はじめに
みなさま、「名カード集」へようこそ。
この「名カード集」では、時代を過去へと遡り、昔のエキスパンションの名だたるカードを紹介していきます。
今回は『ウルザズ・レガシー』をご紹介しましょう。
『ウルザズ・レガシー』ってどんなセット?
『ウルザズ・レガシー』とは、1999年2月に発売されたエキスパンションであり、収録カードは全143種類。ウルザの遺産を意味する同セットには、《記憶の壺》や《修繕》といったアーティファクトに関する強力カードが揃っています。
キーワード能力は引き続き「サイクリング」と「エコー」となっています。ただし、「エコー」は『ウルザズ・サーガ』に見られた速攻戦略を後押しするデザインだけではなく、戦場に出たときの誘発型能力(ETB能力=Enter The Battlefield)を持っていました。これにより戦場に出た瞬間に一定の効果を発揮できるようになり、「エコー」コストを支払わなくてもアドバンテージを失わないカードとなりました。戦場に出たときの誘発型能力を持つクリーチャーを能動的に墓地に送り込めることで、《生ける屍》などの墓地活用戦略も大きく強化されたのです。
また、このエキスパンションから一定の確率でプレミアム・カード(Foil)が封入されるようになりました。『ウルザズ・レガシー』の中では《厳かなモノリス》のFoilが特に人気であり、レガシーや統率者での高需要に加えて希少価値も高く、なかなか手に入らない1枚となっています。
『ウルザズ・レガシー』の名カードたち
《ルーンの母》
(T):あなたがコントロールするクリーチャー1体を対象とする。色1色を選ぶ。ターン終了時まで、それはプロテクション(その選ばれた色)を得る。
20年以上の時を経てもいまだに白のデッキで使用され続けている不動のエースにして、クリーチャーデッキの絶対神が《ルーンの母》です。その慈愛に満ちた眼差しは、自身がコントロールするクリーチャーすべてを相手の単体除去から守ってくれるのです。このちっぽけな1マナクリーチャーを除去できるチャンスは一度きり。召喚酔いがとけた瞬間から、彼女の加護は発動してしまうのです。
スタンダードでは、2シーズンに渡り白単色のウィニー戦略(小型アグロデッキ)における必須クリーチャーとなりました。《コーの戦士》とのコンボは戦闘ダメージと火力を無力化し、リベリオンにおいてはレベルエンジンが始動するまで時間を稼いでくれました。現在はレガシーで《スレイベンの守護者、サリア》などのヘイトベアーを守り、相手の動きを縛るデス&タックスで活躍していますね。
《ファイレクシアの疫病王》
(T),《ファイレクシアの疫病王》を生け贄に捧げる:クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで-4/-4の修整を受ける。
クリーチャーを1体、生け贄に捧げる:クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで-1/-1の修整を受ける。
《ファイレクシアの疫病王》は4/4の高スタッツとボードコントロール能力を併せ持ったクリーチャーであり、黒単コントロールを中心に活躍しました。起動型能力はマナを必要としないため常に小型のクリーチャーへの牽制となり、対戦相手に大きなプレッシャーをかけたのです。自分のクリーチャーすべてが除去能力を得たに等しく、また、スタンダード活躍当時はダメージスタックがあったこともありその支配力は絶大なものとなりました。
《疫病王》がスタンダードにいた時代、それは単色のクリーチャーデッキが隆盛し、《マスティコア》が我が物顔で環境の中心に君臨していました。 《疫病王》は単にクリーチャー環境にマッチしたデザインだけではなく、無敵といわれた《マスティコア》を倒せる数少ないカードだったのです。
また、忘れてはならないのは《疫病王》の持つ起動型能力は、自身を対象に自壊できたことです(対象を決めることがコストの支払いより先のため)。当時猛威を振るっていた《不実》は《疫病王》がいるだけで、その効果を大きく半減させられてしまったのです。
《なだれ乗り》
速攻
エコー(3)(赤)(あなたのアップキープの開始時に、これが直前のあなたのアップキープの開始時よりも後にあなたのコントロール下になっていた場合、そのエコー・コストを支払わないかぎりそれを生け贄に捧げる。)
《なだれ乗り》が戦場に出たとき、土地1つを対象とし、それを破壊する。
