USA Pioneer Express vol.18 -禁止改定後のパイオニアは今-

Kenta Hiroki

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はじめに

みなさんこんにちは。

自然の怒りのタイタン、ウーロ地底街の密告人欄干のスパイ
時を解す者、テフェリー荒野の再生

2月15日に禁止制限告知が出され、パイオニアでは5種類のカードが禁止になりました。これによって多くのトップメタデッキは弱体化、消滅を余儀なくされました。

今回の連載では、禁止改定直後にMOで開催されたPioneer Champsの結果を追っていきたいと思います。

Pioneer Champs #12266342
アグロデッキが強い環境

2021年2月27日

  • 1位 Jund Sacrifice
  • 2位 Rakdos Arcanist
  • 3位 Mono Black Aggro
  • 4位 Burn
  • 5位 Sultai Control
  • 6位 Naya Winota
  • 7位 Rakdos Arcanist
  • 8位 Rakdos Arcanist

トップ8のデッキリストはこちら

5種類の禁止カードが出たことによって大きく変化したパイオニア。キーカードを失ったReclamation ControlとThe Spyは消滅し、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《時を解す者、テフェリー》を失ったNiv to Blightなどは弱体化を強いられて上位から姿を消しました。

今大会で結果を残したのは禁止改定によって失ったカードがなく、旧環境でも結果を残していたRakdos Arcanist、Burn、Mono Black Aggroなどが中心でした。

一般的にBurnやMono Black Aggroなどのアグロデッキは、メタが固まっていない新環境で勝ち組になりやすい傾向にあります。旧環境では《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を使ったコントロールに苦戦を強いられていたので、禁止改定後の環境ではアグロデッキが増加することは想像に難しくありませんでした。

Jund Sacrifice

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禁止改定直後に開催されたMOPTQを優勝したのはJund Sacrificeでした。Jund Sacrificeはスタンダードでも活躍していた《魔女のかまど》《大釜の使い魔》をキーカードにしたデッキで、アグロデッキとしてもミッドレンジとしても振舞えるフレキシブルなデッキです。

スタンダードのときと同様に《魔女のかまど》《大釜の使い魔》のコンボを設置することを目指していきます。《集合した中隊》が使えるパイオニアではアドバンテージを稼ぎやすく、キーとなるクリーチャーを探しやすくなりました。

魔女のかまど大釜の使い魔波乱の悪魔

《魔女のかまど》《大釜の使い魔》《波乱の悪魔》のシステムによりアグロデッキに強く、《集合した中隊》などアドバンテージを取れるカードも搭載されているためミッドレンジやコントロールとも戦えます。

☆注目ポイント

忘れられた神々の僧侶

メインに除去はありませんが、《忘れられた神々の僧侶》はサクリ台として機能しつつ相手のクリーチャーを対処する手段としても機能します。《魔女のかまど》《大釜の使い魔》《波乱の悪魔》のコンボが完成すれば相手の場を一掃することも可能です。

悲哀の徘徊者ズーラポートの殺し屋

《悲哀の徘徊者》はサクリファイスする起動型能力のコストにタップやマナを必要としないので、自軍のクリーチャーが死亡する度にライフをドレインする《ズーラポートの殺し屋》との相性が良く、「脱出」持ちなので息切れ防止にもなります。占術1もドローの質を上げるうえで地味ながら役に立ちます。

集合した中隊ボーラスの城塞

《集合した中隊》のおかげで《悲哀の徘徊者》《大釜の使い魔》《波乱の悪魔》などキーとなるクリーチャーをそろえやすくなり、緑を入れる理由のひとつにもなっています。最終的に《ズーラポートの殺し屋》《大釜の使い魔》でライフを回復させつつ、《ボーラスの城塞》によってパーマネントを並べた後に能力を起動させてゲームを終わらせます。去年までスタンダードでも活躍していたデッキで、比較的最近のカードが中心なのでこれからパイオニアを始めたという方にもおすすめできるデッキです。

Rakdos Arcanist

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パイオニアを代表するミッドレンジアグロ。Rakdos Arcanistはカードアドバンテージを稼ぐ手段が豊富で、Niv-to Lightなどほかのミッドレンジやコントロールが主力としていた《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が退場したことで相対的に強化されたデッキです。

このデッキの強みは《思考囲い》《致命的な一押し》、効率的な除去と妨害スペルにアクセスできるところです。除去やハンデスでリソースを交換しつつ《戦慄衆の秘儀術師》などでアドバンテージを稼ぎつつ、最終的に《死の飢えのタイタン、クロクサ》でゲームを終わらせます。効率的で多様な除去を採用しているため、幅広い戦略に対応することができるのがこのデッキの特徴です。

☆注目ポイント

血の長の渇き

《血の長の渇き》はプレインズウォーカー対策にもなるので、コントロールやミッドレンジとのマッチアップでも腐りにくく、禁止改定の影響を受けなかったMono Greenとのマッチアップでも有用な除去です。忘れがちですがソーサリースペルなので注意していきたいところです。

