はじめに
すでにご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、先日開催された「日本選手権2021 SEASON1」にて、優勝という望外の結果を残せました。応援してくださった方々、本当にありがとうございます。
【#マジック日本選手権】2021 SEASON1本戦、決着。2日間に渡る激闘を勝ち抜いたのは、ナヤ・フューリーデッキのポテンシャルを最大限まで発揮した増田勝仁選手でした!おめでとうございます!
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) April 4, 2021
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今回はそのときに私が使用したデッキである「ナヤフューリー」についての解説をさせていただきます。最後までお付き合いいただけると幸いです。
ナヤフューリーとは?
ナヤフューリーとはその名が冠する通り、《憤激解放》と《カズールの憤怒》という2種類の”Fury”呪文をフィニッシュ手段に据えたミッドレンジデッキです。《エッジウォールの亭主》や《恋煩いの野獣》、《砕骨の巨人》といった現在のスタンダードを定義する強力なクリーチャーで戦線を支え、《スカルドの決戦》や《黄金架のドラゴン》のような強力な呪文に繋げていきます。最終的に《憤激解放》で強化したクリーチャーを《カズールの憤怒》で相手に投げつけることで、一気にゲームを決めます。
ミッドレンジという性質上、相手に合わせてゲームレンジを調節できるため、メイン戦において大きく有利/不利がつく相手というのは存在せず、サイド後はほとんどの相手に五分以上の戦いが望めます。
そのなかでもスゥルタイ根本原理に対してはそのフィニッシュ手段である《出現の根本原理》が通っても勝てるパターンが残っていることから、ほかのデッキに比べると有利に立ち回れます。逆にティムールアドベンチャーは骨幹となる部分にほとんど差がなく、そのうえで必殺技の《アールンドの天啓》や追加の干渉手段の《厚かましい借り手》の存在からほかのデッキよりは苦しい戦いを強いられます。
サンプルリスト:日本選手権2021 SEASON1使用
主要カード紹介:メインボード
固定枠
環境に変化があっても変わらない部分です。枚数の変更はあれど、基本的にこの部分には触れないほうが賢明です。
《エッジウォールの亭主》/《砕骨の巨人》/《恋煩いの野獣》
現在のスタンダードを牛耳る最強パッケージです。改めて語ることもないでしょう。色が合うなら間違いなく使い得です。
《スカルドの決戦》/《黄金架のドラゴン》
ナヤフューリーの必殺技たちです。《スカルドの決戦》の第Ⅱ章以降に《黄金架のドラゴン》を走らせ、呪文を連打するのがもっとも簡単な勝ちパターンです。
《カズールの憤怒》/《セジーリの防護》
どちらも土地としての役割に加えてコンボパーツとしても活躍します。序盤に土地として置いた場合でも《群れの番人》で回収できるため、見た目以上に活躍の機会は多いです。
自由枠
環境の変化に合わせて調整可能な部分です。リストを変更する際にはこの部分から変更するのがいいです。
《群れの番人》
「出来事」で《黄金架のドラゴン》を除去から守ったり、土地として置いた《セジーリの防護》や《カズールの憤怒》を回収したりとコンボを支えるのが主な役割です。2/3/1というスペックもスゥルタイ根本原理のように序盤から能動的にプレッシャーを掛けたいマッチアップでは重要になるため、多くのマッチアップで活躍します。
《巨人落とし》
「出来事」で《砕骨の巨人》《恋煩いの野獣》を除去しながら自身が残るため、グルールアドベンチャーやティムールアドベンチャーなどのアドベンチャーデッキ同士の対決では最強クラスのクリーチャーです。
