はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
前回は『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップで好成績を残したジェスカイ変容と、それにより変化したデッキを見てきました。サイドボードに採用された《レッドキャップの乱闘》や《巻き添え》は《黄金架のドラゴン》に対する明確な解答となっていましたね。
今回は第3回 Sekappy COLOSSEUM MTGアリーナ 決勝大会とCFB Pro Showdown June 2021の大会結果を振り返っていきます。
先週末の注目デッキは?
まずは先週末の注目デッキを確認していきましょう!
Standard Challengeを2日連続で制したサイクリング。しかも使用者である中川 智大、小坂 和音両選手ともに2日連続でトップ8入りしています。
サイクリングデッキの強みは最序盤から展開する軸の異なる攻め手と相手によって立ち回りを変えられる器用さにあります。一度「サイクリング」すれば《無情な行動》で除去されず、三度「サイクリング」すれば3点火力の圏外となる《繁栄の狐》に始まり、単体除去に強い《雄々しい救出者》と《型破りな協力》と3種類のクロックが用意されています。攻撃のみならず防御面も優秀なカードであり、特にトークン戦略は攻防一体が強みになります。
クリーチャーで押し込むも、ボードでのダメージが止まってしまったら《天頂の閃光》へと切りかえるわけですが、ここに《アイレンクラッグの紅蓮術師》が加わったことで、ボードコントロール力とともに、追加の直接火力を手に入れました。序盤から終盤まで隙なく攻め続けることが可能なのです。
このサイクリングデッキの特徴ともいえるのが《記憶漏出》。通常は「サイクリング」してほかのカードとのボーナスを狙いますが、コントロールマッチでは手札破壊として機能します。このカードを確実にプレイするために《サヴァイのトライオーム》を入れる構築もありますが、このデッキは黒マナが出るのは小道3種類のみに絞っています。
これによりタップインランドの枚数が減り、序盤で複数枚引いてもたつく可能性はほとんどありません。《記憶漏出》が必要なマッチアップでは「サイクリング」する過程で黒マナを用意し、ほかの打ち消し呪文と組み合わせることで本来の戦略を阻害せずに複数の干渉手段の採用に成功しているのです。
また、サイドボードにも面白いアプローチがあります。メインボードには《アイレンクラッグの紅蓮術師》や《常智のリエール》など3マナ域のパーマネントが採用されていますが、サイドボード後はこれらを抜いて《夢の巣のルールス》を「相棒」に指定できるのです。消耗戦を想定するならばクリーチャーよりも、《型破りな協力》のような対処手段が限られるものをダメージソースとして再展開し続ける価値は高そうです。
ただし、弱点がないわけではありません。《エンバレスの宝剣》のような突破力の優れたカードや《運命の神、クローティス》などの墓地対策には注意しなければなりません。《プリズマリの命令》など一部対処手段はあるものの、これら両方のカードを採用するマグダグルールは天敵です。
第3回 Sekappy COLOSSEUM MTGアリーナ 決勝大会
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | 宮部 浩一 | ティムールアドベンチャー |
準優勝 | 高桑 祥広 | 緑単アグロ |
トップ4 | 近藤 祐樹 | 白単アグロ |
トップ4 | 佐藤 啓輔 | スゥルタイ根本原理 |
トップ8 | 近藤 彰吾 | イゼットドラゴン |
トップ8 | 斎藤 徹 | ジェスカイ変容 |
トップ8 | 幸田 光信 | マルドゥサクリファイス |
トップ8 | 八十岡 翔太 | ディミーアローグ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
招待選手と予選大会を勝ち抜いた上位16名で開催された第3回 Sekappy COLOSSEUM MTGアリーナ 決勝大会は、ハイブリッド型のティムールアドベンチャーを使用した宮部 浩一選手が制しました。トップ8に残ったアーキタイプはどれひとつとして同じものはなく、多様性に富んだ結果となりました。
メタゲーム
デッキタイプ | 使用者数 |
---|---|
スゥルタイ根本原理 | 2 |
ジェスカイ変容 | 2 |
マグダグルール | 2 |
白単アグロ | 2 |
ディミーアローグ | 1 |
セレズニアミッドレンジ | 1 |
ティムールアドベンチャー | 1 |
サイクリング | 1 |
