禁止後の5色ニヴを構築しよう

Dmitriy Butakov

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2021/03/23)

不死の5色ニヴ

みなさん、ごきげんよう。

自然の怒りのタイタン、ウーロ時を解す者、テフェリー

《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《時を解す者、テフェリー》禁止になったことで5色《ニヴ=ミゼット再誕》(5色ニヴ)は大打撃をくらった。この2枚は単なる”良いカード”ではなく、《ニヴ=ミゼット再誕》の効果で特に手札に加えたかったカードたちなのだ。とはいえ、5色ニヴはまだまだ顕在だ。今日はこのデッキの発展を占っていくことにしよう。

《白日の下に》の使い方

白日の下に

まず、あらかじめ断っておきたいことがある。《白日の下に》はデッキの中心となるカードだ。デッキ構築からプレイングまで、このカードを軸に考えていく。だからこの記事の半分以上は《白日の下に》に関するものになる。あらかじめご理解いただきたい。

けちな贈り物

《けちな贈り物》が時代を席巻していたころ、プレイヤーたちの頭を悩ませていたのは「状況依存のカードを入れすぎることなく、あらゆるゲーム展開に対応できるデッキ構成を考えること」だった。これは《白日の下に》にも同じことが言える。10年前にも発信したことがあったが、以下の3つのゲーム展開に対応できるカードがあれば問題ないのは現代も変わりない。

《ニヴ=ミゼット再誕》《星界の騙し屋、ティボルト》は上2つの状況で有効だ。そして全体除去を2~3枚入れ、ライフを回復させるカードを数枚入れる。これだけだ。《白日の下に》のサーチ先として5枚ほど用意しておけば、99%のゲームは事足りる

創造の座、オムナス

たとえば《創造の座、オムナス》を考えてみよう。このカードは最高のカードだが、《白日の下に》で唱えたいかと言われると、そんな状況は滅多にない。だったら2~3枚採用して真っ当に手札から唱えるようにしたら良いだろう。

《白日の下に》のために何らかのカードをピン挿ししようとするなら、こう問いかけてみて欲しい。「《ニヴ=ミゼット再誕》/《星界の騙し屋、ティボルト》/全体除去/《狼の友、トルシミール》よりも優先してこのカードを唱えたい状況はあるだろうか?

スカラベの神ヴィズコーパの血男爵虹色の橋

《スカラベの神》がパワーカードだって?そうだな、それは間違いない。《ヴィズコーパの血男爵》だって《虹色の橋》だってそうだろう。しかし《星界の騙し屋、ティボルト》とそれらのいずれかを唱えられる状況にあるとしたら、たいてい選ぶのはどちらだろうか?デッキを”柔軟”にしようとして試されてきたピン挿しカードは数知れない。しかし、デッキ内でくすぶってしまう状況依存のカードを増やすだけで状況は悪化しているだけだ。本来ならば必要のない運要素を取り込んでしまっている。

《星界の騙し屋、ティボルト》は主たる勝ち筋のひとつであり、一般的には2枚採用されることが多いが、私は1枚に抑えたいと考えている。確かに手札に来てしまうと《白日の下に》でマナコストを踏み倒せる余地はなくなるが、《星界の騙し屋、ティボルト》は唯一の勝ち筋ではないし、《嘘の神、ヴァルキー》もそこまで有用なカードではない。だったら、《星界の騙し屋、ティボルト》がデッキに眠っている確率を99%にするよりも、弱いカードを引く確率を下げたい。

2つの構築方法

《白日の下に》を使ったデッキ構築は、現状2つの方法が考えられる。まずはMagic Onlineで結果を出したリストを2つ紹介し、その後に私のリストを解説していこう。

60枚構成

昔ながらの60枚のリストは、ギルドカラーのカードが多く搭載されており、《ニヴ=ミゼット再誕》を唱えて相手をアドバンテージの海に飲み込むことをメインのゲームプランとしている。Pioneer Challengeを優勝したリストを例にとろう。

5色ニヴ_60枚

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この構成は《ニヴ=ミゼット再誕》を3枚採用し、運が良い日なら7枚を手札に加えられるようになっている。では、その効果の対象となるものを色ごとに詳しくみてみよう。

白赤

《先駆ける者、ナヒリ》

先駆ける者、ナヒリ

《先駆ける者、ナヒリ》はデッキ内で唯一のボロスカラーだ。カード単体で見ても強いが、忠誠度が高く、奥義で《ニヴ=ミゼット再誕》をサーチできる点でデッキにとても噛み合っている。ただ、アグロが多い環境であるため、1枚が適正であろう。

赤緑

《運命の神、クローティス》

運命の神、クローティス

こいつは扱いが難しい。忘れてはならないメリットがいくつかあるが、いずれも特定の条件下でしか機能しない

ラクドスアルカニストや黒単アグロに勝とうとするなら、墓地対策が必要になる。とはいえ、戦場に出たときにすぐに影響しない3マナのエンチャントは対アグロとして好ましいとは言えない(「信心」条件を満たしてクリーチャー化しているならオーバーキルだろう)。できるだけ早く戦場に送り込みたいが、3ターン目に(1)(赤)(緑)を揃えようとすれば、2ターン目にアクションが何もとれなかったり、土地からダメージを受けたりするはずだ。どちらもアグロに対して望ましい行為ではない。

《運命の神、クローティス》は一種のマナ加速としても捉えられ、4ターン目の《ニヴ=ミゼット再誕》を可能にする。ただそのためにはいずれかのプレイヤーが《寓話の小道》を起動している必要がある。

そして最後に、グルールというギルドカラーには《運命の神、クローティス》以外に採用できそうなものがない。これこそ《運命の神、クローティス》の採用を後押ししている要因だろうと思う。しかし、実際にデッキ登録するときには慎重に検討した方が良いだろう。

白緑

《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》

鎮まらぬ大地、ヤシャーン

個人的には好きになれない。セレズニアカラーだから入っているだけで、のちのち別のものに変わっていくように思える。どちらの能力も一定の便利さはあるが、特別強いわけではない。この4マナ域を使うぐらいなら《創造の座、オムナス》を使うべきだろう。

《狼の友、トルシミール》

狼の友、トルシミール

さて本題だ。5マナで3/3が2体・除去・3点回復の三拍子が揃っており、アグロからすればかなり厄介だろう。《白日の下に》からサーチしても良し、《ニヴ=ミゼット再誕》から手札に加えても良しだ。ただし、その能力を使ううえで気をつけるべき点がいくつかある

《狼の友、トルシミール》は環境のアグロデッキが使う除去に弱い(《無情な行動》《魔術師の稲妻》など)。1つ目の能力に対応して除去されてしまうと、ライフ回復も格闘もできなくなる。

狼トークンが弱点とするのは《致命的な一押し》だ。格闘を選択し、対応して狼トークンが除去された場合、3点のライフは得られる。格闘の対象となったクリーチャーが死亡した場合は、3点のライフも得られない。あえて格闘を選択せずにライフ回復を確実にすることも考えられる。

それから格闘ダメージは戦闘ダメージではない。《損魂魔道士》と対峙したときは留意しておこう。

白黒

《ケイヤの誓い》

ケイヤの誓い

5色ニヴは基本的にアグロに強くした方がいいと思う。その意味で《稲妻のらせん》はまさに必要となるカードだ。2つ目の能力は忘れがちなので気をつけよう。《先駆ける者、ナヒリ》《星界の騙し屋、ティボルト》がいれば誘発する。

《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》

オルゾフの簒奪者、ケイヤ

3マナと軽いプレインズウォーカーだが、枠を割くに値するか確信が持てない。コントロールやコンボにもそこまで強くないし、アグロはパワー2の軍勢で殴りかかってくるから[-1]能力を使えばすぐに落されてしまう。本当に効果てきめんな相手がいるとすればオルゾフオーラだろう。

黒緑

《突然の衰微》/《暗殺者の戦利品》

突然の衰微暗殺者の戦利品

軽くて汎用性の高い除去はいつだって歓迎だ《創案の火》デッキが台頭したことで《突然の衰微》よりも《暗殺者の戦利品》のほうが優先されるようになるかもしれない。緑と黒はゲーム序盤に用意したい色マナであるから、ショックランドを使えば2ターン目に、ライフ損失を抑えたいなら3ターン目に唱えられることが多い。

《古き神々への拘束》

古き神々への拘束

単体で見ても良いカードだが、もし「明滅」させられるとしたらどうだろう?

