21年7月統率者戦ルール改定について
こんにちは、統率者戦大好きいってつです。今回は号外記事です。統率者戦のルールアップデートについて、いってつがレポートします。
2021年7月12日、Commander Rules Committeeによりルールアップデートが告示されました。以下に内容を要約し、解説します。原文はこちら(リンク先英文)
要約
《船殻破り》が禁止推奨カードに指定されました。
「ダンジョン」が統率者戦で機能するようルール整備が行われました。
禁止の理由
《船殻破り》 (2)(青)
瞬速
対戦相手が、自分の各ドロー・ステップ内で初めて引くカード以外のカードを1枚引くなら、代わりに、あなたは宝物・トークンを1つ生成する。
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2020年11月発売『統率者レジェンズ』で登場した《船殻破り》。「令和のBlack Lotus」こと《宝石の睡蓮》に次ぐ目玉カードの1枚として注目を集めました。
晴れる屋チャンネルでも注目。
発売前から最注目カードとしてとりあげていました。
『統率者レジェンズ』はその名の通り、統率者戦を強く意識したセットで、「リミテッド統率者戦」が遊べることが魅力の一つでした。当然ながら、《船殻破り》は統率者戦での使用が大前提のカードでした。
統率者戦デッキで、「ドローカード」が入っていないデッキなどまずありません。一般にドローが苦手と言われる白にも最近はドローカードが追加されつつありました。相手のドローに対応して《船殻破り》が唱えられることで本来自分が得るはずだったアドバンテージを没収されたうえ、「宝物・トークン」という形でテンポアドバンテージを取られてしまいます。
《船殻破り》、その能力の実態はほんの数枚のアドバンテージを奪うだけのものではありません。統率者戦ならではの楽しいカードを真っ向から否定するものでした。
「Commander Rules Committee」より一部抜粋して翻訳
「《船殻破り》は登場以来問題を引き起こしてきた。追加のドローを牽制するという見た目通りの使い方よりも、複数のプレイヤーにドローさせる効果と積極的に組み合わせ、マナ加速をしながら他のプレイヤーの手札を奪う使い方が優先されている。(《トレストの使者、レオヴォルド》の禁止を見てのとおり、)これは我々がカジュアルプレイに蔓延って欲しくないと思うプレイパターンの一種である。」
全員が手札をライブラリーに戻し7枚ドローする《Timetwister》系の呪文が統率者戦では非常に人気です。自分の手札を一気に回復させるという強力な一面に加え、「全員が勝利への新たなチャンスを手にする」楽しさ、面白さがありました。これに《船殻破り》は真向から歯向かいます。
自分の《永劫のこだま》に対応して《船殻破り》が戦場に出されたとしましょう。まず全員が手札と墓地のカードをライブラリーに戻してシャッフルし、7枚ドローします。《船殻破り》のコントローラーのみが、です。ほかのプレーヤーはドローができず、《船殻破り》のコントローラーのもとに「宝物」が届けられます。21個の「宝物」です。
新たに手に入れた7枚の手札、21個もの宝物で即座にゲームを決めることができるのならまだよかったのですが、必ずしもそうではありません。《船殻破り》がゲームに勝利するまで、手札が0の状態から再スタートとなったプレイヤーたちが「一人回しに付き合わされる」という場面も少なくなかったのです。
特に、対戦相手の行動に対応するだけでなく、《永劫のこだま》を唱えつつ自ら《船殻破り》を出すという形で対戦相手の手札を攻撃するような使われ方が問題視されました。
統率者戦に長く触れているプレイヤーなら《概念泥棒》《覆いを割く者、ナーセット》の今後が気になるところだと思われますが、Commander Rules Committeeもこの2枚に触れています。
同様の能力を持つカードがまだ残っている。特に《概念泥棒》や《覆いを割く者、ナーセット》だ。《概念泥棒》は青単色ではないこと、《覆いを割く者、ナーセット》は「瞬速」を持たないことで適切なレベルを維持しているとみているが、引き続き注視していく。
《概念泥棒》は4マナでかつ黒マナを必要とします。固有色に青黒を含む統率者でなければ使用できません。《船殻破り》 と比べてたった1マナの重いのですが、統率者戦には1マナの打ち消し呪文も多く、1マナ軽いということはそれだけ打ち消しを構えやすい=戦場に着地させやすいということになります。
《覆いを割く者、ナーセット》は青青含む3マナとマナ拘束がきつく、また、プレインズウォーカーである以上、対戦相手の行動に対応して戦場に出てくるということはほとんどありません。また、クリーチャーである《船殻破り》と違い、除去や火力が無くても統率者やそのほかクリーチャーで攻撃すれば戦場からどかすことができます。
統率者戦で単体除去を打つことは1:1:0:0交換となり、相対的にアドバンテージを失う行為とされてきました。そのため、全体除去以外にはほとんど除去を採用しないデッキもありましたが、《船殻破り》の登場によって《削剥》といった火力、《四肢切断》《猿術》といった単体除去の価値が上昇しました。
これからの統率者戦はどうなるか
2021年4月のルールアップデートではこのように表現されていました。
晴れる屋 記事 「21年4月統率者戦ルールアップデートについて」より引用
禁止カードについても変更はありませんでした。統率者戦は現在良い環境であると前置きしながらも、「We do have our eyes on some cards(いくつかのカードに注視している)」との文言がありました。競技フォーマットのルールアップデートで度々見かける言い回しですが、統率者戦においては珍しいことでしょう。
今回のルールアップデートでは《船殻破り》《概念泥棒》《覆いを割く者、ナーセット》以外のカードには触れておらず、また、「これ以外のカードに注視している」といった旨の記述はありませんでした。
新たに禁止カードが発表されることは悲劇的なニュアンスで伝えられることがあります。
今回は「統率者戦に魅力を感じているプレイヤーに強く訴求されたセット」から登場したカードが統率者戦で禁止されてしまいました。プレイヤーやカードショップは自身のコレクションの資産価値が下がり、ウィザーズもセットの魅力が落ちてしまうことで訴求力を失います。
《船殻破り》の登場は統率者戦の環境に大きな影響を与えました。そして今日、統率者戦を去ります。今後はより積極的に《Timetwister》系呪文を使えるようになり、自身の能力で手札を供給する統率者は本領を発揮し、「統治者」がその魅力を取り戻すことでしょう。《船殻破り》の座っていた枠だけではなく、これを意識して搭載されていた除去が今後どんなカードに置き換わっていくかも注目です。
「ダンジョン」の統率者戦での取り扱いについて
記事執筆時点ではまだ『フォーゴトン・レルム探訪』のリリースノートが出ておらず、詳細は不明ですが、ウィザーズ公式日本語サイトではダンジョンについて以下のように説明されています。
「ダンジョン」はまったく新しいカード・タイプです。(中略)ダンジョンはデッキに入れるカードではありません。ゲーム開始時にはゲームの外部にあり、使用時は統率領域に置かれます。(中略)公式イベントでのゲーム中に「ゲームの外部にあるカード」と言う場合、それはあなたのサイドボードにあるカードのことを指しますが、ダンジョンは少し異なる挙動をします。ダンジョンはサイドボードの枠を埋めません
従来の統率者戦では《大いなる創造者、カーン》の[-2]能力などで「ゲーム外部からほかのカードをゲームに持ち込むこと」には否定的でした。それは盤面に合わせたクリティカルな対応札を引き込む「シルバーバレット」「ウィッシュボード」的戦略は統率者戦にはそぐわないという考えがあるからです。
一方、「ダンジョン」カードを持ち込むことが戦況をひっくり返すほどのクリティカルな行動になることはあまりなさそうです。現状のルールのままでは、ゲーム外部からカードを持ち込む「ダンジョン探索」は機能しないことになってしまいそうです。そこで、ほとんどのプレーヤーは意識することが無いくらい細かなルール変更が発表されています。
統率者戦ルール11
旧ルール
Parts of abilities which bring other card(s) you own from outside the game into the game do not function in Commander.新ルール
Parts of abilities which bring other traditional card(s) you own from outside the game into the game do not function in Commander.
従来の「通常のカード/traditional card(s)」をゲーム外部から持ち込むことはできない(「ダンジョン」はよい)といった形に改められました。これまで通り、ゲーム外部からカードを持ち込む処理は不可ですが、「ダンジョン探索」によって「ダンジョン」カードをゲームに持ち込むことは可能、と覚えておけば問題無いでしょう。
まとめ
今回のルールアップデートでは久しぶりに、それも昨年登場したばかりのカードが禁止推奨カードリストに追加されました。
統率者戦には「競技大会」がありません。スタンダードやモダンといった競技フォーマットとは裁定を下す組織もゲームの思想も異なるため、違和感を覚える人もいるかもしれません。
両者に共通しているのは、プレーヤーにマジックを楽しんでほしいという想いでしょう。その表れとして、競技フォーマットではメタゲームを固着させるような強力すぎるカードやコンボが咎められ、統率者戦ではプレーヤーの行動を阻害しすぎるカードが咎められる傾向があります。今回の禁止改定はそれを再認識させました。
「ダンジョン」関係のルール整備はゲームのプレイに影響を及ぼすものではありませんでした。『ストリクスヘイヴン:魔法学院』の「履修」「講義」と違い、「ダンジョン」は問題なく機能することが明らかになりました。統率者戦でも「ダンジョン」探索を楽しみましょう!
統率者戦ルールアップデートは「必要に応じて三か月に一度」と予告されています。また続報があれば、こうして皆さんにお伝えできればとおもいます。
みなさん、楽しい統率者ライフを!