緑単アグロ | 1 |
ナヤクラリオン | 1 |
マルドゥサクリファイス | 1 |
イゼットドラゴン | 1 |
合計 | 16 |
参加者の選択肢は分かれ、環境に存在するアーキタイプが満遍なく出揃ったかたちとなりました。もっともバランス良く戦えるスゥルタイ根本原理や新鋭のジェスカイ変容、アグロ戦略に複数の選択者がいました。
トップ8デッキリストはこちら。
大会放送リンクはこちら
ティムールアドベンチャー
今大会を優勝したティムールアドベンチャーは、これまでの構築と一線を画すものとなっていました。ティムールアドベンチャーといえば「出来事」を中心に《獲物貫き、オボシュ》を「相棒」に据え、《グレートヘンジ》でアドバンテージを稼ぎ《アールンドの天啓》で押し込むワープ型と、《銅纏いののけ者、ルーカ》+《星界の大蛇、コーマ》の踏み倒しを主眼に置いた踏み倒し型に分けられていました。
しかし、それら2種類のティムールアドベンチャーをハイブリッドしたのが宮部選手が使用したワープ入りの踏み倒し型。アドベンチャーらしいミッドレンジからの《アールンドの天啓》と、《星界の大蛇、コーマ》の強襲の二軸で構築されています。
ボードで勝負するアグロ全般に対しては、《銅纏いののけ者、ルーカ》+《星界の大蛇、コーマ》のコンボを狙っていきます。ここでカギとなるのが《ラノワールの幻想家》。このマナクリーチャーを3ターン目に用意できれば、4ターン目に《銅纏いののけ者、ルーカ》がプレイでき、そのまま《星界の大蛇、コーマ》へと姿を変えられるのです。
逆にスゥルタイ根本原理やジェスカイ変容などある程度こちらが攻めに回るマッチアップでは、クリーチャーを展開し、妨害や《アールンドの天啓》を絡めての押し切りを狙います。
《神託者の広間》は色マナ問題と中盤以降の土地の引き過ぎを解決してくれる画期的なカードです。序盤はフィルターとしてダブルシンボルの呪文をプレイ可能にし、マナが余ればクリーチャー強化と役割が変わります。インスタントかソーサリーを使用していれば任意のクリーチャーを強化できるため「出来事」と相性が良く、打点不足の解消にもなります。
緑単アグロ
氷雪デッキといえば白と赤が基本でしたが、ここにきて緑単も登場しました。今大会で入賞した緑単アグロは、3ターン目にパワー5のクリーチャーを展開し4ターン目の《グレートヘンジ》着地を目指すもの。6枚の格闘除去とテンポをとれる《蛇皮のヴェール》が特徴的なレシピになっています。《蛇皮のヴェール》にプラスしてタフネス4以上のクリーチャーが多く、蔓延する《霜噛み》や《火の予言》、《焦熱の竜火》への意識がうかがえます。
ジェスカイ変容やサイクリングに強い《漁る軟泥》をメインボードから採用できるのはこのデッキの強みです。2マナ域を埋めつつコンボ対策となるため、いくら引いても困りません。ジェスカイ変容はメインボードから3点除去があるためタフネスを4以上にあげられるタイミングか、除去されること前提の使いきりの墓地対策としてプレイしましょう。
《吹雪の乱闘》は1マナとテンポの良い格闘除去ですが、氷雪パーマネントを3つ以上コントロールしていればさらに破壊不能まで得られる、まさにこのデッキのための除去といえます。氷雪パーマネントを3つ用意して《恋煩いの野獣》を対象にとれれば、《長老ガーガロス》や《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》に対しても一撃必殺となります。
緑単アグロの弱点としては速攻持ちが少なく、召喚から攻撃までにラグがあり、除去を繰り返される内にゲームが長引いてしまい、相手の重いカードが有効になることです。《蛇皮のヴェール》はそのラグを埋めるに最適なカードであり、さらにサイズアップまでしてくれます。+1/+1カウンターがのるため、横に《群れのシャンブラー》がいれば単体除去に若干の耐性がつくことになります。
サイドボードにはスゥルタイ根本原理用に単体除去に強い《ガラクの先触れ》と、軸の異なる攻めカードとしてプレインズウォーカーが複数用意されています。先ほど紹介した《群れのシャンブラー》で残ったクリーチャートークンは1/1と頼りないものの、《解き放たれた者、ガラク》さえいれば4点クロックに早変わり。どんなに小粒でも戦場にクリーチャーを残すことに意味があるのです。
CFB Pro Showdown June 2021
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Sean Hunter | ナヤクラリオン |
準優勝 | Ben Zahneissen | スゥルタイ根本原理 |
トップ4 | Berk Elçi | ディミーアローグ |