縫い師への供給者戦慄衆の秘儀術師若き紅蓮術士

《縫い師への供給者》で墓地を肥やし、《戦慄衆の秘儀術師》が墓地に落ちた除去や《思考囲い》を再利用して、相手のプランを妨害しながら《若き紅蓮術士》がエレメンタル・トークンを生み出します。生み出したトークンを《村の儀式》でさらなるリソースに変換するというように、さまざまなシナジーを搭載したデッキで使っていて楽しい反面、プレイングの難易度は高めとなっています。

致命的な一押しコラガンの命令

基本的な構成に禁止改定前とほぼ変わりなく従来通りの動きができますが、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が禁止になりメタが変化したため、メインに採用されている除去の種類に若干変化が見られます。《初子さらい》などが抜け、サイドに採用されていることが多かった《致命的な一押し》がメインに昇格しています。《魔女のかまど》なども対策できる《コラガンの命令》は、今後はより重要度が増すことが予想されます。

Mono Black Aggro

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パイオニア定番のアグロデッキは新環境になっても健在です。アグロデッキ全般に言えることですが、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を使ったデッキが姿を消したことでポジション的に有利になりました。

《思考囲い》は現環境のパイオニアで最高の妨害スペルで、相手のプランを妨害しつつ軽いクロックで攻める戦略は相手を選ばず強力で安定した成績が期待できます。

《血に染まりし勇者》《戦慄の放浪者》といった墓地から復活してくるクリーチャーが中心なので除去やスイーパーにも耐性があり、《騒乱の落とし子》《悪ふざけの名人、ランクル》といったフィニッシャー級のクリーチャーにも恵まれているのがMono Black Aggroです。

☆注目ポイント

不詳の安息地

『カルドハイム』から登場したミシュラランドの《不詳の安息地》《ロークスワイン城》よりも優先して採用されています。中盤以降に余ったマナを有効活用する手段になり、全体除去により耐性ができました。カードアドバンテージを提供する《ロークスワイン城》も捨てがたいですが、パワー4のミシュラランドはアグロデッキにフィットしています。

軍団の最期

サイドボードには大きな変化は見られませんが、ミラーマッチやRakdosなどを意識していたようで《軍団の最期》が4枚採用されています。Mono Black AggroとRakdosは禁止改定による影響を受けず、苦手としていたマッチアップが減ったことによって今大会でも安定した結果を残していたので妥当な選択だったと言えます。

戦慄衆の将軍、リリアナ

《戦慄衆の将軍、リリアナ》はミッドレンジとのマッチアップでクリーチャー以外の追加のフィニッシャーになります。6マナと重くなりますがクリーチャーが除去されてもアドバンテージが取れ、さらにデッキ内の多くのクリーチャーは墓地から復活できる能力を持っているのでデッキにもフィットしています。

Niv to Light

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旧環境では最高のミッドレンジとして幅を利かせていたNiv to Lightは、《時を解す者、テフェリー》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を禁止改定によって失いました。

『カルドハイム』からの新戦力はあったものの、失ったカードの代わりを見つけるのは難しく弱体化した感は否めません。

トップメタではなくなりましたがプレイアブルなデッキなことは確かで、今大会でもトップ16と好成績を残していました。

☆注目ポイント

空を放浪するもの、ヨーリオンケイヤの誓い

《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」に採用したバージョンで、《ケイヤの誓い》《海の神のお告げ》といったETB能力持ちのパーマネントが採用されています。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》亡き今、ライフゲインしつつクリーチャーを除去できる《ケイヤの誓い》は今まで以上に重要なカードになります。

白日の下に嘘の神、ヴァルキー

《白日の下に》で状況に応じたカードをサーチしてくる戦略は健在で、《嘘の神、ヴァルキー》《星界の騙し屋、ティボルト》としてプレイすることもできます。

Binding the Old Gods

『カルドハイム』から登場した英雄譚サイクルの《古き神々への拘束》は、万能除去のI章とランプのII章とこのデッキに合った効果を持っています。II章の効果が発動したターンに《空を放浪するもの、ヨーリオン》で再利用するといった使い方をするのがベストです。

総括

5種類と今回も多めの禁止カードが出てパイオニアの環境は大きく変化しました。旧環境を支配していた《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を使ったコントロールデッキは弱体化し、The Spyはキーカードである《欄干のスパイ》《地底街の密告人》が禁止になったためデッキ自体が消滅することになりました。

新環境で活躍しているデッキは、Rakdos Arcanist、Burn、Mono Black Aggroといった旧環境でもそこそこ活躍していたデッキを中心に結果を残しています。アグロデッキに強くアドバンテージを獲得する手段が豊富なJund Sacrificeも見られます。

USA Pioneer Express vol.18は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいパイオニアライフを!

この記事内で掲載されたカード

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら