はじめに
みなさんこんにちは。
先週はLegacy Super Qualifier、BIG MAGIC Open ONLINE(BMO ONLINE)、Legacy Showcase Challengeなどレガシーのイベントが充実していましたね。
今回の連載では上記イベントの入賞デッキを見ていきます。
Legacy Super Qualifier #12280361
レガシーを代表する部族コンボが予選を通過
2021年4月8日
- 1位 Elves
- 2位 Sneak and Show
- 3位 Bant Snow Miracles
- 4位 Sultai Midrange
- 5位 Mono Red Stompy
- 6位 Rakdos Reanimator
- 7位 Temur Delver
- 8位 Karn Echo
トップ8のデッキリストはこちら
先週はなんとアメリカ時間の平日、木曜日にMOでレガシーのPTQが開催されました。
参加者300名超えと長丁場だった今大会のプレイオフは、Delver系やコンボ、ミッドレンジ、コントロールなど多様性に富んでいました。
禁止改定後のレガシーはプロアクティブな戦略でコンボに強いDelver系が流行り、それらに強い《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を軸にしたコントロールやミッドレンジが台頭してきました。
今大会でも事前のLegacy Challengeなどで結果を残し続けていた、Bant Snow MiraclesやSultai Midrangeなどが上位で見られます。またメタがさらに進み、遅いミッドレンジやコントロールに強いSneak and ShowやElvesといったコンボデッキが決勝戦まで残るという結果になりました。
デッキ紹介
Elves
Elvesは部族シナジーを活用したクリーチャーベースのコンボデッキです。序盤から盤面を広げる能力に長けていることに加えて、《垣間見る自然》や《ワイアウッドの共生虫》+《エルフの幻想家》の提供する強力なドローエンジンを搭載しているため大変粘り強いデッキとなっています。今回の連載で挙げたすべてのイベントで上位入賞していたことからもデッキのポテンシャルの高さが分かります。
長年Elvesはトップメタからは遠ざかっていましたが、昨年『Jumpstart』から《アロサウルス飼い》という新戦力を獲得し、青いデッキとの相性が改善されたことで一気にトップメタの仲間入りを果たしました。
《遺産のドルイド》や《ガイアの揺籃の地》で膨大なマナを生み出し、《垣間見る自然》をプレイしてクリーチャーを並べると同時に大量のカードを引くことができます。最終的に《自然の秩序》または《緑の太陽の頂点》から《孔蹄のビヒモス》を出してゲームを終わらせます。
☆注目ポイント
《アロサウルス飼い》は、《意志の力》を始めとしたカウンターや、今までこのデッキにとって問題となっていた《虚空の杯》を無効化してくれます。《自然の秩序》などゲームを決定づけるスペルが通りやすくなるだけでも十分強力ですが、自身の起動型能力によりフィニッシャーとしても機能します。
《漁る軟泥》は、《緑の太陽の頂点》からサーチできる墓地対策としてサイドボードに採用されていることが多かったクリーチャーでしたが、最近はメインから採用されているリストが増えてきています。墓地を使うコンボデッキだけでなく、環境に多い《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を無理なく採用できる墓地対策は重要です。
サイドボードも現在のメタに合わせて調整の跡が見えます。最近ではコンボやコントロールなど多くのデッキが《夏の帳》を採用しているため、《思考囲い》の採用が見送られています。
Bant Snow MiraclesやFood Chainなどさまざまなデッキに採用されている《花の絨毯》はElvesにも採用されるようになりました。除去を多用するデッキに対して、《遺産のドルイド》や《クウィリーオン・レインジャー》を除去されても必要なマナを確保できます。
Reanimatorなどこのデッキよりも速いコンボデッキは不利なマッチとなるので、《虚空の力線》は必須となります。また、ANTやThe Spyといったマッチアップに対しては《精神壊しの罠》が有用な妨害スペルとして機能します。
Sultai Midrange
配信者であり、さまざまなデッキで結果を残している強豪プレイヤーのArk4nが今大会で使用していたのは、《暗黒の深部》コンボを搭載したSultai Midrangeでした。
各3色から優秀なスペルやクリーチャーを集めたグッドスタッフで、《森の知恵》と《自然の怒りのタイタン、ウーロ》といった定番のアドバンテージ源に加えて《壌土からの生命》も搭載されており、長期戦に強い構成となっています。
Delver系やBant Miraclesなどほかのフェアデッキに強いデッキですが、Sneak and Showなどコンボデッキは苦手なマッチとなります。
☆注目ポイント
《エルフの開墾者》は《暗黒の深部》のコンボをそろえるだけでなく、《ボジューカの沼》をサーチする手段にもなるので、ほかのミッドレンジと比べて墓地を使ったデッキに耐性があります。このデッキの《暗黒の深部》コンボには奇襲性があり、《エルフの開墾者》や《タルモゴイフ》といった軽いクロックと《暗黒の深部》コンボを同時に対処するのは困難を極めます。
Delver以外のデッキでの《もみ消し》は読まれにくく、有用な妨害手段として機能します。相手のフェッチランドをもみ消す使い方以外でも、自分の《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の生け贄に捧げる誘発型能力を消すという使い方もできます。ミッドレンジであるこのデッキでは、後者の使い方や相手の《不毛の大地》から《暗黒の深部》+《演劇の舞台》のコンボを守ることがメインとなりそうです。
特殊地形に依存したマナ基盤なので《血染めの月》対策は必須です。ピッチスペルの《活性の力》は、Mono Red Stompyが高速で出してくる《血染めの月》への対策になる重要なサイドボードカードになります。
単体除去が中心なので、横展開してくるElves用にサイドには《疫病を仕組むもの》が3枚と多めに採られています。ほかにもDeath and Taxesや除去耐性を持つ《真の名の宿敵》、エレメンタル・トークンを並べてくる《若き紅蓮術士》を搭載したIzzet Delverなどにも対応できる受けが広いカードです。
BIG MAGIC Open ONLINE
環境最速のコンボデッキが勝利
2021年4月10日
- 1位 The Spy
- 2位 Temur Delver
- 3位 Elves
- 4位 Elves
- 5位 Hogaak
- 6位 Bant Snow Miracles
- 7位 Azorius Omni-Tell
- 8位 Infect
トップ8のデッキリストはこちら
毎年恒例のBIG MAGIC Openがオンラインで開催されました。慣れないオンラインでのイベントでしたが、参加者125名と大盛況だったようです。
プレイオフはLegacy ChallengeやMOPTQと同様にDelver系、Bant Snow Miracles、Elves、Hogaak、Show and Tell系などフェアからコンボまでさまざまなアーキタイプが入賞していました。
そして最終的に優勝トロフィーを手にしたのは、なんとThe Spyでした。
デッキ紹介
The Spy
今大会を制したのは現環境でも屈指のコンボ速度を誇るThe Spyでした。決勝戦はコンボデッキにとって相性の悪いDelverでしたが、相性差を乗り越えての優勝です。
《欄干のスパイ》を使ったコンボデッキは、『ギルド門侵犯』がリリースされて以来レガシーに存在し続けましたが、安定性に難がありトップメタとはほど遠いデッキでした。しかし、『ゼンディカーの夜明け』で呪文/土地の両面カードが登場したことで結果を残し始めます。そして、昨年オンラインで開催されたEternal Weekend 2020で準優勝したことで広く知れ渡りました。
このデッキは、《暗黒の儀式》や《水蓮の花びら》といった土地でないマナソースを利用するコンボデッキで、Oops All Spellsとも呼ばれています。
デッキの動きとしては、マナ加速で1ターン目に4マナを用意して《欄干のスパイ》や《地底街の密告人》をプレイし、土地が入っていないので能力によってデッキのすべてのカードを墓地に落とすことができます。すると《ナルコメーバ》の能力が誘発するので、場に出た《ナルコメーバ》をコストに《戦慄の復活》を「フラッシュバック」して《タッサの神託者》をリアニメイトして勝利します。
☆注目ポイント
《アガディームの覚醒》や《変わり樹の共生》といった両面カードはこのデッキを大幅に強化することに貢献し、マナソースが増えたことで以前よりも安定して1ターン目にコンボを狙えるようになりました。特にコンボを発動するのに必須となる黒マナを出せる《アガディームの覚醒》は重要です。
オールインコンボというデッキの性質上、カウンターを多用する青いデッキは苦手なマッチとなりますが、このデッキは《否定の契約》や《陰謀団式療法》といったカウンターやハンデスで無理やりコンボを通す手段を持ち合わせています。妨害のバリエーションが多いデッキに対しては、《陰謀団式療法》よりも妨害手段を確実に落とせる《思考囲い》に軍配が上がります。また、追加の妨害対策としてサイドには《ザンティッドの大群》がフル搭載されています。
《召喚士の契約》は主にマナ加速として使える《Elvish Spirit Guide》をサーチするために使っていくことになりますが、コンボに必要な黒マナを出せる《野生の朗詠者》をサーチできることも覚えておきたいところです。《むかしむかし》はキーカードの《欄干のスパイ》や《地底街の密告人》、マナ源の《Elvish Spirit Guide》や《猿人の指導霊》をサーチする手段になり、デッキの安定性の向上に一役買っています。
Azorius Omni-Tell
Omni-Tellは、青単からSneak and Showとハイブリットしたバージョンなどバリエーションが豊富です。今回入賞したバージョンは、サイドに《剣を鍬に》や追加の勝ち手段である《僧院の導師》のために白をタッチしたバージョンでした。
見事にプレイオフ入賞を果たしたmei0024は、今大会直前に開催されたLegacy Challengeでも同様のデッキでトップ16に入賞しているなど安定した成績を残しています。
このデッキの主な勝ち筋は、《実物提示教育》から《全知》を出して《狡猾な願い》から《呼応した呼集》をサーチし、《引き裂かれし永劫、エムラクール》に繋げていくことです。Omni-TellはSneak and Showと比べるとゲームに勝つのにより多くのパーツやステップを必要とする一方で、《カラカス》や《封じ込める僧侶》《ファイレクシアの破棄者》など一部の対策カードに耐性があるのが特徴です。
☆注目ポイント
メインは比較的オーソドックスですが、サイド後には《剣を鍬に》と《僧院の導師》が投入され、《実物提示教育》コンボと青白ミッドレンジのハイブリットに変形します。《剣を鍬に》によって、Delver系のクロックやDeath and Taxesの《スレイベンの守護者、サリア》を始めとした各種ヘイトベアーを対策できるようになったため、相性が改善されています。
このデッキとのマッチアップでは多くの場合サイド後に除去が減らされるため、サイド後の《僧院の導師》は対策されにくく有用な追加の勝ち手段になります。《水蓮の花びら》や各種キャントリップスペルなどを多用するこのデッキに合っており、《紅蓮破》に引っかからないのもポイントです。このように異なる回答を要求する勝ち手段は、たとえ事前にサイドプランを把握していたとしても対策難易度は高めです。
Legacy Challenge #12282940
安定のDelver
2021年4月11日
- 1位 Izzet Delver
- 2位 Elves
- 3位 Dredge
- 4位 Izzet Delver
- 5位 Mono Red Stompy
- 6位 Karn Echo
- 7位 Lands
- 8位 Hogaak
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先週末に開催されたLegacy Showcase Challengeは、ほかのイベントと同様に多種多様なアーキタイプが勝ち残っていました。
そんな中で優勝を果たしたのは、Izzet Delverに緑をタッチしたバージョンでした。
デッキ紹介
Izzet Delver
Izzet Delverに《運命の神、クローティス》など数種類のサイドカードのために緑をタッチしたバージョンで、Delver系の中ではもっとも安定した勝率を出しています。
アグレッシブな形であることが多かったデッキですが、新環境に入ってからは《瞬唱の魔道士》や《真の名の宿敵》、《天上の餌あさり》などを採用したよりロングゲームに強い構成が主流になっているようです。
Izzetバージョンの強みは何といってもマナ基盤の安定感ですが、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を軸にしたコントロールデッキとのマッチアップは厳しくなります。そこで、《運命の神、クローティス》や《森の知恵》といった苦戦するマッチアップの改善に役立つ緑のカードを足すことで改善を図っているのです。《Tropical Island》を1枚加えることで、マナ基盤に大きな負担をかけずに緑をタッチすることに成功しています。
☆注目ポイント
《スプライトのドラゴン》は回避能力持ちのクロックで、Elvesなどに対してダメージが通りやすくなります。軽いスペルを多用するこのデッキではサイズアップも容易で、相手にとってはマストアンサーになります。
《砕骨の巨人》と《厚かましい借り手》という2種類の「出来事」カードが搭載されています。《厚かましい借り手》はフレキシブルな置物対策兼回避能力持ちのクロックとして、バージョンを問わず多くのDelver系で1-2枚採用されています。
《砕骨の巨人》も最近レガシーでよく見られるようになってきました。ダメージを軽減できない火力として機能するので、プロテクションで地上を固めてくるDeath and taxesを含めた多くのクリーチャー主体のデッキとのマッチアップで活躍します。
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》デッキとのマッチアップを意識していたことはメインから採用された《紅蓮破》を見ても明らかで、サイドには《カラカス》《硫黄の渦》 《運命の神、クローティス》といった複数の異なる対策カードが用意されています。特に《カラカス》はDark DepthsやSneak and Showなどいろいろなマッチアップで使えるカードになります。
総括
禁止改訂から早くも2ヶ月が経ちましたが、今回ご紹介したイベントを見る限りでは多種多様なアーキタイプが結果を残しています。
Delver系に強い《自然の怒りのタイタン、ウーロ》ミッドレンジ、コントロールの隆盛によって禁止改定直後はあまり高い勝率を出していなかったShow and Tell系のコンボの復権など、メタゲームに著しい変化が見られました。そして、先週末に開催されたShowcase Challengeではコンボに強いDelverが優勝を飾ったのも印象的でした。
以上、USA Legacy Express vol.181でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!