スタンダードのベストデッキ ~ジェスカイ変容~

Matti Kuisma

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2021/06/11)

勝率64%

みなさん、こんにちは。

この記事を読んでいるということは、先週末に『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップが開催されたことはご存知だろう。私がトップ8に入ったことも知っていただろうか?まだ知らなかった方はこの場で覚えておいて欲しい。

ヴェロマカス・ロアホールド時間のねじれ

大会の話題をさらったのはヒストリックのジェスカイターンだった。大会の勝率は60.7%であり、トップ4の全員が使っていたのだから無理もない。

ただ、本大会ではもっと優れたデッキがあったと言っておきたい。そのデッキとは、スタンダードのジェスカイ変容だ。このデッキを選択したプレイヤーは一握りだったし、トップ8はヒストリックでフィーチャーされることもなかったが、その数少ないジェスカイ変容使用者のなかからチームメイトのデビット・イングリス/David Inglisと私がトップ8に入賞した

チームメイト同士のミラーマッチを除けば、チームのジェスカイ変容の勝率は驚異の64%を記録している。プロレベルの大会に持ち込んだデッキとしてこれ以上優れたデッキはなかっただろうし、もっとも楽しいデッキであったのは間違いない。公式カバレージによればMTGアリーナのミシック帯で一番パフォーマンスの高かったデッキだそうで、直近のMagic Onlineのスタンダードチャレンジも優勝している。

黄金架のドラゴン雷の頂点、ヴァドロック伝承のドラッキス

デッキの基礎

このデッキの存在に初めて気づいたのは、5月のライバルズリーグでマシュー・アヴィニョン/Matthieu Avignonが使ったときのことだった。

ジェスカイ変容

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無限ループ

このデッキの動きを見たことがないという方のために、デッキの基本的な狙いを解説しておこう。

黄金架のドラゴン雷の頂点、ヴァドロックプリズマリの命令戦利品奪取

(1) 《黄金架のドラゴン》を唱える。

(2) 《黄金架のドラゴン》を対象に《雷の頂点、ヴァドロック》を「変容」させ、墓地の《戦利品奪取》《プリズマリの命令》を唱える。結果的に《黄金架のドラゴン》によって2マナ出る宝物トークンが2つ生成されるため、《雷の頂点、ヴァドロック》実質0マナで唱えたことになる。

伝承のドラッキス非実体化

(3) 《雷の頂点、ヴァドロック》《伝承のドラッキス》《黄金架のドラゴン》にさらに「変容」させ、マナと手札を増やしていく。ここで留意して欲しいのは《黄金架のドラゴン》に2枚目を「変容」すると「変容」効果が2回誘発し、3枚目を「変容する」と3回誘発するということ。つまり、最初に「変容」しておけば、のちに「変容」するたびにアドバンテージを生むことになる。

(4) 《黄金架のドラゴン》《非実体化》を唱え、「変容」クリーチャーを含めて全て手札に戻す

(5) ここまでのプロセスを繰り返せば、「自分の手札は満パン」「相手の戦場のクリーチャーはゼロ」「《プリズマリの命令》をループさせてライフをゼロにする」のいずれかあるいは全てを達成できる。

ループについては後ほどより詳しく解説するが、これが基本的なコンセプトだ。最初は複雑怪奇に感じるだろう。しかし何度か自分で試してみれば理解が進むはずだ。実際にデッキが動いているところを見たいのであれば、ラファエル・レヴィ/Raphael Levyとの試合をおすすめしておこう。5時間54分20秒のところだ。

しかし、このデッキはコンボにオールインしたデッキではない。アグロに対してコントロールとして立ち回ることも難なくできるし、《黄金架のドラゴン》の攻撃だけで勝つこともよくある。《非実体化》のループに必ずしも向かう必要はなく、「変容」の誘発効果で爆発的なアドバンテージを生み出し、カードアドバンテージの波で相手を飲み込むことも容易にできる。

デッキ調整

ライバルズリーグでアヴィニョンが使用したデッキにデビットが目をつけると、チーム一丸となって調整を始めた。興味深かったのは、佐藤レイや原根健太たちが所属する日本人チームもこのデッキに目をつけ、元々のリストに私たちとほぼ同じ変更を加えていたことだ。両チームが別々に調整して同じ結論にたどり着いたのだから、自分たちが加えた調整は間違っていなかったのだろうと思う。

では、大会に登録したリストをここで紹介しておこう。

デッキリスト

ジェスカイ変容

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元のリストからの変更点

《表現の反復》の採用

オリジナルのリストに加えた変更のなかでも特に重要だったのは、環境屈指のパワーカードである《表現の反復》を4枚採用したことだろう。

表現の反復真実の視認

《真実の視認》《雷の頂点、ヴァドロック》《スカルドの決戦》から唱えれば《表現の反復》よりも強力になるが、《スカルドの決戦》はデッキの動きを鈍らせてしまうし、そもそもデッキに合っていない。

それに《雷の頂点、ヴァドロック》を無事「変容」できたのであれば、《真実の視認》でなくとも《表現の反復》を唱えればたいていは勝てるだろう。反面、カードアドバンテージがものを言う消耗戦であったり、将来的なコンボに備えたい状況では《表現の反復》のほうが圧倒的に優れている。

《スカルドの決戦》の廃止とマナベース

スカルドの決戦

また、《スカルドの決戦》を不採用にすればマナベースをスッキリさせることができる。白のカードはほかに《雷の頂点、ヴァドロック》しかなく、このカードも通常は「変容」コストで唱える。《スカルドの決戦》がなければジェスカイ変容は純粋なイゼットに限りなく近くなるのだ。

《表現の反復》《伝承のドラッキス》の「変容」コストを考えると、基本土地の《平地》は裏目になりやすい。そこで《平地》を不採用にし、合わせて《寓話の小道》も廃した。

両面カードの選択

ヴァラクートの覚醒棘平原の危険

呪文と土地の両面カードについては、《ヴァラクートの覚醒》よりも《棘平原の危険》のほうが明らかに優れていた。《エッジウォールの亭主》《リムロックの騎士》に対して運よく除去を持っていればアグロとの相性は飛躍的に改善する。

また、《黄金架のドラゴン》を対象に放てば《水蓮の花びら》として機能させることもできるため、「変容」を狙うターンに役立つこともある。

水蓮の花びら

これが特に重要となるのは全てのマナを使って《黄金架のドラゴン》を唱えたときだ。《黄金架のドラゴン》で攻撃して宝物トークンを出し、《棘平原の危険》《黄金架のドラゴン》を対象に唱え、《伝承のドラッキス》を「変容」させてこれを回収して再びキャストする。

こうすれば4マナを用意でき、手札の《雷の頂点、ヴァドロック》を唱える選択肢が生まれる。ここから完全なループに入ることは稀だが、ループを開始できる状況が整う。

イゼットドラゴン対策、《精神迷わせの秘本》

このデッキを調整した結果、スゥルタイ根本原理には非常に有利、イゼットドラゴンには不利、その他には互角か有利だとわかった。チームの予想ではスゥルタイがもっとも多く、僅差でイゼットドラゴンが2番手だった(この読みは当たっていたね)。イゼットドラゴンとの相性を極端な不利から「そこそこ」まで持っていければ、非常に良いデッキを握れるだろうと予感していた

精神迷わせの秘本

こうして次のイノベーションが生まれた。サイドボードの《精神迷わせの秘本》だ。イゼットドラゴンと対峙したときに最大のキーカードとなっているのはイゼットドラゴン側の《精神迷わせの秘本》だとすぐにわかった。そこで自分たちも《精神迷わせの秘本》を使うことが最善の策だろうと考えたのだ。

実際にサイドインしてみると、明らかに戦いやすくなった。ジェスカイ変容は《プリズマリの命令》《精神迷わせの秘本》を触れるのに対し、相手はこちらの《精神迷わせの秘本》を除去する術がないからだ。


ジェスカイ変容のようなデッキが本番でどれだけ強いのかを正確に予想するのは非常に難しい。参加者に警戒されないためにはできるだけアリーナのラダーで使うことは避けたかったが、内輪だけでの調整にも独自の問題がある。

我々はジェスカイ変容を使う側にも使われる側にも何度も立ってきたため、デッキがどう動くのかを熟知している。しかし大会の参加者たちはそうではない。だから内々の調整よりも本番ではデッキのパフォーマンスが上がるだろうと予想はつく。しかし、その情報格差は本番でどれほどの効果があるのだろう?そしてそれはどうやれば正しく見積もれるというのだろうか?

ループと制限時間

実際のループを解説する前に言っておかなくてはならないことがある。アリーナでは実際に無限ループに入ることはできない。現実世界の大会であればループの一部をショートカットできるため、紙のマジックのほうがジェスカイ変容は使いやすい。他方、アリーナではひとつひとつのアクションを手動でせねばならず、そのための時間も限られている。アリーナはターンの長さに厳しい制約がかけられていて、それまでに蓄積した砂時計の数によるが、5分程度しかない。

つまり、実際に《プリズマリの命令》《棘平原の危険》以外で勝つのは珍しくないということになる。そこで、このデッキを使い始めようという人におすすめしたいのは、まずは相手を倒すことを考えないことだ。マナと手札を増やすことだけを考えて、良い結果に結びつくと信じる。

宝物トークン

慣れるまでには時間がかかるが、コツをつかんでしまえば動きを最適化させ、勝利に向かうべきときなのか、あるいはアドバンテージを生んで勝利を後回しにするべきときなのか判断できるようになる。

「変容」クリーチャーが3体以上いればある程度ミスをしても許されるので、全てを完璧にこなす必要はない。使い始めたばかりの人はこれを覚えておくといいだろう。2体でコンボをスタートさせるのではなく、3体目の「変容」クリーチャーを探そう。

プリズマリの命令戦利品奪取

ループの大原則は常に変わらない。ループさせるには《黄金架のドラゴン》を再キャストできるだけのマナを生成する。そのために《戦利品奪取》《プリズマリの命令》を墓地に置いておく。

最少枚数によるループ

最小枚数によるループはおそらくもっとも複雑なルートであり、メインフェイズで停止するように設定するかフルコントロールモードにしておく必要がある。これを忘れると《黄金架のドラゴン》を死亡させるハメになる。

そのルートを説明しよう。

黄金架のドラゴン雷の頂点、ヴァドロックプリズマリの命令

(1) 4マナを余らせて《黄金架のドラゴン》を唱える。

(2) 《雷の頂点、ヴァドロック》を「変容」させて《黄金架のドラゴン》を誘発させる(戦場の宝物トークン:1つ)。

(3) 《雷の頂点、ヴァドロック》の効果で《プリズマリの命令》を墓地から唱え、《黄金架のドラゴン》を対象にした2点モードと宝物トークンモードを選ぶ(戦場の宝物トークン:1つ)。

(4) 2点モードで対象になったことで《黄金架のドラゴン》の効果が誘発(戦場の宝物トークン:2つ)。

(5) 《プリズマリの命令》を解決させる(戦場の宝物トークン:3つ)

伝承のドラッキス非実体化

(6) 《伝承のドラッキス》を「変容」で唱え、《黄金架のドラゴン》の効果で宝物トークンが出る(戦場の宝物トークン:3つ)。

(7) 《雷の頂点、ヴァドロック》の効果が最後に解決されるように「変容」効果をスタックに積む。《雷の頂点、ヴァドロック》《プリズマリの命令》を対象に、《伝承のドラッキス》《非実体化》を対象にとる(戦場の宝物トークン:3つ)。

(8) 《伝承のドラッキス》の効果で《非実体化》を回収。

(9) 先ほどの同じモードで《プリズマリの命令》を唱え、《黄金架のドラゴン》の効果で宝物トークンが出る(戦場の宝物トークン:4つ)。

(10) 《非実体化》《黄金架のドラゴン》を対象に唱え、《黄金架のドラゴン》が宝物トークンを出す(戦場の宝物トークン:4つ)。

(11) 宝物トークンを全て砕く(浮いているマナ:8マナ)。

(12) 《非実体化》を解決させる(浮いているマナ:8マナ)。

(13) 《プリズマリの命令》を解決させる(浮いているマナ:8マナ、戦場の宝物トークン:1つ)。

(14) 《黄金架のドラゴン》を再び唱える(浮いているマナ:3マナ、戦場の宝物トークン:1つ)。

(15) 残った宝物トークンを砕いてマナを出す(浮いているマナ:5マナ)。

2回目の《プリズマリの命令》《黄金架のドラゴン》は致死量のダメージを受けそうになるが、対象にとった《黄金架のドラゴン》《プリズマリの命令》が解決したときにはもう戦場にいない。また、《黄金架のドラゴン》が戦場にいるときに宝物トークンを砕いておかないと手札に戻したカードを唱えなおすだけのマナがなくなるので注意しよう。

この全てのステップを正しく行うと、スタート時よりも1マナ増えることになる。すごいし簡単……だろう?

紙の大会であればこのプロセスをショートカットできる。無限マナを出し、その後ループの過程で《プリズマリの命令》の2点の対象を《黄金架のドラゴン》ではなく相手にすれば良い。これならすぐに勝てる。

しかし、アリーナではこうはいかない。このループを一回するのには1分程度かかるため、数回ループさせたら生成したマナを何らかの形に変換させてやる必要がある《プリズマリの命令》の違うモードを選んだリ、あるいは《雷の頂点、ヴァドロック》の効果で全く別のもの、たとえば《表現の反復》でさらなる「変容」クリーチャーを探しにいく。

もう一度ラファエル・レヴィとの試合(5時間47分50秒以降)を見てもらえれば、ループを起こしながら余ったマナを何かに変換しようと必死になる私を見ることができる。

「変容」クリーチャー多めのループ

「変容」クリーチャーの枚数が増えれば、ループはもっと簡単になる。ひとつ例を示そう。《黄金架のドラゴン》が戦場にいて、マナプールに4マナあるとする。

黄金架のドラゴン雷の頂点、ヴァドロックプリズマリの命令

(1) 《雷の頂点、ヴァドロック》を「変容」コストで唱え、《黄金架のドラゴン》の効果で宝物トークンを出す(戦場の宝物トークン:1つ)。

(2) 《雷の頂点、ヴァドロック》の効果で《プリズマリの命令》を墓地から唱え、《黄金架のドラゴン》を対象にした2点モードと宝物トークンモードを選ぶ(戦場の宝物トークン:1つ)。

(3) 2点モードで対象になったことで《黄金架のドラゴン》の効果が誘発(戦場の宝物トークン:2つ)。

(4) 《プリズマリの命令》を解決させる(戦場の宝物トークン:3つ)。

伝承のドラッキス非実体化

(5) 《伝承のドラッキス》を「変容」で唱え、《黄金架のドラゴン》の効果で宝物トークンが出る(戦場の宝物トークン:3つ)。

(6) 《雷の頂点、ヴァドロック》《プリズマリの命令》を対象に、《伝承のドラッキス》《非実体化》を対象にとるようにスタックに積む。

(7) 2つの誘発を解決させ、《プリズマリの命令》は2点ダメージを相手に飛ばしつつ、宝物トークンを出す(戦場の宝物トークン:4つ)。

伝承のドラッキス

(8) もう1枚の《伝承のドラッキス》を唱え、《黄金架のドラゴン》の効果で宝物トークンが出る(戦場の宝物トークン:4つ)。

(9) 3つの「変容」効果がスタックに積まれ、《雷の頂点、ヴァドロック》《プリズマリの命令》を、2体の《伝承のドラッキス》《プリズマリの命令》以外の何かを対象にとる(戦場の宝物トークン:4つ)。

(10) 全ての「変容」効果を解決させ、《プリズマリの命令》は相手に2点ダメージを飛ばしつつ、宝物トークンを出す(戦場の宝物トークン:5つ)。

非実体化黄金架のドラゴン

(11) 《非実体化》《黄金架のドラゴン》を対象にとり、《黄金架のドラゴン》が宝物トークンを出す(戦場の宝物トークン:5つ)。

(12) 宝物トークンを全て砕く(浮いているマナ:10マナ)。

(13) 《非実体化》を解決させる(浮いているマナ:10マナ)。

(14) 《黄金架のドラゴン》を再び唱える(浮いているマナ:5マナ)。

結果的に1マナ増やしながら、《プリズマリの命令》で4点ダメージを与え、《伝承のドラッキス》の効果で墓地から呪文を2枚回収している。ドローを進めたいのであれば、《プリズマリの命令》でダメージを飛ばすのではなくルーティングモードを選べば良い。あるいは《戦利品奪取》で手札を増やすこともできる。

繰り返すようだが、最初は実際よりも複雑に思える。実際にこのループを何度かやってみれば、直観的に自然に行えるようになるだろう。マナとカードを増やすという基本原則を遵守すれば、間違うことはない。「変容」クリーチャーを多く握っていれば、それだけ簡単かつ高速になる。だからこそ、最小限のリソースでループを起こそうとするのではなく、ドローを進めたほうが良いことが多い。

もうひとつ個人的に使っている原則があり、それは相手がライフ10以上で、《プリズマリの命令》《雷の頂点、ヴァドロック》が1枚しかないときは通常勝ちに向かわないということ。これは時間切れを回避するためだ。

こういうときは勝ちに行くのではなく、ドローを進め、相手の脅威をさばき、手札に打ち消しを集めていく。通常ライフを狙いに行くのは2体の《雷の頂点、ヴァドロック》で「フラッシュバック」する《プリズマリの命令》が2枚用意できたときだけだ。

とはいえ、先ほど言ったように始めたてなら神経質になる必要はないし、こういったことで気を揉むこともない。本格的に練習しようと思ったときに理解できれば良いのだ。それから、通常は完璧にプレイしようなんて思わなくて大丈夫だ。《黄金架のドラゴン》を何度か「変容」すればどっちにしても有利になっているし、どんなルートをたどってもほぼ間違いなく勝利につながっていくだろう。

マッチアップガイド

スゥルタイ根本原理

ジェスカイ変容を選択したのはスゥルタイ根本原理に強いからだった。しかし本番を終えてみれば、スゥルタイ以外の全てに対して好成績を出していたのはおかしな話だ。ただ偏った結果になっただけなのか、それとも調整が的外れだったのか。今となってはわからない。

出現の根本原理

理論的に考えれば、相性が良くないとは考えづらい。スゥルタイは7マナのソーサリーを解決しようとするデッキで、こちらは打ち消しと4枚の《非実体化》を備えたコンボデッキなのだから!

可能であれば、相手が高マナ域の呪文を唱えるまでじっと待とう。その呪文を打ち消すか手札に戻したら、《黄金架のドラゴン》を唱えて暴れまわるのだ。特に1ゲーム目は相手のデッキが重く、ジェスカイ変容とまともに対話できないだろう。相手のメインデッキに《神秘の論争》が多めに入っていると相性は少し悪くなるが、それでも有利に変わりないはずだ。

対 スゥルタイ根本原理

Out

プリズマリの命令 プリズマリの命令 プリズマリの命令
火の予言 火の予言
棘平原の危険
焦熱の竜火

In

精神迷わせの秘本 精神迷わせの秘本 精神迷わせの秘本
神秘の論争 神秘の論争
灰のフェニックス
軽蔑的な一撃

サイド後は《精神迷わせの秘本》と追加の打ち消しを投入するため、ドロー・ゴーを一層しやすくなる。おそらく相手は重たい呪文を減らして、その枠に軽い妨害や脅威を入れてくるはずだ。

サイド後は《プリズマリの命令》で倒そうと考えないで良い。ただ相手のクリーチャーを片っ端からバウンスし、手札を整えて打ち消しを山ほど抱え、相手の勝ち目を完全に潰そう。《伝承のドラッキス》から打ち消しを数枚回収すれば、もう十分ということもよくある。

イゼットドラゴン

1ゲーム目はお互いに同じカードを多く使うことになるが、相手だけ《精神迷わせの秘本》を使える点が異なる。《精神迷わせの秘本》を出され、破壊できないと苦戦を強いられるだろう。そういうときはとにかく呪文を叩きつけ、強力な脅威で相手を圧倒し、無限のドローをする暇を与えないようにする。

相手が《精神迷わせの秘本》を出してこないのであれば、もっとゲームをゆったりと進められるので、打ち消しをかいくぐって《黄金架のドラゴン》が着地できるようにゲームを進めていこう。着地させてしまえば、1ゲーム目のイゼットドラゴンは綺麗に解答するカードを持ち合わせていない。

対 イゼットドラゴン

Out

非実体化 非実体化 非実体化
戦利品奪取 戦利品奪取 戦利品奪取
火の予言 火の予言
棘平原の危険 雷の頂点、ヴァドロック

In

レッドキャップの乱闘 レッドキャップの乱闘 レッドキャップの乱闘
精神迷わせの秘本 精神迷わせの秘本 精神迷わせの秘本
灰のフェニックス 灰のフェニックス
神秘の論争 神秘の論争

サイド後のゲームは通常とても長い消耗戦になる。イゼットドラゴンのサイドボーディング方法は多種多様なため、相手のプランを予測するのは難しい。ひとつだけ確かなのは、《黄金架のドラゴン》対策に《レッドキャップの乱闘》が必ずサイドインされることだ。

レッドキャップの乱闘灰のフェニックス

《灰のフェニックス》は除去に強いクリーチャーであり、安心して「変容」させることができる。また、サイド後のゆったりとしたゲーム展開なら多くのアドバンテージをもたらしてくれる。

《精神迷わせの秘本》《表現の反復》はこのマッチアップのキーカードだ。基本的にこの2枚はカウンターしていこう

赤単アグロ

このマッチアップではコントロールとして立ち回るが、コンボの側面も早期決着のために役立つ。赤単には《霜噛み》があるので《雷の頂点、ヴァドロック》を3ターン目にクリーチャーとして出すのはリスクが伴うが、除去されなければ大半のアタッカーを沈黙させることができ、大きなリターンも見込める。

対 赤単アグロ

Out

非実体化 非実体化 非実体化
戦利品奪取 戦利品奪取 戦利品奪取
否認 否認
神秘の論争

In

レッドキャップの乱闘 レッドキャップの乱闘 レッドキャップの乱闘
灰のフェニックス 燃えがら地獄 燃えがら地獄
ガラスの棺 希望の光
精神迷わせの秘本

相手は《レッドキャップの乱闘》をサイドインし、《エンバレスの宝剣》やタフネス1のクリーチャーを抜いてくる可能性が高い。このマッチアップの《エンバレスの宝剣》は面白いカードで、単独で見れば赤単最強のカードだろうが、こちらがクリーチャーをことごとく除去するためこの装備品は使いづらくなってしまう。それに《プリズマリの命令》で破壊すれば2:1交換が成立する。

希望の光

《希望の光》はどのモードも使い道がある《鍛冶で鍛えられしアナックス》《乱動する渦》を破壊したり、ライフを回復して火力でとどめを刺されないようにしたり、《レッドキャップの乱闘》に対応して《黄金架のドラゴン》を守ったりできる。

アクロス戦争

個人的には赤単は《アクロス戦争》をサイドインすべきではないと思っているが、何度かサイド後に使われたことがある。《アクロス戦争》を確認した場合は3ゲーム目に《非実体化》を2~3枚入れると良いだろう。

通常ゲームプランはシンプルだ。コントロールの立場をとり、ロングゲームを制する《レッドキャップの乱闘》があるのでコンボを成立させるのは難しくなっているが、サイド後は軽くて優秀な除去を増やせる。そのため、最終的にリソース勝ちするための《精神迷わせの秘本》のようなカードをサイドインする余裕さえある。

ナヤアドベンチャー

相性はかなり良い。こちらは相手のなすこと全てに対して上手く対応できるが、相手はこちらのコンボを止めることがなかなかできない。確かに《黄金架のドラゴン》《巨人落とし》で除去することはできるが、常にマナを構えておくのは現実的ではないし、仮に《巨人落とし》を撃たれたとしても《黄金架のドラゴン》を守る方法は十分にある。

巨人落とし

「変容」クリーチャーを《黄金架のドラゴン》の上に重ねても良いだろう。2/3や3/3というサイズにすれば《巨人落とし》の対象から外れる。また、《雷の頂点、ヴァドロック》はこのマッチアップではほとんど除去されないため、ブロッカーとしても頼りになる。

対 ナヤアドベンチャー

Out

非実体化 本質の散乱
神秘の論争
戦利品奪取

In

燃えがら地獄 燃えがら地獄
ガラスの棺
精神迷わせの秘本

1ゲーム目から相性が良く、サイド後は痛烈に刺さることも多い《燃えがら地獄》を投入できる。

燃えがら地獄

ひとつ注意しておくと、ナヤアドベンチャーに限らず《恋煩いの野獣》デッキに対しては、1/1のクリーチャーを残らず除去し、《恋煩いの野獣》は攻撃できないようにしておくのが鉄則だ。

サイクリング

変なマッチアップで、どっちが有利なのかいまだに確信がない。1ゲーム目はお互いに相手を止める手段に乏しく、どっちが早く勝てるかというスピード勝負になりやすい。

対 サイクリング

Out

プリズマリの命令 プリズマリの命令 プリズマリの命令
本質の散乱
非実体化
神秘の論争

In

希望の光 レッドキャップの乱闘 レッドキャップの乱闘
燃えがら地獄
ガラスの棺
精神迷わせの秘本

このマッチアップで重要なのは、相手が2ゲーム目にどんなサイドボーディングをしていたのか確認し、それを踏まえて3ゲーム目のサイドボーディングプランを練ることだ。

アイレンクラッグの紅蓮術師雄々しい救出者

ひとつ例を挙げると、《アイレンクラッグの紅蓮術師》をサイドアウトするプレイヤーもいれば、《雄々しい救出者》をサイドアウトするプレイヤーもいる。そのサイドアウトに応じて《レッドキャップの乱闘》《燃えがら地獄》の枚数を調整するんだ。サイド後の枚数がプレイヤーによって異なるのは、ほかにも《軽蔑的な一撃》《神秘の論争》《天頂の閃光》がある。

繰り返すようだが、そのなかでも確かなのは《レッドキャップの乱闘》がサイドインされることだ。こうしてお互いに干渉手段を最適化していくため、サイド後は総じて1ゲーム目よりもずっと長いゲームになりやすい。

おわりに

デッキにパワフルさと楽しさの両方を求めるのであれば、ぜひともジェスカイ変容を試してみて欲しい。このデッキに対する戦い方が知れ渡り、対抗馬としてイゼットドラゴンを使用するプレイヤーが増えてくれば、数週間後には今ほどの支配力がなくなっているかもしれない。しかし、当面はジェスカイ変容こそがスタンダードのベストデッキだと思う。

雷の頂点、ヴァドロック

このデッキの最大の弱点は、プレイングが難しいことだ。だから大切な大会で使おうと思うなら、事前に十分な練習をしておこう。このデッキのポテンシャルを最大限に引き出すためには、ループ方法に慣れ、ターンの時間制限に達してロープが燃え始めたときに何をすべきか理解できるようにする必要がある。

これからジェスカイ変容を学び始めようというみなさんにとってこの記事が役に立つことを願う。そして、私と同じようにこのデッキを存分に楽しんでもらえたら幸いだ。

マッティ・クイスマ (Twitter)

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Matti Kuisma ワールド・マジック・カップ2016でチームの一員としてトップ8に輝いた、フィンランドのプレイヤー。 プロツアー『霊気紛争』で28位入賞を果たしたものの、2016-17シーズンはゴールドレベルに惜しくも1点届かなかった。 2017-18シーズンにHareruya Hopesに加入。2017年は国のキャプテンとしてワールド・マジック・カップに挑む。 Matti Kuismaの記事はこちら