Darwin Kastle氏(現マジック・プロツアー殿堂)が、マジックのトッププレイヤーのみを招待しておこなわれるお祭りイベント、インビテーショナルを制したことを記念してデザインされたのが《なだれ乗り》です。相手の足を止めながら2点のダメージを与える優秀なカードであり、土地破壊デッキ、ポンザ誕生のきっかけとなりました。
スタンダード時代は赤単色の土地破壊デッキにおける戦略の主軸を担いました。《石の雨》《略奪》に続く土地破壊として、相手の動きを拘束するのに一役買ったのです。相手が身動き取れなくなったところを火力を用いて戦場を一掃し、フィニッシャーへと繋げました。対処されにくい《不毛の大地》や《リシャーダの港》の後押しがあったのも大きかったでしょう。
また、クリーチャーであることを最大限に生かしたコンボもありました。《生ける屍》や《犠牲》によるリアニメイト戦略や《一瞬の瞬き》による使い回しは、クリーチャーであることを利用した一種のハメ的な動きを演出したのです。
《大あわての捜索》
カードを2枚引き、その後カードを2枚捨てる。土地を最大3つまでアンタップする。
ウルザ・ブロックが生んだ極悪メカニズム、フリースペル。唱えた呪文が解決されると総マナコストに等しい枚数の土地がアンタップする能力でしたが、複数のマナを生成する土地を対象にすることで、簡単にマナを増やすことができてしまったのです。MoMaにおける《時のらせん》はその最たる例ですね。
《大あわての捜索》は軽いフリースペルですが、その分アドバンテージを失ってしまう仕様となっています。ただ使っても手札が減るだけですが、この捨てることに注目したデッキがありました。
ウルザ-マスクス期のスタンダードに登場した補充デッキは、キーカードの《補充》によって墓地からエンチャントを直接戦場に出すデッキでした。《大あわての捜索》は墓地を肥やすコンボの繋ぎのカードとして活躍したのです。また、当時は《リシャーダの港》が隆盛したこともあり、多色デッキは色マナの確保が難しくなっていました。《大あわての捜索》は《リシャーダの港》で タップされた土地をアンタップすることで、一種のフィルターのように色マナを変換する役割も持っていたのです。
《樹上の村》
《樹上の村》はタップ状態で戦場に出る。
(T):(緑)を加える。
(1)(緑):ターン終了時まで、《樹上の村》はトランプルを持つ緑の3/3の類人猿クリーチャーになる。それは土地でもある。(それは余剰の戦闘ダメージをこれが攻撃しているプレイヤーかプレインズウォーカーに与えることができる。)
クリーチャー化する土地である 《ミシュラランド》 に、色マナが生成できるものが登場しました。《樹上の村》は緑マナを供給しながらクリーチャー化すれば3/3となかなかのサイズであり、攻撃的な緑に適したデザインです。しかし、色マナを得た代償もあり、クリーチャーデッキにとっては致命的ともいえるタップインとなっています。当初は序盤から展開してテンポで押すアグロデッキが主流ということもありもたつきが懸念されましたが、ソーサリータイミングで除去されないことや全体除去の返しの隙を突けるクロック、中盤以降の追加戦力として大きく評価され直したカードです。
スタンダードでは、まさにクリーチャー主体のデッキストンピィに採用されました。1~2マナのクリーチャーを展開し、《怨恨》と《巨大化》(時代によっては《呪われた巻物》)で後押しするシンプルなストラテジーであり、初心者~上級者まで人気のデッキとなりました。本来《樹上の村》は相手のリセット呪文の返しなど隙を突くカードではありますが、当時のクリーチャーと比べてそのサイズは当たり負けしないため、積極果敢に攻撃に向かっていけたのです。
《樹上の村》はミシュラランド界でも強力なカードに位置し、フォーマットを選ばず緑絡みのデッキでは常に選択肢にあがるほどです。単純なカードパワーだけなら《怒り狂う山峡》などに軍配が上がりますが、単色であることに加えてわずか土地3枚(2マナ+自身)で攻撃に向かえる軽さ、そしてサイズ感が優れている所以でしょう。
まだある名カード
さて、『ウルザズ・レガシー』名カード集、お楽しみいただけたでしょうか。しかし、「あの有名カードなくない?」「もっといいカードあるよ!」と思われた方もいらっしゃるはず。
もっと『ウルザズ・レガシー』のカードについて知りたい方は、ぜひ、動画もご覧ください!
次回の「名カード集」では、『ウルザズ・デスティニー』をお届けいたします。