また、起動型能力は《黄金架のドラゴン》から出た宝物・トークンからそのまま起動できるため、見た目以上に相性がいいです。加えて、最近のコントロールデッキは《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」に置いていたり、《長老ガーガロス》《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》などのクリーチャーでアグロデッキを抑えようとしているため、対象がなくて腐るといったことが起きづらい点でも評価を一段階上げています。とはいっても、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を使ったデッキに対してクリーチャー面が弱いことから、複数枚引いてしまうのはリスクと判断し、4枚目はサイドに落としました。
《リムロックの騎士》
このカードの存在が通常のナヤフューリーと大きく違うポイントです。通常のナヤフューリーでは《憤激解放》が入っている枠ですが、私が使用したリストはそれをすべて廃して《リムロックの騎士》に差し替えています。
《憤激解放》+《カズールの憤怒》のコンボはどんな状況からでも逆転可能な必殺技であることは間違いありません。しかし、《憤激解放》は非常にムラのあるカードで、重なって強い場面もあればクリーチャーが定着しないせいで役に立たない場面というのも多々あります。サイド後は除去を増やされることを含め、リターン以上にリスクが大きいと感じました。
代わりに採用しているこの《リムロックの騎士》は《憤激解放》ほどの爆発力は見込めないものの、クリーチャーとしてプレイできる点を高く評価しています。《スカルドの決戦》の第Ⅱ章以降とも相性がよく、《憤激解放》よりも使い切りやすい「出来事」で《スカルドの決戦》のパンプ能力を誘発させつつ、「進行中の出来事」として待機させる使い方が強力です。
反面、《恋煩いの野獣》や《型破りな協力》、《クラリオンのスピリット》などでトークンを撒かれてしまうと途端に戦闘に参加できなくなってしまうため、ティムールアドベンチャー、ジェスカイサイクリング、ナヤスピリットを相手にした際に引くとガッカリするカードであることは否めません。しかし、それらのデメリットを差し引いても、多くのマッチアップで優れているのは《憤激解放》ではなく《リムロックの騎士》と判断し、《リムロックの騎士》を優先しています。
「《憤激解放》がなかったらもう”Fury”ではないのでは……」というツッコミがありそうな気もしますが、「サン&ムーン」も片割れが採用されていないケースがほとんどなので、まあそんなものでしょう(?)
《エンバレスの宝剣》
ナヤフューリーに採用されるクリーチャーはスペックこそ優れているものの、トランプルを持ったクリーチャーが不在なため、《クラリオンのスピリット》や《型破りな協力》でトークンを撒かれると、簡単にチャンプブロックでしのがれてしまいます。
それを突破する手段として最強のトランプル付与でもある《エンバレスの宝剣》を採用しています。《恋煩いの野獣》で出たトークンや《群れの番人》《リムロックの騎士》といった中盤以降に大きく価値を落とすクリーチャーに再び価値を持たせる意味でも優れたカードです。
主要カード紹介:サイドボード
除去
《火の予言》/《ガラスの棺》
白単アグロ、赤単アグロのような攻撃的なデッキに対して、《リムロックの騎士》《群れの番人》の差し替え先として合計6枚と多めに採用しています。単純な性能は《火の予言》のほうが優れていますが、《歴戦の神聖刃》《鍛冶で鍛えられしアナックス》《アイレンクラッグの紅蓮術師》といった火力除去に強いクリーチャーに対しては《ガラスの棺》のほうが優れているため、それぞれ3枚ずつと散らしています。
《レッドキャップの乱闘》
ほぼ《朱地洞の族長、トーブラン》《アイレンクラッグの紅蓮術師》専用除去です。これらのクリーチャーは対処しなければ即負けに繋がるレベルの影響力を持っていますが、《火の予言》では対処できないため、専用の除去を用意しています。また、《黄金架のドラゴン》をフィーチャーしたデッキに対してもサイドインします。
クリーチャー
《アゴナスの雄牛》
対ディミーアローグ専用の「脱出」クリーチャーです。軽い除去やクリーチャーを駆使して相手のカードと交換し、墓地に落ちた《アゴナスの雄牛》を脱出させるのが対ディミーアローグへのもっとも有効な戦い方です。それを実現するためにも最低2枚は必要と判断して採用しています。
