USA Legacy Express vol.179 -多様性の復権-

Kenta Hiroki

Kenta Hiroki

はじめに

みなさんこんにちは。

禁止改訂から1か月近く経ちますが、MOではさまざまなデッキが試されており、ツイッター上では毎日のように新しいデッキのアイデアが挙げられています。

今回の連載では、先週末にMOで開催されたLegacy Showcase Challengeの結果を追っていきたいと思います

Legacy Challenge #12269134
新環境でも安定のDelver

2021年03月07日

  • 1位 Izzet Delver
  • 2位 Bant Control
  • 3位 Painter
  • 4位 Temur Delver
  • 5位 Mono Red Stompy
  • 6位 Grixis Delver
  • 7位 Mono Red Prison
  • 8位 Jeskai Standstill

トップ8のデッキリストはこちら

禁止改定後初めてのShowcase Challengeが開催されました。この大会は毎週開催されるChallengeよりもレベルの高い大会で、強豪プレイヤーも多く参戦するので注目を集めていました。

アーカムの天測儀戦慄衆の秘儀術師王冠泥棒、オーコ

《アーカムの天測儀》《戦慄衆の秘儀術師》《王冠泥棒、オーコ》が禁止になったことで環境に大きな変化が見られます。Delver系は旧環境では《王冠泥棒、オーコ》が使えるTemurバージョンほぼ一択でしたが、新環境では優勝したIzzetのほかにもTemur、Grixis、Sultaiなどバリエーションが豊富です。また、メタが変化したことで《血染めの月》《虚空の杯》も相対的に強化され、Mono Red Prisonも復権してきています。

全体的に禁止改定前の環境と比べて多様性が戻り、プレイしていて楽しい環境になりました。

デッキ紹介

Izzet Delver

クリックで拡大

禁止改定後のLegacy Showcase Challengeを制したのはIzzet Delverでした。よく見られる《スプライトのドラゴン》などの速攻クリーチャーや火力を多めに搭載したアグレッシブなスタイルではなく、《天上の餌あさり》《真の名の宿敵》を採用し、《もみ消し》など妨害スペルも多めに搭載したバージョンでした。

このバージョンの強みは何といっても2色であるため基本地形を採用する余裕があり、《不毛の大地》《血染めの月》といったアンチ特殊地形に耐性があることです。逆にサイド後に《血染めの月》で多色デッキやCloud Post、Landsなど特殊地形に依存したデッキをシャットアウトすることもできます。

☆注目ポイント

厚かましい借り手

青赤は高タフネスクリーチャーやエンチャントなどの対処を苦手としていましたが、《厚かましい借り手》によってメインから多くの厄介なパーマネントを対処することができるようになりました。

天上の餌あさり

《天上の餌あさり》は除去耐性こそありませんが、《致命的な一押し》《突然の衰微》といった除去には当たらないため、Sultaiなど相手によっては対策されにくい脅威となります。一度攻撃し始めれば追放されているインスタントかソーサリーを回収できるのでアドバンテージを得ることができ、相手にとってはマスト除去になります。

二股の稲妻

《戦慄衆の秘儀術師》が退場したことで、採用されている火力スペルにも変化が見られます。Death and Taxesや同型、Grixisの《若き紅蓮術士》などタフネス1のクリーチャーが増えたことで、《二股の稲妻》《稲妻の連鎖》よりも優先されています。

船殻破り失墜

サイドには、コントロールやコンボなどキャントリップを多用するデッキに対する追加の勝ち手段として《船殻破り》が忍ばせてあります。《失墜》はあまり見かけないカードですが、《タルモゴイフ》など火力で対処が難しい高タフネスクリーチャーに対する疑似的な除去として機能しつつドローエンジンにもなり、軽い除去が多いこのデッキでは統治者を維持することも比較的容易です。

Bant Control

クリックで拡大

惜しくも優勝は逃しましたが、準優勝という好成績を残していたBant Control。基本的な構成は旧環境でも活躍していたBant Miraclesで、《王冠泥棒、オーコ》は禁止になりましたが《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は健在なので引き続きBantバージョンが主流になっています。

マナ基盤を支えていた《アーカムの天測儀》を失ったためデュアルランドを増量せざる得なくなり、《不毛の大地》などアンチ特殊地形に対する耐性は下がっています。マナ基盤的にも赤をタッチすることが難しくなったため現在は3色が主流になっています。

除去やスイーパーを多用するのでDelver系などクリーチャーデッキに強いデッキで、コンボデッキとのマッチアップも《否定の力》《意志の力》いったカウンターをメインから合計7枚も採用しているうえに、《夏の帳》《エーテル宣誓会の法学者》をサイドボードに積んでいるので安定した成績が期待できるデッキです。

☆注目ポイント

自然の怒りのタイタン、ウーロ氷牙のコアトル森の知恵

《アーカムの天測儀》を失ったことで「脱出」コストを捻出するのは難しくなりましたが、まだまだ強い《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《王冠泥棒、オーコ》が禁止になったので相手によっては対策されにくくなりました。《氷牙のコアトル》は以前と比べると接死の条件を満たすのが難しくなりましたが、アドバンテージが取れる疑似的な除去として機能します。

