マジック名カード集 ~『オデッセイ』編~

晴れる屋メディアチーム

はじめに

みなさま、「名カード集」へようこそ。

この「名カード集」では、時代を過去へと遡り、昔のエキスパンションの名だたるカードを紹介していきます。

今回は墓地活用ギミックが多数登場した『オデッセイ』をご紹介しましょう。

『オデッセイ』ってどんなセット?

『オデッセイ』とは、2001年10月に発売されたオデッセイ・ブロックの大型エキスパンションであり、全350種類のカードが収録されています。ブロック全体のテーマとして墓地が掲げられ、カードのなかには「手札を捨てること」が効果の一部や起動型能力のコストになっているものもデザインされました。

獣群の呼び声敏捷なマングース

新キーワード能力は「フラッシュバック」と「スレッショルド」があり、どちらも墓地に関するものとなっています。前者は墓地から唱えることができるため1枚のカードが2枚分になり、さらに直接墓地に落とすカードとも相性が良いのです。後者は墓地に置かれたカードの枚数と関連する能力で、軽めのドロー呪文と組み合わせて瞬時に規定を満たすように構築されました。いずれもスタンダードだけではなく、エクステンデッドやエターナルフォーマットにも活躍の場を広げていきました。

影魔道士の浸透者

また、『オデッセイ』と聞いて思い浮かのは、「私がオデッセイのトップレアです」と語る《影魔道士の浸透者》ではないでしょうか。ジョン・フィンケル/Jon Finkel氏(現マジック・プロツアー殿堂)がマジックのトッププレイヤーのみを招待しておこなわれるお祭りイベント、インビテーショナルを制したことを記念してデザインされたカードです。一時期の青いデッキのドローエンジンの中核を担った《知恵の蛇》に回避能力が付与されたことで、発売前からトップレア間違いなしといわれていました。

野生の雑種犬サイカトグ

しかし、期待とは裏腹に『オデッセイ』の同級生2枚のせいで思ったほど活躍することはありませんでした。《影魔道士の浸透者》の前に立ちはだかったのは自在に色を変えてブロックする《野生の雑種犬》と、後の「サイカの夏」という一大現象を巻き起こすニヤニヤ顔の《サイカトグ》でした。《影魔道士の浸透者》を採用したデッキはドローエンジンを彼に託していたため、攻撃が通らないことには手札が増えず思ったように動けません。カード評価はかくも難しく、環境に依存するものと改めて知ることとなったのです。

『オデッセイ』の名カードたち

《激動》

激動

《激動》

すべてのパーマネントを、オーナーの手札に戻す。

シンプルイズベスト。解決後には戦場に塵一つ残らず、発売当時のゲームぎゃざ誌で「戻しすぎ」と評されるのも納得です。《激動》の強みは《ジョークルホープス》などと違いカードタイプに関係なくすべてのパーマネントに効果が及んだ点です。これにより強引に先手番を得て、唱える際に余剰マナがあれば自分だけ再展開することが可能になりました。なかでも《サイカトグ》との相性は抜群でした。

サイカトグFact or Fiction

2001年を代表するカードの1枚である《サイカトグ》はカードを捨て、墓地に置かれたカードでさらにパンプアップできる噛み合った能力を有していました。そのため火力や戦闘ダメージで打ち取ることは難しく、黒であるため《恐怖》系の呪文も効かない厄介な存在でした。軽い打ち消し呪文と《嘘か真か》があったことで隙はほとんどなく、メタゲームはサイカトグ一色に染まり、メインボードから《反論》が採用されるほどだったのです。

幻影のケンタウロス

しかし、《サイカトグ》は強力であるものの攻防のすべてを頼っていたため、《サイカトグ》を引けないことには攻めに転じることはできません。環境後半では《幻影のケンタウロス》のような露骨なメタカードも登場し、苦しめることになります。

それでもサイカトグが環境から去ることがなかったのはひとえに《激動》のおかげでしょう。どんな不利な盤面もひっくり返せるこのカードは、ゲームを最序盤へと巻き戻し、9マナ有れば《激動》解決後に《サイカトグ》の召喚まで可能にしてくれたのです。手札と墓地を食う《サイカトグ》にとって、余分なパーマネントを戻してくれる《激動》は相手の防御網を突破すると同時に餌を与えてくれたのです。

《陰謀団の先手ブレイズ》

陰謀団の先手ブレイズ

《陰謀団の先手ブレイズ》

各プレイヤーのアップキープの開始時に、そのプレイヤーはアーティファクト1つかクリーチャー1体か土地1つを生け贄に捧げる。

《煙突》のクリーチャー版である《陰謀団の先手ブレイズ》は、アップキープにエンチャント以外のパーマネントを要求する欲張り屋。能力は地味に思えますがインスタントタイミングで除去しない限り確実にアドバンテージを失ってしまい、《暗黒の儀式》から早期に着地すれば土地が伸びずゲームを決めてしまうほどのパワーを秘めています。クリーチャーになったことで除去呪文にま弱くなりましたが、その分ダメージソースになり、サーチや回収がしやすくなっています。

青いデッキに無類の強さを誇ったコントロール要素の強いミッドレンジ、ノワール/Noir。フランス語で黒を意味するNoirの通り、黒単ないし準黒単で構築されます。《陰謀団の先手ブレイズ》は相手の土地も縛れるため、クリーチャーをほとんど展開しない青いコントロールには必殺の1枚だったのです。

