USA Modern Express vol.55 -モダン 春の土地祭り-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさんこんにちは。

4月になり、ついに日本国内のテーブルトップのイベントが解禁されました。これまで延期されていたイベントも開催される予定なので、一層盛り上がることが期待できますね。

さて、今回の連載ではModern Challengeの結果を見ていきたいと思います。

Modern Challenge #12277640
環境を踏み鳴らすエルドラージ軍

2021年3月27日

  • 1位 Eldrazi Tron
  • 2位 Mono Red Prowess
  • 3位 Heliod Company
  • 4位 Mono Red Prowess
  • 5位 The Rock
  • 6位 Hammer Time
  • 7位 Jund Death’s Shadow
  • 8位 Heliod Company

トップ8のデッキリストはこちら

「続唱」のルール変更を含めた禁止改訂からしばらくが経ちましたが、モダンは多様性のある健全な環境に落ち着いているようです。

現環境のトップメタであるHeliod CompanyやJund Death’s Shadow、定番のProwessのほかにもThe Rockのような緑系のミッドレンジが復権してきています。

そんななか今大会で優勝を収めたのはEldrazi Tronでした。

デッキ紹介

Eldrazi Tron

Eldrazi Tron

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クラシックな型のMono Green Tronだけではなく、エルドラージ満載のアグレッシブな型のEldrazi Tronも上位でよく見るアーキタイプとなりました。

《虚空の杯》で相手の行動を制限しつつトロンランドや《エルドラージの寺院》で加速していき、エルドラージや《大いなる創造者、カーン》などのプレインズウォーカーで攻めていきます。

エルドラージにはハンデス効果のある《難題の予見者》や除去耐性のある《現実を砕くもの》など厄介なクリーチャーが多く、加えてプレインズウォーカーまであることで異なる対処法を要求してきます。タイプの異なる脅威こそEldrazi Tronの強みなのです。

☆注目ポイント

Blast ZoneChalice of the Void

《爆発域》はProwess系やBurn、Humans、Death’s Shadowなど環境に存在している多くのアグレッシブなデッキとのマッチアップで役に立ちます。《探検の地図》でサーチできる除去なのでそれらのマッチアップでは安定性の向上に一役買っています。

《虚空の杯》はProwess系や各種《夢の巣のルールス》デッキとのマッチアップで強さを発揮します。X=1で設置して相手の行動を制限し、動けない間にエルドラージで相手のライフを攻めていきます。

Eldrazi TempleThought-Knot SeerReality Smasher

3ターン目にトロンランドが揃わなくても《エルドラージの寺院》から《難題の予見者》《現実を砕くもの》といった優秀なエルドラージで攻められるのがこのデッキの特徴です。Mono Green Tronと異なり、ビッグスペルに頼らずともさまざまな攻め手が用意されています

Karn, the Great CreatorUgin, the Ineffable

《大いなる創造者、カーン》《人知を超えるもの、ウギン》の2種類のプレインズウォーカーを採用しているので、ロングゲームでもミッドレンジやコントロールと互角以上に渡り合うことができます。特に《大いなる創造者、カーン》はデッキに柔軟性をもたらしてくれるカードであり、Mono Green Tronと同様にその能力によってサイドボードから状況に応じたアーティファクトをサーチしてくることができます。

The Rock

The Rock

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モダンの《夢の巣のルールス》を「相棒」にしたデッキはJund Death’s Shadowだけではありません。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》をはじめとしたカードが去ったことで緑黒系のクラシックなミッドレンジが復権してきました。

毎ターンカードアドバンテージを稼ぐことができる《夢の巣のルールス》を「相棒」にしたことで強化されたGolgari Midrange。「相棒」として使うために《ヴェールのリリアナ》など強力な3マナ域のパーマネントカードを諦めることになりましたが、それを補って余りある強さを持っています。

古典的なミッドレンジらしく軽い優秀な除去が揃っているのでDeath’s Shadow系など多くのアグロデッキに強く、《思考囲い》《コジレックの審問》という2種類の1マナハンデスを採用しているのでアンフェアデッキとのマッチアップも戦えます。

☆注目ポイント

Nihil Spellbomb

《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が退場した現在でも《瞬唱の魔道士》《レンと六番》《夢の巣のルールス》など多くのデッキが墓地をリソースとして活用しています。そのため墓地対策カードの《虚無の呪文爆弾》がメインから採られています《虚無の呪文爆弾》《ミシュラのガラクタ》と同様にドローできるので《夢の巣のルールス》で再利用してカードアドバンテージを稼ぐことができ、さらに副次的効果としてアーティファクト分《タルモゴイフ》の強化にも繋がっています。

