スタンダード情報局 vol.41 -スタンダードの監視者-

富澤 洋平

はじめに

みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。

前回は《禁忌の調査》を得て大幅に強化されたラクドスサクリファイスをご紹介しました。クリーチャー・トークンを並べ《想起の拠点》を貼り、しかる後に《禁忌の調査》をプレイすれば、戦闘を介さずにダメージを与えつつ手札を補充できるのです。ブロック時や相手の全体除去に併せてプレイしていきたいところですね。

さて、今回は『ストリクスヘイヴン』リーグ・ウィークエンド(5月)の大会結果を振り返っていきます。

『ストリクスヘイヴン』リーグ・ウィークエンド(5月)

メタゲーム

デッキタイプ MPL ライバルズ
スゥルタイ根本原理 5 12
イゼットミッドレンジ 4 6
ジェスカイサイクリング 3 9
マグダグルール 2 2
赤単アグロ 1 4
ディミーアローグ 1 1
その他 4 6
合計 20 40

MPL/ライバルズともにスゥルタイ根本原理が一番人気となりました。デッキパワーと安定性を兼ね備えたデッキであり、不利な相手にもサイドボードやプレイでカバーできる対応力が高さが魅力のアーキタイプです。プレイヤーの技量が反映されやすいため、リーグに所属する選手がこぞって選択したのも納得です。

ガラゼス・プリズマリ天頂の閃光

対抗馬として続くのは中速のクリーチャーを打ち消し呪文でサポートするイゼットミッドレンジと、《繁栄の狐》による速攻と飛び道具《天頂の閃光》を持つジェスカイサイクリング。ミラーマッチをさけつつ、スゥルタイ根本原理に強いデッキとなります。

MPL成績上位者

勝利数 プレイヤー名 デッキタイプ
5勝 Paulo Vitor Damo da Rosa スゥルタイ根本原理
4勝 Reid Duke マグダグルール
Seth Manfield イゼットミッドレンジ
Martin Juza スゥルタイ根本原理
行弘 賢 白単アグロ
Wiliam Jensen スゥルタイ根本原理
Autumn Burchett ナヤクラリオン
Andrew Cuneo マルドゥサクリファイス

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

MPLでは本命のスゥルタイ根本原理が複数勝ち越しているものの、ほかのアーキタイプも万遍なく残っています。グルールアドベンチャーは《厚顔の無法者、マグダ》を採用したことで速度と新しい勝ち手段を獲得しています。Raphael Levy選手の記事と併せてご覧ください。

MPL全プレイヤーデッキリストはこちら

ライバルズ成績上位者

勝利数 プレイヤー名 デッキタイプ
5勝 Mike Sigrist 赤単アグロ
Chris Botelho ティムールワープ
Jacob Wilson 赤単アグロ
Miguel Da Cruz Simoes スゥルタイ根本原理
4勝 Stanislav Cifka スゥルタイ根本原理
Zachary Kiihne グルールアドベンチャー
Grzegorz Kowalski スゥルタイ根本原理
高橋 優太 スゥルタイ根本原理
熊谷 陸 ジェスカイサイクリング
石村 信太朗 4色ミッドレンジ
Simon Gortzen ジェスカイサイクリング
Theo Moutier イゼットミッドレンジ
Matthieu Avignon ジェスカイミッドレンジ
Ma Noah スゥルタイ根本原理
Sebastián Pozzo ジェスカイサイクリング

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

一方ライバルズでは、異なる結果が出ていました。最多勝に赤単アグロが2つ入っていたのです。使用者の多かったスゥルタイ根本原理とジェスカイサイクリングに強く、苦手とするアドベンチャー系が少なかったことが幸いしたと思われます。

ライバルズ全プレイヤーデッキリストはこちら


大会放送リンク:1日目/2日目

スゥルタイ根本原理

スゥルタイ根本原理

クリックして拡大

両リーグ併せて17名が選択したスゥルタイ根本原理。どんな状況にも対処できる柔軟さ、そしてマナ加速からの《出現の根本原理》による逆転が魅力のアーキタイプになっていますが、今回はスゥルタイ根本原理のミラーマッチに的を絞った構築をご紹介していきます。Stanislav Cifka選手の構築を見ていきましょう。

強迫否認軽蔑的な一撃

メインボードで特徴的なのは汎用性の高いスペルランドを土地へと変更し、さらに用途のはっきりした干渉手段とドローソースを増やしている点です。《ジュワー島の撹乱》《ペラッカの捕食》はそれぞれ《軽蔑的な一撃》《否認》《強迫》に置き換えられています。《神秘の論争》まで合わせるとメインボードに採用された打ち消し呪文は計6枚。《出現の根本原理》は絶対に通さないという強い意思が感じられます。

出現の根本原理

《出現の根本原理》のパッケージにも変化があります。定番だった《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス》《キオーラ、海神を打ち倒す》は抜け、コントロール戦で強い《海門修復》《オニキス教授》となっています。クリーチャーベースの2枚は単体で引いてしまうと途端に使い勝手が悪くなってしまい、単体除去との交換だけで終わってしまうためです。

海門修復オニキス教授

ミラーマッチは《出現の根本原理》とアドバンテージを巡るゲームであり、《海門修復》《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス》などと違い手札からキャストしたとしても、勝負を決めるほどのカードになります。対戦相手が対処しなければいけないカードが増え、打ち消し呪文は追いつきません。

《オニキス教授》は追加のプレインズウォーカーであり、着地後はもくもくとアドバンテージを稼いでくれます。非クリーチャー呪文が多いため、「魔技」によるダメージも無視できず、フィニッシャーとなります。

星界の大蛇、コーマ

サイドボードには単体除去はそこそこに、手札破壊と打ち消し呪文、アグロ~コントロールまで広く使えるクリーチャーが採用されています。《星界の大蛇、コーマ》はサイドボード後のフィニッシャーであり、《強迫》を絡めて相手の手札に除去呪文がないタイミングでキャストしていきたいところ。ひとたびアップキープを迎えれば海蛇・トークンが生成されるため、追放以外対処できません。

イゼットミッドレンジ

イゼットミッドレンジ

クリックして拡大

3マナ以上の中堅クリーチャーを打ち消し呪文でサポートするイゼットミッドレンジ。クリーチャー+打ち消し呪文戦略をとるディミーアローグよりも重い反面カードパワーが高く、マナ生成能力を持つ2種類のドラゴンから《アールンドの天啓》のような不利を覆す動きも可能なデッキです。動きの細かいアグロデッキを苦手としていますが、アグロが少なくスゥルタイ根本原理の多いリーグウィークエンドならではの選択肢となりました。

精神迷わせの秘本

メタゲームで意識すべきはアドベンチャーではなくスゥルタイ根本原理。7マナ以上のビッグスペルが減り、軽いアドバンテージ獲得手段と打ち消し呪文が増量していることからもそう感じる構築になっています。《精神迷わせの秘本》はコントロールマッチの定番ドローソースであり、打ち消し呪文の多いインスタントタイミングで動くデッキに合致したカードです。たとえマナがなくと占術により掘り進められるため、いつ引いても無駄になりません。

神秘の論争襲来の予測

打ち消し呪文はメインボードから6枚あり、《出現の根本原理》に効果的な《神秘の論争》に、万能の《襲来の予測》。相手の攻め札を対処すると同時に、自分のクリーチャーを守りクロックを維持する攻めの打ち消し呪文でもあります。ドラゴンを召喚しつつ相手の反撃を打消し、《アールンドの天啓》に繋ぐのが勝ちパターンとなるからです。

赤単アグロ

赤単アグロ

クリックして拡大

使用者の内半数の2名が最多勝に輝いた赤単アグロ。かなり似通っており、ただマナカーブを低くしただけではなく、軽いクリーチャーを生かした構築になっています。Mike Sigrist選手のリストを見ていきましょう。

講堂の監視者

メインボードに採用された1マナクリーチャーは10枚であり、《火刃の突撃者》に代わり《講堂の監視者》が4枚になっています。序盤はクロックとして、中盤以降は相手のブロックを突破する役割を持ちます。これまで幾度となく立ちはだかってきた《恋煩いの野獣》の上から突破し、ダメージを刻めるようになりました。スゥルタイ根本原理相手でも厄介な《長老ガーガロス》の能力が誘発しないのは大きな収穫です。

朱地洞の族長、トーブランリムロックの騎士砕骨の巨人

《リムロックの騎士》の「出来事」まで合わせると1マナのカードは17枚にのぼり、マナを無駄にすることなく動けるように構築されていることがわかります。単にマナカーブに沿って展開するだけではありません。4マナあれば《朱地洞の族長、トーブラン》のほかに3+1や2+1+1と、「出来事」を絡めてさまざまな展開が可能なのです。

クリーチャーは軽めながらデッキパワーが担保されているのは《朱地洞の族長、トーブラン》《エンバレスの宝剣》があればこそ。クリーチャーの数が多ければ多いほど効果があるフィニッシャーになります。

乱動する渦

サイドボードでは不足していた軽めの火力と、ミッドレンジ用の《アクロス戦争》、そして消耗戦とディミーアローグに強い《アゴナスの雄牛》が4枚(!)。スゥルタイ根本原理に対しては、メインボードから有利となっていますが、《乱動する渦》まで取られ隙がありません

おわりに

リーグウィークエンドではスゥルタイ根本原理を中心にメタゲームが形成されましたが、きっちりと結果を残しました。イゼットミッドレンジやジェスカイサイクリングもいたものの、スゥルタイ根本原理はやはりデッキパワーが頭一つ抜けている印象です。逆に使用者こそ少なかったものの赤単アグロは速度と安定性が魅力であり、今回のリーグのようなメタゲームでは最適なアーキタイプとなりますね。

次回もスタンダードの情報をお届けしたいと思います。

この記事内で掲載されたカード

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

富澤 洋平 晴れる屋メディアチームスタッフです。最近は《黙示録、シェオルドレッド》に夢中な日々です。 富澤 洋平の記事はこちら

このシリーズの過去記事

過去記事一覧へ