黒赤

《戦慄掘り》

戦慄掘り

他にライバルが少ないラクドスカラーでありながら、緑単プレインズウォーカーに強いカードだ。

《コラガンの命令》

コラガンの命令

これに限ったことではないが、《ニヴ=ミゼット再誕》の効果を最大化するためだけに入っているのだろう。デッキ内のクリーチャーはマナコストが重く、《死者再生》モードは動きとして鈍すぎる。環境に壊したいアーティファクトも少ないため《粉砕》効果も弱い。《ショック》とハンデスのモードは悪くないが、これだけスロットが限られたデッキにとっては物足りない効果だろう。

青緑

《白日の下に》

白日の下に

もはや基本から解説する必要はないだろう。《星界の騙し屋、ティボルト》を唱えたいときに表面と裏面を間違えないように。それからサーチできるのはクリーチャー・インスタント・ソーサリーだけだ。

《成長のらせん》

成長のらせん

このカードは上記のリストに含まれていないが、60枚の構成では採用されることがある。2~3ターン目にマナ加速できるのは嬉しいし、《ニヴ=ミゼット再誕》で何もめくれないよりかは良い。ただ、シミックカラーはすでに《白日の下に》がある。なにより、緑と青のアンタップイン土地が多くないうえに、序盤の攻撃をしのぐ展開になった場合に手札でもたついてしまう。


60枚構成を総括すると、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《時を解す者、テフェリー》を失ったことで量から質へと移行しているように思う。つまり、禁止前のレベルと肩を並べるにはもっとカードを引く必要が出てきたということだ。

80枚構成

空を放浪するもの、ヨーリオン

5色ニヴの2つ目の構築方法は、別のアドバンテージ源を確保しようとするものだ。とすれば《空を放浪するもの、ヨーリオン》は最高の「相棒」だろう。

60枚の構成では絞り切れないほどの選択肢があったが、《ヨーリオン》を採用すればデッキの枠に大きな余裕ができる。

ケイヤの誓い古き神々への拘束創造の座、オムナス狼の友、トルシミール

すでにデッキ内には「明滅」させて嬉しいカードは多い。上記の4枚に加え、《ニヴ=ミゼット再誕》本体も含まれる。

どんな「相棒」も対コントロールに強くしてくれるが、5色ニヴにとっては《ヨーリオン》の「相棒」条件が達成しやすい。

5色ニヴ_80枚

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《ドビンの拒否権》が4枚入っているなど完全に同意できない点もあるが、デッキの方向性としては正解にかなり近いと思う。

見てのとおり、《ニヴ=ミゼット再誕》が1枚しか入っていない。この構成ではもはやデッキのエースではなく、シルバーバレットの1枚になっている。手札から唱えても良し、《白日の下に》から唱えても良しだが、枚数を減らしても問題はないだろう。この変化がゲームプランに大きな変化をもたらしている。ミッドレンジではなく、コントロールとして立ち回るようになったのだ。

致命的な一押し思考囲い海の神のお告げ

黒の1マナの呪文、《致命的な一押し》《思考囲い》を4枚ずつ入れているのは好印象だ。1マナでアクションをとれるようにすれば、数多く採用されたタップイン土地を無理なく処理していける。

《海の神のお告げ》はこの構成において素晴らしいカードだ。必要に迫られない限りは生け贄に捧げないようにしよう。《ヨーリオン》で「明滅」させる狙いもあるが、《致命的な一押し》の「紛争」条件を達成することで《創造の座、オムナス》《悪ふざけの名人、ランクル》をさばけるようになる。

導き出した答え

では最後に私なりの5色ニヴをお見せしよう。

5色ニヴ_ブタコフ

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先ほどのリストと大差はないし、いまだ調整中ではあるが、いくつか言及しておきたい点がある。

5色ニヴは(少なくともMagic Onlineでは)いまだに人気のアーキタイプだ。そして、ミラーマッチにおいて《ヨーリオン》構成は大きく有利をつけられると考えている。

空を放浪するもの、ヨーリオン海の神のお告げケイヤの誓い古き神々への拘束

《ヨーリオン》は「相棒」としてだけでなく、メインデッキに入れても優秀だ。採用されているすべてのエンチャントと相性が良い。メインデッキに3枚目も入れてもおかしくないだろう。

