Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2021/04/16)
工作員ふたたび
やぁみんな!
記事で会うのはだいぶ久しぶりになっちゃったね。次の大会まで少し時間に余裕ができたから、今日は超かっこいいパイオニアのデッキを紹介しよう。これほど『カルドハイム』の恩恵を受けたデッキはなかなかない。ほとんど見かけることはないけどクールなカードである《鴉の警告》を使っていたり、スタンダード以外では活躍の場がない《エシカの戦車》を使っていたりするんだ。
デッキリスト
この記事では、直近のShowcase Challengeでトップ4に入ったD00mwakeのリストを題材にしていくよ。
強豪プレイヤーであるMcWinSauceやFastfakeもまさにこの大会で似たリストを使っていて、もう少しでトップ8という成績だった。
異形化ファイアーズはコンボデッキではなく、複数の強烈なシナジーを内蔵したコントロールデッキだと捉えたほうが良い。確かに早いターンから《異形化》によって《裏切りの工作員》を出す流れはデッキ内で最強の動きだ。だけど、普通はそれだけでは勝てない。
よく最後にとどめを刺すのは《空を放浪するもの、ヨーリオン》なんだ。「戦場に出たとき」の能力を持つパーマネント(できれば《裏切りの工作員》を1体以上)を並べれば、《空を放浪するもの、ヨーリオン》がもたらすアドバンテージは甚大だ。
構成要素
ここからはデッキの構成要素を見ていくことにしよう。デッキの仕組みがよく理解できるはずだ。
《異形化》コンボ
このデッキはこの2枚を軸に構築されている。《異形化》を使うにはトークンを生み出せるカード(トークンメーカー)を多く用意しなくてはいけないけど、トークンメーカーは単体であっても有効なカードが採用されている。だから《異形化》が引けなくても大きな裏目になることはない。
《裏切りの工作員》を2枚とも引いてしまうと残念なことになるけど、80枚デッキだからあまり起きることではないね。仮にそれが現実になってしまったとしても、相手のクリーチャーに《異形化》を撃って弱いクリーチャーが出ることを期待する使い方もできる。
《異形化》のタネを用意するトークンメーカー
この2枚のすごいところは、トークンを出しながら手札を1枚補充してくれることだ。だから《異形化》がないときでも、「マナコストを払ってトークンを出しただけ」ということにはならない。それから防御の仕事も上手くこなしてくれるね。
《エシカの戦車》は緑を足す理由になっている。そこまで強い理由はなんだろうか?まず、攻守にわたって優れている。対アグロには、まず機体のほうで相撃ちしながら、残ったトークンを《異形化》のエサや追加のブロッカーとして残しておける。反対に攻めに回るときは相手にとって大きなプレッシャーとなるだろう。
それから、《空を放浪するもの、ヨーリオン》で「明滅」するパーマネントとしても適性がある。大きなサメトークンをその能力でコピーすることもあるかもね。
このカードは単体ではちょっと心もとないけど、その便利さは多岐にわたる。II章のターンに攻撃が通れば最高だ。カードを引けるのはもちろん、《異形化》に対応してトークンを除去できるカードを相手が持っているかを確かめられれば、無駄なリスクを負わずに済む。
便利な点その2は、サイドボードからカードを引っ張ってくる、いわゆる”ウィッシュ”効果だ。引っ張ってくるカードタイプに制限がないのも良い。《異形化》がすでに手札にあり、《裏切りの工作員》よりも《虚空の選別者》や《毅然たる大天使》のほうが強い盤面なら、そのクリーチャーをライブラリートップに積み込むことで《異形化》から展開できるようになる。《異形化》が手札にない場合は《銅纏いののけ者、ルーカ》を積み込めば良い。2枚目の《空を放浪するもの、ヨーリオン》や各種シルバーバレットにもアクセスできる。
防御
これは当然の採用だね。今の環境はアグロデッキが隆盛している。速攻で押し切られるわけにはいかないんだ。一応言っておくと、《岩への繋ぎ止め》を《空を放浪するもの、ヨーリオン》で「明滅」すれば、より除去したいクリーチャーを追放できる。
カードアドバンテージ
《覆いを割く者、ナーセット》はドロー呪文を使う多くのデッキに対してパワーカードになる。また、どちらも求めているカードを探しつつ、盤面に残って《空を放浪するもの、ヨーリオン》の効果を待つことができる。《海の神のお告げ》の占術効果は《創案の火》が出ているときに有効なマナの使い道になるね。特筆すべき点はこんなところだけど、シンプルに強いカードでありながら《空を放浪するもの、ヨーリオン》との良いシナジーがある2枚だ。
ピン挿しではあるけど《先駆ける者、ナヒリ》は見事なカードだ。単体で質が高く、《異形化》プランが序盤に成立しなかった場合には奥義で《裏切りの工作員》をサーチしてくる。[+2]能力はマナフラッドを防いだり、これから解説する《創案の火》が被ったら捨てたりできるね。
デッキのエンジン
《創案の火》はデッキ内でもっともカードパワーが高い。2回のアクション、場合によっては3回以上のアクションを可能にしてくれる。できることなら4ターン目に設置して、そのターン内に別の4マナの呪文を唱えたいね。呪文2枚のマナコストを踏み倒しながら、余った全てのマナを《サメ台風》の「サイクリング」にを注ぎ込むことができれば、さらに派手なターンにできる。
しかし何よりも最高な動きがある。まず1枚目の呪文を踏み倒し、2枚目の呪文を《空を放浪するもの、ヨーリオン》にして《創案の火》を追放する。こうすることで全てのマナが使える状態で、《創案の火》の「呪文を2つしか唱えられない」制約を無視して3枚目以降の呪文をキャストしていけるんだ。
マナベース
指摘すべき点は多くない。《メレティス誕生》のサーチ先として《平地》は少し多めに採用する必要がある。
「トライオーム」が8枚採用されているのは、《岩への繋ぎ止め》に必要な「山」カウントを増やしながら、マナベースを整え、マナフラッドへの保険をかけるためだ。《創案の火》が出ていればマナの使い道がないため「トライオーム」のサイクリングコストは実質的にタダになる。《岩への繋ぎ止め》の「山」を確保するという意味では、《寓話の小道》も役に立つ。サーチ先を考えるときには考慮しておこう。
サイドボード
サイドボードは《鴉の警告》用に採ってあるものがほとんどだ。それに加えて80枚デッキであることから、サイドの入れ替えによって勝率が改善するとは思わないほうが良い。通常はそのマッチアップで有効なクリーチャー1体を《裏切りの工作員》の代わりに入れるぐらいだ。
サイドには《ドビンの拒否権》が4枚があるけど、こいつの扱いが難しい。《創案の火》を一度出してしまえば、打ち消し呪文を唱えられないからだ。そう考えると、《ドビンの拒否権》を入れる場合は《創案の火》を部分的にサイドアウトすることが妥当であるようにも思える。だけど、たいていの場合それは正しくない。
たとえばミラーを考えてみよう。《創案の火》は戦場に出れば《ドビンの拒否権》が手札で腐っても構わないほど強力だ。しかし、《ドビンの拒否権》を握っていれば相手の《創案の火》や《異形化》を打ち消すことができ、ゲームを決め得る一手になる。
これはロータスコンボ戦にも同じことが言える。サイドアウトするのは《創案の火》よりも腐りがちな全体除去になるだろう。《創案の火》は《ドビンの拒否権》と同居しなければ強力だし、手札に一緒に来たとしても《ドビンの拒否権》を消費してから《創案の火》を出せば良い。要するに、《ドビンの拒否権》が欲しい相手には《轟音のクラリオン》のような腐るカードを優先的にサイドアウトしようということだね。
マッチアップ別のゲームプラン
黒単アグロ
かなり拮抗した相性だと感じている。もっとも警戒すべきクリーチャーは早いターンの《騒乱の落とし子》だろう。《轟音のクラリオン》では対処できない。
《異形化》をキャストするなら《致命的な一押し》をできればケアしたいが、そうできないこともある。そういうときはリスクを取ろう。ブラフの《致命的な一押し》にまんまとやられないようにね!
