はじめに
みなさま、「名カード集」へようこそ。
この「名カード集」では、時代を過去へと遡り、昔のエキスパンションの名だたるカードを紹介していきます。
今回は構築が難しいといわれた対抗色デッキの概念を崩した『アポカリプス』をご紹介しましょう。
『アポカリプス』ってどんなセット?
『アポカリプス』とは、2001年6月に発売されたインベイジョン・ブロック最後のエキスパンション。『インベイジョン』、『プレーンシフト』と同様に多色化を推進していますが、このエキスパンションでは友好色ではなく対抗色に焦点が当てられています。これ以前には対抗色デッキは構築しにくいという認識がありましたが、その認識を覆すほど性能の高いカードが多数登場したことで、スタンダードは大きく変化しました。その変化はスタンダードにとどまらず、ブロック構築やエクステンデッドまで波及、そして今なお活躍するカードもあるほどなのです。
143種類の小型エキスパンションでありながら、環境を大きく揺るがせた『アポカリプス』にはどんな名カードたちがあるのでしょうか。
『アポカリプス』の名カードたち
《死のわしづかみ》
クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。《死のわしづかみ》は、それにX点のダメージを与える。あなたはX点のライフを得る。
《死のわしづかみ》は黒いX火力。このカードを見て《生命吸収》を思い浮かべた方も多いはず。《生命吸収》の多色版であり、色マナを問わずXの値を払えるようになり使い勝手が向上しています。デッキが多色化しても遜色なく使えるようになったことで、スタンダードでも使用されました。
黎明期にプレイヤーの脳裏に《ネクロポーテンス》の強さをしかと記憶に擦り込んだネクロディスク。《ネクロポーテンス》のドローで毎ターン途切れなく呪文を使い、相手のリソースを奪い、《生命吸収》でとどめを刺した悪名高きデッキです。
『アポカリプス』の登場により、ネクロディスクはスタンダードでアリーナドレインとして復活を遂げることになりました。新しいドローエンジンである《ファイレクシアの闘技場》、相手の手札を攻める《ジェラードの評決》、万能パーマネント対策である《名誉回復》とまさにエキスパンション全体でこのデッキを構築するようにサポートされているかのように。
そして、忘れてはならないエンドカードに据えられたのがこの《死のわしづかみ》です。時にはクリーチャーを除去しつつ減ったライフを補い、コントロールするまでの時間を稼ぐこともできました。《ファイレクシアの闘技場》によってほぼ毎ターン土地がおけるため、最後は対戦相手を焼き切る火力となったのです。
《稲妻の天使》
飛行、警戒、速攻
《稲妻の天使》は初の赤の天使にして、rk post氏によって描かれた美麗なイラストが人気の1枚。攻防に優れたスタッツを持ち合わせ、飛行と警戒によりダメージを刻みながら相手の攻撃を牽制する上空の支配者。青のフィニッシャーといえばた5マナ以上のやや重めのクリーチャーでしたが、それらと比べて一歩早く戦場へと現れ、呪文と合わせてボードをコントロールするゲームメイカ―となりました。
Star Spangled Slaughterは《稲妻の天使》をフィニッシャーにしたコントロール色の強い中速ビートダウンデッキ。《翻弄する魔道士》などでライフを削り、火力とバウンスでガードをこじ開け、《嘘か真か》でアドバンテージを稼ぎます。《稲妻の天使》は速攻を生かしたフィニッシャーであり、上空より相手のライフを攻めることができました。ただし、忘れてはならないことがひとつだけ。
『プレーンシフト』に収録された《火炎舌のカヴー》の餌食にならないように、赤いデッキ相手はプレイするのに注意が必要でした。
《火/氷》
1つか2つのクリーチャーとプレインズウォーカーとプレイヤーの組み合わせを対象とする。《火/Fire》は、それらに2点のダメージを望むように割り振って与える。
パーマネント1つを対象とし、それをタップする。
カードを1枚引く。