脅威が少なく、妨害とキャントリップが多い構成になっている。デッキ内の脅威はどれもインパクトが大きいため、2~3枚唱えられれば通常は事足りるだろう。だからこそ、その脅威を唱えるまでの時間稼ぎをすることに重きを置いている。

先駆ける者、ナヒリ

ピン挿しのカードは少なめに抑えてある。先ほども言ったが、《白日の下に》からサーチしそうにないのであれば、枚数を増やすか一切採用しないかのどちらかだ。

《先駆ける者、ナヒリ》だけは例外になっている。4マナ域は8枚が適正だと感じるが、《創造の座、オムナス》《古き神々への拘束》もこれ以上増やしたくはないし、《絶滅の契機》は減らせない。《白日の下に》でサーチすることはないが、この状況なら《先駆ける者、ナヒリ》が最適だ。《突然の衰微》《戦慄掘り》の枚数は好きなように配分してもらって構わない。

思考囲い

4

思考消去

3

手札破壊呪文は7枚にしてある。相手のデッキがわからないなら打ち消しよりも手札破壊の方が良い。アグロに対しては最初の2ターンの内に何らかのアクションをとらなくてはいけないから、ライフを失う《思考囲い》ですらそんなに弱くない。コントロールやコンボ相手には手札破壊が7枚もあればかなり心強いだろう。

色マナ要求が厳しいデッキであるため、1~3枚目の土地の置き方が重要になる。基本的に2ターン目までに、ライフを失うことなく黒マナを用意するか(《創造の座、オムナス》がいるため《沼》でない方が良い)、《森の女人像》を唱えるために緑を含む2マナを用意したい。これを念頭において練習すれば、すぐに正しい土地の置き方が思いつくようになるはずだ。

夢の巣のルールス

相手のデッキを推測するヒントがない場合、アグロに強い手札を優先してキープしよう。今の環境はアグロの方が圧倒的に多い。

「相棒」が公開されたなら、それをヒントに推測することもできる。《ヨーリオン》は簡単だ。おそらく5色ニヴかコントロールの一種だろう。《夢の巣のルールス》はラクドスアルカニスト/バーン/オーラだろうが、正確に当てる必要はない。どれに対しても必要なカードは似ている。「相棒」がいない60枚デッキをヒントなしで当てるのは不可能だが、重たい呪文が数枚ある手札よりは序盤の動きになる呪文が数枚あるものの方が良い。

《ドビンの拒否権》がサイドボードに採られることがよくあるが、個人的には《神秘の論争》が好みだ。打ち消し合戦に勝ちたいわけではないし、《神秘の論争》の方が明らかに相手をひっかけやすい。

オルゾフの簒奪者、ケイヤ墓掘りの檻

《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》の採否はまだ確信が持てないが、ラクドスアルカニストやジャンド城塞を考えるなら《墓掘りの檻》の方が効果的だ。ただ、《ケイヤ》は黒単アグロやボロスバーンに対してもサイドインできる利点がある。これらのマッチアップではサイドアウトしたいカードがあまりにも多いからだ。《ケイヤ》は場に長く残ることはないだろうが、短くても稼いでくれたその時間が決定打になることもある。ラクドスアルカニストに対しては微妙な気がするが。

おわりに

私の結論はこうだ。練習やチューニングの時間を用意できるのであれば、どんな大会のレベルであっても5色ニヴは良い選択肢になる

ここまで読んでくれてありがとう。オンラインで会おう。

ドミトリー・ブタコフ(Twitter)

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Dmitriy Butakov ロシアのプレイヤー。Magic Onlineを主戦場としており、オンラインプレイヤーの中で最強を決める大会である2012 Magic Online Championshipで優勝、翌年の2013 Magic Online Championshipでもトップ4に入賞して注目を浴びる。 2018年には2017 Magic Online Championshipで2度目の優勝を果たし、名実ともにMagic Online上で最強のプレイヤーとして堂々たる実績を残すと同時に、優勝の特典でプラチナレベル・プロとなる。こうした実績が認められ、2018年3月にHareruya Prosへと加入した。 Dmitriy Butakovの記事はこちら