Hexdrinker

《呪詛呑み》は序盤のクロック要員であると同時にマナが余るゲーム後半では強力なトップデッキカードとなるフレキシブルなクリーチャーです。マナ支払うことで強化されるクリーチャーなので、このタイプのミッドレンジの弱点である中盤以降のマナフラッド問題も緩和されていますね。

Field of RuinFulminator Mage

Jundと異なり2色バージョンは《廃墟の地》を採用する余裕がありますが、Tronなどの土地コンボは依然として厳しいマッチアップとなるためサイドボードで追加の対策が必須となります。《大爆発の魔道士》はメジャーな対策カードですが、サイドボード後も《夢の巣のルールス》の「相棒」条件を満たせるように代わりに《涙の雨》を採用しています。

Modern Challenge #12277646
トップメタの勝利

2021年3月28日

  • 1位 Heliod Company
  • 2位 Living End
  • 3位 Izzet Prowess
  • 4位 Azorius Spirits
  • 5位 Living End
  • 6位 Jund Death’s Shadow
  • 7位 Eldrazi Tron
  • 8位 Jund Death’s Shadow

トップ8のデッキリストはこちら

トップメタのHeliod Companyが順当に勝ち上がったイベントでした。

環境のベストデッキのひとつとされているJund Death’s Shadowも安定した成績を残し続けています。

珍しいところではLiving Endがプレイオフに2名の入賞者を出していました。

デッキ紹介

Living End

Living End

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Dredgeなど墓地を使ったコンボを得意とするSodeqが今大会で選択したデッキは、長い間モダンに存在するLiving End。長年このデッキのマナ加速として活躍していた《猿人の指導霊》が禁止になってしまいましたが、まだまだトーナメントレベルのデッキとして活躍しています。

「サイクリング」を持つクリーチャーで墓地を肥やし、「続唱」カードから《死せる生》を直接プレイして墓地のクリーチャーを復活させ、次のターンのアタックでゲームを終わらせます。Jundなどカウンターを採用していないミッドレンジのフェアデッキに強いアーキタイプです。

☆注目ポイント

Brazen Borrower

デッキの構成上固定パーツが多く、さらに「続唱」した際に《死せる生》を確定でキャストする必要があるので構築にも大きな制限があり、新しいカードを採用しにくいアーキタイプでした。しかし、最近は新戦力にも恵まれているようです。

「出来事」カードの《厚かましい借り手》「続唱」の邪魔をせず、置物対策になるためこのデッキに合っています。青いカードなので《否定の力》のピッチコストにもなるのも見過ごせません。

Force of NegationMystical Dispute

《否定の力》は主に「続唱」を妨害してくる《時を解す者、テフェリー》や墓地対策カードをカウンターします。「サイクリング」を持つクリーチャーも青いカードが多いので、ピッチとしてプレイする際に追放するカードに困ることは少なそうです。サイドボードでは《跳ね返りの罠》よりも《神秘の論争》が優先されているのが印象的でした。このデッキにとって厄介な《時を解す者、テフェリー》を考慮したチョイスのようです。

Modern Challenge #12280389
コントロールデッキが多数入賞

2021年4月3日

  • 1位 Esper Control
  • 2位 Scapeshift
  • 3位 Yawgmoth
  • 4位 5C Control
  • 5位 Izzet Prowess
  • 6位 Scapeshift
  • 7位 4C Control
  • 8位 Jund Death’s Shadow

トップ8のデッキリストはこちら

先週末に開催されたModern Challengeはコントロールデッキが上位に多く残りました。

現環境のトップメタの一角に位置するJund Death’s Shadowは今大会でも入賞している一方で、前回優勝のHeliod Companyはプレイオフに不在でした。

《死者の原野》を失った《原始のタイタン》デッキは過去に活躍していた赤緑バージョンの《風景の変容》に戻っています。

デッキ紹介

5C Control

5C Control

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禁止改定により失ったカードが多く弱体化を強いられた多色コントロールでしたが、姿を変えて環境へ残ることに成功しています。

現在の多色コントロールは《ニヴ=ミゼット再誕》《白日の下に》を搭載した構築が主流になっています。《ニヴ=ミゼット再誕》は大量のカードを引いてアドバンテージを提供し、《白日の下に》《ニヴ=ミゼット再誕》を含めたデッキ内の必要なカードを状況に応じてサーチします。

各色から優秀なスペルを集めてきているのでデッキパワーが高く、《稲妻のらせん》《ケイヤの手管》という2種類のライフゲイン付き除去をフル採用しているのでアグロデッキに強い構成です。