《火/氷》は敵対色同士がセットになった「分割」カードであり、どちらも汎用性が高く、多くのデッキに採用されたカードです。アグロデッキに対しては軽量火力となり、コントロール相手には土地などをタップすることで呪文の使用を封じたり、動きを縛ったりすることができました。キャントリップが付いていたことでどんな状況でも無駄になることはなかったのです。
当時のスタンダードではファイヤーズが最強デッキの一角を占めていたことで、火力面の《火》がマナクリーチャー対策として日の目を浴びることになりました。ほかにも《翻弄する魔道士》や《疫病吐き》など厄介なシステムクリーチャーをすべて対処できたのです。
《氷》は手札を減らさずに使えて土地も寝かせることができたので、呪文版《リシャーダの港》として相手の動きを縛るいぶし銀の活躍となりました。のちに《対立》と《静態の宝珠》によるロックデッキが流行ると、戦場に出た《静態の宝珠》をタップすることで機能をオフにする器用な使い方も生まれました。
《ゴブリンの首謀者》
速攻
《ゴブリンの首謀者》が戦場に出たとき、あなたのライブラリーの一番上からカードを4枚公開する。これにより公開されたゴブリン・カードをすべてあなたの手札に加え、残りをあなたのライブラリーの一番下に望む順番で置く。
《ゴブリンの首謀者》は今回紹介するなかで唯一の単色カードであり、ゴブリンを代表するカードアドバンテージクリーチャー。戦場に出たときにライブラリートップ4枚を公開してゴブリンカードを手札に加える、ドロー能力を有した貴重なカードになります。しかし、当時のゴブリンデッキは軽いクリーチャーを多用した速攻戦略のみであり、4マナと重く、サイズも小粒なことから《ゴブリンの首謀者》の活躍はしばらくの間待つことになりました。
2002年。種族を大々的にフィーチャーしたオンスロート・ブロックが発売されると、その評価は一変します。エクステンデッドに現れたゴブリン改めゴブヴァンテージは、《ゴブリン徴募兵》と《ゴブリンの首謀者》によるコンボで、任意のクリーチャーを確実に引き込むことが可能になっていました。いくら除去されようとも途切れない粘り強いデッキが誕生したのです。
ほかにも《ゴブリンの戦長》や《スカークの探鉱者》といった戦線を立て直せるクリーチャーやクロックの高い《ゴブリンの群衆追い》もいたことで、ゴブヴァンテージは一線級のデッキとなりました。エクステンデッドでは《ゴブリン徴募兵》の禁止を受けて環境を去りますが、レガシーでは今なお、ゴブリンデッキのアドバンテージ源としてその姿をみることができます。
《シヴの浅瀬》
(T):(◇)を加える。
(T):(青)か(赤)を加える。《シヴの浅瀬》はあなたに1点のダメージを与える。
『アポカリプス』にはどの色を見ても、強力無比なカードにあふれています。《神秘の蛇》や《予言の稲妻》、《魂売り》に《ゴブリンの軍団兵》、《名誉回復》ときりがありません。一目見た瞬間から2色デッキといわず、そのカードパワーに溺れた3色デッキを構築したい衝動にかられます。
しかし、それら強力なカードが活躍したのも、使用に耐えうるマナ基盤があってこそ。《シヴの浅瀬》をはじめとしたダメージランドは、呪文を円滑に唱えられるマナベースを整えてくれました。これまで《カープルーザンの森》など友好色のみだったダメージランドに敵対色が加わったことで、これまで見なかった敵対色同士の2色や3色デッキを構築することが可能になったのです。
例えばファイヤーズは《魂売り》を採用したダークファイヤーズへと進化を遂げ、青系コントロールは《名誉回復》を組み込んだ青白黒や火力をタッチした青黒赤のものが組まれるようになりました。ダメージランド加入は構築の幅を広げ、これまでとれなかった対策カードの採用をも可能にしたのです。
まだある名カード
さて、『アポカリプス』名カード集、お楽しみいただけたでしょうか。しかし、「あの有名カードなくない?」「もっといいカードあるよ!」と思われた方もいらっしゃるはず。
もっと『アポカリプス』のカードについて知りたい方は、ぜひ、動画もご覧ください!
次回の「名カード集」では、『オデッセイ』をお届けいたします。