サイドチェンジなし
黒単吸血鬼
通常の黒単アグロより戦いやすい。アグロ型よりも攻撃の速度が遅いから、こちらのカードアドバンテージが機能するんだ。黒単アグロにはあまり有効ではない《覆いを割く者、ナーセット》でさえ《薄暮の勇者》の能力を止める使い道がある。
サイドチェンジなし
5色ニヴ
ほぼ互角のマッチアップだ。ゲームは長引くことが多いが、そこで《嘘の神、ヴァルキー》の加入が大きく響いてくる。仮に《裏切りの工作員》で《星界の騙し屋、ティボルト》を奪ったとしても、紋章がないから追放した呪文を唱えることができないんだ。
それ以外の点については、ひたすら自分のゲームプラン遂行に徹していく。相手の最強のパーマネントを奪ったり、ときにはマナベースを攻めたりしながら、できるだけ多くの脅威を展開していこう。
対 5色ニヴ
バーン
バーンとの相性はやや不利だと思う。サイドボードから投入される《乱動する渦》の存在が大きい(ライフは回復できないし、実質的に《創案の火》を使えなくなる)。こちらの一番の勝ち筋は《毅然たる大天使》でライフを20点まで戻すことだ。
対 バーン
《異形化》が通ったら確実に《毅然たる大天使》がめくれるようにしたい。手札に来てしまうと致命的であるとはいえ、このリスクは負っていこう。手札に来た場合はライフが0になる前に唱えられると理想的だが、その可能性は低いだろう。
ジャンドサクリファイス
やや有利だ。単体/全体除去が効果的であり、相手は《異形化》に上手く介入できない。もっとも可能性が高い負け筋は、《ボーラスの城塞》によってパーマネントが10個並ぶことだ。とはいえ、こちらが盤面に触っていければ《ボーラスの城塞》の起動型能力でライフが0になることはないし、《裏切りの工作員》で奪うこともできる。
サイドチェンジなし
オーラ
わずかに有利だ。太刀打ちできない動きをされることもあるけど、こちらには有効なカードがたくさんある。《岩への繋ぎ止め》や《至高の評決》がその代表例だ。《覆いを割く者、ナーセット》も効果的だね。飛行のチャンプブロッカーも用意できるから、いずれ《裏切りの工作員》が決め手になるだろう(プロテクションで守られる場合もあるかもしれないが)。
サイドチェンジなし
ディミーアコントロール
相性は良くないね。《裏切りの工作員》で奪いたいものが少なく、相手には打ち消し呪文がある。一番頼りになるのは《エシカの戦車》と《サメ台風》だろう。
対 ディミーアコントロール
《鴉の警告》で手札に加えるのはおおむね《目覚めた猛火、チャンドラ》になる。そこで本来は《鴉の警告》でサーチする用のカードをサイドインし、あまりにも弱い全体除去を全てサイドアウトする。
スピリット (アゾリウス/バント)
これも相性が悪い。マナを構えたままターンを渡してくるため、全体除去で全壊させることはほぼ不可能だろう。
こういった相性の悪いマッチアップでもっとも有効な戦略は、「最大のリターンがあるプレイを咎めるカードを持っていないという想定でそのプレイを選択すること」だ。常に不利な戦況にあるから全てをケアしようとするのはやめよう。《呪文捕らえ》がいなければ《至高の評決》で勝てるという状況なら、思い切ってキャストしよう。必ずしも相手の手札に《呪文捕らえ》があるわけじゃない。
サイドチェンジなし
ロータスコンボ
相性は良くない。《覆いを割く者、ナーセット》以外に妨害する手段がない。《覆いを割く者、ナーセット》を探して強気にマリガンしていき、最大限のクロックをかけていこう。その意味では《エシカの戦車》が最強のツールになる。
サイド後は戦う道具が増える。《虚空の選別者》は非常に効果的だし、打ち消し呪文も投入できる。
対 ロータスコンボ
イゼットフェニックス
相性は良いと思うよ。《覆いを割く者、ナーセット》はなかなか落されないだろうし、《弧光のフェニックス》には《岩への繋ぎ止め》がある。《弾けるドレイク》には《裏切りの工作員》《至高の評決》に加えて飛行のチャンプブロッカーを用意できる。
サイドの入れ替えはしなくて良いだろう。《ドビンの拒否権》は《宝船の巡航》だけ打ち消したいけど、サイドアウトするほど弱いカードがメインデッキにない。サイド後も構成はこのままにして、《鴉の警告》を存分に活用しよう。
サイドチェンジなし
『ストリクスヘイヴン:魔法学院』からの強化
パイオニアにはほかにも色々なデッキがあるけど、このサイドボードガイドがあれば大体カバーできるだろう!異形化ファイアーズは使っていて本当に楽しいしいから、一度使ってみることを心からおすすめするよ。《創案の火》を戦場に並べながら《裏切りの工作員》を《空を放浪するもの、ヨーリオン》で再利用したりと、とんでもない動きができるデッキでもある。
異形化ファイアーズの立ち位置は非常に良いと思う。『ストリクスヘイヴン:魔法学院』でさらに強化されるか楽しみだね。サイドボードの《摩耗/損耗》の枠に《引き裂き》が入るかもしれない。アーティファクトとエンチャントを同時に割れることはないけど、クリーチャーかプレインズウォーカーに3点ダメージを与えられるのは明確なメリットだ。
新環境もみんなの幸運を祈っているよ!『ストリクスヘイヴン:魔法学院』を楽しんでね!
セバスティアン・ポッツォ (Twitter)