《運命の神、クローティス》
墓地対策兼破壊不能のダメージソースです。単純に墓地対策として考えるなら《トーモッドの墓所》《魂標ランタン》のほうが優れていますが、現在のスタンダードにはモダンのドレッジのような完全に墓地に依存したデッキは存在しません。
せいぜいジェスカイサイクリングの《天頂の閃光》とラクドスサクリファイスの《死の飢えのタイタン、クロクサ》程度です。これらは墓地を利用するものの依存しているとは言い難く、それらに対して《トーモッドの墓所》や《魂標ランタン》による墓地対策はやりすぎです。そのため、完全に墓地を掃除するよりも、ほかにダメージソースとしての役割を持った《運命の神、クローティス》を優先しています。
リスト公開制を意識したカード
《切り裂かれた帆》/《ヴァドロックの神話》
役割こそ違いますが、どちらも相手のプレイを一貫させない意図で採用しています。アーティファクト破壊がないと《スカイクレイブの大鎚》《エンバレスの宝剣》《グレートヘンジ》をプレイすることに裏目がないですし、1:X可能な除去がないと相手視点で横並べに対して裏目がありません。リスト公開を意識しているため、リスト非公開制のラダーでは別のカードに差し替えても問題ありません。
マリガン判断
本項ではマリガン判断について解説します。いくつかのケースを例に挙げつつ、その考え方について掘り下げていきます。
Case 1
キープします。「出来事」からの《恋煩いの野獣》が確定しており、《スカルドの決戦》というゴールもそろった理想的な手札です。基本的に《エッジウォールの亭主》と《恋煩いの野獣》を引いている手札はキープ寄りで判断します。
Case 2
キープします。《恋煩いの野獣》のような最強のキープ基準や《スカルドの決戦》《黄金架のドラゴン》のような明確なゴールこそないものの、《エッジウォールの亭主》からの《リムロックの騎士》というロケットスタートが確約されています。このように《エッジウォールの亭主》+ 2マナの出来事クリーチャーという手札はどんな相手に対しても有効なため、おおむねキープで問題ありません。
Case 3
マリガンします。土地は2枚ありますが、どちらもタップインかつ3枚目を引けたとしても初動が《砕骨の巨人》では遅すぎます。なんとなく土地と唱えられるカードがあるから……といってキープしてはいけません。明確な意志を持ってキープ/マリガンを判断しましょう。
Case 4
キープします。タップイン土地が多く、テンポが悪そうな手札には見えますが、2ターン目に《恋煩いの野獣》の「出来事」から3ターン目に自身の着地が確定していますし、ゴールとなる《黄金架のドラゴン》を《セジーリの防護》《群れの番人》でバックアップする未来も見えます。ナヤフューリーは《セジーリの防護》《カズールの憤怒》を土地としてカウントしているため、このようなタップイン土地の多い手札を配られることも多いですが、こればかりは受け入れるしかありません。
Case 5
相手に合わせて判断します。スゥルタイ根本原理のように攻める展開になる相手ならキープ、赤単のように守る展開になる相手ならマリガンします。赤単のような守る展開では手札枚数よりも質のほうが大事になるので、《恋煩いの野獣》や《砕骨の巨人》を求めて積極的にマリガンします。リスト公開制の恩恵をフル活用しましょう。
Case 6
マリガンします。「緑マナさえ引ければ……」という手札ではありますが、引けなかった際のリスクが大きすぎます。《寓話の小道》のタップインも許容しがたく、これくらいの手札であればマリガンした方が無難です。
サイドボーディング&マッチアップガイド
本項ではサイドボーディング&マッチアップガイドについて解説します。基本的にリスト公開を前提としていますので、ラダーなどのリスト非公開制で参考にする場合は相手の「相棒」やプレイしたカードから判断し変更を加えてください。
スゥルタイ根本原理
サイドボードしません。
メイン戦:微有利
スゥルタイ根本原理は序盤に並べたクリーチャーを除去し、《耕作》で土地を伸ばしつつ、《発生の根本原理》を引き込む……というのが理想ですが、これは非常に要求値が高いです。
反面、ナヤフューリーは手札にあるカードを順番に並べるだけでプレッシャーが掛かるうえに、仮に《出現の根本原理》が通っても《アールンドの天啓》さえ唱えさせなければ返しに《黄金架のドラゴン》から勝てるパターンがあるため、総合すると微有利という認識です。そのため、《乱動する渦》のような専用の対策も不要と考えています。
《エッジウォールの亭主》《恋煩いの野獣》《リムロックの騎士》《群れの番人》で序盤から積極的にプレッシャーを掛けていき、4-5ターン目には《スカルドの決戦》や《黄金架のドラゴン》といった必殺技に繋げる展開が理想です。逆に序盤からプレッシャーが掛からない手札では《耕作》を安全にプレイする余裕を与えてしまうため、初動が3ターン目以降になるような遅い手札は積極的にマリガンします。
サイド後:微有利
基本的に入れ替えは行いませんが、相手のリストに《長老ガーガロス》《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》が少なく、除去が多い場合は《巨人落とし》を減らして《運命の神、クローティス》に差し替えます。
戦い方もメイン戦から変化はありません。《出現の根本原理》を唱えられる前に相手のライフを削り切ることを目標にしつつ、最低でも《出現の根本原理》を唱えられた返しのターンに《黄金架のドラゴン》か《カズールの憤怒》で削り切る展開をイメージして戦います。
ティムールアドベンチャー
vs. ティムールアドベンチャー(先手)
vs. ティムールアドベンチャー(後手)
メイン戦:微不利
序盤はお互いに《エッジウォールの亭主》《恋煩いの野獣》《砕骨の巨人》を展開・除去し合う展開になりやすく、あまり差がつきません。5ターン目前後から《黄金架のドラゴン》を巡る戦いになりますが、ここからはティムールアドベンチャーのほうが有利です。
先に《黄金架のドラゴン》の攻撃を許してしまうと、その場から《厚かましい借り手》を構えられてしまい、こちらの《黄金架のドラゴン》の通りが悪くなります、ターンを渡すと《アールンドの天啓》もアクティブになってしまいます。かといって、こちらが先に《黄金架のドラゴン》を走らせても5ターン目では《巨人落とし》を構えられないため、返しにノーリスクで《黄金架のドラゴン》に走られてしまうのです。《アールンドの天啓》《獲物貫き、オボシュ》に対応できない点も含め、メイン戦は微不利という認識です。
サイド後:五分
《リムロックの騎士》のようにあまりゲームに影響しないカードが抜けて、《巨人落とし》《切り裂かれた帆》《レッドキャップの乱闘》といった有効な除去に差し替わるため、メイン戦よりはかなり戦いやすくなります。
ティムールアドベンチャーはリソースの獲得手段が限られており、《エッジウォールの亭主》さえ丁寧に除去すれば手札が枯れがちです。《アールンドの天啓》も《黄金架のドラゴン》さえ除去できれば大した脅威にならないため、とにかく除去が重要になります。消耗戦に持ち込めれば《スカルドの決戦》を持ったナヤフューリーが有利です。
赤単
vs. 赤単
メイン戦:微不利
メイン戦は不要なカードが多く、苦しい戦いを強いられます。いくらリスト公開制で不要なカードをマリガンで戻せるとはいえ、それらが10枚近く入っていれば厳しい事実に変わりはありません。
しかし、赤単も《恋煩いの野獣》《砕骨の巨人》を突破するには《鍛冶で鍛えられしアナックス》《エンバレスの宝剣》《朱地洞の族長、トーブラン》といった特定のカードが必要なため、手放しに不利とも言い難いです。とはいえ、ナヤフューリーは赤単の理想的な動きに対応できないことから、メイン戦は微不利という認識です。
サイド後:有利
《リムロックの騎士》や《エンバレスの宝剣》のような役に立たないカードがサイドアウトされ、《火の予言》《ガラスの棺》といった除去に差し替わるため、相性は大きく改善されます。
《運命の神、クローティス》を追加するのは意外に思われるかもしれませんが、サイド後は赤単も除去を追加してくるため、お互いに除去とクリーチャーを交換し合う展開になりがちです。そのような展開では《運命の神、クローティス》のように除去をかわしつつゲームを進められるカードが有効に働きます。また、毎ターン2点のライフゲインが確約されているため、相手のパワー2以下のクリーチャーと交換しているという見方もできます。そのため、赤単に対しては見た目以上に有効なカードです。
白単
vs. 白単
メイン戦:五分
赤単と異なり《恋煩いの野獣》を対処する手段が豊富なので、クリーチャーで抑えようとすると痛い目を見ます。その代わりに《エンバレスの宝剣》のような必殺技や直接火力を持ち合わせていないため、理不尽な突然死はありません。そのため、序盤さえしのげば意外となんとかなる……といった展開も多く、赤単よりは戦いやすい印象です。
サイド後:有利
対赤単同様、サイド後は劇的に相性が変化します。白単は赤単と違い《砕骨の巨人》のような火力除去がないことから、《群れの番人》は少しだけ残します。代わりに《運命の神、クローティス》は墓地にカードが落ちづらいことからサイドインはしません。この辺りは同じアグロデッキであってもデッキの性質が若干違うので、「アグロデッキだから……」と妄信せず慎重に判断してください。
ディミーアローグ
vs. ディミーアローグ
メイン戦:五分
ナヤ系のデッキは低いマナ域にタフネス3を突破できるクリーチャーが少なく、一般的に対ディミーアローグは不利とされています。しかし、今回紹介しているリストは《リムロックの騎士》《群れの番人》と2マナ域のパワー3のクリーチャーを8枚採用しているため、従来の相性から大きく改善されており、メイン戦から十分に戦えるレベルです。《リムロックの騎士》が《憤激解放》だと活躍どころかサイドアウト候補なので、このチューニングが光るマッチアップです。
サイド後:有利
《スカルドの決戦》や《黄金架のドラゴン》のような重いカードや《巨人落とし》のような効果の薄いカードがすべて有効なカードに差し替えられるため、大きく有利になります。特に序盤の《運命の神、クローティス》は打ち消しされづらいうえに通れば即勝ちレベルの脅威なため、優先して通しにいきましょう。
ジェスカイサイクリング
vs. ジェスカイサイクリング
メイン戦:不利
《繁栄の狐》には《巨人落とし》、《型破りな協力》には《エンバレスの宝剣》とそれぞれ有効な回答を持っていますが、《アイレンクラッグの紅蓮術師》と《天頂の閃光》に対処する術がなく、有効なタイミングで唱えられるとほぼ負けが確定します。
《恋煩いの野獣》《砕骨の巨人》といった《型破りな協力》で止まらないクリーチャーでプレッシャーを掛けつつ、《スカルドの決戦》《黄金架のドラゴン》《エンバレスの宝剣》といった必殺技にストレートに繋がる展開でのみ勝てる可能性がありますが、そう都合よくいかないのが現実です。
サイド後:五分
バックアップなしでは攻撃に参加できない《リムロックの騎士》《群れの番人》がサイドアウトされ、《アイレンクラッグの紅蓮術師》には《ガラスの棺》《レッドキャップの乱闘》、《天頂の閃光》には《運命の神、クローティス》と、それぞれメイン戦では対処方法のなかった脅威に対処できるようになるため、メイン戦に比べると格段に戦いやすくなります。とはいえ、これでようやく五分です。脅威のどれか1つでも対処し損ねると一瞬で逆転不可能な差を付けられてしまいます。丁寧な対処を心掛けましょう。
スゥルタイコントロール
vs. スゥルタイコントロール
メイン戦:五分
《憤激解放》が入ってたらと思うとゾっとするマッチアップです。《リムロックの騎士》しか勝たん。スゥルタイコントロールには大量の除去が入っているため、必然的に長期戦になりやすいです。なので、序盤から積極的に手札を使うのではなく、確実に《エッジウォールの亭主》と「出来事」持ちのクリーチャーを繋げたり、《群れの番人》で除去から守ったりと、リソース損が少なくなるような立ち回りを意識します。特に《エッジウォールの亭主》は低コストでリソースを獲得してくれる最重要クリーチャーです。大切に使いましょう。
サイド後:微有利
対象の少ない《巨人落とし》はサイドアウトします。大量の除去によってクリーチャーが定着しづらいため、通りの悪い《エンバレスの宝剣》もサイドアウトしておいたほうが無難です。
