マジック名カード集 ~『メルカディアン・マスクス』編~

晴れる屋メディアチーム

はじめに

みなさま、「名カード集」へようこそ。

この「名カード集」では、時代を過去へと遡り、昔のエキスパンションの名だたるカードを紹介していきます。

今回は強力なピッチスペルが再登場した『メルカディアン・マスクス』をご紹介しましょう。

『メルカディアン・マスクス』ってどんなセット?

『メルカディアン・マスクス』とは、1999年10月に発売された全350種類の大型エキスパンション。先のウルザ・ブロックによりコンボデッキが猛威を振るっていたことがあり、バランス調整のためかブロックを全体を通してカードパワーは低めになっています。大型エキスパンションに付きものの、新キーワード能力も登場していません。

恭しきマントラ妨害デルレイッチ

しかし、システムクリーチャーの「レベル」と「傭兵」、「スペルシェイパー」が登場し、さらに大量のピッチスペルが加わったことでスタンダードは大きな変化を見せました。特にピッチスペルは各色複数のカードがデザインされ、その代替コストが同色のカードや基本地形タイプを参照することも相まり、環境の単色化と同時に速度に影響を与えたのです。

リシャーダの港

また、忘れてはならないのは単色環境を強力に後押しした《リシャーダの港》の存在です。当時は多色土地が《アダーカー荒原》などのダメージランドくらいしかなく、安定した2色以上のマナベースの構築が難しかったところへ追い打ちをかけるようにこのカードが登場したため、環境は単色デッキか対策を積んだ2色デッキのみとなってしまいました。

『メルカディアン・マスクス』の名カードたち

《誤った指図》

誤った指図

《誤った指図》

あなたは、《誤った指図》のマナ・コストを支払うのではなく、あなたの手札から青のカード1枚を追放してもよい。

単一の対象を持つ呪文1つを対象とし、それの対象を変更する。

《偏向》のピッチスペル版、それが《誤った指図》です。単純な打ち消し呪文と違いカードの効果を無効化はできませんが、火力や除去、ドロー呪文の対象を都合よく変更することでテンポとカード両面でアドバンテージを生む可能性がありました。また、カウンター合戦(打ち消し呪文の打ち合い)においてもマナがかからないため使い勝手が良く、デッキタイプを選ばずに青いデッキであるならばサイドボードの定番カードとなっていました。

天才のひらめきウルザの激怒名誉回復

スタンダードでは、大量の《天才のひらめき》や「キッカー」込みの《ウルザの激怒》、土地へと撃ち込まれた《名誉回復》の対象を変えることで、ゲームを決める決定打にもなりました。特に《ウルザの激怒》は打ち消し呪文対策としてデザインされた長期戦における必殺カードだったので、《誤った指図》は貴重な対策カードだったのです。

《物語の円》

物語の円

《物語の円》

《物語の円》が戦場に出るに際し、色を1色選ぶ。

(白):このターン、あなたが選んだ、選ばれた色の発生源1つが次にあなたに与えるすべてのダメージを軽減する。

特定の色への対抗手段である《防御円》。絶大な効果を持ちながら適用範囲の狭さから、メタゲームに合わせてサイドボードに置かれるカードでしたが、それに丸みを持たせたのが《物語の円》です。起動コストに白マナが要求されますが、相手のデッキに合わせて色を選べるため使いやすくなったのです。

『メルカディアン・マスクス』の発売から1年後、『インベイジョン』の加入以降に登場した赤と緑の大型クリーチャーによる速攻デッキ、ファイアーズ。長らく環境の中心となったこのデッキへのメタデッキとして、ミルストーリーは産声を上げました。

ブラストダームはじける子嚢

ファイアーズが数ではなく単体のサイズで押すクリーチャーデッキだったことで《物語の円》は相性のいいキラーカードとなり、《神の怒り》ための寄せ餌となりました。わずか1マナで戦闘ダメージを無効化するため、ファイアーズ側がダメージを通すのに躍起になって数を並べれば、《神の怒り》の生み出すアドバンテージはさらに増えることになるのです。

当時はインスタントのドロー呪文が充実していたこともあり、余ったマナは《嘘か真か》などに使うことができました。《物語の円》は環境に合致したカードだったのです。

石臼

因みにデッキ名のミルストーリーはキーカードである《石臼》《物語の円》から(Mill+Story)。岡本 尋選手はこのミルストーリーを手にアジア太平洋選手権01を制し、のちにラストエンペラーと呼ばれるようになったのです。

《土地譲渡》

土地譲渡

《土地譲渡》

あなたの手札に土地カードが1枚も無い場合、あなたは、《土地譲渡》のマナ・コストを支払うのではなく、あなたの手札を公開することを選んでもよい。

あなたのライブラリーから、森カードを1枚探す。そのカードを公開し、あなたの手札に加える。その後あなたのライブラリーを切り直す。

コントロールデッキで活躍したカードを紹介し続けたところで、今度はアグレッシブな戦略を後押ししたカードに目を向けましょう。《土地譲渡》はシンプルに《森》を探し出すだけですが、土地の引き過ぎを緩和したい単色のビートダウンデッキでは圧縮効果に着目して採用されることがありました。ですが、このカードはスタンダードよりもエクステンデッドやレガシーで活躍したカードです。

TaigaTropical Island

『オンスロート』前のエクステンデッドでは、出したターン中に即起動できるフェッチランドが不在であり、多色デッキのマナベースはデュアルランド中心かタップインの《氾濫原》に頼らざるを得ませんでした。そこに登場した《土地譲渡》《森》タイプを持つ土地をサーチできるため、緑絡みの多色デッキのマナベースを大幅に強化したのです。スペル版のフェッチランドといった感じであり、3色のクリーチャーデッキにはキッチリ4枚採用されています。

ただし、ピッチの条件とコストがシビアであり、手札公開を逆手に取られたり、《土地譲渡》を打ち消されてまったく動けなくなってしまった、なんてことすらあったのです。

ゴブリンの放火砲生き埋め弧光のフェニックス

レガシーでは《ゴブリンの放火砲》デッキでその姿をみるだけかと思っていましたが、最近ではジャンドカラーの《生き埋め》+《弧光のフェニックス》デッキに採用されているようです。マナのかからない《土地譲渡》があることで、《弧光のフェニックス》が戦場へ戻る条件を満たすやすくなりますね。

《冥界のスピリット》

冥界のスピリット

《冥界のスピリット》

あなたのアップキープの開始時に、《冥界のスピリット》があなたの墓地にある唯一のクリーチャー・カードである場合、あなたは《冥界のスピリット》を戦場に戻してもよい。

2/2

マスクス+インベイジョン期を代表するコントロールのフィニッシャー、《冥界のスピリット》。サイズは2/2と頼りなく、回避やサイズアップ、《マスティコア》のようなボードコントロール能力があるわけではありません。このクリーチャーは自身の制圧力ではなく毎ターン戦場へと戻る生命力の強さに活路を見出し、フィニッシャーの位置を確固たるものとしたのです。リセット呪文と組み合わせ、文字通り不死身の生命体となったのです。

また、このクリーチャーは墓地に置きさえすれば勝手に戻ってくるためかなり使い勝手の良いカードでした。後手1ターン目にセットランドせずにディスカードして次のターンから延々と相手の攻撃をブロックしたり、《撃退》の代替コストとして捨てたり、《納墓》で直接墓地へと送り込むことができたのです。《陰謀団式療法》は最高の相棒といえるでしょう。

ジョークルホープス抹消

ターボジョークルでは、まさにそのタフさを買われて採用されました。リセット呪文までの時間を稼ぐと同時に、クリアになった戦場を、この《不死身のスピリット》が颯爽と駆け抜けたのです。

調査撃退Fact or Fiction

相方を赤から青へと変えたネザーゴーでは打ち消し呪文と合わせてコントロールしていくスタイルとなりドロー呪文などが優秀なこともあって、ほとんど任意のタイミングで墓地へと送り込めました。運は絡みますが《嘘か真か》《調査》は強烈なシナジーを形成しており、代替コストの重い《撃退》すらもデメリットを感じることなく運用できたのです。

《レイモス教の兵長》

レイモス教の兵長

《レイモス教の兵長》

(3),(T):あなたのライブラリーから、点数で見たマナ・コストが2以下のレベル・パーマネント・カードを1枚探し、それを戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。

1/1

『メルカディアン・マスクス』から登場したマナを支払うことでデッキから直接戦場にクリーチャーを呼び出すリクルートシステムを持つ「レベル」。なかでも《レイモス教の兵長》最軽量のリクルーターであり、後続へと繋げる戦略の要でした。このクリーチャー1枚が生き残れば、これ以降マナさえあれば手札を使わずにいくらでもクリーチャーを増やすことができたのです。

レイモス教の副長果敢な勇士リン・シヴィー栄光の頌歌

《レイモス教の兵長》からスタートして3ターン目には《レイモス教の副長》を呼び出し、続く4ターン目には《果敢な勇士リン・シヴィー》が登場します。以降は、マナに合わせて適宜「レベル」をリクルートしながら《栄光の頌歌》で強化して攻撃していきます。リベリオンは使いやすくも強力なアーキタイプとなりました。

対抗呪文渦まく知識鞭縄使い

リベリオンはアドバンテージエンジンを持つクリーチャーデッキとして白単を中心に活躍しましたが、のちに打ち消し呪文との相性の良さに注目したカウンターレベルもデザインされました。除去呪文が乏しかった当時はうっかりすると戦場を埋め尽くすまでリクルートエンジンは止まらず、あとは苦手な《神の怒り》《虐殺》といったリセット呪文さえ対処すれば勝利が確定します。また、『メルカディアン・マスクス』で再録された《渦まく知識》と相性が良く、手札にきたレベルを打ち消し呪文と交換し、さらにリシャッフルを可能にしてくれたのです。

活躍はスタンダードに留まると思われましたが、エクステンデッドでも使用されました。スタンダードのときとは違い、「レベル」は《レイモス教の兵長》と2マナクリーチャーのみとなっていましたが、マナカーブを崩さずに白系アグロに粘り強さを付加することができたのです。『オンスロート』で《鞭縄使い》が登場するとコントロール力に磨きがかかりました。

まだある名カード

さて、『メルカディアン・マスクス』名カード集、お楽しみいただけたでしょうか。しかし、「あの有名カードなくない?」「もっといいカードあるよ!」と思われた方もいらっしゃるはず。

もっと『メルカディアン・マスクス』のカードについて知りたい方は、ぜひ、動画もご覧ください!

次回の「名カード集」では、『ネメシス』をお届けいたします。

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