トップ4 | Ashkan Paykar | ラクドスサクリファイス |
トップ8 | Eliana Rabinowitz | スゥルタイ根本原理 |
トップ8 | Jonymagic | イゼットドラゴン |
トップ8 | Cody Hatfield | 白単アグロ |
トップ8 | Carlos De Arco | ティムールルーカ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者80名で開催されたCFB Pro Showdown June 2021はナヤクラリオンを使用したSean Hunter選手が優勝しました。同イベントの名物といえば、優勝者が決まった後に始まるCFB所属プロとのボス選です。今回はMPLに所属するWilliam Jensen氏がボスとして登場しましたが、Sean Hunter選手は熾烈なミラーマッチを制して完全優勝しています。
メタゲーム
デッキタイプ | 使用者数 | トップ8 |
---|---|---|
スゥルタイ根本原理 | 13 | 2 |
ナヤクラリオン | 8 | 1 |
ティムールアドベンチャー | 8 | 1 |
イゼットドラゴン | 7 | 1 |
赤単アグロ | 6 | 0 |
白単アグロ | 5 | 1 |
グルールアドベンチャー | 5 | 0 |
その他 | 28 | 2 |
合計 | 80 | 8 |
スゥルタイ根本原理が頭一つ抜け、次いで2種類のアドベンチャーが追いかける見慣れたメタゲームとなっています。
トップ8デッキリストはこちら。
ナヤクラリオン
多くの大会で入賞し、今もっとも安定したアーキタイプといわれるナヤクラリオン。メインボードは「出来事」を中心にしたミッドレンジ戦略であり、ほかのアドベンチャーにはないマナクリーチャーの採用が特徴的。ボードへの展開を助け、《スカルドの決戦》からのリソースも無駄なく使用でき、さらにII章の効果も最大限戦場へと反映させるためです。クリーチャーデッキ全般に強く、スゥルタイ根本原理以外には五分以上の相性を誇り、サイドボード次第でどんな相手にも戦える万能デッキです。
ナヤクラリオンがアドベンチャーのなかで頭一つ抜けている理由は複数のメタクリーチャーが採用されているからです。《精鋭呪文縛り》は手札を確認しつつ、クリティカルな1枚を追放し、使用タイミングを遅らせます。さらにこの《精鋭呪文縛り》はほかのメタクリーチャーとも噛み合いがあるのです。
《ドラニスの判事》はアドベンチャーパッケージを採用したデッキに強く、これを対処できない限り勝負が決まってしまうといっても過言ではありません。《スカルドの決戦》や《出現の根本原理》、「予顕」に加えて、《精鋭呪文縛り》で追放したカードも使えなくなってしまいます。
《傑士の神、レーデイン》は氷雪デッキに強く、コントロール相手には4マナ以上呪文のマナコストを引き上げてくれます。《精鋭呪文縛り》で手札を確認し軽い単体除去を追放してしまえば、《傑士の神、レーデイン》はゲームに終わりをもたらしてくれるでしょう。《精鋭呪文縛り》単体でも強力なカードですが、ほかの2種類と組み合わせることで相手にかなり窮屈なプレイを強いることができるのです。
サイクリングやジェスカイ変容など墓地を使うデッキが増加傾向にあるため、墓地対策は必須です。《魂標ランタン》は戦場に出せれば、マナを使わずにいつでも墓地を全追放できます。先置きでき、目に見えるからこそ相手にとっては重い枷となるのです。
直近の大会結果
6月16日から6月22日までの大会結果になります。
安定性の高いスゥルタイ根本原理とナヤクラリオンが人気を二分しているのがわかります。どちらのデッキにも共通しているのは、マナ加速と除去、複数の干渉手段とアドバンテージ獲得手段です。攻め手が序盤のクリーチャーかそれとも終盤のビッグスペルかで分かれますが、どちらもデッキパワーが高く、苦手の少ない万能型といえます。
少し大人しい結果となったのはイゼットドラゴンです。高いボードコントロール力があり、打ち消し呪文があるため干渉領域が広く、骨太クリーチャーにより戦闘でも引けを取りません。先週までは上位入賞の多いデッキのひとつでしたが、得意の単色アグロが上位から消え去ったことでほとんどみられなくなりました。スゥルタイ根本原理とナヤクラリオン攻略がカギとなりそうです。
おわりに
ストリクスヘイヴン期のスタンダードも終わりが近づいてきています。現在のところ、ナヤクラリオンとスゥルタイ根本原理を中心に、サイクリングが続き、やや遅れてイゼットドラゴンがいる感じです。イゼットドラゴンや単色アグロの巻き返しはあるのでしょうか。
次回もスタンダードの情報をお届けしたいと思います。