はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
『ストリクスヘイヴン:魔法学院』がリリースされ、新学期が始まりました。発売当初は環境のインフレを防ぐ大人しめなエキスパンションに感じられましたが、オンライン大会の結果を見るにスタンダードは着実に変化しています。個人的にオススメした《マグマ・オパス》の活躍も気になるところですね。
ということで、今回は『ストリクスヘイヴン:魔法学院』加入後のデッキをご紹介します。
注目の新カード
まずは『ストリクスヘイヴン:魔法学院』の中でも特に目立っている2枚のカードからみていきましょう。《ガラゼス・プリズマリ》と《精鋭呪文縛り》になります。
《ガラゼス・プリズマリ》はスタンダード版に調整された《最高工匠卿、ウルザ》であり、すべてのアーティファクトにマナ生成能力を付加してくれます。ただし、このマナはインスタントかソーサリーにしか使えません。そのためカードパワーの高いソーサリーや軽く小回りの効くインスタントを増やすなどデッキ構築に工夫が必要となります。
パッと思いつくのは《アールンドの天啓》であり、3ターン以内に「予顕」しておけばたとえ《ガラゼス・プリズマリ》が除去されたとしても、5ターン目にキャストできます。
PVことパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosaがモデルとなった《精鋭呪文縛り》は妨害とクロックが一体になったヘイトベアーの一種です。相手の手札を確認でき、さらに選択したカードのマナコストを引き上げてくれるので、着地した瞬間からゲームに影響を及ぼします。追放できるカードに一切の制限がないため、どのマッチアップでもどんな状況下でも無駄になりません。
さらに注意しなければならないのは《精鋭呪文縛り》自身が戦場を離れようとも一度追放した呪文のマナコストは元に戻らないことです。ひとたび手札から追放されたが最後、大きな足枷となってしまいます。
ほかにも《命令》サイクルや「履修」&「講義」など注目すべきカードはありますが、ここら辺でデッキを見ていきましょう。
《ガラゼス・プリズマリ》
イゼットドラゴン
《ガラゼス・プリズマリ》を中核に据えたインスタントとソーサリー重視のミッドレンジデッキ、イゼットドラゴン。《ガラゼス・プリズマリ》に加えて《黄金架のドラゴン》まで採用したことで、イゼットカラーながらランプデッキを思わせる変則的な動きが可能になっています。
デッキは「出来事」カードを中心に除去でコントロールしながら能動的に動いていきます。特に初手に《アールンドの天啓》とドラゴンが揃っている場合は、早めに「予顕」しておくことが上手く回すコツになります。3ターン目「予顕」、4ターン目《ガラゼス・プリズマリ》、そしてドラゴンが生きた状態で5ターン目を迎えられれば宝物・トークンを消費せずに《アールンドの天啓》をキャストでき、優位に立てます。
少量の打ち消し呪文もありますが、あくまでもキーカードや相手ターン中にタップアウトでドラゴンを除去してきたときのみに絞り、序盤は構えずに効率よくマナを使いきっていきましょう。
《マグマ・オパス》はプリズマリの根本原理といえる重く強力なカード。難解なテキストですが、4点のダメージを割り振り、さらに別のパーマネントを2つタップしてくれます(同じでも可能)。タフネスの低いクリーチャーを一掃できるだけではなく、インスタントなので相手ターンのアップキープにキャストすればマナも縛れます。クリーチャーとドローも付いている至れり尽くせりな1枚であり、是が非でも使いたいところです。
火力で相手の展開をスローダウンさせるのはもちろんのこと、状況によっては《ガラゼス・プリズマリ》や《黄金架のドラゴン》を使い捨てのマナ加速と割り切ることも大切です。本体が除去されたとしても宝物・トークンが生成されますし、《マグマ・オパス》さえキャストできれば十分リターンが取れます。
また、この手のカードの弱点として序盤で手札にダブついてしまい、無駄牌を複数抱えたまま相手に押し切られてしまうことがあります。それをさけるために採用枚数を減らす手もありますが、《マグマ・オパス》は宝物・トークンに変換できる能力が付加されています。どんな状況でも無駄になりにくく、インスタントタイミングで宝物・トークンを生成できるため、相手の裏をかいて一歩先のアクションが可能になります。
《表現の反復》は《舞台照らし》の調整版といえるカードで、条件付きながらわずか2マナでカード2枚分になるアドバンテージ獲得手段。問題はキャストするタイミングであり、追放したカードが使えなければただのキャントリップに成り下がってしまいます。
土地が潤沢にある中盤以降ならまだしも序盤は追放したカードを使うマナの確保も難しいため、唱えるなら3ターン目以降にすべきです。《表現の反復》で土地を追放すれば戦場に出せるので、呪文と土地を1枚ずつ確保するイメージで使っていきます。仮に土地がない場合には「出来事」カードないか確認してください。《些細な盗み》や《踏みつけ》 はクリーチャー側よりマナコストが軽く、少ないマナでも使えて無駄になりません。
イゼットドラゴンは大学の特色を色濃く反映したデッキであり、新カードも盛りだくさん。『ストリクスヘイヴン:魔法学院』を使い倒したい方にオススメです。
《精鋭呪文縛り》
白単履修アグロ
前環境ではグルールキラーとして君臨した白単アグロ。マナカーブに沿ってクリーチャーを展開しながら除去でサポートしていくアグロ戦略であり、《命の恵みのアルセイド》や《無私の救助犬》がいることで相手の除去呪文を無効化し、安定してダメージを刻むことができます。本来、白系アグロは消耗戦を苦手としていましたが、このデッキは《軍団の天使》や《夢の巣のルールス》がいるため戦力が底をつくことはなく、幅広いレンジで戦うことができるのです。
これまでボードで強いクリーチャーと除去呪文は揃っていたため、白単アグロが求めていたのは戦場以外の領域への干渉力でした。《精鋭呪文縛り》はまさに求めていたクリーチャーであり、白でありながら相手の手札を確認でき、さらに選択したカードの使用を遅らせます。繰り返しになりますが、自身が戦場を離れてもマナコストは元に戻らないことは忘れないように注意しましょう。
メタカードの先輩《傑士の神、レーデイン》との違いは、軽い単体除去やボードで強いクリーチャーにも影響がある点です。仮に《霜噛み》を追放した場合に、追放領域からプレイして除去されたとしても、相手は著しくテンポを損なってしまいます。展開力に長けた白単アグロを相手にすると、この遅れは致命的。テンポを制する《精鋭呪文縛り》は白単はもとより、白が入ったアグロデッキ全般で良くみるクリーチャーになりそうです。
《歴戦の神聖刃》に変わって2マナ域に採用されたのは《象徴学の教授》。パワー2と打撃面では一歩劣るこのクリーチャーにスポットライトが当たったのは、「履修」を評価してのことでしょう。これ1枚で2~3ターン目のクリーチャー展開が確定し、カードアドバンテージも得られ、さらにマナフラッド受けにもなるのです。
サイドボードには4種類の「講義」が採用され、状況に合わせてチョイスできます。《墨獣召喚学》はマナカーブに沿った展開を実現し、《環境科学》は土地不足に、《記憶留出法》はパーマネント対策となっています。また、マナフラッド受けに《マスコット展示会》が採用されています。
メインボードで《マスコット展示会》のような重いカードを採用した場合、引くタイミングによっては死に札になってしまいます。しかし、このデッキでは「履修」があるおかげで必要なときだけサイドボードから引っ張ってくればいいのです。《象徴学の教授》はいつ引いても無駄にならない汎用性の高いクリーチャーといえますね。
ボロスウィノータ
『カルドハイム』期は環境に存在こそすれど、華々しい活躍はできなかった《軍団のまとめ役、ウィノータ》。このデッキが活躍するには軽い非人間クリーチャーと、《裏切りの工作員》のような当たり牌となる人間クリーチャーが必要不可欠です。
新しい《軍団のまとめ役、ウィノータ》デッキが目を付けたのは、速度でした。
《軍団のまとめ役、ウィノータ》の当たり牌となった《刃の歴史家》はクァドラプルシンボルの人間クリーチャー。種族に関係なく攻撃クリーチャーに二段攻撃を付与するシンプルなデザインですが、その攻撃力は突出しており、パワー2のクリーチャー2体がいる状況で《刃の歴史家》が着地しただけでも12点のダメージが入ります。毎ターンきっちりクリーチャーを並べて《軍団のまとめ役、ウィノータ》の誘発型能力で着地すれば、フューリーコンボや《エンバレスの宝剣》にも引けを取らない一撃必殺となること間違いなしです。
また、《刃の歴史家》はクリーチャーが並んでいれば、手札から直接プレイしても十分な脅威になります。以前は《軍団のまとめ役、ウィノータ》の誘発型能力有りきなデッキでしたが、戦略上合致したプレイ可能な当たり牌を得たことで、安定性とデッキパワーの底上げに繋がっています。
先ほどの白単アグロと同じく《象徴学の教授》が採用されています。序盤に非人間クリーチャーを並べる必要があるこのデッキにとって、《象徴学の教授》は1枚で《軍団のまとめ役、ウィノータ》のための盤面を作り上げてくれるカード。マリガンにも強く、多少手間はかかりますが土地も確保できるマスターピースといえるクリーチャーなのです。
デッキの構造上クリーチャー呪文が大半を占めるアーキタイプですが、《象徴学の教授》を採用したことで、あらゆるパーマネントを対処できるようになりました。《ご破算》はカード単体では劣化版《削剥》ですが、《エンバレスの宝剣》や《グレートヘンジ》がある環境では候補にあがる1枚。「履修」のおかげで状況に応じてサイドボードから引っ張れるため、用意しておいて損はない「講義」となりそうです。
その他のカード
ジェスカイサイクリング
前環境終盤ではベストデッキの1つとなったジェスカイサイクリング。ベースは変わりなく「サイクリング」とシナジーを持つクリーチャーを展開し、「サイクリング」し続けることで、ボードでの優位を確立していきます。そのまま押し切れれば問題ありませんが、ゲームが膠着したら《天頂の閃光》に切りかえ、一撃必殺を狙います。
簡単に聞こえますが、序盤で優位に立つために円滑にマナを伸ばす必要がありながら、土地など非「サイクリング」カードを増やしすぎると中盤以降止まってしまう構造上のジレンマがありました。
シナジーを追求し続けたデッキであるため干渉手段に乏しいという弱点も抱えていましたが、《プリズマリの命令》はそのすべてを解決してくれる求めていた1枚でした。
《プリズマリの命令》は《エッジウォールの亭主》《クラリオンのスピリット》といった厄介なシステムクリーチャーに対する除去であり、手札にたまった土地を新鮮なカードへ入れ替えてくれる潤滑油です。手札こそ増えませんが、これ1枚で相手のターンであっても《型破りな協力》や《アイレンクラッグの紅蓮術師》の能力を誘発させることができます。
加えて、メインボードから苦手としていたアーティファクト対策ができるようになったのです。《雄々しい救出者》と《型破りな協力》によりブロッカーは用意できるものの、パワーの高いクリーチャーによる《エンバレスの宝剣》の一点突破を苦手としてきました。《プリズマリの命令》はデッキ構造を歪めずに採用できる汎用性の高い干渉呪文であり、《エンバレスの宝剣》をはじめとした環境に蔓延る強力なアーティファクトに睨みを利かせることになります。
スゥルタイ根本原理
マナを伸ばしながら適宜クリーチャーを除去し、《出現の根本原理》からの逆転を狙うデッキ、スゥルタイ根本原理。メタゲームがはっきりしない環境初期ではデッキ構築の最適化が難しいため、《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》や《長老ガーガロス》といった攻防に優れたクリーチャーが多めに採用されています。
今回は新たなマナ加速を採用したリストをご紹介します。
《クアンドリクスの栽培者》はサイズアップした《真面目な身代わり》とでもいうべきクリーチャー。フェッチできるのは《島》と《森》に限られ死んだときにドローもできませんが、クリーチャーであることとそのサイズが重要になります。タフネス4のため環境でよく見る火力《霜噛み》と《砕骨の巨人》では落ちず、壁役に適しています。仮に除去できたとしても複数枚の火力、あるいはクリーチャーを交えての相打ちとなり、相手の展開は一度止まります。《クアンドリクスの栽培者》はマナ加速にありがちな隙をなくし、ライフを守ってくれる守護神なのです。
また、これまで不在だった《狼柳の安息所》から3ターン目にキャストするにはピッタリなカードです。《古き神々への拘束》と違い除去されない限り戦場の残るため、《空を放浪するもの、ヨーリオン》の「明滅」先にもなりますね。
サイドボードに追加された打ち消し呪文、《才能の試験》。《鎮圧》のリメイク版であるこのカードはマナコストが軽く、コンボなどのキーカードを撃ちぬくに最適な呪文です。ミラーマッチでは《出現の根本原理》を打ち消すだけで勝負が決まること間違いなし。
現在のスタンダードには《天頂の閃光》や《アールンドの天啓》など強力なインスタントやソーサリーが多くあり、あらゆる青のデッキに採用されそうです。スゥルタイ根本原理の活躍いかんで、採用枚数も増加していきそうですね。
おわりに
今回は『ストリクスヘイヴン:魔法学院』のカードを採用したデッキを中心に紹介してきましたが、ほかにも多くのアーキタイプが存在しています。ローグや各種アドベンチャー、赤単アグロなどは続投になっています。
今週末には$5K Strixhaven Championship Qualifierが控えていますね。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。