輪廻転生するヒストリック

Pascal Vieren

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2021/04/22)

歴史の転換点

『ストリクスヘイヴン:魔法学院』がもたらしたミスティカルアーカイブの追加により、ヒストリックは全く新たなフォーマットになると思います。このミスティカルアーカイブというのは斬新な試みで、既存のインスタント・ソーサリーを特別な枠で収録したものです。その一部は昨今のセットに収録されていたカードですが、歴史ある強力なカードも含まれています。

こういったカードはスタンダードでは使用できませんが、ヒストリックに甚大な影響を及ぼすのは疑いの余地がありません。この記事ではミスティカルアーカイブを全てチェックし、それらがヒストリックに与える変化を考えていきます。記事の最後では、ミスティカルアーカイブを使った新しいデッキを提案する予定です。

まずはミスティカルアーカイブ全63種を見ていきましょう!

ミスティカルアーカイブ全カードレビュー

そりゃ使えませんよね

昔の一部のカードはカードパワーが高すぎるため、ヒストリックでは最初から使えないようになっています。紙のパックから出ればとても嬉しいですが、MTGアリーナだとほとんど価値がないのが残念ですね。

剣を鍬に対抗呪文暗黒の儀式Demonic Tutor
稲妻チャネル自然の秩序

従来からヒストリックにあったもの

もともとヒストリックで使えたカードの再録です。環境への影響はないですね。

果敢な一撃神聖なる計略活力回復副陽の接近
神々の思し召し否認選択巧みな軍略
旋風のごとき否定苦悶の悔恨強迫取り除き
村の儀式初子さらい立腹ショック
胸躍る可能性冒険の衝動耕作蛇皮のヴェール
灯の燼滅成長のらせん

新しいおもちゃ

いよいよヒストリックで楽しめるようになった新カードの出番です。

《審判の日》

審判の日

《神の怒り》はすでにヒストリックで使えましたから、この効果を持つカードを5枚以上採用できる、あるいは《翻弄する魔道士》を意識して散らして採用できるようになりました。ちょっとしたトリビアですが、ヒストリックには「再生」を持つクリーチャーが一切いないので、この2種は全く同じ効果です。

《儚い存在》

儚い存在

現時点で《儚い存在》の適したデッキはわかりませんが、強力な「戦場に出たとき能力」を持つカードは多く存在します。コストパフォーマンスの良いカードですから、誰かが《儚い存在》の上手い使い方を見つけるかもしれませんね。

《土地の寄進》

土地の寄進

パスします。後手であっても《平地》3枚を手札に加えることは、そこまで有用ではありません。

《マナの税収》

マナの税収

仮にピン挿ししたいカードがあるとすればこれでしょう。現在は《出現の根本原理》のようなビッグスペルがある環境ですから《マナの税収》はプレイアブルだと思います。

《テフェリーの防御》

テフェリーの防御

統率者戦の定番カードですが、今のところヒストリックでの使い方が思いつきません。

《青の太陽の頂点》

青の太陽の頂点

大量ドローすることもできますし、マナが潤沢にあれば相手をライブラリーアウトに追い込むこともできます。ただ、ヒストリックで頻繁に使われるものではないだろうなという予想です。

《渦まく知識》

渦まく知識

ヒストリックで一番使いたくてたまらないのはこのカードではないでしょうか。強力であることに疑いはありませんが、レガシープレイヤーが体感しているほどのものではないと思います。シャッフル手段は《寓話の小道》しかないですから、《渦まく知識》は大幅に弱体化するでしょう。

《強迫的な研究》

強迫的な研究

多く見かけるカードにはならないでしょう。やりたいことに対して少し遅すぎますね。

《記憶の欠落》

記憶の欠落

《ドミナリアの英雄、テフェリー》に親友が1人増えました。現在は2マナであらゆる呪文を打ち消せる時代ではありません。ヒストリック参入組のなかで《記憶の欠落》はもっとも過小評価されているカードだと思います。

《精神の願望》

精神の願望

ヒストリックにはマナ加速する「儀式」呪文がなく、「ストーム」の使い方がわからずにいます。試す人は出てくるでしょうが、ぎこちないデッキになるはずです。

《テゼレットの計略》

テゼレットの計略

「ファイレクシアマナ」カードは非常に強いものですが、《テゼレットの計略》は例外です。

《時間のねじれ》

時間のねじれ

悲しいことに、《時間のねじれ》はヒストリックで十分に通用するカードでしょう。禁止される前は私も《運命のきずな》を使い続けてきました。プレインズウォーカー・《Time Walk》《濃霧》の組み合わせは本物の強さを持っていますが、使われる側からするとあまり面白くないですね。

《命運の核心》

命運の核心

全体除去に関心があるデッキは《衰滅》《影の評決》を優先させそうです。

《破滅の刃》

破滅の刃

黒の2マナ除去は環境に多く存在します。除去したいものによっては《破滅の刃》は選択肢になるでしょう。

《コジレックの審問》

コジレックの審問

《思考囲い》《コジレックの審問》が揃ったことで、黒のデッキは2つの派閥に分かれていくでしょう。どちらも高い使用率になると思いますよ。

《血の署名》

血の署名

黒単のアグロデッキが採用するかもしれませんが、2マナ消費して2ドローしたいとは思わないでしょうね。

《汚れた契約》

汚れた契約

癖のあるチューターですが、コンボ特化のデッキならば見た目以上に強いのではないかと思います。そのデッキが何なのかはわかりませんが、《汚れた契約》をヒストリックで見かけても何ら驚きではありません。

《苦悶の触手》

苦悶の触手

《苦悶の触手》《ボーラスの城塞》と相性が良いですが、「ストーム」呪文の使い方はそうではないはずです。《精神の願望》と同じく、本物の「儀式」を待つことになるでしょう。

《混沌のねじれ》

混沌のねじれ

若干のリスクを伴う除去ですが、どんなパーマネントでも除去できるというのは通常赤のデッキができないことです。《静寂をもたらすもの》《墓掘りの檻》、その他の厄介なサイドカードを対処するためにゴブリンが採用するかもしれません。

《信仰無き物あさり》

信仰無き物あさり

これで《弧光のフェニックス》を復活させられますね!ただ、フェアな戦法がヒストリックで今後も通用するかわかりません。《信仰無き物あさり》と手札破壊を搭載したラクドスアルカニストがスタート地点としては良いかもしれませんね。

《ぶどう弾》

ぶどう弾

ほかの「ストーム」呪文と同様、《ぶどう弾》のポテンシャルはまだ存分に発揮できません。《にやにや笑いのイグナス》《語りの神、ビルギ》にはそそられますが、プレイアブルではないでしょう。

《高まる復讐心》

高まる復讐心

似た効果を持つカードが使われてない現状ですから、《高まる復讐心》を見かけることはないと思われます。

《ミジックスの熟達》

ミジックスの熟達

これも過小評価されている1枚です。ヒストリックにはビッグスペルがたくさんありますからね。《信仰無き物あさり》《ミジックスの熟達》でコピーする呪文を手軽に墓地に送ってくれるでしょう。《墓掘りの檻》があっても《ミジックスの熟達》は機能するので気をつけてくださいね。

《石の雨》

石の雨

使うべきカードだとは思いませんが、土地破壊を好むプレイヤーは一定数います。彼らは喜んで《石の雨》を唱えるでしょうね。

《ウルザの激怒》

ウルザの激怒

『モダンホライゾン』では再録されて驚きましたが、昨今の構築レベルには追いつけていません。

《豊穣な収穫》

豊穣な収穫

実はこれは新カードであり、『モダンホライゾン2』に収録される予定になっています。序盤のキャントリップ呪文に期待することを達成してくれるもので、土地もそれ以外も手札に加えられます。ただ、ヒストリックで活躍する未来は見えませんね。

《調和》

調和

4マナと重く、アンフェアさにも欠けます。

《クローサの掌握》

クローサの掌握

「刹那」に追加1マナの価値はありません。次へ行きましょう。

《原初の命令》

原初の命令

器用さはあるものの、少しカードパワーが物足りません。

《新たな芽吹き》

新たな芽吹き

下環境で禁止された実績のあるカードですが、ヒストリックではあまり見かけないでしょう。

《嵐の乗り切り》

嵐の乗り切り

純正のバーンデッキがヒストリックで浮上するようなことがあれば、《嵐の乗り切り》は優秀なサイドカードになるでしょう。あるいは《ボーラスの城塞》《苦悶の触手》《嵐の乗り切り》を使った狂気的なコンボデッキが組めるかもしれませんね。

《電解》

電解

偉大な者の凋落。《電解》は大好きなカードですが、もう通用する時代ではないですね。

《稲妻のらせん》

稲妻のらせん

バーンデッキは強力なツールを手に入れました。今バーンを組むならボロスが最適かもしれません。ライフ回復がより価値を持つ、コントロール寄りのジェスカイにも適したカードですね。

《化膿》

化膿

《暗殺者の戦利品》《大渦の脈動》など、ほかに優れた選択肢があります。

  

新環境のデッキ提案

ラクドスアルカニスト

ラクドスアルカニスト

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墓地をリソースとして活用しながら、相手のゲームプランを妨害するデッキです。ラクドスアルカニストは前環境から強力だったデッキであり、《信仰無き物あさり》《コジレックの審問》はそれを一層押し上げる存在となるでしょう。

シミックワープ

シミックワープ

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《時間のねじれ》とプレインズウォーカーを組み合わせることで、相手にターンを渡さないことを狙うデッキ。《時間のねじれ》なくしては成立しえなかったでしょう。それぞれの枚数調整は必要でしょうが、かなり強そうなデッキだと思いますよ。

ボロスバーン

ボロスバーン

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実を言うと、ボロスバーンにとって《稲妻のらせん》よりも《賢い光術師》のほうが大きな収穫です。ウィザードをテーマにしたバーンはもともと強いデッキでしたが、新環境では一大勢力になるでしょう。

《ミジックスの熟達》スペシャル

《ミジックスの熟達》スペシャル

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Twitterで見かけたデッキで、デザインしたのはAndrew Baeckstrom。こういうアンフェアなことができる狂気的なリストはヒストリックで頻繁に見かけるようになると思います。《ミジックスの熟達》《信仰無き物あさり》によって成立したデッキであり、《渦まく知識》はキャントリップとして頼りになるだけでなく、不要なコンボパーツをライブラリーに戻す機能も持ちます。

イゼットフェニックス

イゼットフェニックス

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最後はここまでのデッキよりフェアなもので締めくくるとしましょう。あらゆるデッキに勝てるように《弧光のフェニックス》デッキを組むことも可能ですが、開かれたメタゲームにおいて万能に対応するのはかなり大変です。ヒストリックでは墓地シナジーが強くなりそうですから、《墓掘りの檻》《安らかなる眠り》を頻繁に見かけるようになるでしょう。

輪廻転生するヒストリック

提案したデッキリストは調整したわけではないですが、デッキパワーは高いように思えます。もちろんメタゲームの発展に合わせて多くの変更が必要になるでしょうけどね。

何かご意見があったり、披露したい新デッキがありましたら、ぜひ私のTwitterでお知らせください。早く今回のリストをひとつ残らず試したいですね!

パスカル・フィーレン (Twitter)

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Pascal Vieren パスカルはベルギー出身のゴールド・レベル・プロで、2018-2019シーズン開幕前にジェイコブ・ナグロ、そして同郷のブランコ・ネランクとともにHareruya HopesからHareruya Prosへと昇格した。 グランプリ・ハノーファー2009でのトップ8、歴代最強と謳われたベルギーチームで成し遂げたワールド・マジック・カップ2016での準優勝など華やかな経歴を持つプレイヤーだが、なんといっても彼の活躍を印象付けた大会はプロツアー『イクサランの相克』であろう。 兄のピーター・フィーレンが組み上げたマスターピース・青赤パイロマンサーを手に快進撃を続けたパスカルは、12勝0敗4分と無敗で予選ラウンドを通過。優勝を勝ち取るまでにはいたらなかったものの、見事に3位入賞を果たしシーズン半ばにしてゴールド・レベルを確定させたのだ。 Pascal Vierenの記事はこちら