物

しかし、使えるカードがまったくなかったわけではありません。《鋸刃の矢》のようにプロテクションへの対抗策や、シングルシンボルでキャストしやすい《記憶の欠落》、ヴィンテージに指定席を持つ《商人の巻物》などは活躍し、再録もされてきました。地味ながらデッキの動きを補助したり、特定のカードへの対抗策が揃ったエキスパンションだったのです。

『ホームランド』の名カードたち

《イーサンの影》

イーサンの影

《イーサンの影》

プロテクション(白)

『ホームランド』を、そして黎明期の黒のフィニッシャーを語る上で外せないのがこの《イーサンの影》です。トリプルシンボルとマナ拘束の強さはネックとなりますが、それに見合うだけの価値がありました。高いタフネスは《稲妻》を耐え、《アーナム・ジン》を止めてくれます。プロテクションは《剣を鍬に》を意識してのことでしょう。

剣を鍬にKjeldoran Outpost

《Kjeldoran Outpost》

《Kjeldoran Outpost》が戦場に出る場合、代わりに平地を1つ生け贄に捧げる。そうした場合、《Kjeldoran Outpost》を戦場に出す。そうしなかった場合、それをオーナーの墓地に置く。

(T):あなたのマナ・プールに(白)を加える。

(1)(白),(T):白の1/1の兵士クリーチャー・トークンを1体生成する。

今なおレガシー界の最優良除去といわれる《剣を鍬に》ですが、当時からその強さは疑う余地がありません。それに加えて『アライランス』にて《Kjeldoran Outpost》が登場すると、ディフェンシブなコントロールデッキ「カウンターポスト」が誕生します。防御に優れ、中盤以降は兵士・トークンにより戦闘でライフを削りきることが難しいアーキタイプになりますが、《イーサンの影》はプロテクション(白)によってその防御網を越えてライフを詰めることが可能だったのです。

《休戦》

休戦

《休戦》

各プレイヤーは、カードを最大2枚まで引いてもよい。これによりプレイヤーが引かなかったカード1枚につき、そのプレイヤーは2点のライフを得る。

1ドロー=2点ライフゲイン

現在ではドローはライフよりも重いとなりますが、この《休戦》をみるに黎明期にはライフが非常に重要なリソースのひとつとして考えられておりました。ブーンズの《治癒の軟膏》と同じく、初期らしいカードデザインとなっています。

活力回復

『カルドハイム』にはドローとライフゲインを一挙動でおこなえる《活力回復》が収録されています。この効果を《休戦》から導き出した当時のレートに置き換えると、2マナで5点ライフゲイン or 2.5枚分のドローとなります。あり得ないくらい強力なカードとなっていたことでしょうね。

《大いなる人狼》

大いなる人狼

《大いなる人狼》

戦闘終了時に、《大いなる人狼》をブロックしているか《大いなる人狼》によってブロックされている各クリーチャーの上に-0/-2カウンターを1個置く。

《大いなる人狼》は吸血鬼の始祖である《Baron Sengir》の片腕といわれ、人間と狼の両方の姿を持つクリーチャーです。カードテキストはさておいて、注目していただきたいのは、まさにこのカードイラスト。変身中ともとれる半人半狼の姿を描いた何とも不気味なカードであり、まさに《大いなる人狼》の名が相応しい1枚です。

そして人狼と聞いて思い浮かぶのは、大人気のテーブルトークRPG「人狼」です。(ご存知の方も多いでしょうが)このゲームは人間世界へ人間のふりをして隠れ潜む人狼が誰であるかを推理していくゲームとなっています。人間世界へ溶け込んで命を狙う人狼の姿は、まさにこの《大いなる人狼》がピッタリ。今後「人狼」をプレイする機会がありましたら、ぜひ《大いなる人狼》のことを思い出してあげてくださいね。

《Autumn Willow》

Autumn Willow

《Autumn Willow》

被覆

(緑):プレイヤー1人を対象とする。ターン終了時まで、《Autumn Willow》はそれが被覆を持たないかのように、そのプレイヤーがコントロールする呪文や能力の対象とできる。

当たりが少ないといわれた『ホームランド』の中でも、《イーサンの影》とためをはれる優良フィニッシャーです。単体除去が効かず、万が一戦闘で打ち取られそうになったとしても自分だけは《巨大化》などで対象にできる厄介なクリーチャーとなっています。《アーナム・ジン》とセットで使い、《ハルマゲドン》で強引に押すオータムゲドンと呼ばれるデッキが存在しておりました。

また、綺麗なイラストにもご注目ください。このモデルとなったのは《Mishra’s Workshop》などを手掛けたイラストレーターのKaja Foglio氏。実在する人物がマジック界へと描かれた珍しいカードとなっているのです。

《Apocalypse Chime》

Apocalypse Chime

《Apocalypse Chime》

(2),(T),《Apocalypse Chime》を生け贄に捧げる:すべての『ホームランド』エキスパンションにて印刷された名前を持つトークンでないパーマネントを破壊する。それらは再生できない。

『アラビアンナイト』より脈々と受け継がれてきた対エキスパンションカード、それも最後の1枚となりました。《Apocalypse Chime》は『ホームランド』のカードのみを破壊するリセット呪文であり、《Golgothian Sylex》と比べるとマナコストも軽く使いやすくなっています。

しかし、肝心の『ホームランド』自体が弱いエキスパンションであったため、日の目を見ることなく去ることになります。対エキスパンションカードは豪快で強力なデザインであり、時代が違えばぶっ壊れたカードともとれる能力です。せめて、『ホームランド』以外で収録して欲しかったと思ったのは私だけではないはずでしょう。

まだある名カード

さて、『ホームランド』名カード集、お楽しみいただけたでしょうか。しかし、「あの有名カードなくない?」「もっといいカードあるよ!」と思われた方もいらっしゃるはず。

もっと『ホームランド』のカードについて知りたい方は、ぜひ、動画もご覧ください!

次回の「名カード集」では、『アイスエイジ』をお届けいたします。

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