☆注目ポイント

Bring to LightKaya's Guile

このデッキのキーカードである《白日の下に》はスイーパーの《至高の評決》をはじめ、サイドボードに採用されている《漂流自我》《塵への崩壊》といった特定の戦略に刺さるカードをサーチできる柔軟性に優れ、かつ決定打となるスペルです。

前回の連載でもお話ししたように、多彩なモードが特徴の《ケイヤの手管》はフレキシブルなカードであり、どんな相手でも無駄になりません。用途が広いためサイドボードのスペース節約にもなり、デッキの種類が多いモダンでは特に重宝します。

石鍛冶の神秘家殴打頭蓋火と氷の剣饗宴と飢餓の剣

基本的にソーサリータイミングで動くタップアウトコントロールであり、強力なスペルが多い反面動きがもっさりしてしまうのでカウンターを多用する青ベースのコントロールとのマッチアップは苦戦を強いられます。今大会で入賞を果たしたGodOfSlaughterのリストにメインから採用されている《石鍛冶の神秘家》パッケージは、軽いアクションとしてコントロールデッキとのマッチアップで活躍が期待できます。

Abundant Growthレンと六番Yorion, Sky NomadOmnath, Locus of Creation

《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」にするためにデッキの枚数が80枚になっていますが、マナベースを整える《豊かな成長》《楽園の拡散》、フェッチランドを使い回せる《レンと六番》があるので動きは安定しています。《豊かな成長》に加えて《創造の座、オムナス》《石鍛冶の神秘家》など戦場に出たときの誘発型能力(ETB能力=Enter The Battlefield)を持つカードを多用しているので、《空を放浪するもの、ヨーリオン》でアドバンテージが稼ぎやすくなっています。

Modern Super Qualifier #12280358
Tronが予選を突破

2021年4月5日

  • 1位 Tron
  • 2位 Heliod Company
  • 3位 Burn
  • 4位 Jund Death’s Shadow
  • 5位 Heliod Company
  • 6位 Izzet Prowess
  • 7位 Heliod Company
  • 8位 Eldrazi Tron

大会情報はこちら

MOで開催されたモダンPTQは参加者400人超えと長丁場のイベントとなりました。

10ラウンドに渡る厳しいスイスラウンドを勝ち抜きプレイオフにまで勝ち残ったのはHeliod CompanyやJund Death’s Shadow、Izzet prowessといったModern Challengeの常連デッキ。ほかにもEldrazi TronやBurnなどさまざまなデッキが勝ち残っており、多様性のある現環境を体現した結果になりました。

そんななか優勝を果たしたのは禁止改定後の環境で復権を果たしたTronでした。

デッキ紹介

Jund Death’s Shadow

Jund Death's Shadow

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Heliodと並んで現環境の最高のデッキのひとつとされているJund Death’s Shadow。

以前から《死の影》はコンスタントに上位入賞しており、トップメタに近い立ち位置でした。当時は多色コントロールを止めるために《血染めの月》を無理なく運用できるRakdosバージョンが中心でしたが、禁止改定後はJundバージョンが主流となっています。

☆注目ポイント

夏の帳

《タルモゴイフ》などの緑の優秀なクリーチャーと保護スペルの《夏の帳》を採用できるところがこのJundバージョンの強みです。以前から《夏の帳》は優秀なスペルでしたが、《致命的な一押し》《大魔導師の魔除け》といった軽い干渉手段が散見される現環境ではより重要となります。

Grim Lavamancer

生きた火力であり、墓地をコストにした《渋面の溶岩使い》は息切れ防止になります。フェッチランドや軽いスペルを多用するこのデッキでは墓地も肥えやすく、起動型能力のコストに困ることは少なさそうです。

Pyrite Spellbomb

《死の影》を使った速攻プランだけでも十分な強さですが、《夢の巣のルールス》が「相棒」にいることよってロングゲームになった場合でも多くのデッキと渡り合うことができます。《黄鉄の呪文爆弾》は再利用できる除去であり、《オーリオックのチャンピオン》のようなプロテクションを持つクリーチャーを対処できる貴重なカードとなります。

総括

禁止改訂からしばらくが経ち、毎週Modern ChallengeやMO PTQなど大きな大会が開催されましたが、多種多様なデッキが結果を残しています。

前回予想したようにHeliod Companyが大量のライフを得ても勝つことができ、復権してきた各種ミッドレンジやEsper Controlなどに強いTronは現環境では有力な選択肢となっています。1マナスペルを多用する各種《夢の巣のルールス》デッキに刺さる《虚空の杯》もキーカードであり、メインから採用しているEldrazi Tronは安定した勝率を期待できそうです。

以上、USA Modern Express vol.55でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら