はじめに
みなさんこんにちは。
MOではテーブルトップに先駆けて『モダンホライゾン2』が実装されています。予想通りモダン環境はほぼ別のフォーマットといえるほど変化し、『モダンホライゾン2』に収録されたカードを活かした新デッキも多く見られます。
さて、今回の連載では先週末に開催されたModern Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Modern Challenge #12299469
『モダンホライゾン2』のカードが多数
2021年6月5日
- 1位 Death and Taxes
- 2位 Humans
- 3位 Amulet Titan
- 4位 Temur Cascade
- 5位 Living End
- 6位 Living End
- 7位 Living End
- 8位 Hammer Time
トップ8のデッキリストはこちら
『モダンホライゾン2』実装後に初めて開催されたModern Challengeでは、『モダンホライゾン2』のカードを採用したデッキが数多く上位入賞していました。
今大会で目立っていたカードは、《ウルザの物語》と再録された《断片無き工作員》の2種類でした。特に《断片無き工作員》の使用率は高く、既存のデッキではLiving Endと準優勝を果たしたHumansのほかにも、《衝撃の足音》を「続唱」から「待機」せずにプレイするTemurカラーのミッドレンジも見られました。
新カードの《ウルザの物語》も、Amulet TitanやHammer Timeの新戦力として採用されています。
デッキ紹介
Death and Taxes
今大会で優勝したのは《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」として採用した青白のDeath and Taxesでした。青を足すことで《時を解す者、テフェリー》《翻弄する魔道士》《呪文捕らえ》といったカードが使えるようになり妨害性能がアップしています。
『モダンホライゾン2』からの新カード、《孤独》がメインからフル搭載されています。場に出たときの能力で《剣を鍬に》と同様の効果があり、ピッチでもプレイできるということでプレビューでも話題になっていました。
妨害能力を内蔵したクリーチャーを多用しているので、クリーチャーベースのデッキとは思えないほどの対応力を持つデッキになっており、アグロというよりものコントロールデッキに近い動きをします。今大会のように各種「続唱」デッキが中心でIzzet Prowessのように赤いアグロデッキが少ない環境では、《翻弄する魔道士》や《呪文捕らえ》といったクリーチャーを使った戦略は良い立ち位置にあるといえます。
☆注目ポイント
《時を解す者、テフェリー》は常在型能力によって「続唱」や「待機」スペルを封じることができるのでLiving Endに強く、《呪文捕らえ》との相互作用によってスペルを永久に追放することが可能です。また、自身のクリーチャーをバウンスすることで再度アドバンテージを稼ぐといった使い方もできます。
《翻弄する魔道士》は特定のキーカードに頼った戦略に有効で、相手の手札を見ることができる《精鋭呪文縛り》と組み合わせることでより効率的な使い方ができます。
除去枠にフル搭載されている《孤独》は、《剣を鍬に》と同様の能力を持ち、《流刑への道》よりも優先して採用されています。白ベースのこのデッキでは「想起」でプレイしやすく、マナが余る中盤以降は素で出して《ちらつき鬼火》などで再利用することもできます。《儚い存在》との組み合わせることで相手の場を一掃することも可能です。
サイドに採用されている《ヴェクの聖別者》は、プロテクション(赤)(黒)持ちで墓地対策能力を持つ優秀なクリーチャーです。赤いアグロ、Death’s Shadow、Dredgeなどさまざまなマッチアップで使えます。《突然の衰微》《致命的な一押し》《稲妻》といった現環境の主要な除去の多くに耐性があるため、装備品との相性も良いクリーチャーです。
Temur Cascade
『モダンホライゾン2』で《断片無き工作員》が再録されることが決まったとき、多くのプレイヤーがこのクリーチャーを強く使う方法を模索していました。
今大会で結果を残したTemur Cascadeは、《断片無き工作員》の「続唱」によって《衝撃の足音》を「待機」させることなくプレイすることをフィーチャーしたデッキです。
Living Endがコンボ系の「続唱」デッキなのに対して、このデッキはミッドレンジになります。
☆注目ポイント
《断片無き工作員》はクリーチャーなので、《衝撃の足音》と合わせて3マナで合計パワー10分の脅威を展開することができます。《暴力的な突発》は《衝撃の足音》をインスタントタイミングで展開できるので、奇襲性もありソーサリースピードの除去や全体除去にも耐性があります。
《砕骨の巨人》や《厚かましい借り手》は3マナ域ですが、「出来事」によって2マナのスペルとしても使えるので「続唱」と相性が良いカードです。ほかにAmulet Titanなど土地コンボに有効な《月の大魔術師》がメインから採用されており、サイドにも追加で《血染めの月》が採用されています。《血編み髪のエルフ》から「続唱」できる強力なスペルの一つです。
青いコントロールやほかの「続唱」デッキに対してサイドインする《神秘の論争》は、3マナなので《断片無き工作員》の「続唱」の邪魔をしないこのデッキに合ったカウンターです。
Living End
《断片無き工作員》はLiving Endにとってもっとも大きな収穫となりました。青白の《献身的な嘆願》と異なり、《断片無き工作員》は青緑なのでデッキに白を足す必要がなくなりマナ基盤に若干の余裕ができたのです。
基本的な構成は古くからモダン環境に存在するLiving Endと変わりません。「サイクリング」持ちの大型クリーチャーをサイクリングしていき、墓地にクリーチャーカードが十分に貯まったら「続唱」スペルをプレイします。《死せる生》以外に2マナ以下のスペルを採用していないため、確定で《死せる生》をプレイすることができます。
☆注目ポイント
《秘法の管理者》《風呼びのエイヴン》といった青いサイクリングクリーチャーも増えてきたので、《否定の力》のコストに困ることが少なくなりました。《暴力的な突発》によって相手のターンに《死せる生》をプレイすることができるので、《否定の力》でコンボを守りやすくなります。
サイドに採用されている《基盤砕き》は、「想起」でプレイすることで「続唱」の邪魔をせずに効率的に《虚空の力線》など置物に対するアンサーとなる優秀なクリーチャーです。
Modern Challenge #12299475
Urzaの時代の幕開け
2021年6月6日
- 1位 Hardened Scales
- 2位 Temur Cascade
- 3位 Niv to Light
- 4位 Yawgmoth
- 5位 Cat Oven
- 6位 Azorius Control
- 7位 Ad Nauseam
- 8位 Eldrazi Tron
トップ8のデッキリストはこちら
Amulet TitanやHammer Timeなどさまざまなデッキに採用されていた《ウルザの物語》ですが、今大会でも高い使用率を出していました。なかでも青いControlにまで採用されていたのが印象的でした。
そして話題の《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》も結果を残していました。話題になっているのは長いカード名だけでなく、食物エンジンとしても評価されています。《不敬な教示者》という新戦力を得て復権したAd Nauseamコンボなど、今大会でも上位入賞を果たしたほとんどのデッキが『モダンホライゾン2』のカードを採用していました。
今大会で優勝を収めたのは《ウルザの物語》をフル搭載したHardened Scalesでした。
デッキ紹介
Hardened Scales
《オパールのモックス》が禁止になって以来トーナメントではあまり姿を見かけなくなったHardened Scalesでしたが、『モダンホライゾン2』からの新戦力に恵まれて復権し、今大会ではなんと優勝を収めました。
基本的な構成に変化はなく、デッキ名にもなっている《硬化した鱗》を利用してクリーチャーに乗るカウンターを増やし強化していきます。《活性機構》などカウンターが乗ることでアドバンテージの獲得に繋がるカードも多数搭載されています。
☆注目ポイント
《微光蜂、ザーバス》は伝説なので複数同時にプレイできないのがネックですが、《硬化した鱗》との組み合わせによる爆発力を最大限に活かすために《電結の働き手》とともにフル搭載されています。《電結の荒廃者》とも相性が良く、追加の《硬化した鱗》のように機能します。《墨蛾の生息地》や《歩行バリスタ》に追加の+1/+1カウンターが乗ることでクロックを強化することが可能です。
『モダンホライゾン2』でもっとも強力なカードの一枚である《ウルザの物語》は、このデッキにもフルに採用されており、能力のすべてがこのデッキにフィットしています。
Ⅱ章はアーティファクトのトークンをばら撒く《搭載歩行機械》や《活性機構》と相性が良いです。0か1マナのアーティファクトを状況に応じてサーチできるⅢ章の能力は、このカードの最大の注目ポイントです。メインでは《溶接の壺》や《活性機構》、サイド後は《墓掘りの檻》《真髄の針》《トーモッドの墓所》といった特定のマッチアップで使える対策カードをサーチ可能です。
Azorius Control
《ウルザの物語》パッケージを搭載した革新的な青いコントロールも結果を残していました。
Azorius Controlも《対抗呪文》の再録が決まったときは世界中の古参のコントロールプレイヤーがエキサイトしていました。
☆注目ポイント
このデッキにも採用されている《ウルザの物語》は、《探検の地図》やサイドのBurnなどに有効な《ズアーの宝珠》、墓地対策の《墓掘りの檻》などをサーチできるなど大変フレキシブルなカードです。
確定カウンターの《対抗呪文》は、2色のこのデッキにおいては青青を出しやすいので《論理の結び目》や《マナ漏出》といった過去に採用されていた2マナカウンターのほぼ上位交換として機能します。
『モダンホライゾン2』で登場した《虹色の終焉》は、レガシーのコントロールでも採用されている優秀なスペルで、今後もよく見かけることになりそうです。ソーサリーですが、クリーチャーだけでなく《虚空の杯》《霊気の薬瓶》《精力の護符》《巨像の鎚》《太陽冠のヘリオッド》《レンと六番》など処理が困難だったパーマネントにも触れるようになりました。また、「収斂」のために支払う色マナを増やすために《湿った墓》が1枚採用されています。
サイドの《花咲く沈静》は、《機を見た援軍》よりもライフ回復量は少なくなりますが1マナと軽いので使いやすく、相手の火力スペルに合わせて使うことでカウンターのようにも機能します。Burn以外にもDimir Millなど複数のマッチアップで使えるスペルです。
総括
『モダンホライゾン2』が環境に与えた影響は大きく、旧環境でトップメタだったIzzet ProwessやHeliod Companyなどは数を減らし、「続唱」コンボやAmulet Titan、Hardened Scalesなど《ウルザの物語》を強く使えるデッキが中心となっています。
数多い『モダンホライゾン2』のカードの中でも《ウルザの物語》は頭一つ抜けており、環境のさまざまなデッキで採用されています。再録された《断片無き工作員》もLiving EndやTemur Cascade、Humansなど多くのデッキで使われています。この環境のモダンはまだ始まったばかりで、研究の余地しかないのでいろいろと試してみるのが楽しい時期です。各種《ウルザの物語》デッキの支配が続くのか要注目です。
USA Modern Express vol.58は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!