《森の知恵》を使えることも緑を使うメリットのひとつです。ライフゲインする《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と相性が良く、強力なアドバンテージエンジンとして機能します。

終末

《王冠泥棒、オーコ》に代わる勝ち手段として《真の名の宿敵》《若き紅蓮術士》など単体除去に耐性のある脅威が主流になっているので、《終末》はより重要なカードになっています。《渦まく知識》《思案》《神秘の聖域》のおかげで「奇跡」を仕込むのも比較的容易です。

花の絨毯

環境が変わっても《渦まく知識》《意志の力》といったスペルが使える青いデッキが人気なので、それらのデッキに対してマナアドバンテージを得る手段になる《花の絨毯》がメインから採用されています。Delver系のソフトカウンターや《冬の宝珠》を対策したり、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の「脱出」コストを払いやすくしたりと多くの場面で役に立ちます。

精神を刻む者、ジェイス時を解す者、テフェリー

《王冠泥棒、オーコ》が退場したことで長い間レガシーでは第一線から遠ざかっていた《精神を刻む者、ジェイス》も、アドバンテージ源兼フィニッシャーとして再評価されています。《時を解す者、テフェリー》も新たな青いフェアデッキの主要な3マナプレインズウォーカーとして今後も良く見られそうです。《王冠泥棒、オーコ》のように勝ち手段にはならないものの、相手の行動を制限する常在能力と《虚空の杯》《森の知恵》《運命の神、クローティス》など厄介な置物をバウンスできるフレキシブルさが魅力です。

Mono Red Stompy

クリックで拡大

Mono Red Stompyは禁止改訂によりメタが変化したことで復権してきたデッキのひとつです。2マナランドによるマナ加速から《血染めの月》《虚空の杯》《三なる宝球》などを展開して相手の動きを制限している間に、《ゴブリンの熟練扇動者》などでビートダウンしていくデッキです。

《アーカムの天測儀》《王冠泥棒、オーコ》が禁止になったことで、《血染めの月》《虚空の杯》といったカードも本来の強さを取り戻しました。キャントリップを多用するデッキやコンボにとっては1ターン目の《虚空の杯》は脅威となり、Sultaiなどの多色デッキには《血染めの月》が刺さります。

☆注目ポイント

砕骨の巨人髑髏砕きの一撃

基本的な構成に変化は見られませんが最近のセットからの収穫も多く、全体的に強化されています。《砕骨の巨人》は「出来事」で火力スペルとしても機能するフレキシブルなクリーチャーで、追加の除去兼勝ち手段としてサイドにフル搭載されています。『ゼンディカーの夜明け』から登場した《髑髏砕きの一撃》はマナ基盤としてもカウントできる除去で、2マナランドなどマナ加速を採用しているこのデッキと相性が良く、プレインズウォーカーも対象に取れる優秀なカードです。

炎渦の部隊

《炎渦の部隊》は単体でも4マナパワー4速攻と中々の性能で、《軍勢の戦親分》《ゴブリンの熟練扇動者》などが生み出したトークンをより強力なクリーチャーに変換できる誘発能力は脅威となります。

硫黄の精霊

禁止改定により《王冠泥棒、オーコ》《戦慄衆の秘儀術師》という天敵がいなくなったため、Death and Taxesが数を増やしています。そのため、サイドに《硫黄の精霊》が取られており対策が徹底しています。

Temur Delver

クリックで拡大

旧環境のトップメタであるTemur Delverは新環境になっても結果を残しています。《もみ消し》《タルモゴイフ》などが採用された『灯争大戦』と『モダンホライゾン』がリリースされる前の環境でも見られたテンポ寄りの構成に戻っています。

Temurバージョンを選択するもうひとつのメリットはサイドボードの選択肢にあります。《運命の神、クローティス》《夏の帳》といった2019年以降に登場した強力なカードが見られます。

☆注目ポイント

わめき騒ぐマンドリル厚かましい借り手

《わめき騒ぐマンドリル》《致命的な一押し》《突然の衰微》といった除去に耐性があり、1マナパワー4というマナ効率の良さもこのデッキにマッチしています。《厚かましい借り手》《虚空の杯》《タルモゴイフ》など火力スペルでは対処が困難な高タフネスクリーチャー、《マリット・レイジトークン》などを対策できる便利なカードです。

夏の帳

サイドの《夏の帳》はハンデスや単体除去、コンボ対策などさまざまなマッチアップで使えるカードです。1マナと軽いところも効率性を重視するこのデッキにフィットしています。

運命の神、クローティス

禁止改定後も《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は健在なので対策をしていく必要があります。《運命の神、クローティス》は旧環境と同様に、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を含めた墓地対策兼追加の勝ち手段として活躍します。エンチャントなのでクリーチャーやアーティファクトよりも対策されにくく、特にコントロールとのマッチアップで強さを発揮します。

ボーナストピック:プレイヤーインタビュー Jeff White

今回はボーナストピックとして日本国外で活躍するレガシープレイヤーにインタビューをしました。

今回のゲストはPokemokiことJeff White(@RealPokemoki)です。今シーズンのMOレガシーリーグのトロフィーランキング首位の強豪プレイヤーで、禁止前の環境で活躍したTemurカラーのミッドレンジ(Pokepile)の製作者としても知られています。テーブルトップの大会でもSCGO Worcesterでのトップ4やSCG Classic Syracuseで優勝など輝かしい成績を残しています。

レガシーをプレイしてどれくらいになりますか?

