はじめに
みなさんこんにちは。
禁止改訂から1か月以上が経ちましたが、Modern Showcase Challengeも開催されて新環境のデータもそろってきました。新環境は多様性が戻り、極端な相性差のあるマッチアップも少ない印象です。
さて、今回の連載ではModern Showcase Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Modern Showcase Challenge #12269131
新環境でも多色コントロールが活躍
2021年03月06日
- 1位 Niv-to Light
- 2位 Amulet Titan
- 3位 Heliod Company
- 4位 Heliod Company
- 5位 Burn
- 6位 Izzet Prowess
- 7位 Death and Taxes
- 8位 Heliod Company
トップ8のデッキリストはこちら
禁止改定後初めてのShowcase Challengeが開催されました。毎週末に開催されるModern Challengeよりもレベルの高い大会で、強豪プレイヤーも多く参戦するので注目を集めていました。
禁止やルールの変更によりモダンはさまざまなデッキが活躍できる楽しい環境になりました。その一方でまだまだ研究の余地がある印象です。
デッキ紹介
Niv-to Light
4C Uro Omnathは《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《死者の原野》《神秘の聖域》が禁止になったことで環境から消滅しました。しかし、《創造の座、オムナス》や《レンと六番》が強力なカードであることは変わらず、新環境でも多色コントロールは形を変えて存在します。
今大会で見事に優勝を果たした多色コントロールは、パイオニアでも活躍している《ニヴ=ミゼット再誕》と《白日の下に》を搭載したNiv-to Lightでした。
☆注目ポイント
「続唱」ルールは変更されましたが、《白日の下に》で《嘘の神、ヴァルキー》を《星界の騙し屋、ティボルト》としてプレイすることができます。マナ加速を利用することで早い段階からプレイすることができ、パイオニアと同様に《白日の下に》によってデッキからさまざまなスペルを状況に応じてプレイすることができます。
《レンと六番》のおかげで毎ターン土地を置きやすく、《時を解す者、テフェリー》も健在なのでソーサリースペルを隙なくプレイすることができます。Heliod Companyでも採用されている《楽園の拡散》は、現環境の有力なマナ加速として多くの緑ベースのミッドレンジやコントロールで使われています。
新環境のモダンではHeliod CompanyやTronなどコンボデッキを対策する必要があるため、《漂流自我》がメインから採用されています。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が退場したことでProwessやBurnなど赤いアグロデッキが人気なので、《稲妻のらせん》や《ケイヤの手管》といったクリーチャーを除去しつつライフゲインができるスペルを使えるこのデッキはメタに合っています。
Izzet Prowess
Prowess系の赤いアグロデッキは禁止改定前の環境でも高い勝率を出していたデッキのひとつでした。禁止改定によって失ったカードがなく天敵だった《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が退場したことで相対的に強化されています。
デッキの基本的な構成は変わらず、「果敢」クリーチャーを展開して軽いスペルを連打して相手のライフを素早く削っていきます。最速で3ターン目にはゲームに勝つことができるコンボデッキのような動きもするデッキですが、《舞台照らし》などでカードアドバンテージも稼げるのでロングゲームでも渡り合える粘り強さも持ち合わせています。
サイドボードにも同型やBurn対策の《ドラゴンの爪》、ソフトカウンターの《神秘の論争》や墓地対策の《大祖始の遺産》などを採用しているため、幅広い戦略に対応できるフレキシブルさもこのデッキの特徴です。
☆注目ポイント
Izzetバージョンが人気がある理由として、《スプライトのドラゴン》や《嵐翼の精体》といった優秀なクリーチャーにアクセスできるところです。《スプライトのドラゴン》は「果敢」クリーチャーと異なり+1/+1カウンターによる強化なのでクロック性能が高く、除去されずに数ターン生き残れば速攻で相手のライフを削り切ってくれます。軽いスペルを多用するこのデッキでは、《嵐翼の精体》はほぼ2マナの回避能力持ちの「果敢」クリーチャーとして機能します。《魔力変》からスムーズにプレイすることができ、占術によってドローの質も向上させることができます。5マナのクリーチャーなので《致命的な一押し》など一部の除去に耐性があるのもこのクリーチャーの強みです。
ドロースペルを使えるのも青を使うメリットのひとつです。ドローの質を上げつつ「果敢」クリーチャーや《スプライトのドラゴン》を強化することができるのは、地味ながらデッキの安定性を支えています。《選択》を採用していることが多かったのですが、コントロールと異なりカウンターを構える必要があまりなく、占術2によって見れるカードが多い《血清の幻視》が優先されています。
相手の除去や妨害スペルが追加され、長期戦が想定されるサイド後のゲームで活躍するのが《騒乱の歓楽者》です。手札もマナも消費しない《魔力変》やファイレクシアマナを多用するこのデッキでは、早い段階からプレイすることができます。次のターンには補充した手札を使って強化するという動きが強力です。
《神秘の論争》は復権してきているAzorius Controlに対して効率的なカウンターとして機能します。《蒸気の絡みつき》は火力で対処しきれない高タフネスのクリーチャー対策用です。ブロッカーを退かしつつライフも削れるのでこのデッキに合ったスペルです。高額なデッキが多いモダンで活躍しているデッキの中でもIzzet Prowessはフェッチランドなど一部のカードを除けば比較的安価で、これからモダンをプレイしたいという方にもおすすめできるデッキです。
Heliod Company
禁止改定後のモダン環境のトップメタはクリーチャー系のコンボデッキのHeliod Companyで、今大会でも3名の入賞者を出すなど安定した成績を残していました。《太陽冠のヘリオッド》+《歩行バリスタ》によるコンボがこのデッキの主な勝ち手段になります。《オーリオックのチャンピオン》や《スパイクの飼育係》などのライフゲイン能力を持つカードも搭載されているため、特にProwessなど赤系のアグロデッキに対して強さを発揮します。
禁止改定前の環境でも好成績を残し続けていたデッキのひとつで禁止改定によって失ったカードがなかったため、新環境でも有力デッキとして早い段階から注目を集めていたデッキです。
《テューンの大天使》を搭載したバージョンと《東屋のエルフ》+《楽園の拡散》によるマナ加速を搭載したバージョンが見られるデッキで、今大会では両バージョンがプレイオフに進出していました。
☆注目ポイント
《東屋のエルフ》+《楽園の拡散》の組み合わせによるマナ加速はこのデッキに爆発力を提供します。マナクリーチャーと異なり《楽園の拡散》は除去されにくいためマナ加速としての信頼性も高くなります。1ターン目に《東屋のエルフ》をプレイして2ターン目に《楽園の拡散》をアンタップ状態の森に付け、《東屋のエルフ》でアンタップさせることで《集合した中隊》をプレイするという動きが可能です。
デッキの構成上クリーチャーデッキに強いデッキですが、《忘却石》や《精霊龍、ウギン》などスイーパーを多数搭載しているTronは苦手なマッチアップとなるので、《減衰球》は必須となります。Storm系のコンボデッキやProwessなどスペルを連打するデッキ対策として《弁論の幻霊》も採用されています。タフネスが4あるので《稲妻》1枚で落ちないのもこのクリーチャーの強みです。
《オーリオックのチャンピオン》はプロテクション(赤)(黒)なのでProwessやBurn、Rakdos Death’s Shadowなど、現環境の多くのデッキとのマッチアップでコンボを決めるまでの時間を稼ぐことに貢献します。《太陽冠のヘリオッド》と組み合わせることでクリーチャーが場に出るたびにクリーチャーを強化できるので、アグロプランも成立しやすくなります。
Esper Control
モダンのコントロールエキスパートでTwitchストリーマーのTSPJendrekはEsper Controlを使用していました。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と《死者の原野》が環境から去ったことで、コツコツアドバンテージを稼ぎながらプレインズウォーカーで勝利するコントロールも復権してきているようです。
Esper Controlは軽い優秀な妨害スペルで序盤を凌ぎ、《謎めいた命令》など強力なスペルでゲームをコントロールしていき最終的に《精神を刻む者、ジェイス》や《ドミナリアの英雄、テフェリー》といったプレインズウォーカーで勝利を目指します。
今大会では惜しくもプレイオフ進出は逃しましたが、先週末に開催されたModern Challengeでは同デッキを調整したバージョンで見事に優勝をしていました。
☆注目ポイント
Azorius Controlと比べるとマナ基盤の安定性に不安が残りますが、《致命的な一押し》など汎用性が高い除去を採用できることはEsperバージョンを選択するメリットになります。また、《取り除き》は《時を解す者、テフェリー》や《レンと六番》といったプレインズウォーカーも処理できる便利なスペルです。
《エスパーの魔除け》はあまり見かけないスペルですが、インスタントスピードでのドローはカウンターを構えることが多いこのデッキに合っています。ハンデスモードも手札が少なくなってきている中盤以降に、《謎めいた命令》などでバウンスしたカードを落としたりできるので地味ながら有用なスペルです。メインからエンチャントを対策する手段は貴重で、多色デッキにとって厄介となる《血染めの月》対策にもなります。
デッキの種類が多いモダンでは《ケイヤの手管》は有用なスペルとなります。除去耐性のあるクリーチャーで攻めてくるBoglesなどに効く布告系の除去、赤いアグロデッキとのマッチアップで役に立つライフゲイン、Dredgeなどに刺さる墓地対策など環境のさまざまなデッキに対してメインから対応することができます。モダンでありがちなサイドボードのスペースが足りないという問題の解決にも貢献しています。
多色スペルや《大魔導師の魔除け》、《謎めいた命令》など全体的に色拘束が強いスペルが多いため《沈んだ廃墟》などフィルターランドが採用されている関係で《廃墟の地》を採用する余裕がなく、Tronなど土地コンボとのマッチアップとの相性はAzorius Controlと比べると悪くなりそうです。
総括
MOで開催された大会でもっとも安定した成績を残していたのはHeliod Companyでした。禁止改定によって失ったカードがなく安定したデッキの回りと粘り強さがあり、強力な2枚カード即死コンボを搭載したこのデッキは、新環境のベストデッキのひとつとして間違いなさそうです。
禁止カードを出さなければいけないほどバランスが崩れている様子はなく、モダンらしくさまざまなデッキが活躍している健全な環境と言えます。Heliod Companyが大量のライフを得ても勝てる可能性のあるコントロールやTronは、今後有力な選択肢になる可能性があります。
以上、USA Modern Express vol.54でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!