貪欲なるネズミファイレクシアの憤怒鬼イチョリッド

手札破壊や除去で相手のリソースを削っていく一方で、自身は《貪欲なるネズミ》《ファイレクシアの憤怒鬼》といった戦場に出たときの効果を持つクリーチャーを利用することでパーマネント数を確保します。相手の動きが鈍ったところで《陰謀団の先手ブレイズ》を投入してマナを締めあげますが、自分は先ほどのクリーチャーを生け贄に捧げることで悠々と呪文を使えます。墓地に落ちたクリーチャーも《イチョリッド》のために使えるなど一切無駄のない構築になっていました。

《炎の稲妻》

炎の稲妻

《炎の稲妻》

クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。《炎の稲妻》はそれに2点のダメージを与える。

フラッシュバック(4)(赤)(あなたはあなたの墓地から、このカードをこれのフラッシュバック・コストで唱えてもよい。その後、これを追放する。)

《獣群の呼び声》と並び「フラッシュバック」を代表する1枚の《炎の稲妻》。当初はソーサリーであることで《ショック》の下位互換とも言われていましたが、赤では珍しくアドバンテージがとれ、終盤の息切れ防止にもなりました。序盤からライフを攻めるアグロデッキは相性が良く、序盤はブロッカーを排除し、終盤はほかの火力を併せて本体へと撃ち込まれたのです。

野生の雑種犬ジャッカルの仔今田家の猟犬、勇丸

スタンダードではグルールカラーのステロイド、エクステンデッドでは赤単のRed Deck WinsやボロスカラーのBoros Deck Winsなどいずれも軽量クリーチャーを展開していくデッキに採用されました。3マナ以下でタフネスが3を越えるクリーチャーは数えるほどしかいなかったため、《炎の稲妻》はテンポを稼ぎながら、戦闘ダメージを稼ぐのに一役買ってくれたのです。フォーマットや環境が変われどアグロデッキは常に一定数存在し、《炎の稲妻》は長らく使われた火力となりました。

《入念な研究》

入念な研究

《入念な研究》

カードを2枚引き、その後カードを2枚捨てる。

これまであった軽量ドローと違って普通に使うと手札が減り、アドバンテージを失ってしまう《入念な研究》。カード名通り、使い方には《入念な研究》が必要なようです。このカードは引くよりも、墓地へ捨てることに注目されました。

野生の雑種犬日を浴びるルートワラワームの咆哮不可思議

オデッセイ・ブロックのメカニズム、「マッドネス」と「フラッシュバック」を最大限に生かした青緑マッドネス《野生の雑種犬》などで《日を浴びるルートワラ》《ワームの咆哮》を捨て、本来よりも低コストでカードを使い、テンポで優位に立つデッキです。構成上タイトに切り詰められたデッキであり、「土地」と「捨てる側」「捨てられる側」を確保しなければなりません。

《入念な研究》はライブラリーを掘り進めて不足している必要牌を確保するとともに、2枚捨てることができた優秀なカードなのです。上手くいけば1ターン目に《日を浴びるルートワラ》が2体出る、なんて状況もありえました。

再活性幻影のニショーバ

また、エクステンデッドではより「捨てる」ことに特化して、墓地からクリーチャーを直接戦場に出すリアニメイトで採用されました。《納墓》もあったことで1マナで墓地へクリーチャーを送れるカードが8枚あり、安定して2ターン目にリアニメイトすることが可能だったのです。《入念な研究》が入ったことで直接墓地へと置くはずだったクリーチャーを引いてしまった場合でも、墓地に落として釣れるようになりました。《入念な研究》は戦略上の事故を防ぐと同時に、安定性をもたらしたのです。

《機知の戦い》

機知の戦い

《機知の戦い》

あなたのアップキープの開始時に、あなたのライブラリーに200枚以上のカードがある場合、あなたはこのゲームに勝利する。

最後にご紹介するのは特殊勝利条件カード、《機知の戦い》《空を放浪するもの、ヨーリオン》もびっくりのデッキ総数200枚以上を要求する豪快なエンチャントです。通常のデッキ4個以上の枚数が必要なため、60枚×4個で240枚をベースに構築されました。

ネタカードの一種と思われましたが、条件さえ満たせば貼るだけで勝てるため見た目以上に強力なカードであることが発覚し、バベルとしてトーナメントレベルのデッキの仲間入りを果たします。

バベル

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問題はカードプールに使用に耐えうるカードが200枚以上もあるのかどうかでした。そこで生まれたのがバベル戦略です。例えば打ち消し呪文に関していえば《対抗呪文》は当然として、《中略》のような珍しいカードが採用されています。ドロー呪文にしても《霊感》はなかなか見ないカードです。このように多少弱くても除去や打ち消しなど最低限の役割を果たせるカードは採用し、軽いドローとサーチを詰め込んで水増ししつつバランスを整えることでバベルはアーキタイプとして成り立ちました。

とにかくカードの種類が必要なため、構築の是非はカードの強弱よりもカードプールに左右されてしまうのです。

まだある名カード

さて、『オデッセイ』名カード集、お楽しみいただけたでしょうか。しかし、「あの有名カードなくない?」「もっといいカードあるよ!」と思われた方もいらっしゃるはず。

もっと『オデッセイ』のカードについて知りたい方は、ぜひ、動画もご覧ください!

次回の「名カード集」では、『トーメント』をお届けいたします。

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