渦まく知識思案意志の力

マジックを本格的に始めたのは2014年ごろで、レガシーをプレイするようになったのは2016年の終わりぐらいでした。私が初めてレガシーというフォーマットを知ったとき、レガシーは強いカードが使えてプレイングが難しいフォーマットであると友人から聞いたことで挑戦をしてみたくなったことと、高額で強力なカードを所有するというステータスもあり、いつかレガシーをプレイできるようになることが目標になっていました。私がレガシーが好きな理由は、キャントリップスペルの提供する分散性の減少と《意志の力》による安心感ですね。

レガシーで好きなデッキとその理由

戦慄衆の秘儀術師王冠泥棒、オーコ

そうですね、いろいろありますがやはりPokepile(禁止改定前に活躍していた《戦慄衆の秘儀術師》《王冠泥棒、オーコ》といった脅威を搭載したTemur Midrange)です。私はデッキをチューニングするのが好きで、カードの新しい使い方を試すのが楽しみです。特に《もみ消し》はDelver系のようにアグレッシブなタイプの戦略で使うカードと考えられていて、ミッドレンジやコントロールで採用しているデッキは少数でした。それに挑戦するデッキを構築して結果を残すことができて非常に満足しています。相手のマナを制限しながらじっくりとアドバンテージを獲得していくというプレイパターンも好きですね。

禁止改訂後のレガシーについてどう思いますか?

虚空の杯血染めの月

今は新しいデッキをいろいろと試していてたしかに禁止改定前よりも勝率は下がっていますが、新環境は楽しいですね。私があまり当たりたくないと思っている《虚空の杯》《血染めの月》といったカードも増えてきていますが、全体としては環境は新鮮で活気に満ちていると言えますね。特に青いミッドレンジやコントロールはさまざまなバリエーションが見られるようになっています。

最近使用しているSultai Midrangeについて教えてください。どのようにしてこのデッキを考え出したのか、現在のメタにおけるマッチアップについてなど。

クリックで拡大

最近良く見られるようになってきた《トーラックへの賛歌》《不毛の大地》を使ったデッキに強い《壌土からの生命》は、新環境で勝ち組になれると思いました。「発掘」は《渦まく知識》で戻した不要牌を墓地に落とすことができ、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の「脱出」ために墓地のカードを増やすことにも貢献します。また、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は「脱出」の色マナを確保することが難しいのが弱点になりますが、《壌土からの生命》はその問題を解決してくれます。

壌土からの生命成長のらせん

私が現在プレイしているSultaiのリストは、定番の《悪意の大梟》《トーラックへの賛歌》の採用を見送って《壌土からの生命》《成長のらせん》などを優先することで、そのシナジーを最大限に活用するように構築されています。

自然の怒りのタイタン、ウーロ

Delver系に対してはほぼ互角で少し有利がつきます。現在ほとんどのDelver系は《もみ消し》《不毛の大地》でマナを縛るプランを採用していますが、《壌土からの生命》によってそのプランは笑えるほどに弱くなります。旧環境と同様に《自然の怒りのタイタン、ウーロ》はDelver系にとって墓地対策を引かない限り対策が難しいカードであり、《壌土からの生命》《もみ消し》《不毛の大地》によって逆に相手のマナを縛ることもできますね。

基本地形が多めで《不毛の大地》に耐性のある青いフェアデッキは少し難しくなりますが、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が脅威であることは変わらないのでほかのミッドレンジやコントロールとのマッチアップも悪くないと思います。

夏の帳トレストの使者、レオヴォルド狼狽の嵐

DoomsdayやSneak and Showのようなコンボデッキに対しては《夏の帳》《トレストの使者、レオヴォルド》があり、メインから《狼狽の嵐》を採用しているので有利だと思います。エンジンデッキが好きでゲームをじっくりコントロールするスタイルのデッキが好きならオススメのデッキです。

総括

新環境になって1か月近くが経ちましたが、レガシーファンのほとんどはポジティブな反応を見せており、離れていってしまったプレイヤーの多くも戻りつつあります。

大会も盛り上がりを見せており、先週末に開催されたLegacy Showcase Challengeは200名以上の参加者が集いました。一個人としてもフォーマットに活気が戻って本当に良かったと思います。

以上USA Legacy Express vol.179でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!

この記事内で掲載されたカード

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
Kenta Hiroki

Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Standard Express」「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら