Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2021/05/21)
見当違い
やぁみんな!ハビエル・ドミンゲス/JavierDominguezだ。
『ストリクスヘイヴン:魔法学院』が発売されて一ヵ月ぐらい経ったけど、人気のカードが何枚か出てきているね。だけど、特にそのなかの一枚は下環境に定着しているほどになっている。
その1枚とは《表現の反復》だ。
『ストリクスヘイヴン』の第一印象を語った前回の記事では、《表現の反復》は新しいデッキを生み出すかもしれないと言った。だけど、実際にはそれよりもはるかにすごいカードだった。
2マナ払って得られる見返りは?
《表現の反復》は《予期》と《予言》をうまく組み合わせたデザインだろうと最初は考えていた。だけど蓋を開けてみれば、事前に「予顕」をしなくていいソーサリー版の《多元宇宙の警告》だった。
仮に3マナだったとすれば、《骨読み》よりも少し強い程度だっただろう。しかし実際には2マナであり、その効率は破格だ。
できることなら《表現の反復》はカードテキストをこう読み替えられるデッキで使いたい。「ライブラリーの上からカードを3枚確認する。そのなかの2枚を選んで手札に加える」。2マナでこのテキストを持つカードとして使えれば、歴史上でみてもトップクラスのドロー呪文だろう。
《表現の反復》が合うデッキは?
理想を言えば、《表現の反復》を唱えるたびに1枚分のアドバンテージを得られるようにしたい。そうするには《表現の反復》のキャスト前に土地を置かないのが一番簡単な方法だ。確認した3枚のなかに土地が1枚でもあれば、それを追放してセットする。こうすれば1枚の呪文から2枚分のカードを得たことになる。
ごくごく当然な使い方ではあるけど、この呪文が強い理由のひとつでもある。マナスクリューを回避でき、マナに飢えたデッキならありがたい効果なんだ。
先日のMPLリーグ・ウィークエンドでセス・マンフィールド/Seth Manfieldがスタンダードで使ったイゼットドラゴンを見てみよう。《表現の反復》はマナを伸ばして《アールンドの天啓》や《マグマ・オパス》のような重い呪文を唱えられるようにする目的で採用されている。
だけど、《表現の反復》をもっと上手く使う方法がある。土地はすでに潤沢にあり、呪文2枚を手に入れた場合だ。ただし、この方法を使うにはマナコストの軽い呪文を多く採用する必要がある。
例として自分のイゼットフェニックスをあげよう。フォーマットはヒストリックだ。
このデッキは《表現の反復》と相性の良いカードとして、土地だけでなく1マナの呪文が大量に採用されている。だから3ターン目に唱えた場合、3枚のなかに1マナの呪文か土地のどちらかがあれば2枚分のカードを得られる。
セスのデッキでは《表現の反復》は土地を滞りなく伸ばして事故を回避し、重い呪文を唱えられるようにしてあった。他方、イゼットフェニックスでは土地を伸ばすだけでなく、呪文の枚数を確保して《弧光のフェニックス》の効果を誘発できるようにしている。
つまり、《表現の反復》は軽い呪文を詰め込んだデッキ、あるいは土地を多く並べたいデッキで採用するのが理想だということだ。これに当てはまるデッキはかなり多いね!
《表現の反復》は例にあげた2つのデッキをマナスクリュー/マナフラッドから救い、安定性を上げている。どこかで聞いたようなセリフだなって?そう、《渦まく知識》や《思案》のような強力なキャントリップとやっていることは同じだ。
《表現の反復》はこういったキャントリップと共通点を持つ強力なカードだ。しかし似ているからこそ、正しく使うのが難しいカードでもある。
《表現の反復》の使い方
シークレットモード
《表現の反復》はある意味《セラの報復者》に似たカードだと言える。つまり、少なくとも3ターン目まで待たないと唱えられない。
だけど、2ターン目に唱えたほうが良い場面もある。《予期》として使うんだ。《予期》は強いカードではないけど、そういう選択肢があることによって本当に《セラの報復者》と同じデメリットを持っていた場合と比べて使いやすくなっている。実際に2ターン目に唱えることはかなり珍しいけど、ゲームの勝敗を分けかねないから選択肢として考慮する価値はある。
《表現の反復》を2ターン目に唱えるべきだと気づきやすいこともある。後々になって唱えるタイミングがなさそうなときだ。実はこういう状況はよくある。アグロやコンボと対戦していれば、ほかにとれるプレイがないなかで急がなくちゃいけない場面があるからね。
ただし、そういうマッチアップであっても、相手のプランを妨害できる状況であれば《表現の反復》は必ずしも弱いカードではない。そういうときは2ターン目のアクションを飛ばして《表現の反復》を唱えないという選択肢もあり得る。
とはいえ、比較的速いデッキを相手にしていて、《表現の反復》が手札に複数あるなら2ターン目に唱えることはそう珍しくない(特に後手のとき)。カードアドバンテージこそ得られないけど、コンボに対して《否定の力》や《意志の力》を探しに行ける。
《表現の反復》を2ターン目に唱えるべき状況はもうひとつあり、これは少し考えないと気づきづらい。それは、ゲームが長引いたときに有利になるのが自分である場合だ。
相手のデッキがテンポで押そうしてくるなら、早いうちに《表現の反復》を唱えれば探し求めている妨害呪文にたどり着きやすくなる。ゲームが長引けば盤面をまくれる手札だが、相手の行動を止める呪文が1~2枚足りないとしよう。こういうときは2ターン目に《表現の反復》を唱えるのが正しいと考えている。
早々に《表現の反復》をキャストすると《スレイベンの守護者、サリア》への解答を用意できるメリットもある。もし中盤まで温存してしまうと《スレイベンの守護者、サリア》によって《表現の反復》は使いづらくなってしまうだろう。
土地の置き方
土地の置き方には気をつけよう。
自分がこれまでに《表現の反復》の使い方を誤ったのは、ほとんどマナが原因だった。タップイン土地がめくれてしまって動きがぎこちなくなったり、めくれる呪文を前もって予想しなかったことで唱えられなかったり。デッキ次第ではあるけど、《表現の反復》がデッキにあることで土地の置き方が変わるというのは十分に考えられることだ。
たとえば《表現の反復》からめくった除去を撃つプランなら、《尖塔断の運河》は3枚目の土地として温存し、《島》を先に出すべきかもしれない。あるいはスタンダードなら3ターン目までに青・赤・赤というマナを揃えるために《河川滑りの小道》は赤マナとして出すべきかもしれない。そうすれば4ターン目に《表現の反復》から除去と《不詳の安息地》がめくれた場合、その2枚とも利用できる状況を作り出せる。
みんなが直面する状況は千差万別だろう。だけど、基本的な考え方はこうだ。《表現の反復》で選ぶ2枚の組み合わせを幅広く想定し、それを念頭に土地を置いていく。赤の呪文はその場で唱えなくてはいけないものが多く、赤マナを1つ余計に確保しておくと手堅い。とはいえ、ケースバイケースだからその都度考えるようにしよう。
ほかのキャントリップとの関係性
キャントリップ呪文というのはお互いに面白い関係性を持つ。《表現の反復》に関してまず思い当たるのは、《渦まく知識》で戻したカードを1枚”シャッフル”できることだろう。
この2枚を採用していると、この動きは頻繁にやることになる。少なくとも”《渦まく知識》ロック”からは抜け出せるし、《表現の反復》からアドバンテージを得やすくなる。ただ、フェッチランドや《定業》がある環境なら、もっと楽にロックは抜け出せる。
ここで重要なのは、《渦まく知識》は(《信仰無き物あさり》もある程度そうだけど)手札の枚数が多いほど有効に使えて、《表現の反復》はカードアドバンテージを生んで《渦まく知識》を強くするということ。
だから、消耗戦を狙う場合や手札の質を高めたい場合は、ほかに戻したカードをシャッフルするカードがあるならまずは《表現の反復》を、その後に《渦まく知識》を唱えるのが一般的に好ましい。そうすれば《渦まく知識》を唱えるときに情報が多く、手札も多い状況でゲームプランを組み立てていける。
《表現の反復》がデッキ内にあれば、キャントリップを気軽に撃ちやすくなる側面もある。一般的に《思案》は温存しておくべきことも多い。《渦まく知識》を温存すべき状況はさらに多いだろう。『キャントリップの使い方 ~2020年編~』で伝えたように、今は以前よりもキャントリップを積極的に使うべき時代になっている。
思うに、《表現の反復》はその傾向をさらに加速させている。キャントリップを使えばより多くの《表現の反復》にアクセスし、カードアドバンテージを生みながら、さらなるキャントリップを引き込める可能性があるからだ。ただし、積極的にキャントリップを使えと言ったからといって、必ずしもそれに固執する必要はない。個々の状況を分析しよう。ここに近道はない。
デッキ構築への影響
《表現の反復》がデッキ構築に与える影響を一言で表すのは難しい。表面上はマナコストの軽いカードだけど、ロングゲームを制するための高マナ域のカードと枠を争う。見かけは2マナであってもね。
《表現の反復》は”空気”のようなカードだ。盤面に影響することもないし、相手を妨害できるわけでもない。《表現の反復》を入れるために軽い呪文を抜いてしまうと、《表現の反復》は弱体化してしまう。あらかじめリソースの交換をしておかないと、《表現の反復》を唱えている間にテンポ面で大きく後れを取ってしまうからだ。
だからこそ《僧院の速槍》や《スプライトのドラゴン》みたいな軽いクリーチャーは《表現の反復》と相性が良い。
この2体は条件が噛み合えば勝ち筋にもなるが、ほとんどのマッチアップでは相手に除去を要求し、カードとマナを消費をさせるカードだ。《表現の反復》を唱える前にこういったクリーチャーを繰り出しておけば、盤面が更地の状態か、それ以上好ましい状態で《表現の反復》を唱えられるだろう。
《スプライトのドラゴン》《黄金架のドラゴン》《厚かましい借り手》《目くらまし》のようなテンポ面で強いカードが《表現の反復》と相性が良いのは、《表現の反復》がカード枚数を確保しながらも、デッキのほかの部分がテンポ面をカバーしてくれるからだ。
だから《表現の反復》入りのデッキを組もうとする場合、テンポ面で強いカードを十分に入れておかないと《表現の反復》が弱いカードになってしまう。しかし同時に終盤戦にも対応できるような構築にしておく必要もある。ここは良い塩梅を見つけるしかない。
《表現の反復》を敵に回したら
《天才の片鱗》などと同じく、《表現の反復》は打ち消し呪文をあてる格好の的だ。ドロー呪文に対してほかに介入するとすれば、事前に相手のマナベースを攻めることぐらいだろう。
一般的な考えと反するようだけど、ケアするのが難しいのはインスタントではなくソーサリースピードの呪文だと思っている。というのも、相手がこちらのターンにインスタントスピードの何かをちらつかせてくるなら、手札にそれがある可能性を認識したうえで、それに応じたプレイすれば良い。だけど、ソーサリースピード呪文との戦いは相手がアンタップする前から始まっているんだ。
これは相手のデッキがインスタントスピードばかりの構成なら関係ない。だけど、ソーサリー・クリーチャー・インスタントが混在している構成だった場合、何のアクションもなしにターンを返してきたときにケアすべきインスタントはわかっても、そのほかのカードを上手く使わせないようにゲームを組み立てていくことは難しい。こういうときはキャントリップを唱えたくても、除去を構えておいたほうが良いかもしれない。
アドバイスしておきたい状況はもうひとつある。自分は受け身のデッキを使い、《表現の反復》デッキの相手が後手で7枚をキープした場合だ。何らかのリソース交換が行われない限り、相手は《表現の反復》を有効に使えない。手札が8枚になってディスカードするハメになるからだ。そのため、こちらはじっと待ち、ゲームの肝となるターンで2マナを払わせるようにすれば《表現の反復》を相手の重荷にすることができる。
ロングゲームになるマッチアップで後手の序盤から《表現の反復》を唱えることは簡単ではないし、アグロに対しては遅いカードであることから、後手では比較的弱いカードになる。特にサイド前は相手の戦略に合わせた構成になっていないから、その傾向は強まるだろう。
今回はこれで終わりにしよう。みんなも《表現の反復》を使い倒してくれると嬉しいな!