マジック名カード集 ~『ネメシス』編~

晴れる屋メディアチーム

はじめに

みなさま、「名カード集」へようこそ。

この「名カード集」では、時代を過去へと遡り、昔のエキスパンションの名だたるカードを紹介していきます。

今回は《補充》デッキをトーナメントレベルまでのし上げた『ネメシス』をご紹介しましょう。

『ネメシス』ってどんなセット?

『ネメシス』とは、2000年2月に発売された全143種類の小型エキスパンションであり、マスクス・ブロックで唯一新しいキーワード能力「消散」が登場したセットです。

ブラストダーム

「消散」はパーマネントに関する能力であり、戦場に出た瞬間から維持できるターンが予め決められています。これだけではアドバンテージを失うだけにみえますが、その分コストパフォーマンスは高めに設定されており、クリーチャーであればダメージ効率の優れたものとなっていました。

果敢な勇士リン・シヴィー

また、マナを支払うことでデッキより特定のクリーチャーを直接戦場に出せる「レベル」と「傭兵」は『ネメシス』にも登場しています。特に「レベル」に関しては親玉である《果敢な勇士リン・シヴィー》が登場したことでリクルート効率が格段に向上し、その地位を不動のものとしたのです。

『ネメシス』の名カードたち

《はじける子嚢》

はじける子嚢

《はじける子嚢》

消散7(このエンチャントは、その上に消散カウンターが7個置かれた状態で戦場に出る。あなたのアップキープの開始時に、それから消散カウンターを1個取り除く。できない場合、それを生け贄に捧げる。)

《はじける子嚢》から消散カウンターを1個取り除く:緑の苗木クリーチャー・トークンを1体生成する。それらのトークンは「このクリーチャーのパワーとタフネスはそれぞれ、《はじける子嚢》の上に置かれている消散カウンターの数に等しい。」を持つ。

《はじける子嚢》が戦場を離れたとき、《はじける子嚢》によって生成されたすべてのトークンを破壊する。それらは再生できない。

《はじける子嚢》はクリーチャー・トークンを生成できるエンチャント。そのサイズと寿命はこの上に置かれた「消散」カウンターに等しいため、どのタイミングで何体生成するかプレイヤーの技量が問われます。

相手の攻撃を止める壁にもなりますが、最大の魅力は単体で20点を削りきれるフィニッシャーでもある点でしょう。相手の妨害がない前提になりますが、クリーチャー・トークンを2体生成することで4/4のタイミングで攻撃に向かえ、8点、6点、4点、2点とピッタリ20点与えることが可能なのです。実際のゲームでは都合よくいきませんが、攻守に優れたカードであることに間違いはありません。

ヤヴィマヤの火ブラストダーム

スタンダードでは、かの有名な赤緑の重クリーチャーデッキ、ファイアーズの主力アタッカーとして名をはせました。寿命の決まった《はじける子嚢》にとって速攻が付与されることは、「消散」カウンターが余分に1個乗っているに等しく、《ヤヴィマヤの火》は最高の相棒となったのです。《ブラストダーム》も交えて、速攻を持つ5/5や4/4サイズのクリーチャーが一度に複数体襲いかかってくるのでは、対処しようがありませんでした。

《パララクスの潮流》

パララクスの潮流

《パララクスの潮流》

消散5(このエンチャントは、その上に消散カウンターが5個置かれた状態で戦場に出る。あなたのアップキープの開始時に、それから消散カウンターを1個取り除く。できない場合、それを生け贄に捧げる。)

《パララクスの潮流》から消散カウンターを1個取り除く:土地1つを対象とし、それを追放する。

《パララクスの潮流》が戦場を離れたとき、各プレイヤーは、《パララクスの潮流》によって追放された、自分がオーナーであるカードを戦場に戻す。

「消散」繋がりでもう1枚ご紹介するのは《パララクスの潮流》。先の《はじける子嚢》《ブラストダーム》といった攻撃に優れたカードと違いますが、相手のマナを拘束することで展開を遅らせる厄介なカードでした。相手の動きを縛ることで時間を稼いだり、特定の色マナを追放することで干渉スペルを遮断することができたのです。相手の動きを縛り、隙を作れるこのカードはコンボデッキに適しており、《補充》デッキを大躍進させるきっかけとなりました。

補充調律オパール色の輝き

ウルザ-マスクス期のスタンダードでは、『ネメシス』の加入により新たなデッキが生まれました。《補充》をキーカードにしたパララクス補充です。《調律》《大あわての捜索》《オパール色の輝き》を含めたエンチャントを墓地に落とし、一気に引き上げて殴り倒すコンボデッキです。『ネメシス』以前から《補充》の存在は認知されていたものの、コンボを決めるまでの下準備に時間がかかり、さらにその特性上エンチャントをある程度用意するためコントロール要素が薄く、勝ちにくいデッキとなっていました。

パララクスの波

しかし、《パララクスの波》《パララクスの潮流》がその評価を一変させます。一時的ですが、前者は相手のクリーチャーを追放することでダメージクロックを、後者はマナを締め上げることで相手の動きを止め、コンボ完成までの時間稼ぎとなりました。通常ならデメリットとなる「消散」は墓地にエンチャントを集める戦略上問題なく、むしろこれら2種類のカードによりこれまで足りなかったコントロール力を得ることになったのです。大幅に強化されたことでこれ以降《補充》デッキはメタゲームの中心となり、ウルザ・ブロックが抜けるまで環境の第一線で戦い続けました。

《虐殺》

虐殺

《虐殺》

対戦相手1人が平地をコントロールしており、かつあなたが沼をコントロールしている場合、あなたは、《虐殺》をそのマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。

すべてのクリーチャーは、ターン終了時まで-2/-2の修整を受ける。

マスクス・ブロックの魅力の一つピッチスペル。『ネメシス』では特定の条件下でマナコストを支払うことなく唱えられる、ピッチスペル版色対策カードが登場しました。その中から《虐殺》をご紹介します。

《虐殺》はこれまであった《夜の戦慄》と違い効果適用範囲が色を選ばないため、メインボードにおいても無駄になりにくいのが特徴です。マナコストはやや重いものの決して唱えられないものではなく、相手の戦場をリセットするには十分な効果をもっていました。その上で、白を基調としたクリーチャーデッキ相手には戦場を一掃し、自分が先に戦線を構築できるテンポ面で大幅に有利となるカードだったのです。

レイモス教の兵長果敢な隼果敢な勇士リン・シヴィー

『ネメシス』の同級生《果敢な勇士リン・シヴィー》の登場と同時に栄華を極めたレベルデッキ、リベリオン。その戦略は「レベル」を直接戦場に出せるリクルーターが時間をかけて横に戦線を広げ、強化スペルにより押し切るものでした。たった1体の「レベル」を逃しただけで手札を使わずに延々とクリーチャーを呼び出されてしまいますが、リクルーターすべてを除去するのも非常に難しいものでした。

《虐殺》呼び出されたレベルを一掃し、戦況を五分へと引き戻してくれました。戦場を一掃した後は残った《果敢な勇士リン・シヴィー》を単体除去で潰せば良かったのです。

《炎の印章》

炎の印章

《炎の印章》

《炎の印章》を生け贄に捧げる:クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。《炎の印章》はそれに2点のダメージを与える。

置き型《ショック》こと、《炎の印章》は余剰マナを使いきれる便利なカード。先置きすることで相手の動きを牽制でき、アグロからコントロールまでさまざまなデッキで使用されました。

タルモゴイフ

スタンダードでこそ使用されましたが、優秀な火力が集まるモダン以下のフォーマットでは日陰を歩くことが増えていたのは事実でしょう。時折、《タルモゴイフ》とのシナジーに着目されたこともありましたが、《稲妻》を越えて定位置を確保するには至りませんでした。

夢の巣のルールス

しかし、昨年《夢の巣のルールス》が登場したことで、2マナ以下のパーマネントは大きく評価が上がりました。《炎の印章》は再利用できる除去カードとして、モダンに定位置を見つけたのです。モダンはトロンなど動きが派手なデッキばかりではなく、果敢デッキやマナ・クリーチャーも存在しているため、序盤~終盤は再利用できる《炎の印章》は最適なカードとなっています。

《蓄積した知識》

蓄積した知識

《蓄積した知識》

カードを1枚引き、その後すべての墓地にある名前が《蓄積した知識》であるカードの数に等しい枚数のカードを引く。

すべての墓地にある同名カード分ドローできる軽量呪文であり、《大慌ての棚卸し》の元となったカード。マナコストが2マナと軽く使いやすいものの序盤は「サイクリング」に過ぎず、真価を発揮するには2枚目、3枚目と複数枚引く必要がありました。そのためほかのコントロールデッキなど長期戦を前提としたデッキで採用され、探し出せるようにほかのドロー呪文と併用されることがほとんどでした。

ですが、なかには一度に複数枚引けるようにする使い方もあったのです。

寄付Illusions of Grandeur

有名なのはエクステンデッドにおける《寄付》《Illusions of Grandeur》のコンボデッキ、トリックスでしょう。禁止改定により《ネクロポーテンス》を失い、次のドロー呪文を探していたこのデッキは《蓄積した知識》に目を付けました。

直観商人の巻物

《直観》《蓄積した知識》織りなすシナジーは強力かつ画期的なものであり、同名カード3枚を持って来ることで必然的に墓地へ送り込むことに成功しました。これによりデッキを圧縮しながら、わずか2マナで3ドローと破格の効果となったのです。残る4枚目も《商人の巻物》でサーチできるため、コンボを支える強力ながら安定したドローエンジンとなりました。

まだある名カード

さて、『ネメシス』名カード集、お楽しみいただけたでしょうか。しかし、「あの有名カードなくない?」「もっといいカードあるよ!」と思われた方もいらっしゃるはず。

もっと『ネメシス』のカードについて知りたい方は、ぜひ、動画もご覧ください!

次回の「名カード集」では、『プロフェシー』をお届けいたします。

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