サイド後の戦い方はメイン戦と変わりません。クリーチャーを投げ続けて相手のソーサリー除去を誘い、返しのタップアウトに合わせて《スカルドの決戦》や《アゴナスの雄牛》を出してリソースを補充して再度クリーチャーを投げて……といった動きの繰り返しになります。
ナヤクラリオン
vs. ナヤクラリオン
メイン戦:微不利
ナヤクラリオンには《クラリオンのスピリット》のような盤面への影響力の高いクリーチャーが多く採用されていますが、メインボードにはそれらに対処するための除去が足りていません。そのため、メイン戦は良いように動かれてしまうため、大抵は不利な展開になりがちです。とはいえ、ナヤクラリオンに《エンバレスの宝剣》を対処できるカードがないため、《エンバレスの宝剣》さえ引ければあっさり勝てる展開も多いです。それでも総合して微不利という印象です。
サイド後:五分
あまり活躍する場面のない《リムロックの騎士》と《群れの番人》はサイドアウトします。《秘密を知るもの、トスキ》への根本的な解決方法を用意していないため、周囲のクリーチャーを丁寧に除去することで対応します。《秘密を知るもの、トスキ》自体を重く見るなら《ヴァドロックの神話》よりも《アクロス戦争》のほうが優れているように見えますが、《アクロス戦争》は《フェリダーの撤退》に弱い(警戒付与で第Ⅲ章をかわされてしまう)ため、この辺りの採択は一長一短で難しいところです。
ナヤフューリー
vs. ナヤフューリー
メイン戦:微不利
ほとんど運ゲーです。《エッジウォールの亭主》《恋煩いの野獣》をより多く引くか、《スカルドの決戦》から《黄金架のドラゴン》を捲った側が勝利します。《リムロックの騎士》型の場合、安定感を上げている代わりに爆発力は下がっているため、そういった意味でも《憤激解放》型に対しては若干落ちる印象です。
サイド後:微不利
影響力が低い《リムロックの騎士》をサイドアウトし、代わりに《黄金架のドラゴン》を対処できる除去をフル投入します。ただ、相手も同じようなin/outになるので、サイド後に相性が改善されることはありません。《憤激解放》の差で若干不利なままです。
TIPS
《砕骨の巨人》関連
普段はあまり意識しなくても問題ないですが、「出来事」を唱えるとこのターンのダメージが軽減されなくなります。《九つの命》を突破できるといったメリットもあれば、自分の《セジーリの防護》を貫通してしまうようなデメリットもあります。
これを忘れると酷い目に合います。気をつけましょう。
#セカコロ 決勝大会第4回戦フィーチャーマッチは勝者ブラケット最終戦より、佐藤選手 vs. 増田選手の戦いをお届けしました。
— セカナビ(Sekanavi) MTGの大会参加をもっと手軽に! (@sekanavi_mtg) March 20, 2021
《スカルドの決戦》の圧倒的物量の前に佐藤レイ選手は絶体絶命のピンチだが……!?
配信はこちら https://t.co/wEGeabsCWb pic.twitter.com/KO5tcw82IR
《リムロックの騎士》関連
「出来事」が1マナで対象を取る呪文ということで、《黄金架のドラゴン》を対象にするとマナが増えます(厳密には宝物・トークンですが)。これを利用して、見た目では唱えられないはずの《カズールの憤怒》や《巨人落とし》の「出来事」を唱えることが可能です。
《群れの番人》関連
《リムロックの騎士》の「出来事」同様、「出来事」で《黄金架のドラゴン》を対象にするとマナが増えます。しかし、対象に取った《黄金架のドラゴン》が手札に戻るため、基本は除去避けに使うことになりますが、稀にマナを増やすためだけに使う場合もあります。例えば、相手の除去に対応して《カズールの憤怒》を撃ちたい場合です。「出来事」が解決される前に行動することで、一時的にマナが増える状況を作れます。
例:《黄金架のドラゴン》が除去の対象に取られる→宝物・トークンが出る→宝物・トークンを砕いて《群れの番人》で《黄金架のドラゴン》を対象に取る(1マナ浮き)→宝物・トークンが出る(1マナ浮き)→宝物・トークンを砕いて、「出来事」の解決前に浮いた3マナから《黄金架のドラゴン》をコストに《カズールの憤怒》!
MTGアリーナの場合、フルコントロールモードでないと《群れの番人》で《黄金架のドラゴン》を対象に取った時点で手札に戻ってしまうため、フルコントロールモードにする必要があります。
《スカルドの決戦》関連
第Ⅲ章の誘発に対応して《群れの番人》で《スカルドの決戦》を対象に取ることで、章能力を誘発させたうえで《スカルドの決戦》を再利用できます。MTGアリーナの場合、フルコントロールモードでないと勝手に処理されてしまうので注意が必要です。
《セジーリの防護》関連
プロテクションで(白)or(赤)を選ぶと、以降はそのクリーチャーを《スカルドの決戦》のパンプ対象に選ぶことができなくなります。当たり前かもしれませんが、意外と忘れがちなので注意が必要です(1敗)。
『ストリクスヘイヴン:魔法学院』後のアップデート
最後に『ストリクスヘイヴン:魔法学院』からナヤフューリーでも使えそうなカードをいくつかピックアップしてみました。
《尊い戦歌い》
条件は厳しいものの、戦闘ダメージを通せば確定で《エッジウォールの亭主》を戦場に戻せます。トランプル持ちなのでチャンプブロッカーにも強く、《リムロックの騎士》で強引にダメージを与えにいけるのも良いですね。とはいえ、単体のスペックは少々物足りない感じもしますので、使っても1~2枚といったところでしょうか。
《引き裂き》
これは……《削剥》!?
流石にマルチカラーのソーサリーといった詰め込み具合で、対象範囲が非常に広いです。置き物破壊を使うならまずこれ……と言いたいところですが、《切り裂かれた帆》なら《黄金架のドラゴン》も倒せるので、どちらを使うかは仮想敵次第です。取りあえずサイドに2枚くらい入りそうな見た目で、ナヤフューリーに限らず今後さまざまなデッキで見かけることになりそうです。
《神託者の広間》
インスタント/ソーサリーを唱えたターンに起動するだけでお手軽パンプ!「出来事」と相性がよく、簡単に起動条件を満たすことができます。ただし、単体では色マナが出ないので、複数枚入れると事故の要因になりかねません。土地というよりは呪文のようなイメージで使うことになりそうです。
サンプルリスト
2 《森》
1 《平地》
4 《寓話の小道》
4 《枝重なる小道》
4 《岩山被りの小道》
4 《針縁の小道》
1 《神託者の広間》
-土地 (22)- 4 《エッジウォールの亭主》
3 《巨人落とし》
3 《リムロックの騎士》
3 《群れの番人》
4 《砕骨の巨人》
4 《恋煩いの野獣》
1 《尊い戦歌い》
4 《黄金架のドラゴン》
-クリーチャー (26)-
2 《運命の神、クローティス》
2 《アゴナスの雄牛》
2 《レッドキャップの乱闘》
2 《引き裂き》
2 《ガラスの棺》
1 《巨人落とし》
1 《ヴァドロックの神話》
-サイドボード (15)-
おわりに
ナヤフューリーのガイドは以上になります。
このデッキは世間では環境から脱落したデッキ、という評価を下されていたかもしれません。しかし、私はこの「ナヤフューリー」を信じて使い続けてきました。そして、やり込みは絶対に裏切りませんし、その考えはティムール再生のころから変わっていません。それが日本選手権2021 SEASON1の優勝という最高の結果に繋がったのだと確信しています。
ナヤフューリーはその見た目に反して非常に奥の深いデッキです。かつては諦めた方もこれから使ってみようという方も、本ガイドがその手助けになれば幸いです。
次は『ストリクスヘイヴン:魔法学院』環境でお会いしましょう!
増田 勝仁